「敵基地攻撃能力」の提言
- 2017/07/01
- 21:00
「敵基地攻撃能力」の提言

副題:国民を護る為に必要な提言。しっかりとした政治家が適切な提言をしている。
毎月27日に発売される月刊「丸」の最新号(2017年8月号)104頁の記事「JASDF敵基地攻撃能力検証」を読んでの第一印象は、「当方ブログ記事「Power Projection能力」を参考にした記事なのか?」(*1)であった。しかし、それは、自分自身を買いかぶり過ぎである。(笑)
現在の世界情勢・周辺事態を冷静に分析すれば、同じものを見ているのだから同一の論旨・結論になることは良くある事であり、けして珍しいことではない。
月刊「丸」を当方が最初に買ったのは半世紀以上も昔の1960年代である。その以降、断続的にではあるが、ずっと購読しており、ここ20年近くは毎号連続して購読している。最近は本論の特集記事よりも先に、シロハト桜女史の連載記事「WACの星」を読んでいる。(笑)
閑話休題、本論に戻る。
月刊「丸」の当該記事の内容は、上記した様に、以前の当方記事と同様であるが、そういう方針を小野寺五典議員等が政府に提言した旨の記載があった。
小野寺議員は、防衛問題・憲法問題に対する高い見識を持つ議員だと評価している。
一昨年、2015年夏の安保法制国会審議の際に見せた国会質疑での小野寺議員の憲法観は今見ても非の打ちどころがない。
小野寺議員の提言ならば、読んでみる価値はあると考え、早速調べた結果、小野寺五典議員のHPに、その旨の記事を発見した。(*3)
同HPの3月30日付記事には、北朝鮮の「攻撃の形」が従前とは違って変わってきたことから、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を総理宛提出したことが述べられており、同提言の主旨は、国民を守る為に専守防衛の範囲で、敵基地反撃能力等が必要だとするものだ。
まったくに、その通りである。Power Projection能力がない防衛では、国民を守り切れないのであるから、当然の提言である。
その提言は、文末脚注(*3)にて全文引用しているが、先ず、冒頭に現状認識として、上記した「北朝鮮の「攻撃の形」が従前とは違って変わってきたこと」が述べられ、以下3点の施策が提言されている。
1.弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有
3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処
最初の「1.新規アセット」とは、具体的には弾道ミサイル防衛能力強化のための①陸上配備型イージスシステム(イージスアショア)や②THAAD(終末段階高高度地域防衛)のことである。
これら装備の新規導入可否を検討する必要があるとの提言である。
現状の弾道ミサイル防衛に関しては、海上自衛隊のイージス艦が広範囲・高高度迎撃を担い、終末段階での迎撃を地上配備されたパトリオットPAC-3が担っている。
イージス艦搭載のSM-3の最新型の射程距離は1,200km~1,600km、迎撃高度は70km~500kmと言われており、成層圏・宇宙空間を弾道飛行中の弾道ミサイルに直撃させて迎撃するミサイルであるが、北朝鮮はこの迎撃高度を超えるロフテッド軌道での発射に成功しており、防衛リスクが高まっている。イージス艦3隻で日本列島全土をカバーすると言われている。
一方、終末段階での迎撃を担うパトリオットPAC-3は配備数が充分ではなく、また、射程距離が20kmと短いことから、以前からSM-3とPAC-3による「二段構え」だけでは不安があると、その中間を埋めて「三段構え」にする案として、PAC-3よりも射的距離が長いTHAADミサイル(射程距離200km)を新たに導入する案が出ている。
これが上記②のTHAAD(終末段階高高度地域防衛)新規導入案である。
一方、まったく新規のTHAADシステムの導入は高価であることから、THAADよりも性能が良く、既存の技術的ノウハウを持つイージスシステムの増強案として、①陸上配備型イージスシステム(イージスアショア)の導入案がある。
詳しくは、以前の論評(*4)を参照願いたい。
次の「2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有」とは、Power Projection能力のことである。同提言では、先ず、1955年2月29日の当時の鳩山一郎首相が示した政府見解(*5)の文言を用いて「敵策源地攻撃は合憲」である旨を述べている。
その上で、そうであるにも関わらず、それを実行する装備をずっと持ってこなかった事を指摘して、今や、そういう事では国民を護れないので「わが国としての「敵基地反撃能力」を保持すべく、政府において直ちに検討を開始すること」と提言している。
冒頭で紹介した月刊「丸」の記事は、この「敵基地反撃能力」に関しての軍事的考察記事である。
最後の「3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処」とは、北朝鮮の弾道ミサイルが事前の通告なく発射され続けている実態から、着弾海域で操業している我が国の漁船に被害が及ばない様に、これら漁船・航行船舶に対しての警告システム等が必要だ、との提言である。
これらの提言が出るのは、ある意味当たり前なのだが、逆に、出ていない状況は危険であり、それを憂いて文末脚注(*1)の記事を書いた。
幸にして、その後、この様に小野寺議員達が提言していることを知り安心した。
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【文末脚注】
(*1):敵国策源地攻撃は専制的自衛権行使で合法・敵基地攻撃能力
2017/03/21投稿:
先制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
(*2):小野寺五典議員HPの2017年3月30日記事引用
http://www.itsunori.com/contents/2017/03/index.html
見出し;弾道ミサイル防衛に関する提言 総理への申し入れ
2017年3 月30日 (木)
