安倍首相・国連演説2
- 2017/09/26
- 19:47
安倍首相・国連演説2

副題:官邸HPに演説の全文が登録されたので、あらためて読んでみた。その読解結果を書いてみた。
安倍首相の国連総会での演説については、その当日に論考したが、その時点では全文資料がまだ揃っておらず、新聞記事ベースでの論考であった。今般、首相官邸HPに国連演説の全文及び動画が登録されたので、あらためて読んでみた。
文書を読むよりも動画の方が頭に入る方は、動画の方をご覧いただければ良い。官邸HPに登録されているのは、全部で17分弱程度の動画である。
この演説は、国連総会での演説であることから、安倍首相は我が国の国語である日本語で演説している。以前、アメリカ議会で演説した時は「アメリカ人に聞かせる」のが目的だったので英語での演説であったが、国連総会では慣例に従い日本語で演説している。
これは、国連総会に出席している他の国々の代表は、同時通訳により聞くことを意味しており「同時通訳されることを前提にした日本語」での演説であるということだ。
多分、所謂「反安倍」の方々は、演説に対して否定的なことを言うのであろう。以前の例では、「日本語としてオカシイ」とかを言う方もいたが、それは「同時通訳されることを前提にした日本語」であることに気が付いていないのであろう。
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安倍首相の国連総会での演説は、「文末脚注(*1)」に全文引用した通り、大きくは7つの段落に分けられている。
最初の①段落は、所謂「導入部」であるが、演説は、各国の持ち時間が限られていることもあり、最初から「北朝鮮に関して集中せざるを得ません」と北朝鮮問題が最重要課題であると述べている。
演説の冒頭で安倍首相は、他の幾つかの具体的問題を掲げ「語るべきことの、リストは長い」との表現で課題は沢山ある事を述べながらも「北朝鮮に関して集中せざるを得ません」としている。
北朝鮮問題が最重要課題である理由として述べていることは次の一文に集約されている。
「日本が、どこまでも守りたいものとは、フリーで、リベラルで、オープンな国際秩序、多国間の枠組みであります。」
この部分も「同時通訳されることを前提にした日本語」である。
「フリー」「リベラル」「オープン」との外来語を用いているのも、これらの文意を特定する日本語で「自由で」「自由主義に基づく」「閉鎖性を排除した」と表現したならば、かなり通訳し難い日本語になることからであろう。
また、キーワード的なぶつ切り表現も同様に「他の言語に通訳される前提」での表現だ。
・「法の支配に対する、我々の貢献。」
・「パリ協定に忠実たろうとする、我々の決意。」
・「世界のインフラ需要に対し、質の高い投資をもって臨む、我々の政策。」
これらは伊勢志摩G7サミット等のG7首脳宣言で言及されている項目であることは、分かっている方には分かるもので、これら項目が大事なものであることを明示するのと同時に、日本は、多国間協議での合意した事項はちゃんと守っていることをアピールするものである。
後段に出てくる、KEDOや6者協議との「国際合意を平気で裏切る北朝鮮」との対比になっているのである。
安倍首相の国連演説は、冒頭の導入部で既にアクセル全開である。
「多国間の枠組み」が大事だ、そして「国連に寄せる世界の期待は高い」、それ故に「国連は時代の要請に応じ変革すべきだ」、だから「日本は安保理常任理事国に立候補している」と、しっかりとアピールしている。
この①の導入部以降は、前述した様に、総て北朝鮮問題へと費やされる。
導入部では、短めにポイントだけを述べたものであったが、次の②以降は、北朝鮮問題の本質を世界各国の代表に認知させる事を目的にしているのであろうか、かなり詳細に過去経緯を述べている。
北朝鮮問題に関して語り始めた②段落は、大きくは2つの部分で構成されている。
その内の1つは「最近の出来事」の明示である。
9月3日の核実験を明示し、弾道ミサイルを8月29日に発射したことと、それに伴い国連・安保理での決議が出されたこと、ところが、その決議を嘲笑うが如く9月15日に、再度の弾道ミサイル発射があったことを述べている。
2つ目は「それが意味するもの」である。
世界から見れば、日本列島と朝鮮半島がある極東は「極」であり、地理的に「遠い世界」であり、その感性に於いて「対岸の火事」でしかない。
勿論、我々日本人にとっては具体的脅威であり、頭の上を弾道ミサイルが飛んで来る状態であるのだが、世界各国にとっては切羽詰まるものはない。
逆に言えば、我々日本人にとって、コソボやルワンダのツチ族・フツ族問題は、地理的に遠いバルカン半島やアフリカの出来事であり切羽詰まるものがなかったのと同じだ。
安倍首相は、北朝鮮問題とは、そういう地理的な問題ではなく、構造的問題であり、それは歴史を巻き戻す愚行であることを示している。我が国首相は、それらを示す以下を述べている。
・「我々が営々続けてきた軍縮の努力を、北朝鮮は、一笑に付そうとしている。」
・「不拡散体制は、その史上、最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている。」
・「この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。」
・「北朝鮮の核兵器(中略)の運搬手段は、早晩、ICBM(大陸間弾道ミサイル)になるだろう。」
・「冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。」
二番目に出てくる「不拡散体制」とは、1963年に国連で採択された「核拡散防止条約」のことである。北朝鮮の核開発の意図が露わになったのは、1993年の核拡散防止条約脱退表明からである。
ここから、当時の北朝鮮首席・金日成とアメリカ・クリントン大統領特使のカーター元大統領の会談がセットされ、KEDO、そして6者協議との「対話による核放棄」の試みが始まっている。詳しくは以前の論考「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」(*2)を御一読いただきたい。
知っての通り、国連採択による「不拡散体制」に反しての核疑惑=大量破壊兵器開発疑惑は北朝鮮が初めてではない。現在進行中の問題としてはイランがあるが、武力衝突に至った例として第二次湾岸戦争がある。一般的にはイラク戦争として知られ、サダム・フセンの処刑に至る、あの戦争である。
第二次湾岸戦争(イラク戦争)の開戦理由は大量破壊兵器保持問題である。
大量破壊兵器は、結局は見つからず、その事を以て「アメリカの石油利権目的の侵略だ」との陰謀説が流布されたり、フセイン処刑後のイラクの治安がずっと安定せず、クルド人問題などは、住民投票の実施が今朝のニュースになるなど、後味の悪いものとなっているが、我が国マスコミの「報道」の論調では脇に置かれている核問題が、あのイラクでの戦争の原因である。
既に、多くの人の記憶からは薄れてしまっているであろう、ブッシュJr.の「悪の枢軸」発言の対象は、イラク、イラン、北朝鮮である。
これらのうち、イラクは武力による解決となり、イランと北朝鮮は「対話」による解決を模索するものとなった。イランとの対話も進展していないものの、イランは北朝鮮の様な核実験をしていない。
国際政治の立場では、北朝鮮は、イラク、イランと同列なのだが、今現在、核爆発を幾度も実施し、弾道ミサイルを乱射する国として存在しているのが北朝鮮である。
そういう事実を以て、「この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。」と述べているのである。何故、次元が異なるのかと言えば、イラクは、第一次湾岸戦争の際に、盛んにイスラエルに弾道ミサイルのスカッドを撃ち込んだが、今、北朝鮮が乱射している弾道ミサイルは、スカッドと違い、射程距離が飛躍的に長いICBM(大陸間弾道ミサイル)へと性能向上する見込みだ、と説明されTいる。
