緊急事態条項の要件を検証する(その1)
- 2017/06/23
- 22:05
緊急事態条項の要件を検証する(その1)

副題:緊急事態条項・条文案議論の基礎知識2 フランス、イギリス、イタリア等の各国憲法を例に
前回記事(*1)で提示した基礎的要件について検証する。
検証方法は、我が国と比肩し得る自由主義先進諸国のフランス、ドイツ、イタリア等の各国憲法を例に、提示した基礎的要件と比較して、過不足の有無や条文内容の論考を通じて行う方法を用いた。
尚、イギリス、アメリカに関しては、先ず、イギリスは不成文憲法であり、憲法典としての憲法が存在していないので比較対象とはならず、また、アメリカ憲法では、緊急事態対応する旨だけの簡素な記載となっており、具体的要件は下位法で規定されており、検証の材料にはならないので、対象とはしていない。
各国憲法は、各国の歴史・伝統・生活経験の集積の上に成り立っており、各国により、その形式は違っているが、共通する考え方を抽出しての検証となる。
これら先進諸外国憲法の緊急事態条項に関しては、「(資料編)各国の緊急事態条項(*2)」を適宜引用して検証する。
前回提示した基礎的要件の以下の6点について、他国憲法を用いて検証する。
<前回提示した基礎的要件>(番号2シリーズの6点)
2-①:憲法で規定すべき
2-②:緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
2-③:緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき
2-④:議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
2-⑤:国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
2-⑥:国会議員の身分保障としては任期特例の他に緊急事態中の不逮捕特権が必要
<再記載終わり>
1)憲法で規定すべき
・フランス憲法には、第16条が「緊急事態権限」との名称の緊急事態条項がある。第16条は5項目からなる。
・ドイツ憲法(基本法には、第10章のa「国防」に、第115a条から第115l条の11条からなる緊急事態条項がある。(第115j条は欠番)(*3)
・イタリア憲法では、フランス、ドイツの様なまとまった章・条ではなく、幾つかの条文(第60条、第77条他)の中で「戦時の場合は」とか「緊急性を要する必要がある・・」とかの記載での緊急時特例の条項がある。
・他の事例としては、具体的規定を下位法に委ねているアメリカ憲法に於いても、第1条第9節及び第2条第3節に緊急時特例の条項がある。
・緊急事態条項とは、「緊急事態」が発生した時に、国民の安全を確保する為に一時的な特別な対応体制をとり緊急期待に対処できる様にする法規定であるが、イタリア憲法、アメリカ憲法の書き方は「平時は○○、緊急時△△」との形式で緊急事態を想定している。
・一方、我が国現行憲法では「対処できる様な規定」は存在せず、唯一、第54条に「閉会中でも参議院が開ける」(*4)とだけある。
↓
◆検証結果:「憲法で規定すべき」を否定する様な事例はなく、フランス、ドイツの事例からは、「憲法で規定すべき」であると結論できる。
また、前回の「1.緊急事態条項を憲法条文にする理由」とも齟齬がないことから、我が国現行憲法では削られてしまった緊急事態条項は、改憲後新憲法にて新設されるべきだと考える。
さて、次からは「議会(国会)に権限を持たせる」との基本要件である。
上記した基本的要件の2-②から最後の2-⑥までの5点は、総て三権分立の1つである議会(国会)の権限・機能に関するものである。これは、緊急事態に対応する際の総責任者である行政府の長とは別の人物・組織による内部牽制機能要件である。
以降、それら5点を1つ1つ検証する。
2)緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
・フランス憲法では、第16条第1項で、大統領は「首相、両院議長及び憲法院」に「諮問した後」に緊急事態対応措置を取ると規定されている。第1項だけだと必ずしも緊急事態対応体制のスタート決定権は議会にはないが、第6項で緊急事態対応体制を終了させる権限がある旨が規定されており、妥当でない緊急事態スタートは、それで終わらせられる規定となっている。
・ドイツ憲法では、第115a条第1項で「連邦政府の申立てに基づいて」「連邦議会が連邦参議院の同意を得て」「「防衛事態」の確認」を行う規定となっており、「緊急事態である旨の決定権は議会」にあると明示されている。