本文:私が座長を務める「自民党弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」で取りまとめた「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を総理に申し入れました。敵基地反撃能力について、相手の攻撃の形が変わってきた中で、あくまで専守防衛の範囲で、それに対応するやり方が国民を守るために必要ではないかという内容です。総理から「こうした提言を取りまとめていただいたことに敬意を表したい。しっかりと受け止めて、今後も党とよく連携させていただきたい」との言葉をいただきました。
<引用終わり>
(*3):自由民主党政務調査会の「自民党弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」名での提言
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/134586_1.pdf
<全文引用>
弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言
平成29年3月30日 自由民主党政務調査会
○北朝鮮による度重なる核実験及びミサイル発射は深刻な脅威であり、昨年の2度の核実験及び23発の弾道ミサイル発射に加え、今月6日には石川県能登半島沖のわが国の排他的経済水域に3発を着弾させ、「在日米軍攻撃担当部隊の参加」と発表する等、北朝鮮の挑発行為はわが国が到底看過できないレベルにたっしている。
○さらに、移動式発射台及び潜水艦からの発射、固定燃料を用いた弾道ミサイルの発射、高軌道に打ち上げ高速で落下するロフテッド軌道による発射等、北朝鮮はわが国及び同盟国にとって探知や迎撃が通常より困難となる技術を獲得しつつあると考えられ、北朝鮮の脅威が新たな段階の脅威に突入したとみなければならない。
○もはや、わが国に弾道ミサイル防衛の強化に一国の猶予もなく、今般、当安全保障省境の下に「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」を急遽発足させ、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を直ちに検討し、政府に対し予算措置を含め、その実現性を求めることとした。
○ついては、以下三点に関し、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、さらなる抑止力の向上により、北朝鮮にこれ以上の暴挙を断念させるとともに、国民保護体制の充実を含めたより一層の対処力の強化により、万が一の際に国民の生命、わが国の領土・領海を守り抜く漫然の備えを構築することを求めるものである。
1.弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(終末段階高高度地域防衛)の導入の可否について成案を得るべく政府は直ちに検討を開始し、常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等からわが国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。また、将来のわが国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること。
あわせて、現大綱・中期防に基づく能力向上型迎撃ミサイルの配備(PAC-3MSE:平成32年度配備予定、SM-3ブロックⅡA:平成33年配備予定)、イージス艦の増勢(平成32年度完了予定)の着実な進捗、事業の充実・更なる前倒しを検討すること。
2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有
○政府は、わが国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのにやむをえない必要最小限度の措置として、他に手段がない場合に発射基地を叩くことについは、従来から憲法が認める自衛の範囲に含まれ可能と明言しているが、敵基地の位置情報の把握、それを守るレーダーサイトの無力化、精密誘導ミサイル等による攻撃といった必要な装備体系については、「現在は保有せず、計画もない」との立場をとっている。
○北朝鮮の脅威が新たな段階に突入した今、日米同盟全体の装備体系を駆使した総合力で対処する方針は維持するとともに、日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図るため、巡行ミサイルをはじめ、わが国としての「敵基地反撃能力」を保持すべく、政府において直ちに検討を開始すること。
3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処
○昨年8月以降、北朝鮮は3度にわたりわが国の排他的経済水域に弾道ミサイルを着弾させており、航行中の船舶への被害は生じなかったものの、操業漁船が多い海域でもあり、わが国船舶等の安全確保は喫急の課題である。
○このため、弾道ミサイル等の脅威からわが国の排他的経済水域を高校しているわが国船舶等の安全を確保するため、政府は当該船舶に対して、航行警報等を迅速に発出できるよう、直ちに検討すること。また、これらの船舶の位置情報の把握に関する技術的課題や当該船舶を守るための迎撃を可能とする法的課題について検討すること。
以上<引用終わり>
(*4):我が国の弾道ミサイル防衛体制について
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
(*5):1956年2月29日政府見解「敵策源地攻撃は合憲」の紹介
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
<昭和31年2月29日・第24回国会内閣委員会・鳩山一郎総理大臣答弁(代読)>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/024/0388/02402290388015a.html<引用開始>
わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、<誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。【策源地への防衛攻撃可能】>昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。(後略)
<引用終わり><>の表示及び【】の付記は引用者
