死刑と人権について3(死刑制度の是非議論)
- 2017/12/30
- 00:31
死刑と人権について3(死刑制度の是非議論)

副題:「死刑制度の是非議論」の土俵に登場していない視点がある。それは、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」という根源的視点である。
先般12月19日に死刑が執行された。
それを「報道」した毎日新聞の記事題材にした前々回の論考では、マスコミの「報道」は、「死刑反対ありき」での「片方だけの視点」だけでの「報道」でしかないことであった。
一方、前回の論考は「死刑反対が社会正義の国であるフランス」の駐日フランス大使館のツイッターでの情報発信を題材に、そのツイート内容が、やはり「死刑反対ありき」での単眼的視点であることを論証した。駐日フランス大使館のツイートは、単眼的なものであったのだが、同時に、我が国では論じられていない視点も含まれている様に思え、興味深いものでもあった。
今回は、我が国に於ける「死刑制度に関する議論」について考えていきたい。
死刑制度に関する議論は、以前から、所謂「サヨク」陣営から、死刑廃止論との立場での言論戦が仕掛けられている。
そこに登場するのは、案の定の「特定の視点を排除した議論」であり、議論の土俵がもっぱら「加害者・死刑囚の人権」になっているとの特徴がある。
今や当たり前になった「被害者の人権」との視点が議論の土俵に登場したのは最近のことであり、以前は、「被害者の人権」との概念さえもオミットされてきた。
今回は、未だに議論の土俵に登場しない視点をあらためて提示して論考する。
「未だに議論の土俵に登場しない視点」とは、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点である。
前回の駐日フランス大使館のツイートを題材にした論考の最後に、以下のことを書いた。
<最後の部分を抜粋引用>
一方、フランス大使館のツイートでは直接的には言及されていないが、ある視点が存在している様に考えている。それは、我が国では「死刑制度の是非議論」の土俵に登場していない「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」という根源的視点である。
この視点があるので、確保されていない状態では犯人を射殺するし、確保された後なら犯人を死刑にしない、との考え方の存在である。これについては、項を分けて続ける予定である。
<抜粋引用終わり>
この視点を視点Aとして頭の片隅に置き、現状の我が国の「死刑制度に関する議論」を考える。
先ず、我が国では、どの様な論点があるのかを見ていく。
前々回の「報道」の論考で引用した毎日新聞記事と同じく、昨年2016年の毎日新聞の記事で死刑制度に関するものがあった。
見出しは「◆あなたはどっち? 死刑制度は必要か」である。(*1)
この記事自体が、毎日新聞との所謂「サヨク」な新聞社の記事らしく「賛否」との二項対立形式での記事であった。
「死刑制度」との法制度の是非を論じるのだから、議論の出発点は、「何が社会通念上妥当なのか」とのバランスや妥協点を探るとの姿勢が必要な問題である。
そして、その際には、各自が持つ理念が多くの日本人に共有されているか否かの社会通念の視点も必要であり、「各自が持つ理念」の内容の紹介・検討も必要なのだが、毎日新聞の記事は、「紙面の都合」なのか、そういう視点がない「二項対立」との構成の記事であった。
「いきなり二項対立」との罠に注意するとの視点Bを頭の片隅に置きながら、その記事の中で紹介されていた賛否の意見を以下に引用する。
<死刑制度反対の意見・引用>
◆反対
国家による殺人許されず
(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ
(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する
(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない
(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
<引用終わり>
お読みいただければ分かる通り、ここには「社会安全の確保」との視点Aは一切登場しない。そして、これらの「意見」は、テクニカルなものか、片方だけの意見であり、「人権侵害」と「社会安全の確保」のバランス・妥協点は何かとの視点は存在していない。
次の賛成側意見も「二項対立形式」であるので注意して読み進める。
<死刑制度賛成の意見・引用>
◆賛成
威嚇力が犯罪抑止に必要
(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている
(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ
(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
こちらもお読みいただければ分かる様に、最初のタイトル「威嚇力が犯罪抑止に必要」は「社会安全の確保」との視点風味があるものの、それはテクニカルなものであり、また片方だけの意見が並べられている。