その上で、防衛事態との緊急性が高く、連邦議会(下院・我が国衆議院に相当)や連邦参議院(上院・参議院)の各院議員が登院・参集できないリスクを予め想定し、第2項では「合同委員会」との武力事態の緊急時に対応する組織を予め持ち、その合同委員会でさえ間に合わない場合を想定し、第4項で、「この確認(緊急事態対応体制の発動の承認)は行われたものとみなされ、かつ、攻撃が開始された時点で公布(緊急事態対応体制開始の官報他による周知)されたものとみなされる。」とまで書いてある。
これ程までに細かくtoo muchな憲法規定があるのはドイツ人らしい厳格さもあるが、やはり二度の大戦を勃発させた歴史と、この条文が制定された当時の西ドイツで武力事態が発生する場合は、極めて短時間でワルシャワ条約機構軍の戦車軍団が電撃侵攻してくることが想定されていたことが、この様な規定になっている背景にあると考えている。
・イタリア憲法では、第78条で「議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える」とあり、「緊急事態である旨の決定権は議会」にあることが明示されている。
↓
◆検証結果:ドイツ及びイタリア憲法では「緊急事態である旨の決定権は議会」にあることが明示されている。フランス憲法では、スタート時の決定が議会にあるとの規定はなく、「首相、両院議長及び憲法院」に「諮問した後」に緊急事態対応措置を取ると規定されているもの、次の要件である「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」での条文があり、実質的には議会の牽制機能があると考えている。
以上の様な事例からは、「緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき」との要件は妥当な要件だと考える。
3)緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき
・フランス憲法では、第16条の第6項に終了権限規定がある。「非常事態権限の行使から30日後に国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる」とあり、建て付けとしては「憲法院が判断する」との形式になっているが、国民会議(下院・我が国衆議院に相当と元老院(上院・我が国参議院に相当)との議会が終了発議をして憲法院に付託する旨の規定である。基本的要件の意義である「大統領以外の人物・組織が判断する」機能が規定されている。
この第6項は、結構新しく、2008年7月23日の憲法改正により追加された条文である。
・ドイツ憲法では、第115l条の第2項に「防衛事態の終了」の規定がある。「連邦議会(下院)」が「連邦参議院の同意を得て」「防衛事態の終了を宣言することができる」との規定があり、また、同項後半には「連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。」との規定がある。以上より、ドイツ憲法では「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」ことが明示されていると言える。
・イタリア憲法では、明示的な終了権限規定は見つらないものの、第77条の後段に、緊急事態対応の為に、政府が発する「暫定措置」(緊急時特定の政令という意味)は「法令化の手続きをとる必要がある」と規定され、更に、「法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る」との規定があり、「法令化しない」との方法で議会は緊急事態を実質的に終了させる権限がある憲法規定となっている。
↓
◆検証結果:ドイツ憲法では「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」ことの条文がある。フランス憲法及びイタリア憲法では、ドイツ憲法の様な明文規定はないが、実質的に緊急事態対応体制の継続を議会が否定する権限があることがわかる。
因みに、フランス憲法での建て付けに出てくる「憲法院」は、憲法裁判所であるが、我が国には、憲法裁判所制度はなく、司法裁判所最高裁が他の同様機能を持つ。
以上の様な事例からは、「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき」との要件は妥当な要件だと考える。
4)議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
「期限規定」の必要性については、前回で論述した通り、緊急事態対応宣言の議会の事後承認が3年後とか、緊急事態対応体制の終了を議会が決定する機会が来るのが10年後とかの法規定上の抜け穴を塞いでおく必要がある為の要件である。
