東京新聞社説は定型句作文2017/08/25
- 2017/08/29
- 20:29
東京新聞社説は定型句作文2017/08/25

副題:化けの皮が剥がれた従来からの論法を繰り返す東京新聞社説。肝心要の「日本人の命と平和・安寧をどうやって確保・維持するのかの具体策」は、やっぱり何も語っていない。
今回の題材は、東京新聞の2017年8月25日社説(*1)である。
題記した様に、従来からの、騙し絵を見せる定型句を並べただけの陳腐なものの典型例だったので、復習の意味で、題材として取り上げた。
東京新聞の8月25日社説の出だしからして、既に3つの騙し絵が仕込まれている。
1つ目としては、軸足の置き方がそもそも違っている点である。軸足は「日本人の命と平和・安寧」である。「憲法9条」が「日本人の命と平和・安寧」よりも重要だとする論法は陳腐なものであり、かつ、日本人を蔑ろにする暴論だ。
2つ目は、「専守防衛」との美辞麗句である。
「専守防衛」の本来的意味は、「防衛目的以外のドンパチ行為(武力行使)をしませんよ」という意味であるのだが、「それを最初に攻撃を受けてから、初めて反撃できる」という様に、先ず、日本人のうちの何人かが死んでからじゃないと反撃できないとかの歪曲(*2)が行われている。
そして、3つ目が「軍拡競争」との、誤解誘導・印象操作用の語句である。
古今東西、軍事バランスが崩れた地域では戦争が勃発する。我が国がやろうとしている事は、毎年2桁パーセントの軍拡を何十年も継続している中国との軍事バランス維持であり、核開発・弾道ミサイル開発で周辺国他にチンピラ紛いの脅迫を繰り返す北朝鮮への対応である。バランスを崩すことを防ぐ受動的対応を、「軍拡競争」と称することは、軍拡を推進している側の地域安定バランスを崩す動きに対して批判させない偏ったものである。
この3つの騙し絵が仕込まれている東京新聞の社説の冒頭を以下に引用する。
<東京新聞8月25日社説冒頭部分引用>
○日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて防衛力の在り方を見直すとしても、憲法九条の枠内で行うのは当然だ。「専守防衛」を逸脱して、軍拡競争の泥沼に陥ることは厳に避けるべきである。
<引用終わり>
ご覧の通り、「憲法九条の枠内で行うのは当然だ」と断定しているが、そこには「日本人の命と平和・安寧の確保・維持」の視点はない。従来の「憲法九条の枠内」(*3)で「日本人の命と平和・安寧の確保・維持」が出来るのなら構わないが、それでは確保・維持できない可能性があるという視点がマルっと抜け落ちているのである。
同様、「「専守防衛」を逸脱」すると書いてあるが、ここで言う「専守防衛」は上記した歪んだ解釈そのものである。
同じく、「軍拡競争」を仕掛けているのは中朝側であり、その間、我が国は、ずっと「防衛費GDP比1%枠」内に留まっている。(*4)
そういう決め付けを最初に提示して、読む者を、世界常識とは違う異世界へと誘うのである。
戦後我が国だけが、「「自国民の命と平和・安寧」よりも重要な別のモノがある」との物語を繰り返し吹き込まれてきており、東京新聞の8月25日社説も、その異世界の物語そのものである。
冒頭の異世界への導入後、東京新聞の8月25日社説は、防衛大綱に見直しを批判する本論へと入っていく。その本論の結論は最初から決まっているもので、その暴論を、あたかも「正論」であるかの様な錯覚を与える為に望地いられている修飾語の数々が「偽り慣用句」=「騙し絵」である。
東京新聞の8月25日社説の「結論」とは、以下の「「ミサイル防衛の強化」と「敵基地攻撃能力の保有」はダメだ!」、「専守防衛を逸脱しているぅ~」である。
<東京新聞8月25日社説の結論部分引用>
○(前略)小野寺氏の発言には専守防衛を飛び越える内容も含まれる。新大綱が専守防衛を逸脱しないよう注視する必要がある。
○新大綱の焦点はミサイル防衛の強化と敵基地攻撃能力の保有だ。(後略)
<引用終わり>
「ミサイル防衛の強化」と「敵基地攻撃能力の保有」の2つがダメだと言っているのだが、その「理由」というのが、何れもが、事実誤認レベルのダメ言説である。
先ず、「ミサイル防衛」とは、北朝鮮が常軌を逸して撃ちまくる弾道ミサイルに対して、それが我が国の領土・領海に着弾する軌跡を描く時に迎撃する専用の防衛兵器である(*5)。
相手が弾道ミサイルを撃たなければ、ミサイル防衛を強化する必要がないものだ。
我が国がイージズ艦搭載SM-3とパトリオットPAC-3で弾道ミサイル防衛(BMD)体制を構築し始めたのは、1993年の最初の北朝鮮弾道ミサイル発射があったからである。
純粋な防衛自衛兵器であるSM-3やパトリオットPAC-3を持つことが「専守防衛」から逸脱だとするのは、論理的に成り立たないのである。
