14-18 自民党案「第1章・天皇」の分析 その5
- 2015/04/25
- 08:32
14-18 どの様な憲法が相応しいのか。その18

14-18 自民党案「第1章・天皇」の分析 その5
前回からの続きとして3つの「主権」のうち、残りの統治権について一緒に考えていきたい。
前回も掲げたが3つの「主権」の意味を再々度掲げる。
1)国内的主権概念:国民および領土を統治する国家の権力。統治権。
2)国際関係的主権概念:国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利。国家主権。
3)国内政治制度上の主権概念:国家の政治を最終的に決定する権利。
今回のポイントは、先ず政治的決定権としての主権3)は国民にあることが大前提。
主権1)の統治権は、その国の元首としての正統性に立脚し、主権3)と主権1)を混同し同一視する必要はなく、むしろ共和制を至上のものとはぜず、各国の歴史・文化・慣習に合致した主権1)統治権のあり様を考察している。
繰り返しになるが、あらためて帝国憲法、現行憲法、自民党案の各主権の建て付けを3つの主権を明示しながら考察する。
先ず主権の建て付けである。
<帝国憲法>:天皇大権との建て付け 天皇が主権1)、2)、3)持つ建て付け
<現行憲法>:主権在民との建て付け 主権3)を国民が持つとの建て付け
<自民党案>:現行憲法に同じ。 主権3)を国民が持つとの建て付け
そして、その実質は、
<帝国憲法>:議会選挙の結果選ばれた総理大臣の輔弼により大権行使。実質は内閣。
主権1)は天皇、主権2)、3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
<現行憲法>:国会選挙の結果選ばれた総理大臣が行使。実質は内閣。
主権1)は実質天皇、主権2)3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
<自民党案>:現行憲法に同じ。
主権1)は元首天皇、主権2)3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
次に元首規定。
<帝国憲法>:天皇は元首。他の条文も天皇大権での建て付け。主権1)は天皇
<現行憲法>:天皇は元首との明示ない。他の条文からは元首となる。主権1)は天皇
<自民党案>:天皇は元首と明示。他の条文からは現行憲法と同じ。主権1)は天皇
1つ1つ見ていくと、こうなる。
現行憲法を「平和憲法」だ!「民主憲法」だ!と「戦後民主主義教育」を受けてきて、それを信じ込んだ方々には【現行憲法でも主権1)は天皇にある】と書くと信じていただけないだろう。仕方ないことだと思う。しかし、以前「8-3 行政に関する条文比較その3」で書いた様に、現行憲法規定で以下の通り現行憲法で天皇は英国エリザベス女王と同等に元首としての政治の長の任命権者である。
<「8-3 行政に関する条文比較 その3」から引用>
(1)国会で内閣総理大臣を指名(第67条)
↓
(2)天皇陛下が内閣総理大臣を任命する。(第6条)総理大臣の地位正式化
↓
(3)内閣総理大臣が国務大臣を任命(第68条)
↓
(4)天皇陛下が国務大臣を認証する。(第7条)国務大臣の地位正式化
<引用終わり>
現行憲法の規定では上記の(2)の天皇任命、(4)の天皇認証がないと組閣できない仕組みだ。もちろん天皇が任命・認証を拒否することはない。それは帝国憲法下での天皇と同じ慣例である。そもそも「内閣総理大「臣」」の「臣」とは君主に仕えるとの意味の漢字だ。
誰の「臣」か? 天皇である。そんなのは日本の常識だ。
また現行憲法第7条の五には「(前略)全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること」とある。各国駐日特命全権大使があらたに日本に着任してくると、馬車に乗り皇居で認証式が行われるが、時々ニュースで流れるのでご存じの方も多いだろう。
あの対象は特命全権大使または特命全権公使。「派遣元国の元首から託された信任状を派遣先の元首に提出する儀式」と定義されている。
要するに我が国元首が天皇であることは世界周知なのだ。
尚、「特命全権大使」の特命全権とは国家主権2)のことだ。特命全権大使は派遣元国の国家主権を代表している存在だ。
我が国で憲法を扱う論者の多くが語らないのだが、実態は次の様な構造になっているのが実情なのだ。
現行憲法で言う「主権の在する国民」での「主権」は主権3)=国内政治制度上の主権概念:国家の政治を最終的に決定する権利を言っている。
そして、主権1)が天皇にあることを明示せず、主権2)の国家主権のうち基本的国家主権である自衛・交戦権を制限しているというのが現行憲法の構造なのだ。
ある意味当たり前の構造である。現行憲法を帝国憲法と比較しながら全文を読んで明らかになった様に現行憲法の条文には多くの帝国憲法コピペだった。現行憲法は帝国憲法でもそうだった主権3)が国民にある、との実質をあらためて書いたって構造なのだから。
「戦後民主主義教育」を受けてきて方々にはにわかに信じ難いだろうが、これが本当のところなのである。以上、今回は最重要点を論評した。
FC2 Blog Ranking