法制度の話をすると、本質とは違うテクニカルな意見が出てくるのは仕方がないことなのだが、この際、純テクニカルな話は雑音になるので排除して論を進める。
排除するのは、以下の純テクニカル意見である。
反対側:
(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ、
(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する、
賛成側:
(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている。
ご覧いただければ分かる通り、この様なテクニカルな「意見」は、本質的な部分での理念から遠いものだ。
「国際的潮流」とか「憲法条文の解釈」とか「判例」だとかは、理念とは異なる次元の意見であるので、これらを排除したのである。
因みに、「死刑廃止が国際的潮流になっている理由・考え方」の提示などがあれば排除することはなかったと思う。
純テクニカル意見を排除した後の項目のうち、「同一事象に対しての対立構造」にある意見毎に並べ変えると以下の様になる。
A:理念対立1
反:(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
賛:(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
B:誤審問題
反:(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
賛:(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
D:犯罪抑止論
反:(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない
賛:(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
F:国民感情論
反:(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
賛:(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
G:被害者救済
反:(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
H:被害者感情
反:意見記載なし
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
これらAからHのうち、「D:犯罪抑止論」は「死刑の犯罪抑止効果の有無」での真っ向対立である。
死刑の犯罪抑止効果に関しては、前回のツイッター編で言及した通り、科学的証明が出来ていない問題である。死刑に犯罪抑止効果がないことも証明出来ておらず、現状では「結論が出ない神学論争」の部類に入るものである。
こういう神学論争系の項目を賛否意見の中に取り入れると、必ず真っ向対立議論になり、議論が0か100かの不毛なものになる。従い、これらをベースにしての議論は論考に対象にしても仕方がない。各自が考え選択していただければ良い。
毎日新聞の2016年記事のうち、理念の視点から遠い純テクニカル意見と神学論争真っ向対立の2分類に該当するものを除いて論考を続ける。
とは言え、これらAからHからDを除いた7件に対して個別に論じることは、この論考の本論ではない。
これらの7件個別に対して、多くの方々は各自なりの意見を持っていることであろう。当方も同様である。(*2)
しかし、この論考の本論は「「特定の視点を排除した議論」では不充分である」であり、上記の7件には注目したい論点がそもそも含まれていない(明確的な記述がない)。
それ故に論考を深めても「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点での論考にはならないのである。
従い、逆アプローチとして、これら7件のうち、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点で関係がある項目をピックアップする。
そうなると、以下の2点が浮かび上がる。
<「社会安全の確保」の視点でのピックアップ項目>
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
<以上2点>
先ず、「C:犯人更生問題」に関して言えば、死刑反対側が言う更生可能性は否定はしないが、逆に言えば、死刑制度がある中で死刑判決を受けた犯罪者が、死刑制度廃止で無期懲役になり、仮に出所した場合、100%再犯しないとは言えないのである。
先般の死刑執行で処せられた死刑囚の一人は、以前、別の殺人事件で懲役刑に処せられ、出所後にまた殺人事件を起こしたのである。
再犯防止問題が手付かずの状態で、「どんな犯罪者でも更生の可能性はある」という考え方の提示だけでは、出所後に殺された被害者達は浮かばれない。
「社会安全の確保」の視点から言えば、結果として再度の殺人事件を起こした人物を社会に戻すことは、安全性の棄損である。一体、どの様な規準で最初の殺人事件の刑期が決まり、一体、どの様な更生プログラムで再犯確率を低めたのか、大いに疑問である。