スカッド改良のノドン・テポドンであっさりと射程距離内に入ってしまう日本列島の危機は、結局は、世界から見れば極東での「対岸の火事」だったのだが、ICBMの場合、その射程距離から、欧州も北米大陸の諸国も「自分自身の危機」にならざるを得ない状況だということの説明である。
そういう事態に対して「冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。」と今までの北朝鮮核問題に対する国際社会の動きのままでは宜しくない旨をアピールしている。
この様なアピールは「オマエもやるんだぞ」という意味合いがあり、責任を負いたくない国や関係ないと思っている国からすれば刺激的である。こういう問い掛けに対して、日本人の反応は仕方ないとして協力するか、黙って後ろに下がるかであろう。
一方、日本文化ではない文化圏では、「参加する立場」になりたくない場合は、なんらかの反論をして逃げることを正当化する動きとなる。
どんな反論かと言うと「対話をして解決しろ」とかのパターン反論が出ることは容易に予想できる。
現状の様な危機的状況が現出したのは、そんなパターン反論は無意味であるとして、「これをもたらしたのは、対話の不足では、断じてありません。」と②段落を結んでいる。
これに続く、③段落と④段落部分は、事実の開示に費やされている。
この③段落、④段落では、国連総会演説にしては、かなり細かく、③段落でKEDの経緯を、④段落で6者協議の経緯を紹介し、この2度の「対話の場」は、何れも北朝鮮による裏切り・詐欺行為で破綻していることを述べている。
これら事実経緯他に関しては、前述した様に、以前の論考「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」で説明しているので、ここでは繰り返さない。
同論考または安倍首相の国連演説の③段落、④段落部分をお読みいただければ良い。
安倍首相が演説で明示している様に、北朝鮮との核問題の「対話」は、何れもが北朝鮮による裏切り・詐欺行為で破綻している。以下に、そういう事実経緯に関して、安倍首相演説から幾つかポイントとなる部分を紹介する。
<③段落:KEDOの経緯部分から抜粋>
・「核を棄てる意思など、元々北朝鮮にはなかった。それが、誰の目にも明らかになりました。発足7年後の2002年以降、KEDOは活動を停止します。」
・「北朝鮮はその間、米国、韓国、日本から、支援を詐取したと言っていいでしょう。」
・インセンティブを与え、北朝鮮の行動を変えるという、KEDOの枠組みに価値を認めた国は、徐々に、KEDOへ加わりました。(中略)北朝鮮は、それらメンバー全ての、善意を裏切ったのです。」
<④段落:6者協議の経緯部分から抜粋>
・「KEDO創設メンバーだった日米韓3国に、北朝鮮と、中国、ロシアを加えた、六者会合が始まります。2003年、8月でした。」
・「北朝鮮は、全ての核兵器、既存の核計画を放棄することと、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)と、IAEAの保障措置に復帰することを約束した。(中略)その見返りとして、北朝鮮は、重油を受け取るに至るのです。」
・「六者会合の傍ら、北朝鮮は2005年2月、我々は、既に核保有国だと、一方的に宣言した。」
・「2006年の10月、第1回の核実験を、公然、実施した。2度目の核実験は、2009年。結局北朝鮮は、この年、再び絶対に参加しないと述べた上、六者会合からの脱退を表明します。」
この様に、国連総会演説にしては、かなり細かく、これら③段落及び④段落で、北朝鮮が「対話」を逆手に取り、2度も裏切り、核開発・弾道ミサイル開発を進めてきた経緯を述べている。そして、これに続き、⑤段落で、北朝鮮との「対話」=「対話のみ」は、まったくの無駄であり、何等の効果もない、いや、むしろ北朝鮮の核開発・弾道ミサイル開発の為の「時間」をプレゼントして助けることにしかなっていない事を明示している。
以下に、安倍首相演説の⑤段落から幾つかポイントとなる部分を紹介する。
・「我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで、持ち合わせていなかったということであります。」
・「対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。」
・「1994年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も、成熟に程遠かった。それが今、水爆と、ICBMを手に入れようとしているのです。」
・「対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。」
・「何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。」
・「必要なのは、対話ではない。圧力なのです。」
まったくに、この通り。まさに「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」なのである。
安倍首相のこの主張に激しく同意する。
北朝鮮との「対話」=「対話のみ」を主張する方がいるのならば、過去2度の失敗を繰り返さない実効性ある策を提示した上で言っていただきたい。
単なる「対話」だけならば、それは北朝鮮の代弁者であると認定せざるを得ないのである。
この様に、国際社会の当事者ではない国々が忘れてしまっているであろう事実経緯を紹介し、そういう事実がありながら、未だに「対話」とのパターン発言をすることが無意味であることを明示しているのである。
この次の⑥段落からは、「国際社会の協力が不可欠なので、協力をお願いします」との呼び掛けへと移っていく。
⑥段落の冒頭に横田めぐみさんの話が登場する。
これは、その前日のトランプ大統領の国連演説(*3)での「We know it kidnapped a sweet 13-year-old Japanese girl(我々は知っている。13歳のいたいけな日本の少女が拉致・誘拐されたことを)」との山彦であることは勿論なのであるが、「拉致被害者に言及」しただけではない。「めぐみさん始め、多くの日本人が、いまだに北朝鮮に、拉致されたままです。」とあるのは、国家として国民を守るとの基本姿勢を示すものだ。
北朝鮮の核・弾道ミサイルで我国国民が自国にいながら危機リスクに晒されている現状を、対イラクの様に武力で解決するとしたら、それは「いまだに北朝鮮に、拉致されたまま」の「めぐみさん始め、多くの日本人」を守れないことを意味する。
そういう事を考えないで「北朝鮮など爆撃で粉砕してしまえ」とかの勇ましい事を言う方もネットでは散見されるが、そんな浅はかなレベルで我国首相は考えていないことが分かる。頼もしいと感じるし、そういう基本姿勢を堅持する姿は、安易に「カルネアデスの板」に逃げ込んでいないし、逆に「人の生命は地球より重い」として超法規的措置に逃げ込む弱さもない。凄いことだと思う。
この様に感じるのは、6段落の冒頭で拉致日本人に言及して、その直後に北朝鮮の核問題に対峙している日米同盟のうち、アメリカが当初より言っている「全ての選択肢はテーブルの上にある」を支持している旨が述べられているからである。
「全ての選択肢」とは、「対話と圧力」との交渉基本姿勢のうちの「圧力」の種類が、けして経済的制裁だけに限定しておらず、軍事行動もあり得るとするものであるからだ。
これは、ある意味当たり前の話である。「対話と圧力」のうちの「圧力」が非軍事的なものに限定しているとすれば、それは圧力になり得ないからである。