・フランス憲法での発動の事後承認及び終了に関する期限規定としては、第16条第6項に「非常事態権限の行使から30日後に」必要あれば、議会関係者が憲法院に付託する旨の規定があり、更には、その後段には、「憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い」との期限規定がある。
・ドイツ憲法での期限規定は「常時」「即時」である。第115d条の「緊急立法」の条文の第2項に「連邦政府が緊急なものと表明した連邦政府の法律案は(中略)連邦議会と連邦参議院は、速やかに法律案を合同で審議する」との「常時」「即時」の規定がある。これは、ヒットラーの全権委任法体制の教訓の1つなのであろう。
・イタリア憲法での期限規定は、上記した第77条に「60日」との規定がある。「法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る」との条文は、「60日目に法令化してない場合は失効です」ということだ。
↓
◆検証結果:ドイツ憲法での「期限規定」は、特殊で「常時」「即時」の規定となっているが、逆に言えば「ずっと緊急事態対応体制が続く事態を防いでいる」との機能はあるのである。フランス憲法では「30日」の規定があり、「60日後はいつでも」との期限規定がある。イタリア憲法では「60日目」の憲法規定がある。
以上の様な事例からは、「議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき」との要件は妥当な要件だと考える。
5)国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
上記1)及び2)の主眼は、緊急事態対応体制に対しての牽制機能を議会(国会)が担う建て付けであるが、そういう重要な役割を国会が担う場合、緊急事態対応体制が継続している状態で国会が機能停止する様な事が発生することがない様な規定を予め用意すべきである。その理由は前回述べた通りだが、緊急事態が宣言された場合には、憲法の任期規定の特例として、緊急事態対応体制終了まで任期が延長される継続規定が必要である。その様な規定の有無を調べ、検証した。
・ドイツ憲法では、第115h条の第1項に任期延長規定がある。そこには「防衛事態の終了後6カ月を経て終了する」とあり、防衛事態の終了迄は勿論のこと、その後6か月の任期継続が憲法条文にて規定されている。また同条第3項には「防衛事態の期間中は、連邦議会の解散は禁止される。」との解散禁止規定がある。
・イタリア憲法では、第60条に、緊急事態時の任期延長特例規定がある。「共和国議会の上院及び下院議員の任期は5年である。各議員の任期は法改正又は戦時の場合を除き延長できない」との条文だが、要するに「戦時は延長できます」という意味だ。ドイツ憲法の様な具体的延長期限の規定はないが、任期延長による議会議員の身分保証の規定は存在している。
・フランス憲法には、第16条の第5項に「国民議会は、非常事態権限の行使中に解散することができない。」旨の規定はあるが、緊急時の議員任期延長規定はない。
その理由は、議員任期を同国憲法25条で、下位法で規定する旨があり、憲法規定を緊急時特例として別の規定を適用するとの緊急事態条項の範囲外となるからである。
緊急時の議員身分の保証である議員任期の延長については、ドイツ(35条)、イタリア(60条)、我が国(45条、46条)の様に議員任期が憲法で規定されている場合は、憲法に、延長できる旨の規定を盛り込む必要がある。
↓
◆検証結果:ドイツ憲法及びイタリア憲法では緊急事態時に任期延長の規定がある、フランス憲法では、議員任期規定自体が下位法で規定する構成なので、憲法には延長規定はないので参考にはならないが、緊急事態時の議会解散禁止規定がある。議会解散禁止規定はドイツ憲法にもある。
以上の様な事例からは、「国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要」との要件は妥当な要件だと考える。同様、議会解散禁止規定がある方が望ましいと考えられる。
一方、逆に言えば、緊急事態特例で規定する以外の方法で議員任期を延長する様なことは、国民の投票権行使機会を奪うものであり、平時に於いて議員任期を延長する様な規定は、民主主義原則に反するものだと考えている。
6)国会議員の身分保障としては任期特例の他に緊急事態中の不逮捕特権が必要
実のところ、我が国国会の様な150日会期の様な会期制度があり、かつ、会期中か否かでの不逮捕特権規定が憲法にある国はない。それ故に、この様な規定が憲法上にある事例はない。論理的には「国会議員の身分保障として緊急事態中の不逮捕特権が必要」なのだが、そもそも緊急事態発生中に国会を閉会するのか?との疑問がある。