毎日新聞の記事では賛成側の意見はないが、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%である。
次の「E:再犯発生問題」は、上記「C:犯人更生問題」と表裏一体の関係である。
要するに、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%であると言う事だ。
再犯発生問題に関して、死刑制度反対派側の意見を最大限考慮したとして述べるとしたら、「犯罪者の中には、どんな更生プログラムであっても更生しない人物はいる。再犯可能性が高いと目される人物には死刑または出所可能性がない終身刑を法制度上新設して対応すべきだ」などになると想定される。
今般、死刑執行された死刑囚のうち一人は、別の殺人事件で懲役刑後に出所して、また殺人事件を起こしている。この問題は、再犯防止プログラム・更生プログラムの抜本的な見直しが必要な問題だと考えており、死刑制度反対派からすれば、触れたくない問題なのであろう。
一方、どの様な更生プログラムで再犯確率を低めたのかを法務省の犯罪白書(*3)で調べたのだが、やはり、一定程度の再犯は発生し続けており、被害者にとって重大な結果が発生するものなので、重大犯罪の再犯が10%程度だからと言って許容できるものではないのである。
毎日新聞記事にあった項目としては以上であるが、「社会安全の確保」の視点から言えば、そこに登場していない考え方に、死刑の処せられる様な犯罪の未然防止の実効性を高めるとの考え方がある。
その件に関しては、長くなったので別項とする予定であるのだが、犯罪被害者が発生しない未然防止に関しては、これまた難しい問題があるのである。
難しい問題をもっと難しくしているのが、本質的議論を避けてスローガンばかりを叫ぶ連中である。「共謀罪」議論の時の彼等の所業を思い出していただきたい。
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【文末脚注】
(*1):死刑制度に関する2016年の毎日新聞記事
毎日新聞HP 2016年6月16日
見出し:◆あなたはどっち? 死刑制度は必要か
https://mainichi.jp/articles/20160616/org/00m/100/013000c
記事本文:○1966年に起きた強盗殺人事件で死刑が確定した後、無罪だった可能性が浮かんで釈放された袴田巌(はかまだ・いわお)元被告(80)のやり直しの裁判が東京高裁で続いています。今後もし、元被告の無罪が確定すれば、死刑制度の存廃を巡る議論が再燃することが見込まれます。
○一方で、現在の自民党政権下では死刑の執行が続いています。直近では、今年3月に2人の死刑が執行されました。死刑の執行は他の刑罰と違って、法相の命令が必要です。2009〜12年の民主党政権下では、死刑廃止派の国会議員が法相に就任したことなどから、1年8カ月間、執行がなかった期間がありましたが、その後の自民党政権下では一貫して執行されてきています。
○国際的には、死刑は廃止傾向にあると言われます。人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は昨年の調査結果として、法律で死刑を廃止していたり、法律で死刑を定めていても長年執行していない国は140カ国(世界の3分の2以上)で、昨年死刑を執行した国は25カ国だとしています。
○日本では09年から国民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まっています。この新制度について、裁判員経験者の多くが「良い経験になった」「社会のことに関心を持つ機会になった」などと肯定的に受け止めていますが、死刑判決に関わった人の中には「精神的な負担を感じた」と語る人も出ています。死刑存置国の国民として、死刑制度の存廃や死刑囚の人権について考える一方、理不尽な思いをした被害者や遺族に対する支援のあり方にも目を向ける必要があるでしょう。
◆賛成
威嚇力が犯罪抑止に必要
○死刑に賛成する人は、(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう−−といった意見を持っています。
◆反対
国家による殺人許されず
○死刑に反対する人は、(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的−−などと考えています。 【さいたま支局デスク・伊藤一郎】
<引用終わり>
(*2):毎日新聞記事にあった個別論点に対する当方の見解
A:理念対立1
反:(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
賛:(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
↓
「国家による殺人行為は許されない」と称しているが、死刑判決に至る様な犯罪である悪質な殺人事件を起こした個人は、野蛮で残酷な行為を行ったことに対して、どの様に罪を償うのか?出所があり得る「無期懲役刑」で罪と罰のバランスがとれるのか?