ミサイル防衛体制の導入敬意、対処目的と性能との事実に基づけば、ミサイル防衛の強化が専守防衛からの逸脱だとの論は事実誤認そのものである。
もう1つの「敵基地攻撃能力の保有」も、実際は、事実誤認レベルなのだが、こちらは、「ミサイル防衛の強化」に比して、理解には若干の知識が必要だ。
その説明の為には、後段部分の解説から始めるのが手早いので、その部分を先に説明する。
<東京新聞8月25日社説の抜粋引用>
○政府は、ほかに攻撃を防ぐ手段がない場合には「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としてきたが、自衛隊がそうした能力を保有することはなかった。北朝鮮の脅威が念頭にあるとはいえ平時から他国攻撃の兵器を持つことは憲法の趣旨に反しないか。
<引用終わり>
「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているが、その部分は、まったくの事実誤認である。
今から60年以上昔の1956年(昭和31年)2月29日の国会答弁での政府見解で、敵基地=策源地攻撃は、憲法の自衛の範囲内とされ、それ以降、これを否定する見解はない。
東京新聞の8月25日社説の書き方は、「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」との事実を書いていながら、後段で「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているのである。
政府見解と反する感想を社説に書いてしまうのである。
「憲法上可能」との語句を避ける姑息な書き方をしているが、事実は、「敵ミサイル基地攻撃は憲法上可能」であり、その事に関しては、詳しくは以前に複数回論評(*6)しているので、そちらをお読みいだだきたい。
また、1956年(昭和31年)2月29日の国会答弁の一部を抜粋するので、お読みいただきたい。そこには、敵ミサイル基地攻撃が「憲法の趣旨」に反してしない旨を当時の鳩山一郎総理が述べている事が記録されている。
<国会答弁抜粋引用>
(前略)座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。(後略)
<引用終わり>
これが史実である。それなのに、東京新聞8月25日社説は、そういう史実を無視して「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているのである。
こんなものは「社説」ではない。個人的感想文でしかない。
さて、題名に「定型句作文」と書いたのは、ウソの定番アイテムが登場しているからである。その部分を引用する。
<東京新聞8月25日社説抜粋引用>
○ミサイル防衛はそもそも能力的に疑問視されている上、仮に迎撃できたとしても、日本の「軍事的行動」が北朝鮮による日本直接攻撃の引き金を引きかねない。
○日本を守るための防衛力整備が日本自身を攻撃にさらすきっかけとなっては本末転倒だ。敵基地攻撃能力の保有も同様である。
<引用終わり>
お得意の「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」(*6)とのウソ論法のバリエーションである。「施錠が厳重だと泥棒のチャレンジ精神に火がつき、かえって狙われ易くなる」とのマンガ的論法である。現実世界はルパン三世の世界ではない。警察が二重ロックを推奨しているのが現実世界である。
飛んでくる北朝鮮のミサイルを、日米共同して防ぐことを批判し、その理由が、下着泥棒を誘発させない様にノーパンで過ごせというバカ話を、東京新聞は社説に書いているのである。言い古された「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」とのウソ論法定型句を入れ込んでいることも、呆れる点である。
最近の東京新聞は、朝日新聞以上に「サヨク偏向」していると言われているが、少なくとも、この「社説」を読み限り、そうなっている様である。
社説なのだから、事実よりも感想を優先する様な書き方は、言説の質に疑問を持たれ、信頼性を大きく損なうものだと考える。
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【文末脚注】
(*1):東京新聞2017年8月25日社説
東京新聞 TOKYO Web 2017年8月25日【社説】
表題:◆防衛大綱見直し 「専守」逸脱を危惧する
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017082502000140.html