我が国の国会の場合、休会とは会期中の一時的なお休みのことであり、閉会してのお休みの事ではない。それ故に、この様な規定はいらないのではないかとも思う。
一方、閉会をして不逮捕特権を霧消させて・・・との陰謀説を言う方もいるだろう。
しかし、それは考え過ぎだ。そもそも、緊急事態条項の目的は「国民の安全を確保する為」であり、その目的とは違う発想で考えても、物事は歪む方向性しかもたない。
↓
◆検証結果:どうやら、国会議員の身分保障としては「任期特例」は必須だが「会期中の不逮捕特権」は「緊急事態下で閉会する」という想定され難い状態が起こるとの前提が必要で、どうやらこれは「机上の空論」ではないかと考え直している。
この2-⑥の要件は、前回の3.のグループに移動することとしたい。
<長くなったので別項にて続けます>
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【文末脚注】
(*1):前回記事
2017/06/22投稿:
緊急事態条項に関する考察・要件提示
<副題:緊急事態条項条文案の基礎知識1>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-700.html
(*2):先進諸外国憲法の緊急事態条項
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
(*3):ドイツ憲法(基本法)の他の緊急事態条項について
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
ドイツ憲法(ドイツ基本法)の緊急事態条項としては「第10章のa・国防」を提示している。それが、もっとも内容的に厳しい緊急事態条項だからである。
ドイツ憲法の緊急事態条項には、例示した「第10章のa・国防」以外に、「第8章・連邦法の執行および連邦行政第」の第91条に「内部的緊急事態」条項があるが、煩雑となることから、それらは例示対象とはしてない。
<ドイツ憲法:第91条 [内部的緊急事態]>
(1) 連邦およびラントの存立または自由で民主的な基本秩序に対する差し迫った危険を防止するために、ラントは、他諸ラントの警察力ならびに他の行政機関および連邦国境警備隊の力と施設を要請することができる。
(2) 危険が急迫しているラントが自ら危険に対処する用意がなく、または対処できないときは、連邦政府は、当該ラントの警察および他諸ラントの警察を指揮し、ならびに連邦国境警備隊の部隊を出動させることができる。この命令は、危険の除去後に、または、そうでなくても連邦参議院の要求があるときはいつでも、解除しなければならない。危険が二つ以上のラントの領域に及ぶときは、連邦政府は、有効な対処のために必要な限度で、ラント政府に指示を与えることができる。この場合、1段および2段は、影響を受けない。
<引用終わり>
(*4):現行憲法唯一の「緊急」である場合の規定(第54条・第2項、第3項)
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第54条:(第1項省略)
同第2項 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
同第3項 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
【ご参考】検証で用いた各国の緊急事態条項の条文
<フランス憲法関係条文抜粋引用>
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/240/024003.pdf
第16条〔非常事態権限〕
1 共和国の制度、国の独立、領土の保全又は国際的取極めの履行が重大かつ切迫した脅威にさらされ、かつ、憲法上の公権力の正常な運営が妨げられた場合には、共和国大統領は、首相、両議院議長及び憲法院に公式に諮問した後に、状況により必要とされる措置をとる。
2,3,4略
5 国民議会は、非常事態権限の行使中に解散することができない。
6 非常事態権限の行使から30日後に、国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる。憲法院は、可及的速やかに公的な意見により裁定する。憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い、及び同一の要件により裁定する。
<ドイツ憲法(基本法)関係条文抜粋引用>
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