この、一瞬矛盾する姿勢は、⑥段落の後半及び最後の⑦段落を読めば、何等矛盾せず、もっとも平和的なものであることがわかる。
⑥段落後半で言っていることは、国連決議での「核、ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む」を実際に実行することであり、それを以て、「北朝鮮に対し、路線の根本変更を迫る」という筋道である。
ここで言及されている圧力には武力行使が入っていない。
その上で、こういう圧力が実効性を持つ為には、国際社会の連帯が必要だと述べている。
即ち、北朝鮮が核・弾道ミサイルを放棄する決心をする迄の非軍事的圧力を実現させるには「国際社会の連帯」が必須だ、国際社会の連帯がなければ、非軍事的圧力の実効性が確保できない旨を述べているのである。
これを逆に言えば、「国際社会の連帯」が整わず、抜け道が存在し続けたら、圧力の種類が、非軍事的圧力には留まっていられないのだ、という事である。
こういう内容なのだが、韓国の文在寅は、800万ドルを北朝鮮に献上することを、安倍首相の演説当日に決めている。(*4)
韓国のやっている事が、どういう事かの説明は不要であろうが、一言だけ言えば、自殺行為だと言う事だ。
最後の⑦段落では、北朝鮮に選択を迫っている。
どの様な選択かというと、1つは、現状のまま、核と弾道ミサイルを弄して、チンピラ的な脅迫を続けるのか、それとも、核・弾道ミサイルを放棄して、路線の根本変更をするのかの選択である。
そして、⑦段落の後半には、「核・弾道ミサイルを放棄して、路線の根本変更した場合の可能性」について述べている。それが「北朝鮮の明るい未来」だと、核・弾道ミサイル放棄を促している。
北朝鮮の地理的位置が、「アジア・太平洋の成長圏に隣接」しており「立地条件に恵まれて」いるとして、「労働力」「地下資源」の活用が「経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する」との、核・弾道ミサイル放棄後の「北朝鮮の明るい未来」を示している。
一方、現状を続けた場合の「未来」への言及はない。
当たり前である。国際社会が連携して非軍事的圧力の実効性を上げなければ、どうなるかは、常識的には「全ての選択肢」の中から「非軍事的でない圧力」が行使されるのは理の当然だからである。
そうなったら悲劇である。だから、そういう破滅的選択を北朝鮮はしなさんな、というまとめになっているのである。
そして、演説の最後に「北朝鮮の政策を、変えさせる。そのために私たちは、結束を固めなければなりません。」と、国連総会に出席している各国に「国際社会の連権」を訴えているのである。
「国際社会の連権」が機能しなかった場合の行先は、「北朝鮮が路線変更しない」だから、その場合も、悲劇に至るのである。
尚、「連権しない国際社会」に対しての「ペナルティー」はトランプ大統領演説が担当している。アメリカは、基軸通貨との非軍事的な最終兵器(*5)を持つ国であるのだから、その効果は絶大である。
当方の読解は以上である。
以前、所謂「左巻き」が盛んに「国際紛争の解決は武力ではなく外交で」言っていたが、安倍首相が今、展開している外交は、その「平和外交」そのものである。
ところが、我が国マスコミやカタカナ表記される「サヨク」は、国連総会の安倍首相演説を「危機を煽っている」と称している。
いったい何処をどの様に読んだら「危機を煽っている」となるのか?
安倍首相の国連演説に対する理解として、どちらが的確なのかの判断は読んだ方がするものだが、安倍外交のものすごい実績が国民に知られていない状態は、まったくもって残念でならない。
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【文末脚注】
(*1):安倍首相・国連演説 全文
首相官邸HP 平成29年9月20日
第72回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0920enzetsu.html
①:議長、御列席の皆様、本日私はまず、SDGsの実施に懸ける、我々の情熱をお話ししようと思っていました。国内の啓発を図る工夫にも、御紹介したいものがありました。
いわゆるWe-Fi、女性起業家を、資金で支える計画が、私個人や、日本政府にとって、なぜ重要か。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のことを、私は、日本ブランドにすると言っています。本年12月、我々は東京で、UHCを主題に、大きな会議を開きます。
語るべきことの、リストは長い。
法の支配に対する、我々の貢献。パリ協定に忠実たろうとする、我々の決意。世界のインフラ需要に対し、質の高い投資をもって臨む、我々の政策。
また、日本が、どこまでも守りたいものとは、フリーで、リベラルで、オープンな国際秩序、多国間の枠組みであります。
正にそれらを守る旗手・国連に寄せる世界の期待は、いよいよ高い。ならばこそ、安保理を、時代の要請に応じ、いち早く、変革すべきなのです。変革のため、日本は、友人たちと努めます。安保理常任理事国として、世界平和に積極的役割を果たすのが、日本の変わらぬ決意だと、私は、主張するつもりでありました。
けれども私は、私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ません。
②:9月3日、北朝鮮は核実験を強行した。それが、水爆の爆発だったかはともかく、規模は、前例をはるかに上回った。
前後し、8月29日、次いで北朝鮮を制裁するため安保理が通した決議2375のインクも乾かぬうち9月15日に、北朝鮮はミサイルを発射した。いずれも日本上空を通過させ、航続距離を見せつけるものだった。
脅威はかつてなく重大です。眼前に、差し迫ったものです。
我々が営々続けてきた軍縮の努力を、北朝鮮は、一笑に付そうとしている。不拡散体制は、その史上、最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている。
議長、同僚の皆様、この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。
北朝鮮の核兵器は、水爆になったか、なろうとしている。その運搬手段は、早晩、ICBM(大陸間弾道ミサイル)になるだろう。
冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。
それは我々の、目の前の現実です。
かつ、これをもたらしたのは、対話の不足では、断じてありません。
③:対話が北朝鮮に、核を断念させた、対話は危機から世界を救ったと、我々の多くが安堵(あんど)したことがあります。一度ならず、二度までも。
最初は、1990年代の前半です。
当時、北朝鮮がなした恫喝(どうかつ)は、IAEA(国際原子力機関)など、査察体制からの脱却を、ちらつかせるものにすぎませんでした。
しかし、その意図の、那辺を察した我々には、緊張が走った。
幾つか曲折を経て、1994年10月、米朝に、いわゆる枠組み合意が成立します。
核計画を、北朝鮮に断念させる。その代わり我々は、北朝鮮に、インセンティブを与えることにした。
日米韓は、そのため、翌年の3月、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)をこしらえる。これを実施主体として、北朝鮮に、軽水炉を2基、つくって渡し、また、エネルギー需要のつなぎとして、年間50万トンの重油を与える約束をしたのです。
これは順次、実行されました。ところが、時を経るうち、北朝鮮はウラン濃縮を次々と続けていたことが分かります。
核を棄(す)てる意思など、元々北朝鮮にはなかった。それが、誰の目にも明らかになりました。発足7年後の2002年以降、KEDOは活動を停止します。
北朝鮮はその間、米国、韓国、日本から、支援を詐取したと言っていいでしょう。