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毎月27日に発売される月刊「丸」の最新号(2017年8月号)104頁の記事「JASDF敵基地攻撃能力検証」を読んでの第一印象は、「当方ブログ記事「Power Projection能力」を参考にした記事なのか?」(*1)であった。しかし、それは、自分自身を買いかぶり過ぎである。(笑)
現在の世界情勢・周辺事態を冷静に分析すれば、同じものを見ているのだから同一の論旨・結論になることは良くある事であり、けして珍しいことではない。
月刊「丸」を当方が最初に買ったのは半世紀以上も昔の1960年代である。その以降、断続的にではあるが、ずっと購読しており、ここ20年近くは毎号連続して購読している。最近は本論の特集記事よりも先に、シロハト桜女史の連載記事「WACの星」を読んでいる。(笑)
閑話休題、本論に戻る。
月刊「丸」の当該記事の内容は、上記した様に、以前の当方記事と同様であるが、そういう方針を小野寺五典議員等が政府に提言した旨の記載があった。
小野寺議員は、防衛問題・憲法問題に対する高い見識を持つ議員だと評価している。
一昨年、2015年夏の安保法制国会審議の際に見せた国会質疑での小野寺議員の憲法観は今見ても非の打ちどころがない。
小野寺議員の提言ならば、読んでみる価値はあると考え、早速調べた結果、小野寺五典議員のHPに、その旨の記事を発見した。(*3)
同HPの3月30日付記事には、北朝鮮の「攻撃の形」が従前とは違って変わってきたことから、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を総理宛提出したことが述べられており、同提言の主旨は、国民を守る為に専守防衛の範囲で、敵基地反撃能力等が必要だとするものだ。
まったくに、その通りである。Power Projection能力がない防衛では、国民を守り切れないのであるから、当然の提言である。
その提言は、文末脚注(*3)にて全文引用しているが、先ず、冒頭に現状認識として、上記した「北朝鮮の「攻撃の形」が従前とは違って変わってきたこと」が述べられ、以下3点の施策が提言されている。
1.弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有
3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処
最初の「1.新規アセット」とは、具体的には弾道ミサイル防衛能力強化のための①陸上配備型イージスシステム(イージスアショア)や②THAAD(終末段階高高度地域防衛)のことである。
これら装備の新規導入可否を検討する必要があるとの提言である。
現状の弾道ミサイル防衛に関しては、海上自衛隊のイージス艦が広範囲・高高度迎撃を担い、終末段階での迎撃を地上配備されたパトリオットPAC-3が担っている。
イージス艦搭載のSM-3の最新型の射程距離は1,200km~1,600km、迎撃高度は70km~500kmと言われており、成層圏・宇宙空間を弾道飛行中の弾道ミサイルに直撃させて迎撃するミサイルであるが、北朝鮮はこの迎撃高度を超えるロフテッド軌道での発射に成功しており、防衛リスクが高まっている。イージス艦3隻で日本列島全土をカバーすると言われている。
一方、終末段階での迎撃を担うパトリオットPAC-3は配備数が充分ではなく、また、射程距離が20kmと短いことから、以前からSM-3とPAC-3による「二段構え」だけでは不安があると、その中間を埋めて「三段構え」にする案として、PAC-3よりも射的距離が長いTHAADミサイル(射程距離200km)を新たに導入する案が出ている。
これが上記②のTHAAD(終末段階高高度地域防衛)新規導入案である。
一方、まったく新規のTHAADシステムの導入は高価であることから、THAADよりも性能が良く、既存の技術的ノウハウを持つイージスシステムの増強案として、①陸上配備型イージスシステム(イージスアショア)の導入案がある。
詳しくは、以前の論評(*4)を参照願いたい。
次の「2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有」とは、Power Projection能力のことである。同提言では、先ず、1955年2月29日の当時の鳩山一郎首相が示した政府見解(*5)の文言を用いて「敵策源地攻撃は合憲」である旨を述べている。
その上で、そうであるにも関わらず、それを実行する装備をずっと持ってこなかった事を指摘して、今や、そういう事では国民を護れないので「わが国としての「敵基地反撃能力」を保持すべく、政府において直ちに検討を開始すること」と提言している。
冒頭で紹介した月刊「丸」の記事は、この「敵基地反撃能力」に関しての軍事的考察記事である。
最後の「3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処」とは、北朝鮮の弾道ミサイルが事前の通告なく発射され続けている実態から、着弾海域で操業している我が国の漁船に被害が及ばない様に、これら漁船・航行船舶に対しての警告システム等が必要だ、との提言である。
これらの提言が出るのは、ある意味当たり前なのだが、逆に、出ていない状況は危険であり、それを憂いて文末脚注(*1)の記事を書いた。
幸にして、その後、この様に小野寺議員達が提言していることを知り安心した。
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【文末脚注】
(*1):敵国策源地攻撃は専制的自衛権行使で合法・敵基地攻撃能力
2017/03/21投稿:
先制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
(*2):小野寺五典議員HPの2017年3月30日記事引用
http://www.itsunori.com/contents/2017/03/index.html
見出し;弾道ミサイル防衛に関する提言 総理への申し入れ
2017年3 月30日 (木)
本文:私が座長を務める「自民党弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」で取りまとめた「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を総理に申し入れました。敵基地反撃能力について、相手の攻撃の形が変わってきた中で、あくまで専守防衛の範囲で、それに対応するやり方が国民を守るために必要ではないかという内容です。総理から「こうした提言を取りまとめていただいたことに敬意を表したい。しっかりと受け止めて、今後も党とよく連携させていただきたい」との言葉をいただきました。