◇第115a条 [概念および確認]
(1) 連邦領域が武力で攻撃された、またはこのような攻撃が直接に切迫していること(防衛事態)の確認は、連邦議会が連邦参議院の同意を得て行う。確認は、連邦政府の申立てに基づいて行われ、連邦議会議員の過半数かつ投票の3分の2の多数を必要とする。
(2) 即時の行動が不可避とされる状況で、かつ、連邦議会の適時の集会に克服しがたい障害があり、または議決不能のときは、合同委員会か委員の過半数かつ投票の3分の2の多数をもって、この確認を行う。
(3)略
(4) 連邦領域が武力で攻撃され、かつ、権限を有する連邦機関が1項1段による確認を即時に行うことができる状況にないときは、この確認は行われたものとみなされ、かつ、攻撃が開始された時点で公布されたものとみなされる。
(5)略
◇第115d条 [緊急立法]
(1) 略
(2) 連邦政府が緊急なものと表明した連邦政府の法律案は、連邦議会に提出されるのと同時に連邦参議院に送付される。連邦議会と連邦参議院は、速やかに法律案を合同で審議する。法律が連邦参議院の同意を必要とするときは、その法律の成立には、連邦参議院の投票の過半数の同意を必要とする。詳細は、連邦議会が議決し、かつ連邦参議院の同意を必要とする議事規則で定める。
(3)略
◇第115h条 [憲法機関の機能]
(1) 防衛事態中に満了する連邦議会または州国民代表機関の議員の任期は、防衛事態の終了後6カ月を経て終了する。防衛事態中に満了する連邦大統領の任期、ならびに、連邦大統領が任期満了前に欠けたときの連邦参議院議長による連邦大統領の権限の行使は、防衛事態の終了後9カ月を経て終了する。
(2)略
(3) 防衛事態の期間中は、連邦議会の解散は禁止される。
◇第115l条 [防衛事態における法律および措置の廃止、防衛事態の終了、講和]
(1) 略
(2) 連邦議会は、いつでも、連邦参議院の同意を得て、連邦大統領が公布する議決によって防衛事態の終了を宣言することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。防衛事態は、その確認の前提となった条件が存在しなくなったときは、遅滞なくその終了を宣言しなけれはならない。
(3)略
<イタリア憲法関係条文抜粋引用>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
・第60条:共和国議会の上院及び下院議員の任期は5年である。各議員の任期は法改正又は戦時の場合を除き延長できない
・第77条:(前略)緊急性を要する必要性ある特別なケースに於いては、政府は効力を有する「暫定措置」をとることが出来る。その場合、大統領は措置設定の当日に議会に対して報告・説明し、法令化の手続きをとる必要がある。その際、議会が解散状態であっても、特別に5日以内に召集される。
法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る
・第78条:議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える
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副題:緊急事態条項・条文案議論の基礎知識2 フランス、イギリス、イタリア等の各国憲法を例に
前回記事(*1)で提示した基礎的要件について検証する。
検証方法は、我が国と比肩し得る自由主義先進諸国のフランス、ドイツ、イタリア等の各国憲法を例に、提示した基礎的要件と比較して、過不足の有無や条文内容の論考を通じて行う方法を用いた。
尚、イギリス、アメリカに関しては、先ず、イギリスは不成文憲法であり、憲法典としての憲法が存在していないので比較対象とはならず、また、アメリカ憲法では、緊急事態対応する旨だけの簡素な記載となっており、具体的要件は下位法で規定されており、検証の材料にはならないので、対象とはしていない。
各国憲法は、各国の歴史・伝統・生活経験の集積の上に成り立っており、各国により、その形式は違っているが、共通する考え方を抽出しての検証となる。
これら先進諸外国憲法の緊急事態条項に関しては、「(資料編)各国の緊急事態条項(*2)」を適宜引用して検証する。
前回提示した基礎的要件の以下の6点について、他国憲法を用いて検証する。
<前回提示した基礎的要件>(番号2シリーズの6点)
2-①:憲法で規定すべき
2-②:緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
2-③:緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき
2-④:議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
2-⑤:国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
2-⑥:国会議員の身分保障としては任期特例の他に緊急事態中の不逮捕特権が必要
<再記載終わり>
1)憲法で規定すべき
・フランス憲法には、第16条が「緊急事態権限」との名称の緊急事態条項がある。第16条は5項目からなる。
・ドイツ憲法(基本法には、第10章のa「国防」に、第115a条から第115l条の11条からなる緊急事態条項がある。(第115j条は欠番)(*3)
・イタリア憲法では、フランス、ドイツの様なまとまった章・条ではなく、幾つかの条文(第60条、第77条他)の中で「戦時の場合は」とか「緊急性を要する必要がある・・」とかの記載での緊急時特例の条項がある。
・他の事例としては、具体的規定を下位法に委ねているアメリカ憲法に於いても、第1条第9節及び第2条第3節に緊急時特例の条項がある。
・緊急事態条項とは、「緊急事態」が発生した時に、国民の安全を確保する為に一時的な特別な対応体制をとり緊急期待に対処できる様にする法規定であるが、イタリア憲法、アメリカ憲法の書き方は「平時は○○、緊急時△△」との形式で緊急事態を想定している。
・一方、我が国現行憲法では「対処できる様な規定」は存在せず、唯一、第54条に「閉会中でも参議院が開ける」(*4)とだけある。
↓
◆検証結果:「憲法で規定すべき」を否定する様な事例はなく、フランス、ドイツの事例からは、「憲法で規定すべき」であると結論できる。
また、前回の「1.緊急事態条項を憲法条文にする理由」とも齟齬がないことから、我が国現行憲法では削られてしまった緊急事態条項は、改憲後新憲法にて新設されるべきだと考える。
さて、次からは「議会(国会)に権限を持たせる」との基本要件である。
上記した基本的要件の2-②から最後の2-⑥までの5点は、総て三権分立の1つである議会(国会)の権限・機能に関するものである。これは、緊急事態に対応する際の総責任者である行政府の長とは別の人物・組織による内部牽制機能要件である。
以降、それら5点を1つ1つ検証する。
2)緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
・フランス憲法では、第16条第1項で、大統領は「首相、両院議長及び憲法院」に「諮問した後」に緊急事態対応措置を取ると規定されている。第1項だけだと必ずしも緊急事態対応体制のスタート決定権は議会にはないが、第6項で緊急事態対応体制を終了させる権限がある旨が規定されており、妥当でない緊急事態スタートは、それで終わらせられる規定となっている。
・ドイツ憲法では、第115a条第1項で「連邦政府の申立てに基づいて」「連邦議会が連邦参議院の同意を得て」「「防衛事態」の確認」を行う規定となっており、「緊急事態である旨の決定権は議会」にあると明示されている。
その上で、防衛事態との緊急性が高く、連邦議会(下院・我が国衆議院に相当)や連邦参議院(上院・参議院)の各院議員が登院・参集できないリスクを予め想定し、第2項では「合同委員会」との武力事態の緊急時に対応する組織を予め持ち、その合同委員会でさえ間に合わない場合を想定し、第4項で、「この確認(緊急事態対応体制の発動の承認)は行われたものとみなされ、かつ、攻撃が開始された時点で公布(緊急事態対応体制開始の官報他による周知)されたものとみなされる。」とまで書いてある。
これ程までに細かくtoo muchな憲法規定があるのはドイツ人らしい厳格さもあるが、やはり二度の大戦を勃発させた歴史と、この条文が制定された当時の西ドイツで武力事態が発生する場合は、極めて短時間でワルシャワ条約機構軍の戦車軍団が電撃侵攻してくることが想定されていたことが、この様な規定になっている背景にあると考えている。
・イタリア憲法では、第78条で「議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える」とあり、「緊急事態である旨の決定権は議会」にあることが明示されている。
↓
◆検証結果:ドイツ及びイタリア憲法では「緊急事態である旨の決定権は議会」にあることが明示されている。フランス憲法では、スタート時の決定が議会にあるとの規定はなく、「首相、両院議長及び憲法院」に「諮問した後」に緊急事態対応措置を取ると規定されているもの、次の要件である「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」での条文があり、実質的には議会の牽制機能があると考えている。