インセンティブを与え、北朝鮮の行動を変えるという、KEDOの枠組みに価値を認めた国は、徐々に、KEDOへ加わりました。
欧州連合、ニュージーランド、豪州、カナダ、インドネシア、チリ、アルゼンチン、ポーランド、チェコそしてウズベキスタン。
北朝鮮は、それらメンバー全ての、善意を裏切ったのです。
創設国の一員として、日本はKEDOに無利息資金の貸与を約束し、その約40パーセントを実施しました。約束額は10億ドル。実行したのは、約4億ドルです。
④:KEDOが活動を止め、北朝鮮が、核関連施設の凍結をやめると言い、IAEA査察官を追放するに及んだ、2002年、2度目の危機が生じた。
懸案はまたしても、北朝鮮がウラン濃縮を続けていたこと。そして我々は、再び、対話による事態打開の途(みち)を選びます。
KEDO創設メンバーだった日米韓3国に、北朝鮮と、中国、ロシアを加えた、六者会合が始まります。2003年、8月でした。
その後、2年、曲折の後、2005年の夏から秋にかけ、六者は一度合意に達し、声明を出すに至ります。
北朝鮮は、全ての核兵器、既存の核計画を放棄することと、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)と、IAEAの保障措置に復帰することを約束した。
その更に2年後、2007年の2月、共同声明の実施に向け、六者がそれぞれ何をすべきかに関し、合意がまとまります。
北朝鮮に入ったIAEAの査察団は、寧辺(ヨンビョン)にあった、核関連施設の閉鎖を確認、その見返りとして、北朝鮮は、重油を受け取るに至るのです。
一連の過程は、今度こそ、粘り強く対話を続けたことが、北朝鮮に行動を改めさせた、そう思わせました。
実際は、どうだったか。
六者会合の傍ら、北朝鮮は2005年2月、我々は、既に核保有国だと、一方的に宣言した。
さらに2006年の10月、第1回の核実験を、公然、実施した。
2度目の核実験は、2009年。結局北朝鮮は、この年、再び絶対に参加しないと述べた上、六者会合からの脱退を表明します。
しかもこの頃には、弾道ミサイルの発射を、繰り返し行うようになっていた。
⑤:議長、同僚の皆様、国際社会は北朝鮮に対し、1994年からの十有余年、最初は枠組み合意、次には六者会合によりながら、辛抱強く、対話の努力を続けたのであります。
しかし我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで、持ち合わせていなかったということであります。
対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。
何よりそれを、次の事実が証明します。
すなわち1994年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も、成熟に程遠かった。それが今、水爆と、ICBMを手に入れようとしているのです。
対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。
何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。
北朝鮮に、全ての核、弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。
そのため必要なのは、対話ではない。圧力なのです。
⑥:議長、同僚の皆様、横田めぐみという、13歳の少女が、北朝鮮に拉致されて、本年11月15日、ついに40年を迎えます。
めぐみさん始め、多くの日本人が、いまだに北朝鮮に、拉致されたままです。
彼らが、一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう、全力を尽くしてまいります。
北朝鮮の核、ミサイルの脅威に対し、日本は日米同盟によって、また、日米韓3国の結束によって、立ち向かいます。
全ての選択肢はテーブルの上にあるとする米国の立場を、一貫して支持します。
その上で私は、北朝鮮に対し厳しい制裁を課す安保理決議第2375号が、9月11日、安保理の全会一致で採択されたのを、多とするものです。
それは、北朝鮮に対する圧力を一層強めることによって、北朝鮮に対し、路線の根本変更を迫る我々の意思を、明確にしたものでした。
しかし、あえて訴えます。
北朝鮮は既に、ミサイルを発射して、決議を無視してみせました。
決議は飽くまで、始まりにすぎません。
核、ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む。
北朝鮮に、累次の決議を、完全に、履行させる。
全ての加盟国による、一連の安保理決議の、厳格かつ全面的な履行を確保する。
必要なのは、行動です。北朝鮮による挑発を止めることができるかどうかは、国際社会の連帯にかかっている。
残された時間は、多くありません。
⑦:議長、御列席の皆様、北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれています。勤勉な労働力があり、地下には資源がある。
それらを活用するなら、北朝鮮には経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する途があり得る。
そこにこそ、北朝鮮の明るい未来はあるのです。
拉致、核、ミサイル問題の解決なしに、人類全体の脅威となることで、拓ける未来など、あろうはずがありません。
北朝鮮の政策を、変えさせる。そのために私たちは、結束を固めなければなりません。ありがとうございました。
<引用終わり>
(*2):対話による核・弾道ミサイル放棄の道筋を模索してきたが、それら一切が無駄な努力であったとの事実
2017/03/17投稿:
北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-649.html
2017/03/18投稿:
続・北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-650.html
(*3):アメリカ・トランプ大統領の国連演説
CNN 「Updated 1711 GMT (0111 HKT) September 19, 2017」
見出し:◆READ: President Trump's speech to the UN General Assembly
(トランプ大統領の国連総会での演説)
http://edition.cnn.com/2017/09/19/politics/president-trump-united-nations-speech/index.html
「We know it kidnapped a sweet 13-year-old Japanese girl」
(*4):韓国の800万ドル・対北朝鮮支出のトンデモ
2017/09/22投稿:
韓国 北朝鮮に9億円相当の「人道支援」2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-760.html
(*5):アメリカの「基軸通貨」との非軍事的な最終兵器
2017/08/23投稿:
国際決済の話・最近の通貨のお話2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-737.html
※我が国がテロ等準備罪を立法化したことにより、パレルモ条約批准締結が出来た。
これでやっと、「非軍事的な最終兵器」の行使が実効性を伴う環境になった。
2017/09/30:最後の数行が説明不足だったので加筆した。
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副題:官邸HPに演説の全文が登録されたので、あらためて読んでみた。その読解結果を書いてみた。