14-18 自民党案「第1章・天皇」の分析 その5
前回からの続きとして3つの「主権」のうち、残りの統治権について一緒に考えていきたい。
前回も掲げたが3つの「主権」の意味を再々度掲げる。
1)国内的主権概念:国民および領土を統治する国家の権力。統治権。
2)国際関係的主権概念:国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行う権利。国家主権。
3)国内政治制度上の主権概念:国家の政治を最終的に決定する権利。
今回のポイントは、先ず政治的決定権としての主権3)は国民にあることが大前提。
主権1)の統治権は、その国の元首としての正統性に立脚し、主権3)と主権1)を混同し同一視する必要はなく、むしろ共和制を至上のものとはぜず、各国の歴史・文化・慣習に合致した主権1)統治権のあり様を考察している。
繰り返しになるが、あらためて帝国憲法、現行憲法、自民党案の各主権の建て付けを3つの主権を明示しながら考察する。
先ず主権の建て付けである。
<帝国憲法>:天皇大権との建て付け 天皇が主権1)、2)、3)持つ建て付け
<現行憲法>:主権在民との建て付け 主権3)を国民が持つとの建て付け
<自民党案>:現行憲法に同じ。 主権3)を国民が持つとの建て付け
そして、その実質は、
<帝国憲法>:議会選挙の結果選ばれた総理大臣の輔弼により大権行使。実質は内閣。
主権1)は天皇、主権2)、3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
<現行憲法>:国会選挙の結果選ばれた総理大臣が行使。実質は内閣。
主権1)は実質天皇、主権2)3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
<自民党案>:現行憲法に同じ。
主権1)は元首天皇、主権2)3)は国民が議会制民主主義制度を通じて
次に元首規定。
<帝国憲法>:天皇は元首。他の条文も天皇大権での建て付け。主権1)は天皇
<現行憲法>:天皇は元首との明示ない。他の条文からは元首となる。主権1)は天皇
<自民党案>:天皇は元首と明示。他の条文からは現行憲法と同じ。主権1)は天皇
1つ1つ見ていくと、こうなる。
現行憲法を「平和憲法」だ!「民主憲法」だ!と「戦後民主主義教育」を受けてきて、それを信じ込んだ方々には【現行憲法でも主権1)は天皇にある】と書くと信じていただけないだろう。仕方ないことだと思う。しかし、以前「8-3 行政に関する条文比較その3」で書いた様に、現行憲法規定で以下の通り現行憲法で天皇は英国エリザベス女王と同等に元首としての政治の長の任命権者である。
<「8-3 行政に関する条文比較 その3」から引用>
(1)国会で内閣総理大臣を指名(第67条)
↓
(2)天皇陛下が内閣総理大臣を任命する。(第6条)総理大臣の地位正式化
↓
(3)内閣総理大臣が国務大臣を任命(第68条)
↓
(4)天皇陛下が国務大臣を認証する。(第7条)国務大臣の地位正式化
<引用終わり>
現行憲法の規定では上記の(2)の天皇任命、(4)の天皇認証がないと組閣できない仕組みだ。もちろん天皇が任命・認証を拒否することはない。それは帝国憲法下での天皇と同じ慣例である。そもそも「内閣総理大「臣」」の「臣」とは君主に仕えるとの意味の漢字だ。
誰の「臣」か? 天皇である。そんなのは日本の常識だ。
また現行憲法第7条の五には「(前略)全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること」とある。各国駐日特命全権大使があらたに日本に着任してくると、馬車に乗り皇居で認証式が行われるが、時々ニュースで流れるのでご存じの方も多いだろう。
あの対象は特命全権大使または特命全権公使。「派遣元国の元首から託された信任状を派遣先の元首に提出する儀式」と定義されている。
要するに我が国元首が天皇であることは世界周知なのだ。
尚、「特命全権大使」の特命全権とは国家主権2)のことだ。特命全権大使は派遣元国の国家主権を代表している存在だ。
我が国で憲法を扱う論者の多くが語らないのだが、実態は次の様な構造になっているのが実情なのだ。
現行憲法で言う「主権の在する国民」での「主権」は主権3)=国内政治制度上の主権概念:国家の政治を最終的に決定する権利を言っている。
そして、主権1)が天皇にあることを明示せず、主権2)の国家主権のうち基本的国家主権である自衛・交戦権を制限しているというのが現行憲法の構造なのだ。
ある意味当たり前の構造である。現行憲法を帝国憲法と比較しながら全文を読んで明らかになった様に現行憲法の条文には多くの帝国憲法コピペだった。現行憲法は帝国憲法でもそうだった主権3)が国民にある、との実質をあらためて書いたって構造なのだから。
「戦後民主主義教育」を受けてきて方々にはにわかに信じ難いだろうが、これが本当のところなのである。以上、今回は最重要点を論評した。
FC2 Blog Ranking

スポンサーサイト