我が国では「終身刑」制度がない。
B:誤審問題
反:(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
賛:(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
↓
「誤審問題」は確かに「死刑執行後」では取り返しがつかないが、誤審ではないケースを含んで「誤審があるから死刑制度廃止」は論理的に成り立たない。
先般執行された死刑も、誤審ではない。
誤審問題は、むしろ誤審発生確率を極限まで下げる議論の中で解決する問題であり、死刑に限ったものではない。
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
↓
更生可能性を否定はしないが、逆に言えば、死刑制度がある中で死刑判決を受けた犯罪者が、死刑制度廃止で無期懲役になり、仮に出所した場合、100%再犯しないとは言えないのである。
先般の死刑執行で処せられた死刑囚の一人は、以前、別の殺人事件で懲役刑に処せられ、出所後にまた殺人事件を起こしたのである。
再犯防止問題が手付かずの状態で、「どんな犯罪者でも更生の可能性はある」という考え方の提示だけでは、出所後に殺された被害者達は浮かばれない。
毎日新聞の記事では賛成側の意見はないが、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%である。
D:犯罪抑止論 → 神学論争として論考対象外とした。
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
↓
これは、上記「C:犯人更生問題」と表裏一体の関係である。
要するに、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%であると言う事だ。
再犯発生問題に関して、死刑制度反対派側の意見を最大限考慮したとして述べるとしたら、「犯罪者の中には、どんな更生プログラムであっても更生しない人物はいる。再犯可能性が高いと目される人物には死刑または出所可能性がない終身刑を法制度上新設して対応すべきだ」などになると想定される。
別の殺人事件で懲役刑後に出所した人物が、また殺人事件を起こしているとの問題は、再犯防止プログラム・更生プログラムの抜本的な見直しが必要な問題だと考えており、死刑制度反対派からすれば、触れたくない問題なのであろう。
F:国民感情論
反:(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
賛:(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
↓
賛成側は「国民は死刑に賛成」との調査結果を掲げ、反対派は「誘導質問だ!」=「実は国民は賛成していないのだぁ」と真っ向対立している。
しかし、反対側の「誘導尋問論」は屁理屈・クリンチだと感じている。
「世論調査やアンケートのやり方がオカシイ」というのは賛成派・反対派ともに、自分の意見と違う結果が出ると主張されるものである。
ある意味「神学論争」の部類に入るものであり、そうである状態からは、現在の法制度を変更することは、逆に危険である。
G:被害者救済
反:(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
及び
H:被害者感情
反:意見記載なし
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
↓
毎日新聞の記事には「被害者感情」というポイントでの死刑反対側の意見はない。代わりに「犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ」との意見が書いてあるだけなので、この様な分類にしたものだと推察される。
「F:国民感情論」では、対象が「国民」との不特定多数であり、「世論調査やアンケートのやり方がオカシイ」との屁理屈・クリンチが入り込む余地があったが、「H:被害者感情」の場合、被害者との特定者が「極刑を望みます」等の意志明示をした場合、反対側は反論のしようがない項目なので、毎日新聞は、この様な構成にしたのであろう。
(*3):法務省の犯罪白書
法務省HP
平成28年版 犯罪白書 ~再犯の現状と対策のいま~
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/63/nfm/mokuji.html
※ご参考
犯罪統計における「再犯」とは?-再犯率と再犯者率の違い-
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/63/nfm/n63_2_5_1_1_4.html
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副題:「死刑制度の是非議論」の土俵に登場していない視点がある。それは、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」という根源的視点である。
先般12月19日に死刑が執行された。