安倍首相の国連総会での演説については、その当日に論考したが、その時点では全文資料がまだ揃っておらず、新聞記事ベースでの論考であった。今般、首相官邸HPに国連演説の全文及び動画が登録されたので、あらためて読んでみた。
文書を読むよりも動画の方が頭に入る方は、動画の方をご覧いただければ良い。官邸HPに登録されているのは、全部で17分弱程度の動画である。
この演説は、国連総会での演説であることから、安倍首相は我が国の国語である日本語で演説している。以前、アメリカ議会で演説した時は「アメリカ人に聞かせる」のが目的だったので英語での演説であったが、国連総会では慣例に従い日本語で演説している。
これは、国連総会に出席している他の国々の代表は、同時通訳により聞くことを意味しており「同時通訳されることを前提にした日本語」での演説であるということだ。
多分、所謂「反安倍」の方々は、演説に対して否定的なことを言うのであろう。以前の例では、「日本語としてオカシイ」とかを言う方もいたが、それは「同時通訳されることを前提にした日本語」であることに気が付いていないのであろう。
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安倍首相の国連総会での演説は、「文末脚注(*1)」に全文引用した通り、大きくは7つの段落に分けられている。
最初の①段落は、所謂「導入部」であるが、演説は、各国の持ち時間が限られていることもあり、最初から「北朝鮮に関して集中せざるを得ません」と北朝鮮問題が最重要課題であると述べている。
演説の冒頭で安倍首相は、他の幾つかの具体的問題を掲げ「語るべきことの、リストは長い」との表現で課題は沢山ある事を述べながらも「北朝鮮に関して集中せざるを得ません」としている。
北朝鮮問題が最重要課題である理由として述べていることは次の一文に集約されている。
「日本が、どこまでも守りたいものとは、フリーで、リベラルで、オープンな国際秩序、多国間の枠組みであります。」
この部分も「同時通訳されることを前提にした日本語」である。
「フリー」「リベラル」「オープン」との外来語を用いているのも、これらの文意を特定する日本語で「自由で」「自由主義に基づく」「閉鎖性を排除した」と表現したならば、かなり通訳し難い日本語になることからであろう。
また、キーワード的なぶつ切り表現も同様に「他の言語に通訳される前提」での表現だ。
・「法の支配に対する、我々の貢献。」
・「パリ協定に忠実たろうとする、我々の決意。」
・「世界のインフラ需要に対し、質の高い投資をもって臨む、我々の政策。」
これらは伊勢志摩G7サミット等のG7首脳宣言で言及されている項目であることは、分かっている方には分かるもので、これら項目が大事なものであることを明示するのと同時に、日本は、多国間協議での合意した事項はちゃんと守っていることをアピールするものである。
後段に出てくる、KEDOや6者協議との「国際合意を平気で裏切る北朝鮮」との対比になっているのである。
安倍首相の国連演説は、冒頭の導入部で既にアクセル全開である。
「多国間の枠組み」が大事だ、そして「国連に寄せる世界の期待は高い」、それ故に「国連は時代の要請に応じ変革すべきだ」、だから「日本は安保理常任理事国に立候補している」と、しっかりとアピールしている。
この①の導入部以降は、前述した様に、総て北朝鮮問題へと費やされる。
導入部では、短めにポイントだけを述べたものであったが、次の②以降は、北朝鮮問題の本質を世界各国の代表に認知させる事を目的にしているのであろうか、かなり詳細に過去経緯を述べている。
北朝鮮問題に関して語り始めた②段落は、大きくは2つの部分で構成されている。
その内の1つは「最近の出来事」の明示である。
9月3日の核実験を明示し、弾道ミサイルを8月29日に発射したことと、それに伴い国連・安保理での決議が出されたこと、ところが、その決議を嘲笑うが如く9月15日に、再度の弾道ミサイル発射があったことを述べている。
2つ目は「それが意味するもの」である。
世界から見れば、日本列島と朝鮮半島がある極東は「極」であり、地理的に「遠い世界」であり、その感性に於いて「対岸の火事」でしかない。
勿論、我々日本人にとっては具体的脅威であり、頭の上を弾道ミサイルが飛んで来る状態であるのだが、世界各国にとっては切羽詰まるものはない。
逆に言えば、我々日本人にとって、コソボやルワンダのツチ族・フツ族問題は、地理的に遠いバルカン半島やアフリカの出来事であり切羽詰まるものがなかったのと同じだ。
安倍首相は、北朝鮮問題とは、そういう地理的な問題ではなく、構造的問題であり、それは歴史を巻き戻す愚行であることを示している。我が国首相は、それらを示す以下を述べている。
・「我々が営々続けてきた軍縮の努力を、北朝鮮は、一笑に付そうとしている。」
・「不拡散体制は、その史上、最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている。」
・「この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。」
・「北朝鮮の核兵器(中略)の運搬手段は、早晩、ICBM(大陸間弾道ミサイル)になるだろう。」
・「冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。」
二番目に出てくる「不拡散体制」とは、1963年に国連で採択された「核拡散防止条約」のことである。北朝鮮の核開発の意図が露わになったのは、1993年の核拡散防止条約脱退表明からである。
ここから、当時の北朝鮮首席・金日成とアメリカ・クリントン大統領特使のカーター元大統領の会談がセットされ、KEDO、そして6者協議との「対話による核放棄」の試みが始まっている。詳しくは以前の論考「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」(*2)を御一読いただきたい。
知っての通り、国連採択による「不拡散体制」に反しての核疑惑=大量破壊兵器開発疑惑は北朝鮮が初めてではない。現在進行中の問題としてはイランがあるが、武力衝突に至った例として第二次湾岸戦争がある。一般的にはイラク戦争として知られ、サダム・フセンの処刑に至る、あの戦争である。
第二次湾岸戦争(イラク戦争)の開戦理由は大量破壊兵器保持問題である。
大量破壊兵器は、結局は見つからず、その事を以て「アメリカの石油利権目的の侵略だ」との陰謀説が流布されたり、フセイン処刑後のイラクの治安がずっと安定せず、クルド人問題などは、住民投票の実施が今朝のニュースになるなど、後味の悪いものとなっているが、我が国マスコミの「報道」の論調では脇に置かれている核問題が、あのイラクでの戦争の原因である。
既に、多くの人の記憶からは薄れてしまっているであろう、ブッシュJr.の「悪の枢軸」発言の対象は、イラク、イラン、北朝鮮である。
これらのうち、イラクは武力による解決となり、イランと北朝鮮は「対話」による解決を模索するものとなった。イランとの対話も進展していないものの、イランは北朝鮮の様な核実験をしていない。
国際政治の立場では、北朝鮮は、イラク、イランと同列なのだが、今現在、核爆発を幾度も実施し、弾道ミサイルを乱射する国として存在しているのが北朝鮮である。
そういう事実を以て、「この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。」と述べているのである。何故、次元が異なるのかと言えば、イラクは、第一次湾岸戦争の際に、盛んにイスラエルに弾道ミサイルのスカッドを撃ち込んだが、今、北朝鮮が乱射している弾道ミサイルは、スカッドと違い、射程距離が飛躍的に長いICBM(大陸間弾道ミサイル)へと性能向上する見込みだ、と説明されTいる。