本文:○日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて防衛力の在り方を見直すとしても、憲法九条の枠内で行うのは当然だ。「専守防衛」を逸脱して、軍拡競争の泥沼に陥ることは厳に避けるべきである。
○安倍晋三首相が今月三日の内閣改造の際、小野寺五典防衛相に対して防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直すよう指示した。
○二〇一三年十二月に閣議決定された現行の防衛大綱は一四年度から十年程度の防衛政策の基本方針を定めている。見直しは北朝鮮の核・ミサイル開発の進展などの情勢変化を踏まえたものだという。
○弾道ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮は、アジア・太平洋地域の平和と安定に対する脅威となっている。日本への攻撃に備え、防衛力を適切かつ効率的に整備することに異論はない。
○しかし、小野寺氏の発言には専守防衛を飛び越える内容も含まれる。新大綱が専守防衛を逸脱しないよう注視する必要がある。
○新大綱の焦点はミサイル防衛の強化と敵基地攻撃能力の保有だ。
○小野寺氏は日米の外務・防衛担当閣僚による会合(2プラス2)で、ミサイル防衛を強化する考えを表明したが、これに先立ち国会では北朝鮮がグアム周辺に向けてミサイルを発射した場合、政府が迎撃可能とする「存立危機事態」に当たりうるとの考えを示した。
○ミサイル防衛はそもそも能力的に疑問視されている上、仮に迎撃できたとしても、日本の「軍事的行動」が北朝鮮による日本直接攻撃の引き金を引きかねない。
○日本を守るための防衛力整備が日本自身を攻撃にさらすきっかけとなっては本末転倒だ。敵基地攻撃能力の保有も同様である。
○首相自身は「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としているが、小野寺氏は能力保有を求める自民党提言を踏まえて「総合的にどのような対応が必要か検討したい」と述べている。
○政府は、ほかに攻撃を防ぐ手段がない場合には「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としてきたが、自衛隊がそうした能力を保有することはなかった。北朝鮮の脅威が念頭にあるとはいえ平時から他国攻撃の兵器を持つことは憲法の趣旨に反しないか。
○過去四回の大綱見直しはいずれも有識者らによる会議の提言を受ける形で行われた。国民の生命や財産、憲法に関わる問題だ。今回も政府内部の議論にとどまらず、幅広く意見を聞くべきである。
<引用終わり>
(*2)「専守防衛」との美辞麗句の歪曲
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
(*3):「憲法九条の枠内」との欺瞞
2017/05/25投稿:
憲法議論2・憲法9条・議論の出発点
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-677.html
(*4):「防衛費GDP比1%枠」なる周辺国とのバランス無視
2017/07/17投稿:
国民の平和と安寧を阻害している岩盤規制
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-714.html
(*5):「防衛費GDP比1%枠」なる周辺国とのバランス無視
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
(*6):「敵ミサイル基地攻撃は憲法上可能」
2016/02/29投稿:
【コラム】1956年2月29日国会答弁
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-347.html
2017/03/21投稿:
専制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
(*7):「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」とのウソ論法
2017/04/06投稿:
昔ながらの印象操作の一例
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-641.html
【ご参考】
・敵ミサイル基地攻撃能力の保有に関する論考その1
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
・敵ミサイル基地攻撃能力の保有に関する論考その2
2017/07/01投稿:
「敵基地攻撃能力」の提言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-706.html
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副題:化けの皮が剥がれた従来からの論法を繰り返す東京新聞社説。肝心要の「日本人の命と平和・安寧をどうやって確保・維持するのかの具体策」は、やっぱり何も語っていない。
今回の題材は、東京新聞の2017年8月25日社説(*1)である。
題記した様に、従来からの、騙し絵を見せる定型句を並べただけの陳腐なものの典型例だったので、復習の意味で、題材として取り上げた。
東京新聞の8月25日社説の出だしからして、既に3つの騙し絵が仕込まれている。
1つ目としては、軸足の置き方がそもそも違っている点である。軸足は「日本人の命と平和・安寧」である。「憲法9条」が「日本人の命と平和・安寧」よりも重要だとする論法は陳腐なものであり、かつ、日本人を蔑ろにする暴論だ。
2つ目は、「専守防衛」との美辞麗句である。
「専守防衛」の本来的意味は、「防衛目的以外のドンパチ行為(武力行使)をしませんよ」という意味であるのだが、「それを最初に攻撃を受けてから、初めて反撃できる」という様に、先ず、日本人のうちの何人かが死んでからじゃないと反撃できないとかの歪曲(*2)が行われている。
そして、3つ目が「軍拡競争」との、誤解誘導・印象操作用の語句である。
古今東西、軍事バランスが崩れた地域では戦争が勃発する。我が国がやろうとしている事は、毎年2桁パーセントの軍拡を何十年も継続している中国との軍事バランス維持であり、核開発・弾道ミサイル開発で周辺国他にチンピラ紛いの脅迫を繰り返す北朝鮮への対応である。バランスを崩すことを防ぐ受動的対応を、「軍拡競争」と称することは、軍拡を推進している側の地域安定バランスを崩す動きに対して批判させない偏ったものである。
この3つの騙し絵が仕込まれている東京新聞の社説の冒頭を以下に引用する。
<東京新聞8月25日社説冒頭部分引用>
○日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて防衛力の在り方を見直すとしても、憲法九条の枠内で行うのは当然だ。「専守防衛」を逸脱して、軍拡競争の泥沼に陥ることは厳に避けるべきである。
<引用終わり>
ご覧の通り、「憲法九条の枠内で行うのは当然だ」と断定しているが、そこには「日本人の命と平和・安寧の確保・維持」の視点はない。従来の「憲法九条の枠内」(*3)で「日本人の命と平和・安寧の確保・維持」が出来るのなら構わないが、それでは確保・維持できない可能性があるという視点がマルっと抜け落ちているのである。
同様、「「専守防衛」を逸脱」すると書いてあるが、ここで言う「専守防衛」は上記した歪んだ解釈そのものである。
同じく、「軍拡競争」を仕掛けているのは中朝側であり、その間、我が国は、ずっと「防衛費GDP比1%枠」内に留まっている。(*4)
そういう決め付けを最初に提示して、読む者を、世界常識とは違う異世界へと誘うのである。
戦後我が国だけが、「「自国民の命と平和・安寧」よりも重要な別のモノがある」との物語を繰り返し吹き込まれてきており、東京新聞の8月25日社説も、その異世界の物語そのものである。
冒頭の異世界への導入後、東京新聞の8月25日社説は、防衛大綱に見直しを批判する本論へと入っていく。その本論の結論は最初から決まっているもので、その暴論を、あたかも「正論」であるかの様な錯覚を与える為に望地いられている修飾語の数々が「偽り慣用句」=「騙し絵」である。
東京新聞の8月25日社説の「結論」とは、以下の「「ミサイル防衛の強化」と「敵基地攻撃能力の保有」はダメだ!」、「専守防衛を逸脱しているぅ~」である。
<東京新聞8月25日社説の結論部分引用>
○(前略)小野寺氏の発言には専守防衛を飛び越える内容も含まれる。新大綱が専守防衛を逸脱しないよう注視する必要がある。
○新大綱の焦点はミサイル防衛の強化と敵基地攻撃能力の保有だ。(後略)
<引用終わり>
「ミサイル防衛の強化」と「敵基地攻撃能力の保有」の2つがダメだと言っているのだが、その「理由」というのが、何れもが、事実誤認レベルのダメ言説である。
先ず、「ミサイル防衛」とは、北朝鮮が常軌を逸して撃ちまくる弾道ミサイルに対して、それが我が国の領土・領海に着弾する軌跡を描く時に迎撃する専用の防衛兵器である(*5)。
相手が弾道ミサイルを撃たなければ、ミサイル防衛を強化する必要がないものだ。
我が国がイージズ艦搭載SM-3とパトリオットPAC-3で弾道ミサイル防衛(BMD)体制を構築し始めたのは、1993年の最初の北朝鮮弾道ミサイル発射があったからである。