それを「報道」した毎日新聞の記事題材にした前々回の論考では、マスコミの「報道」は、「死刑反対ありき」での「片方だけの視点」だけでの「報道」でしかないことであった。
一方、前回の論考は「死刑反対が社会正義の国であるフランス」の駐日フランス大使館のツイッターでの情報発信を題材に、そのツイート内容が、やはり「死刑反対ありき」での単眼的視点であることを論証した。駐日フランス大使館のツイートは、単眼的なものであったのだが、同時に、我が国では論じられていない視点も含まれている様に思え、興味深いものでもあった。
今回は、我が国に於ける「死刑制度に関する議論」について考えていきたい。
死刑制度に関する議論は、以前から、所謂「サヨク」陣営から、死刑廃止論との立場での言論戦が仕掛けられている。
そこに登場するのは、案の定の「特定の視点を排除した議論」であり、議論の土俵がもっぱら「加害者・死刑囚の人権」になっているとの特徴がある。
今や当たり前になった「被害者の人権」との視点が議論の土俵に登場したのは最近のことであり、以前は、「被害者の人権」との概念さえもオミットされてきた。
今回は、未だに議論の土俵に登場しない視点をあらためて提示して論考する。
「未だに議論の土俵に登場しない視点」とは、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点である。
前回の駐日フランス大使館のツイートを題材にした論考の最後に、以下のことを書いた。
<最後の部分を抜粋引用>
一方、フランス大使館のツイートでは直接的には言及されていないが、ある視点が存在している様に考えている。それは、我が国では「死刑制度の是非議論」の土俵に登場していない「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」という根源的視点である。
この視点があるので、確保されていない状態では犯人を射殺するし、確保された後なら犯人を死刑にしない、との考え方の存在である。これについては、項を分けて続ける予定である。
<抜粋引用終わり>
この視点を視点Aとして頭の片隅に置き、現状の我が国の「死刑制度に関する議論」を考える。
先ず、我が国では、どの様な論点があるのかを見ていく。
前々回の「報道」の論考で引用した毎日新聞記事と同じく、昨年2016年の毎日新聞の記事で死刑制度に関するものがあった。
見出しは「◆あなたはどっち? 死刑制度は必要か」である。(*1)
この記事自体が、毎日新聞との所謂「サヨク」な新聞社の記事らしく「賛否」との二項対立形式での記事であった。
「死刑制度」との法制度の是非を論じるのだから、議論の出発点は、「何が社会通念上妥当なのか」とのバランスや妥協点を探るとの姿勢が必要な問題である。
そして、その際には、各自が持つ理念が多くの日本人に共有されているか否かの社会通念の視点も必要であり、「各自が持つ理念」の内容の紹介・検討も必要なのだが、毎日新聞の記事は、「紙面の都合」なのか、そういう視点がない「二項対立」との構成の記事であった。
「いきなり二項対立」との罠に注意するとの視点Bを頭の片隅に置きながら、その記事の中で紹介されていた賛否の意見を以下に引用する。
<死刑制度反対の意見・引用>
◆反対
国家による殺人許されず
(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ
(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する
(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない
(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
<引用終わり>
お読みいただければ分かる通り、ここには「社会安全の確保」との視点Aは一切登場しない。そして、これらの「意見」は、テクニカルなものか、片方だけの意見であり、「人権侵害」と「社会安全の確保」のバランス・妥協点は何かとの視点は存在していない。
次の賛成側意見も「二項対立形式」であるので注意して読み進める。
<死刑制度賛成の意見・引用>
◆賛成
威嚇力が犯罪抑止に必要
(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている
(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ
(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
こちらもお読みいただければ分かる様に、最初のタイトル「威嚇力が犯罪抑止に必要」は「社会安全の確保」との視点風味があるものの、それはテクニカルなものであり、また片方だけの意見が並べられている。
法制度の話をすると、本質とは違うテクニカルな意見が出てくるのは仕方がないことなのだが、この際、純テクニカルな話は雑音になるので排除して論を進める。
排除するのは、以下の純テクニカル意見である。
反対側:
(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ、