スカッド改良のノドン・テポドンであっさりと射程距離内に入ってしまう日本列島の危機は、結局は、世界から見れば極東での「対岸の火事」だったのだが、ICBMの場合、その射程距離から、欧州も北米大陸の諸国も「自分自身の危機」にならざるを得ない状況だということの説明である。
そういう事態に対して「冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。」と今までの北朝鮮核問題に対する国際社会の動きのままでは宜しくない旨をアピールしている。
この様なアピールは「オマエもやるんだぞ」という意味合いがあり、責任を負いたくない国や関係ないと思っている国からすれば刺激的である。こういう問い掛けに対して、日本人の反応は仕方ないとして協力するか、黙って後ろに下がるかであろう。
一方、日本文化ではない文化圏では、「参加する立場」になりたくない場合は、なんらかの反論をして逃げることを正当化する動きとなる。
どんな反論かと言うと「対話をして解決しろ」とかのパターン反論が出ることは容易に予想できる。
現状の様な危機的状況が現出したのは、そんなパターン反論は無意味であるとして、「これをもたらしたのは、対話の不足では、断じてありません。」と②段落を結んでいる。
これに続く、③段落と④段落部分は、事実の開示に費やされている。
この③段落、④段落では、国連総会演説にしては、かなり細かく、③段落でKEDの経緯を、④段落で6者協議の経緯を紹介し、この2度の「対話の場」は、何れも北朝鮮による裏切り・詐欺行為で破綻していることを述べている。
これら事実経緯他に関しては、前述した様に、以前の論考「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」で説明しているので、ここでは繰り返さない。
同論考または安倍首相の国連演説の③段落、④段落部分をお読みいただければ良い。
安倍首相が演説で明示している様に、北朝鮮との核問題の「対話」は、何れもが北朝鮮による裏切り・詐欺行為で破綻している。以下に、そういう事実経緯に関して、安倍首相演説から幾つかポイントとなる部分を紹介する。
<③段落:KEDOの経緯部分から抜粋>
・「核を棄てる意思など、元々北朝鮮にはなかった。それが、誰の目にも明らかになりました。発足7年後の2002年以降、KEDOは活動を停止します。」
・「北朝鮮はその間、米国、韓国、日本から、支援を詐取したと言っていいでしょう。」
・インセンティブを与え、北朝鮮の行動を変えるという、KEDOの枠組みに価値を認めた国は、徐々に、KEDOへ加わりました。(中略)北朝鮮は、それらメンバー全ての、善意を裏切ったのです。」
<④段落:6者協議の経緯部分から抜粋>
・「KEDO創設メンバーだった日米韓3国に、北朝鮮と、中国、ロシアを加えた、六者会合が始まります。2003年、8月でした。」
・「北朝鮮は、全ての核兵器、既存の核計画を放棄することと、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)と、IAEAの保障措置に復帰することを約束した。(中略)その見返りとして、北朝鮮は、重油を受け取るに至るのです。」
・「六者会合の傍ら、北朝鮮は2005年2月、我々は、既に核保有国だと、一方的に宣言した。」
・「2006年の10月、第1回の核実験を、公然、実施した。2度目の核実験は、2009年。結局北朝鮮は、この年、再び絶対に参加しないと述べた上、六者会合からの脱退を表明します。」
この様に、国連総会演説にしては、かなり細かく、これら③段落及び④段落で、北朝鮮が「対話」を逆手に取り、2度も裏切り、核開発・弾道ミサイル開発を進めてきた経緯を述べている。そして、これに続き、⑤段落で、北朝鮮との「対話」=「対話のみ」は、まったくの無駄であり、何等の効果もない、いや、むしろ北朝鮮の核開発・弾道ミサイル開発の為の「時間」をプレゼントして助けることにしかなっていない事を明示している。
以下に、安倍首相演説の⑤段落から幾つかポイントとなる部分を紹介する。
・「我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで、持ち合わせていなかったということであります。」
・「対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。」
・「1994年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も、成熟に程遠かった。それが今、水爆と、ICBMを手に入れようとしているのです。」
・「対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。」
・「何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。」
・「必要なのは、対話ではない。圧力なのです。」
まったくに、この通り。まさに「北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今」なのである。
安倍首相のこの主張に激しく同意する。
北朝鮮との「対話」=「対話のみ」を主張する方がいるのならば、過去2度の失敗を繰り返さない実効性ある策を提示した上で言っていただきたい。
単なる「対話」だけならば、それは北朝鮮の代弁者であると認定せざるを得ないのである。
この様に、国際社会の当事者ではない国々が忘れてしまっているであろう事実経緯を紹介し、そういう事実がありながら、未だに「対話」とのパターン発言をすることが無意味であることを明示しているのである。
この次の⑥段落からは、「国際社会の協力が不可欠なので、協力をお願いします」との呼び掛けへと移っていく。
⑥段落の冒頭に横田めぐみさんの話が登場する。
これは、その前日のトランプ大統領の国連演説(*3)での「We know it kidnapped a sweet 13-year-old Japanese girl(我々は知っている。13歳のいたいけな日本の少女が拉致・誘拐されたことを)」との山彦であることは勿論なのであるが、「拉致被害者に言及」しただけではない。「めぐみさん始め、多くの日本人が、いまだに北朝鮮に、拉致されたままです。」とあるのは、国家として国民を守るとの基本姿勢を示すものだ。
北朝鮮の核・弾道ミサイルで我国国民が自国にいながら危機リスクに晒されている現状を、対イラクの様に武力で解決するとしたら、それは「いまだに北朝鮮に、拉致されたまま」の「めぐみさん始め、多くの日本人」を守れないことを意味する。
そういう事を考えないで「北朝鮮など爆撃で粉砕してしまえ」とかの勇ましい事を言う方もネットでは散見されるが、そんな浅はかなレベルで我国首相は考えていないことが分かる。頼もしいと感じるし、そういう基本姿勢を堅持する姿は、安易に「カルネアデスの板」に逃げ込んでいないし、逆に「人の生命は地球より重い」として超法規的措置に逃げ込む弱さもない。凄いことだと思う。
この様に感じるのは、6段落の冒頭で拉致日本人に言及して、その直後に北朝鮮の核問題に対峙している日米同盟のうち、アメリカが当初より言っている「全ての選択肢はテーブルの上にある」を支持している旨が述べられているからである。
「全ての選択肢」とは、「対話と圧力」との交渉基本姿勢のうちの「圧力」の種類が、けして経済的制裁だけに限定しておらず、軍事行動もあり得るとするものであるからだ。
これは、ある意味当たり前の話である。「対話と圧力」のうちの「圧力」が非軍事的なものに限定しているとすれば、それは圧力になり得ないからである。
この、一瞬矛盾する姿勢は、⑥段落の後半及び最後の⑦段落を読めば、何等矛盾せず、もっとも平和的なものであることがわかる。