<引用終わり>
(*3):自由民主党政務調査会の「自民党弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」名での提言
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/134586_1.pdf
<全文引用>
弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言
平成29年3月30日 自由民主党政務調査会
○北朝鮮による度重なる核実験及びミサイル発射は深刻な脅威であり、昨年の2度の核実験及び23発の弾道ミサイル発射に加え、今月6日には石川県能登半島沖のわが国の排他的経済水域に3発を着弾させ、「在日米軍攻撃担当部隊の参加」と発表する等、北朝鮮の挑発行為はわが国が到底看過できないレベルにたっしている。
○さらに、移動式発射台及び潜水艦からの発射、固定燃料を用いた弾道ミサイルの発射、高軌道に打ち上げ高速で落下するロフテッド軌道による発射等、北朝鮮はわが国及び同盟国にとって探知や迎撃が通常より困難となる技術を獲得しつつあると考えられ、北朝鮮の脅威が新たな段階の脅威に突入したとみなければならない。
○もはや、わが国に弾道ミサイル防衛の強化に一国の猶予もなく、今般、当安全保障省境の下に「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」を急遽発足させ、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を直ちに検討し、政府に対し予算措置を含め、その実現性を求めることとした。
○ついては、以下三点に関し、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、さらなる抑止力の向上により、北朝鮮にこれ以上の暴挙を断念させるとともに、国民保護体制の充実を含めたより一層の対処力の強化により、万が一の際に国民の生命、わが国の領土・領海を守り抜く漫然の備えを構築することを求めるものである。
1.弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入
イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(終末段階高高度地域防衛)の導入の可否について成案を得るべく政府は直ちに検討を開始し、常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等からわが国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。また、将来のわが国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること。
あわせて、現大綱・中期防に基づく能力向上型迎撃ミサイルの配備(PAC-3MSE:平成32年度配備予定、SM-3ブロックⅡA:平成33年配備予定)、イージス艦の増勢(平成32年度完了予定)の着実な進捗、事業の充実・更なる前倒しを検討すること。
2.わが国独自の敵基地反撃能力の保有
○政府は、わが国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのにやむをえない必要最小限度の措置として、他に手段がない場合に発射基地を叩くことについは、従来から憲法が認める自衛の範囲に含まれ可能と明言しているが、敵基地の位置情報の把握、それを守るレーダーサイトの無力化、精密誘導ミサイル等による攻撃といった必要な装備体系については、「現在は保有せず、計画もない」との立場をとっている。
○北朝鮮の脅威が新たな段階に突入した今、日米同盟全体の装備体系を駆使した総合力で対処する方針は維持するとともに、日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図るため、巡行ミサイルをはじめ、わが国としての「敵基地反撃能力」を保持すべく、政府において直ちに検討を開始すること。
3.排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処
○昨年8月以降、北朝鮮は3度にわたりわが国の排他的経済水域に弾道ミサイルを着弾させており、航行中の船舶への被害は生じなかったものの、操業漁船が多い海域でもあり、わが国船舶等の安全確保は喫急の課題である。
○このため、弾道ミサイル等の脅威からわが国の排他的経済水域を高校しているわが国船舶等の安全を確保するため、政府は当該船舶に対して、航行警報等を迅速に発出できるよう、直ちに検討すること。また、これらの船舶の位置情報の把握に関する技術的課題や当該船舶を守るための迎撃を可能とする法的課題について検討すること。
以上<引用終わり>
(*4):我が国の弾道ミサイル防衛体制について
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
(*5):1956年2月29日政府見解「敵策源地攻撃は合憲」の紹介
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
<昭和31年2月29日・第24回国会内閣委員会・鳩山一郎総理大臣答弁(代読)>
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/024/0388/02402290388015a.html<引用開始>
わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、<誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。【策源地への防衛攻撃可能】>昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。(後略)
<引用終わり><>の表示及び【】の付記は引用者



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