(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する、
賛成側:
(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている。
ご覧いただければ分かる通り、この様なテクニカルな「意見」は、本質的な部分での理念から遠いものだ。
「国際的潮流」とか「憲法条文の解釈」とか「判例」だとかは、理念とは異なる次元の意見であるので、これらを排除したのである。
因みに、「死刑廃止が国際的潮流になっている理由・考え方」の提示などがあれば排除することはなかったと思う。
純テクニカル意見を排除した後の項目のうち、「同一事象に対しての対立構造」にある意見毎に並べ変えると以下の様になる。
A:理念対立1
反:(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
賛:(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
B:誤審問題
反:(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
賛:(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
D:犯罪抑止論
反:(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない
賛:(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
F:国民感情論
反:(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
賛:(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
G:被害者救済
反:(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
H:被害者感情
反:意見記載なし
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
これらAからHのうち、「D:犯罪抑止論」は「死刑の犯罪抑止効果の有無」での真っ向対立である。
死刑の犯罪抑止効果に関しては、前回のツイッター編で言及した通り、科学的証明が出来ていない問題である。死刑に犯罪抑止効果がないことも証明出来ておらず、現状では「結論が出ない神学論争」の部類に入るものである。
こういう神学論争系の項目を賛否意見の中に取り入れると、必ず真っ向対立議論になり、議論が0か100かの不毛なものになる。従い、これらをベースにしての議論は論考に対象にしても仕方がない。各自が考え選択していただければ良い。
毎日新聞の2016年記事のうち、理念の視点から遠い純テクニカル意見と神学論争真っ向対立の2分類に該当するものを除いて論考を続ける。
とは言え、これらAからHからDを除いた7件に対して個別に論じることは、この論考の本論ではない。
これらの7件個別に対して、多くの方々は各自なりの意見を持っていることであろう。当方も同様である。(*2)
しかし、この論考の本論は「「特定の視点を排除した議論」では不充分である」であり、上記の7件には注目したい論点がそもそも含まれていない(明確的な記述がない)。
それ故に論考を深めても「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点での論考にはならないのである。
従い、逆アプローチとして、これら7件のうち、「社会安全の確保」「国民の生活安全の確保」との視点で関係がある項目をピックアップする。
そうなると、以下の2点が浮かび上がる。
<「社会安全の確保」の視点でのピックアップ項目>
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
<以上2点>
先ず、「C:犯人更生問題」に関して言えば、死刑反対側が言う更生可能性は否定はしないが、逆に言えば、死刑制度がある中で死刑判決を受けた犯罪者が、死刑制度廃止で無期懲役になり、仮に出所した場合、100%再犯しないとは言えないのである。
先般の死刑執行で処せられた死刑囚の一人は、以前、別の殺人事件で懲役刑に処せられ、出所後にまた殺人事件を起こしたのである。
再犯防止問題が手付かずの状態で、「どんな犯罪者でも更生の可能性はある」という考え方の提示だけでは、出所後に殺された被害者達は浮かばれない。
「社会安全の確保」の視点から言えば、結果として再度の殺人事件を起こした人物を社会に戻すことは、安全性の棄損である。一体、どの様な規準で最初の殺人事件の刑期が決まり、一体、どの様な更生プログラムで再犯確率を低めたのか、大いに疑問である。
毎日新聞の記事では賛成側の意見はないが、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%である。
次の「E:再犯発生問題」は、上記「C:犯人更生問題」と表裏一体の関係である。
要するに、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%であると言う事だ。