⑥段落後半で言っていることは、国連決議での「核、ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む」を実際に実行することであり、それを以て、「北朝鮮に対し、路線の根本変更を迫る」という筋道である。
ここで言及されている圧力には武力行使が入っていない。
その上で、こういう圧力が実効性を持つ為には、国際社会の連帯が必要だと述べている。
即ち、北朝鮮が核・弾道ミサイルを放棄する決心をする迄の非軍事的圧力を実現させるには「国際社会の連帯」が必須だ、国際社会の連帯がなければ、非軍事的圧力の実効性が確保できない旨を述べているのである。
これを逆に言えば、「国際社会の連帯」が整わず、抜け道が存在し続けたら、圧力の種類が、非軍事的圧力には留まっていられないのだ、という事である。
こういう内容なのだが、韓国の文在寅は、800万ドルを北朝鮮に献上することを、安倍首相の演説当日に決めている。(*4)
韓国のやっている事が、どういう事かの説明は不要であろうが、一言だけ言えば、自殺行為だと言う事だ。
最後の⑦段落では、北朝鮮に選択を迫っている。
どの様な選択かというと、1つは、現状のまま、核と弾道ミサイルを弄して、チンピラ的な脅迫を続けるのか、それとも、核・弾道ミサイルを放棄して、路線の根本変更をするのかの選択である。
そして、⑦段落の後半には、「核・弾道ミサイルを放棄して、路線の根本変更した場合の可能性」について述べている。それが「北朝鮮の明るい未来」だと、核・弾道ミサイル放棄を促している。
北朝鮮の地理的位置が、「アジア・太平洋の成長圏に隣接」しており「立地条件に恵まれて」いるとして、「労働力」「地下資源」の活用が「経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する」との、核・弾道ミサイル放棄後の「北朝鮮の明るい未来」を示している。
一方、現状を続けた場合の「未来」への言及はない。
当たり前である。国際社会が連携して非軍事的圧力の実効性を上げなければ、どうなるかは、常識的には「全ての選択肢」の中から「非軍事的でない圧力」が行使されるのは理の当然だからである。
そうなったら悲劇である。だから、そういう破滅的選択を北朝鮮はしなさんな、というまとめになっているのである。
そして、演説の最後に「北朝鮮の政策を、変えさせる。そのために私たちは、結束を固めなければなりません。」と、国連総会に出席している各国に「国際社会の連権」を訴えているのである。
「国際社会の連権」が機能しなかった場合の行先は、「北朝鮮が路線変更しない」だから、その場合も、悲劇に至るのである。
尚、「連権しない国際社会」に対しての「ペナルティー」はトランプ大統領演説が担当している。アメリカは、基軸通貨との非軍事的な最終兵器(*5)を持つ国であるのだから、その効果は絶大である。
当方の読解は以上である。
以前、所謂「左巻き」が盛んに「国際紛争の解決は武力ではなく外交で」言っていたが、安倍首相が今、展開している外交は、その「平和外交」そのものである。
ところが、我が国マスコミやカタカナ表記される「サヨク」は、国連総会の安倍首相演説を「危機を煽っている」と称している。
いったい何処をどの様に読んだら「危機を煽っている」となるのか?
安倍首相の国連演説に対する理解として、どちらが的確なのかの判断は読んだ方がするものだが、安倍外交のものすごい実績が国民に知られていない状態は、まったくもって残念でならない。
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【文末脚注】
(*1):安倍首相・国連演説 全文
首相官邸HP 平成29年9月20日
第72回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0920enzetsu.html
①:議長、御列席の皆様、本日私はまず、SDGsの実施に懸ける、我々の情熱をお話ししようと思っていました。国内の啓発を図る工夫にも、御紹介したいものがありました。
いわゆるWe-Fi、女性起業家を、資金で支える計画が、私個人や、日本政府にとって、なぜ重要か。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のことを、私は、日本ブランドにすると言っています。本年12月、我々は東京で、UHCを主題に、大きな会議を開きます。
語るべきことの、リストは長い。
法の支配に対する、我々の貢献。パリ協定に忠実たろうとする、我々の決意。世界のインフラ需要に対し、質の高い投資をもって臨む、我々の政策。
また、日本が、どこまでも守りたいものとは、フリーで、リベラルで、オープンな国際秩序、多国間の枠組みであります。
正にそれらを守る旗手・国連に寄せる世界の期待は、いよいよ高い。ならばこそ、安保理を、時代の要請に応じ、いち早く、変革すべきなのです。変革のため、日本は、友人たちと努めます。安保理常任理事国として、世界平和に積極的役割を果たすのが、日本の変わらぬ決意だと、私は、主張するつもりでありました。
けれども私は、私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ません。
②:9月3日、北朝鮮は核実験を強行した。それが、水爆の爆発だったかはともかく、規模は、前例をはるかに上回った。
前後し、8月29日、次いで北朝鮮を制裁するため安保理が通した決議2375のインクも乾かぬうち9月15日に、北朝鮮はミサイルを発射した。いずれも日本上空を通過させ、航続距離を見せつけるものだった。
脅威はかつてなく重大です。眼前に、差し迫ったものです。
我々が営々続けてきた軍縮の努力を、北朝鮮は、一笑に付そうとしている。不拡散体制は、その史上、最も確信的な破壊者によって、深刻な打撃を受けようとしている。
議長、同僚の皆様、この度の危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとする度、我々がくぐってきたものと、質において次元の異なるものです。
北朝鮮の核兵器は、水爆になったか、なろうとしている。その運搬手段は、早晩、ICBM(大陸間弾道ミサイル)になるだろう。
冷戦が終わって二十有余年、我々は、この間、どこの独裁者に、ここまで放恣(ほうし)にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、我々は、結果として、許してしまった。
それは我々の、目の前の現実です。
かつ、これをもたらしたのは、対話の不足では、断じてありません。
③:対話が北朝鮮に、核を断念させた、対話は危機から世界を救ったと、我々の多くが安堵(あんど)したことがあります。一度ならず、二度までも。
最初は、1990年代の前半です。
当時、北朝鮮がなした恫喝(どうかつ)は、IAEA(国際原子力機関)など、査察体制からの脱却を、ちらつかせるものにすぎませんでした。
しかし、その意図の、那辺を察した我々には、緊張が走った。
幾つか曲折を経て、1994年10月、米朝に、いわゆる枠組み合意が成立します。
核計画を、北朝鮮に断念させる。その代わり我々は、北朝鮮に、インセンティブを与えることにした。
日米韓は、そのため、翌年の3月、KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)をこしらえる。これを実施主体として、北朝鮮に、軽水炉を2基、つくって渡し、また、エネルギー需要のつなぎとして、年間50万トンの重油を与える約束をしたのです。
これは順次、実行されました。ところが、時を経るうち、北朝鮮はウラン濃縮を次々と続けていたことが分かります。
核を棄(す)てる意思など、元々北朝鮮にはなかった。それが、誰の目にも明らかになりました。発足7年後の2002年以降、KEDOは活動を停止します。
北朝鮮はその間、米国、韓国、日本から、支援を詐取したと言っていいでしょう。