純粋な防衛自衛兵器であるSM-3やパトリオットPAC-3を持つことが「専守防衛」から逸脱だとするのは、論理的に成り立たないのである。
ミサイル防衛体制の導入敬意、対処目的と性能との事実に基づけば、ミサイル防衛の強化が専守防衛からの逸脱だとの論は事実誤認そのものである。
もう1つの「敵基地攻撃能力の保有」も、実際は、事実誤認レベルなのだが、こちらは、「ミサイル防衛の強化」に比して、理解には若干の知識が必要だ。
その説明の為には、後段部分の解説から始めるのが手早いので、その部分を先に説明する。
<東京新聞8月25日社説の抜粋引用>
○政府は、ほかに攻撃を防ぐ手段がない場合には「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としてきたが、自衛隊がそうした能力を保有することはなかった。北朝鮮の脅威が念頭にあるとはいえ平時から他国攻撃の兵器を持つことは憲法の趣旨に反しないか。
<引用終わり>
「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているが、その部分は、まったくの事実誤認である。
今から60年以上昔の1956年(昭和31年)2月29日の国会答弁での政府見解で、敵基地=策源地攻撃は、憲法の自衛の範囲内とされ、それ以降、これを否定する見解はない。
東京新聞の8月25日社説の書き方は、「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」との事実を書いていながら、後段で「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているのである。
政府見解と反する感想を社説に書いてしまうのである。
「憲法上可能」との語句を避ける姑息な書き方をしているが、事実は、「敵ミサイル基地攻撃は憲法上可能」であり、その事に関しては、詳しくは以前に複数回論評(*6)しているので、そちらをお読みいだだきたい。
また、1956年(昭和31年)2月29日の国会答弁の一部を抜粋するので、お読みいただきたい。そこには、敵ミサイル基地攻撃が「憲法の趣旨」に反してしない旨を当時の鳩山一郎総理が述べている事が記録されている。
<国会答弁抜粋引用>
(前略)座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。(後略)
<引用終わり>
これが史実である。それなのに、東京新聞8月25日社説は、そういう史実を無視して「憲法の趣旨に反しないか」との勝手な感想を書いているのである。
こんなものは「社説」ではない。個人的感想文でしかない。
さて、題名に「定型句作文」と書いたのは、ウソの定番アイテムが登場しているからである。その部分を引用する。
<東京新聞8月25日社説抜粋引用>
○ミサイル防衛はそもそも能力的に疑問視されている上、仮に迎撃できたとしても、日本の「軍事的行動」が北朝鮮による日本直接攻撃の引き金を引きかねない。
○日本を守るための防衛力整備が日本自身を攻撃にさらすきっかけとなっては本末転倒だ。敵基地攻撃能力の保有も同様である。
<引用終わり>
お得意の「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」(*6)とのウソ論法のバリエーションである。「施錠が厳重だと泥棒のチャレンジ精神に火がつき、かえって狙われ易くなる」とのマンガ的論法である。現実世界はルパン三世の世界ではない。警察が二重ロックを推奨しているのが現実世界である。
飛んでくる北朝鮮のミサイルを、日米共同して防ぐことを批判し、その理由が、下着泥棒を誘発させない様にノーパンで過ごせというバカ話を、東京新聞は社説に書いているのである。言い古された「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」とのウソ論法定型句を入れ込んでいることも、呆れる点である。
最近の東京新聞は、朝日新聞以上に「サヨク偏向」していると言われているが、少なくとも、この「社説」を読み限り、そうなっている様である。
社説なのだから、事実よりも感想を優先する様な書き方は、言説の質に疑問を持たれ、信頼性を大きく損なうものだと考える。
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【文末脚注】
(*1):東京新聞2017年8月25日社説
東京新聞 TOKYO Web 2017年8月25日【社説】
表題:◆防衛大綱見直し 「専守」逸脱を危惧する
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017082502000140.html