再犯発生問題に関して、死刑制度反対派側の意見を最大限考慮したとして述べるとしたら、「犯罪者の中には、どんな更生プログラムであっても更生しない人物はいる。再犯可能性が高いと目される人物には死刑または出所可能性がない終身刑を法制度上新設して対応すべきだ」などになると想定される。
今般、死刑執行された死刑囚のうち一人は、別の殺人事件で懲役刑後に出所して、また殺人事件を起こしている。この問題は、再犯防止プログラム・更生プログラムの抜本的な見直しが必要な問題だと考えており、死刑制度反対派からすれば、触れたくない問題なのであろう。
一方、どの様な更生プログラムで再犯確率を低めたのかを法務省の犯罪白書(*3)で調べたのだが、やはり、一定程度の再犯は発生し続けており、被害者にとって重大な結果が発生するものなので、重大犯罪の再犯が10%程度だからと言って許容できるものではないのである。
毎日新聞記事にあった項目としては以上であるが、「社会安全の確保」の視点から言えば、そこに登場していない考え方に、死刑の処せられる様な犯罪の未然防止の実効性を高めるとの考え方がある。
その件に関しては、長くなったので別項とする予定であるのだが、犯罪被害者が発生しない未然防止に関しては、これまた難しい問題があるのである。
難しい問題をもっと難しくしているのが、本質的議論を避けてスローガンばかりを叫ぶ連中である。「共謀罪」議論の時の彼等の所業を思い出していただきたい。
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【文末脚注】
(*1):死刑制度に関する2016年の毎日新聞記事
毎日新聞HP 2016年6月16日
見出し:◆あなたはどっち? 死刑制度は必要か
https://mainichi.jp/articles/20160616/org/00m/100/013000c
記事本文:○1966年に起きた強盗殺人事件で死刑が確定した後、無罪だった可能性が浮かんで釈放された袴田巌(はかまだ・いわお)元被告(80)のやり直しの裁判が東京高裁で続いています。今後もし、元被告の無罪が確定すれば、死刑制度の存廃を巡る議論が再燃することが見込まれます。
○一方で、現在の自民党政権下では死刑の執行が続いています。直近では、今年3月に2人の死刑が執行されました。死刑の執行は他の刑罰と違って、法相の命令が必要です。2009〜12年の民主党政権下では、死刑廃止派の国会議員が法相に就任したことなどから、1年8カ月間、執行がなかった期間がありましたが、その後の自民党政権下では一貫して執行されてきています。
○国際的には、死刑は廃止傾向にあると言われます。人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は昨年の調査結果として、法律で死刑を廃止していたり、法律で死刑を定めていても長年執行していない国は140カ国(世界の3分の2以上)で、昨年死刑を執行した国は25カ国だとしています。
○日本では09年から国民が刑事裁判に参加する裁判員制度が始まっています。この新制度について、裁判員経験者の多くが「良い経験になった」「社会のことに関心を持つ機会になった」などと肯定的に受け止めていますが、死刑判決に関わった人の中には「精神的な負担を感じた」と語る人も出ています。死刑存置国の国民として、死刑制度の存廃や死刑囚の人権について考える一方、理不尽な思いをした被害者や遺族に対する支援のあり方にも目を向ける必要があるでしょう。
◆賛成
威嚇力が犯罪抑止に必要
○死刑に賛成する人は、(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ(3)最高裁の判例上、死刑は合憲とされている(4)死刑の威嚇力は犯罪抑止に必要だ(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう−−といった意見を持っています。
◆反対
国家による殺人許されず
○死刑に反対する人は、(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない(2)死刑廃止は国際的潮流であり、日本も従うべきだ(3)死刑は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に該当する(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ(5)死刑に犯罪を抑止する効果はない(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的−−などと考えています。 【さいたま支局デスク・伊藤一郎】
<引用終わり>
(*2):毎日新聞記事にあった個別論点に対する当方の見解
A:理念対立1
反:(1)死刑は野蛮で残酷。国家による殺人行為は許されない
賛:(1)人を殺した者は、自らの生命で罪を償うべきだ
↓
「国家による殺人行為は許されない」と称しているが、死刑判決に至る様な犯罪である悪質な殺人事件を起こした個人は、野蛮で残酷な行為を行ったことに対して、どの様に罪を償うのか?出所があり得る「無期懲役刑」で罪と罰のバランスがとれるのか?