以上の様な事例からは、「緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき」との要件は妥当な要件だと考える。
3)緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき
・フランス憲法では、第16条の第6項に終了権限規定がある。「非常事態権限の行使から30日後に国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる」とあり、建て付けとしては「憲法院が判断する」との形式になっているが、国民会議(下院・我が国衆議院に相当と元老院(上院・我が国参議院に相当)との議会が終了発議をして憲法院に付託する旨の規定である。基本的要件の意義である「大統領以外の人物・組織が判断する」機能が規定されている。
この第6項は、結構新しく、2008年7月23日の憲法改正により追加された条文である。
・ドイツ憲法では、第115l条の第2項に「防衛事態の終了」の規定がある。「連邦議会(下院)」が「連邦参議院の同意を得て」「防衛事態の終了を宣言することができる」との規定があり、また、同項後半には「連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。」との規定がある。以上より、ドイツ憲法では「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」ことが明示されていると言える。
・イタリア憲法では、明示的な終了権限規定は見つらないものの、第77条の後段に、緊急事態対応の為に、政府が発する「暫定措置」(緊急時特定の政令という意味)は「法令化の手続きをとる必要がある」と規定され、更に、「法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る」との規定があり、「法令化しない」との方法で議会は緊急事態を実質的に終了させる権限がある憲法規定となっている。
↓
◆検証結果:ドイツ憲法では「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つ」ことの条文がある。フランス憲法及びイタリア憲法では、ドイツ憲法の様な明文規定はないが、実質的に緊急事態対応体制の継続を議会が否定する権限があることがわかる。
因みに、フランス憲法での建て付けに出てくる「憲法院」は、憲法裁判所であるが、我が国には、憲法裁判所制度はなく、司法裁判所最高裁が他の同様機能を持つ。
以上の様な事例からは、「緊急事態対応体制の終了権限も議会が持つべき」との要件は妥当な要件だと考える。
4)議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
「期限規定」の必要性については、前回で論述した通り、緊急事態対応宣言の議会の事後承認が3年後とか、緊急事態対応体制の終了を議会が決定する機会が来るのが10年後とかの法規定上の抜け穴を塞いでおく必要がある為の要件である。
・フランス憲法での発動の事後承認及び終了に関する期限規定としては、第16条第6項に「非常事態権限の行使から30日後に」必要あれば、議会関係者が憲法院に付託する旨の規定があり、更には、その後段には、「憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い」との期限規定がある。
・ドイツ憲法での期限規定は「常時」「即時」である。第115d条の「緊急立法」の条文の第2項に「連邦政府が緊急なものと表明した連邦政府の法律案は(中略)連邦議会と連邦参議院は、速やかに法律案を合同で審議する」との「常時」「即時」の規定がある。これは、ヒットラーの全権委任法体制の教訓の1つなのであろう。
・イタリア憲法での期限規定は、上記した第77条に「60日」との規定がある。「法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る」との条文は、「60日目に法令化してない場合は失効です」ということだ。
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◆検証結果:ドイツ憲法での「期限規定」は、特殊で「常時」「即時」の規定となっているが、逆に言えば「ずっと緊急事態対応体制が続く事態を防いでいる」との機能はあるのである。フランス憲法では「30日」の規定があり、「60日後はいつでも」との期限規定がある。イタリア憲法では「60日目」の憲法規定がある。
以上の様な事例からは、「議会の終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき」との要件は妥当な要件だと考える。