本文:○日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて防衛力の在り方を見直すとしても、憲法九条の枠内で行うのは当然だ。「専守防衛」を逸脱して、軍拡競争の泥沼に陥ることは厳に避けるべきである。
○安倍晋三首相が今月三日の内閣改造の際、小野寺五典防衛相に対して防衛計画の大綱(防衛大綱)を見直すよう指示した。
○二〇一三年十二月に閣議決定された現行の防衛大綱は一四年度から十年程度の防衛政策の基本方針を定めている。見直しは北朝鮮の核・ミサイル開発の進展などの情勢変化を踏まえたものだという。
○弾道ミサイルの発射実験を繰り返す北朝鮮は、アジア・太平洋地域の平和と安定に対する脅威となっている。日本への攻撃に備え、防衛力を適切かつ効率的に整備することに異論はない。
○しかし、小野寺氏の発言には専守防衛を飛び越える内容も含まれる。新大綱が専守防衛を逸脱しないよう注視する必要がある。
○新大綱の焦点はミサイル防衛の強化と敵基地攻撃能力の保有だ。
○小野寺氏は日米の外務・防衛担当閣僚による会合(2プラス2)で、ミサイル防衛を強化する考えを表明したが、これに先立ち国会では北朝鮮がグアム周辺に向けてミサイルを発射した場合、政府が迎撃可能とする「存立危機事態」に当たりうるとの考えを示した。
○ミサイル防衛はそもそも能力的に疑問視されている上、仮に迎撃できたとしても、日本の「軍事的行動」が北朝鮮による日本直接攻撃の引き金を引きかねない。
○日本を守るための防衛力整備が日本自身を攻撃にさらすきっかけとなっては本末転倒だ。敵基地攻撃能力の保有も同様である。
○首相自身は「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としているが、小野寺氏は能力保有を求める自民党提言を踏まえて「総合的にどのような対応が必要か検討したい」と述べている。
○政府は、ほかに攻撃を防ぐ手段がない場合には「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としてきたが、自衛隊がそうした能力を保有することはなかった。北朝鮮の脅威が念頭にあるとはいえ平時から他国攻撃の兵器を持つことは憲法の趣旨に反しないか。
○過去四回の大綱見直しはいずれも有識者らによる会議の提言を受ける形で行われた。国民の生命や財産、憲法に関わる問題だ。今回も政府内部の議論にとどまらず、幅広く意見を聞くべきである。
<引用終わり>
(*2)「専守防衛」との美辞麗句の歪曲
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
(*3):「憲法九条の枠内」との欺瞞
2017/05/25投稿:
憲法議論2・憲法9条・議論の出発点
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-677.html
(*4):「防衛費GDP比1%枠」なる周辺国とのバランス無視
2017/07/17投稿:
国民の平和と安寧を阻害している岩盤規制
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-714.html
(*5):「防衛費GDP比1%枠」なる周辺国とのバランス無視
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
(*6):「敵ミサイル基地攻撃は憲法上可能」
2016/02/29投稿:
【コラム】1956年2月29日国会答弁
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-347.html
2017/03/21投稿:
専制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
(*7):「米軍基地があるから日本が攻撃対象になる」とのウソ論法
2017/04/06投稿:
昔ながらの印象操作の一例
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-641.html
【ご参考】
・敵ミサイル基地攻撃能力の保有に関する論考その1
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
・敵ミサイル基地攻撃能力の保有に関する論考その2
2017/07/01投稿:
「敵基地攻撃能力」の提言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-706.html



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