我が国では「終身刑」制度がない。
B:誤審問題
反:(4)死刑は執行すると取り返しがつかないので、誤判がありえる以上は廃止すべきだ
賛:(7)死刑反対派は「誤判の可能性がある以上、死刑を廃止すべきだ」と言うが、「誤判の可能性がある」という意味では、死刑以外の刑罰でも同じ理屈が生じてしまう
↓
「誤審問題」は確かに「死刑執行後」では取り返しがつかないが、誤審ではないケースを含んで「誤審があるから死刑制度廃止」は論理的に成り立たない。
先般執行された死刑も、誤審ではない。
誤審問題は、むしろ誤審発生確率を極限まで下げる議論の中で解決する問題であり、死刑に限ったものではない。
C:犯人更生問題
反:(7)どんな犯罪者でも更生の可能性はある
賛:意見記載なし
↓
更生可能性を否定はしないが、逆に言えば、死刑制度がある中で死刑判決を受けた犯罪者が、死刑制度廃止で無期懲役になり、仮に出所した場合、100%再犯しないとは言えないのである。
先般の死刑執行で処せられた死刑囚の一人は、以前、別の殺人事件で懲役刑に処せられ、出所後にまた殺人事件を起こしたのである。
再犯防止問題が手付かずの状態で、「どんな犯罪者でも更生の可能性はある」という考え方の提示だけでは、出所後に殺された被害者達は浮かばれない。
毎日新聞の記事では賛成側の意見はないが、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%である。
D:犯罪抑止論 → 神学論争として論考対象外とした。
E:再犯発生問題
反:意見記載なし
賛:(6)凶悪な犯罪者による再犯防止を図るためにも死刑は必要だ
↓
これは、上記「C:犯人更生問題」と表裏一体の関係である。
要するに、論理的には、殺人事件で死刑判決に基づき刑が執行された犯人の殺人事件再犯率は0%であると言う事だ。
再犯発生問題に関して、死刑制度反対派側の意見を最大限考慮したとして述べるとしたら、「犯罪者の中には、どんな更生プログラムであっても更生しない人物はいる。再犯可能性が高いと目される人物には死刑または出所可能性がない終身刑を法制度上新設して対応すべきだ」などになると想定される。
別の殺人事件で懲役刑後に出所した人物が、また殺人事件を起こしているとの問題は、再犯防止プログラム・更生プログラムの抜本的な見直しが必要な問題だと考えており、死刑制度反対派からすれば、触れたくない問題なのであろう。
F:国民感情論
反:(8)政府は「世論調査の結果では、大多数の国民が死刑に賛成している」としているが、調査の質問が誘導的
賛:(2)一定の極悪非道な犯人には死刑を科すべきだというのが国民の一般的な考え方だ
↓
賛成側は「国民は死刑に賛成」との調査結果を掲げ、反対派は「誘導質問だ!」=「実は国民は賛成していないのだぁ」と真っ向対立している。
しかし、反対側の「誘導尋問論」は屁理屈・クリンチだと感じている。
「世論調査やアンケートのやり方がオカシイ」というのは賛成派・反対派ともに、自分の意見と違う結果が出ると主張されるものである。
ある意味「神学論争」の部類に入るものであり、そうである状態からは、現在の法制度を変更することは、逆に危険である。
G:被害者救済
反:(6)犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
及び
H:被害者感情
反:意見記載なし
賛:(5)被害者や遺族の心情に配慮すれば死刑制度は不可欠だ
↓
毎日新聞の記事には「被害者感情」というポイントでの死刑反対側の意見はない。代わりに「犯人には、被害者・遺族に弁償させ、生涯罪を償わせるべきだ」との意見が書いてあるだけなので、この様な分類にしたものだと推察される。
「F:国民感情論」では、対象が「国民」との不特定多数であり、「世論調査やアンケートのやり方がオカシイ」との屁理屈・クリンチが入り込む余地があったが、「H:被害者感情」の場合、被害者との特定者が「極刑を望みます」等の意志明示をした場合、反対側は反論のしようがない項目なので、毎日新聞は、この様な構成にしたのであろう。
(*3):法務省の犯罪白書
法務省HP
平成28年版 犯罪白書 ~再犯の現状と対策のいま~
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/63/nfm/mokuji.html
※ご参考
犯罪統計における「再犯」とは?-再犯率と再犯者率の違い-
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/63/nfm/n63_2_5_1_1_4.html
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