インセンティブを与え、北朝鮮の行動を変えるという、KEDOの枠組みに価値を認めた国は、徐々に、KEDOへ加わりました。
欧州連合、ニュージーランド、豪州、カナダ、インドネシア、チリ、アルゼンチン、ポーランド、チェコそしてウズベキスタン。
北朝鮮は、それらメンバー全ての、善意を裏切ったのです。
創設国の一員として、日本はKEDOに無利息資金の貸与を約束し、その約40パーセントを実施しました。約束額は10億ドル。実行したのは、約4億ドルです。
④:KEDOが活動を止め、北朝鮮が、核関連施設の凍結をやめると言い、IAEA査察官を追放するに及んだ、2002年、2度目の危機が生じた。
懸案はまたしても、北朝鮮がウラン濃縮を続けていたこと。そして我々は、再び、対話による事態打開の途(みち)を選びます。
KEDO創設メンバーだった日米韓3国に、北朝鮮と、中国、ロシアを加えた、六者会合が始まります。2003年、8月でした。
その後、2年、曲折の後、2005年の夏から秋にかけ、六者は一度合意に達し、声明を出すに至ります。
北朝鮮は、全ての核兵器、既存の核計画を放棄することと、NPT(核兵器の不拡散に関する条約)と、IAEAの保障措置に復帰することを約束した。
その更に2年後、2007年の2月、共同声明の実施に向け、六者がそれぞれ何をすべきかに関し、合意がまとまります。
北朝鮮に入ったIAEAの査察団は、寧辺(ヨンビョン)にあった、核関連施設の閉鎖を確認、その見返りとして、北朝鮮は、重油を受け取るに至るのです。
一連の過程は、今度こそ、粘り強く対話を続けたことが、北朝鮮に行動を改めさせた、そう思わせました。
実際は、どうだったか。
六者会合の傍ら、北朝鮮は2005年2月、我々は、既に核保有国だと、一方的に宣言した。
さらに2006年の10月、第1回の核実験を、公然、実施した。
2度目の核実験は、2009年。結局北朝鮮は、この年、再び絶対に参加しないと述べた上、六者会合からの脱退を表明します。
しかもこの頃には、弾道ミサイルの発射を、繰り返し行うようになっていた。
⑤:議長、同僚の皆様、国際社会は北朝鮮に対し、1994年からの十有余年、最初は枠組み合意、次には六者会合によりながら、辛抱強く、対話の努力を続けたのであります。
しかし我々が思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は、核、ミサイルの開発を、諦めるつもりなど、まるで、持ち合わせていなかったということであります。
対話とは、北朝鮮にとって、我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。
何よりそれを、次の事実が証明します。
すなわち1994年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も、成熟に程遠かった。それが今、水爆と、ICBMを手に入れようとしているのです。
対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。
何の成算あって、我々は三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。
北朝鮮に、全ての核、弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。
そのため必要なのは、対話ではない。圧力なのです。
⑥:議長、同僚の皆様、横田めぐみという、13歳の少女が、北朝鮮に拉致されて、本年11月15日、ついに40年を迎えます。
めぐみさん始め、多くの日本人が、いまだに北朝鮮に、拉致されたままです。
彼らが、一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう、全力を尽くしてまいります。
北朝鮮の核、ミサイルの脅威に対し、日本は日米同盟によって、また、日米韓3国の結束によって、立ち向かいます。
全ての選択肢はテーブルの上にあるとする米国の立場を、一貫して支持します。
その上で私は、北朝鮮に対し厳しい制裁を課す安保理決議第2375号が、9月11日、安保理の全会一致で採択されたのを、多とするものです。
それは、北朝鮮に対する圧力を一層強めることによって、北朝鮮に対し、路線の根本変更を迫る我々の意思を、明確にしたものでした。
しかし、あえて訴えます。
北朝鮮は既に、ミサイルを発射して、決議を無視してみせました。
決議は飽くまで、始まりにすぎません。
核、ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む。
北朝鮮に、累次の決議を、完全に、履行させる。
全ての加盟国による、一連の安保理決議の、厳格かつ全面的な履行を確保する。
必要なのは、行動です。北朝鮮による挑発を止めることができるかどうかは、国際社会の連帯にかかっている。
残された時間は、多くありません。
⑦:議長、御列席の皆様、北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれています。勤勉な労働力があり、地下には資源がある。
それらを活用するなら、北朝鮮には経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する途があり得る。
そこにこそ、北朝鮮の明るい未来はあるのです。
拉致、核、ミサイル問題の解決なしに、人類全体の脅威となることで、拓ける未来など、あろうはずがありません。
北朝鮮の政策を、変えさせる。そのために私たちは、結束を固めなければなりません。ありがとうございました。
<引用終わり>
(*2):対話による核・弾道ミサイル放棄の道筋を模索してきたが、それら一切が無駄な努力であったとの事実
2017/03/17投稿:
北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-649.html
2017/03/18投稿:
続・北朝鮮との「対話」がもたらした結果が今2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-650.html
(*3):アメリカ・トランプ大統領の国連演説
CNN 「Updated 1711 GMT (0111 HKT) September 19, 2017」
見出し:◆READ: President Trump's speech to the UN General Assembly
(トランプ大統領の国連総会での演説)
http://edition.cnn.com/2017/09/19/politics/president-trump-united-nations-speech/index.html
「We know it kidnapped a sweet 13-year-old Japanese girl」
(*4):韓国の800万ドル・対北朝鮮支出のトンデモ
2017/09/22投稿:
韓国 北朝鮮に9億円相当の「人道支援」2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-760.html
(*5):アメリカの「基軸通貨」との非軍事的な最終兵器
2017/08/23投稿:
国際決済の話・最近の通貨のお話2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-737.html
※我が国がテロ等準備罪を立法化したことにより、パレルモ条約批准締結が出来た。
これでやっと、「非軍事的な最終兵器」の行使が実効性を伴う環境になった。
2017/09/30:最後の数行が説明不足だったので加筆した。



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