5)国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
上記1)及び2)の主眼は、緊急事態対応体制に対しての牽制機能を議会(国会)が担う建て付けであるが、そういう重要な役割を国会が担う場合、緊急事態対応体制が継続している状態で国会が機能停止する様な事が発生することがない様な規定を予め用意すべきである。その理由は前回述べた通りだが、緊急事態が宣言された場合には、憲法の任期規定の特例として、緊急事態対応体制終了まで任期が延長される継続規定が必要である。その様な規定の有無を調べ、検証した。
・ドイツ憲法では、第115h条の第1項に任期延長規定がある。そこには「防衛事態の終了後6カ月を経て終了する」とあり、防衛事態の終了迄は勿論のこと、その後6か月の任期継続が憲法条文にて規定されている。また同条第3項には「防衛事態の期間中は、連邦議会の解散は禁止される。」との解散禁止規定がある。
・イタリア憲法では、第60条に、緊急事態時の任期延長特例規定がある。「共和国議会の上院及び下院議員の任期は5年である。各議員の任期は法改正又は戦時の場合を除き延長できない」との条文だが、要するに「戦時は延長できます」という意味だ。ドイツ憲法の様な具体的延長期限の規定はないが、任期延長による議会議員の身分保証の規定は存在している。
・フランス憲法には、第16条の第5項に「国民議会は、非常事態権限の行使中に解散することができない。」旨の規定はあるが、緊急時の議員任期延長規定はない。
その理由は、議員任期を同国憲法25条で、下位法で規定する旨があり、憲法規定を緊急時特例として別の規定を適用するとの緊急事態条項の範囲外となるからである。
緊急時の議員身分の保証である議員任期の延長については、ドイツ(35条)、イタリア(60条)、我が国(45条、46条)の様に議員任期が憲法で規定されている場合は、憲法に、延長できる旨の規定を盛り込む必要がある。
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◆検証結果:ドイツ憲法及びイタリア憲法では緊急事態時に任期延長の規定がある、フランス憲法では、議員任期規定自体が下位法で規定する構成なので、憲法には延長規定はないので参考にはならないが、緊急事態時の議会解散禁止規定がある。議会解散禁止規定はドイツ憲法にもある。
以上の様な事例からは、「国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要」との要件は妥当な要件だと考える。同様、議会解散禁止規定がある方が望ましいと考えられる。
一方、逆に言えば、緊急事態特例で規定する以外の方法で議員任期を延長する様なことは、国民の投票権行使機会を奪うものであり、平時に於いて議員任期を延長する様な規定は、民主主義原則に反するものだと考えている。
6)国会議員の身分保障としては任期特例の他に緊急事態中の不逮捕特権が必要
実のところ、我が国国会の様な150日会期の様な会期制度があり、かつ、会期中か否かでの不逮捕特権規定が憲法にある国はない。それ故に、この様な規定が憲法上にある事例はない。論理的には「国会議員の身分保障として緊急事態中の不逮捕特権が必要」なのだが、そもそも緊急事態発生中に国会を閉会するのか?との疑問がある。
我が国の国会の場合、休会とは会期中の一時的なお休みのことであり、閉会してのお休みの事ではない。それ故に、この様な規定はいらないのではないかとも思う。
一方、閉会をして不逮捕特権を霧消させて・・・との陰謀説を言う方もいるだろう。
しかし、それは考え過ぎだ。そもそも、緊急事態条項の目的は「国民の安全を確保する為」であり、その目的とは違う発想で考えても、物事は歪む方向性しかもたない。
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◆検証結果:どうやら、国会議員の身分保障としては「任期特例」は必須だが「会期中の不逮捕特権」は「緊急事態下で閉会する」という想定され難い状態が起こるとの前提が必要で、どうやらこれは「机上の空論」ではないかと考え直している。
この2-⑥の要件は、前回の3.のグループに移動することとしたい。
<長くなったので別項にて続けます>
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【文末脚注】
(*1):前回記事
2017/06/22投稿:
緊急事態条項に関する考察・要件提示
<副題:緊急事態条項条文案の基礎知識1>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-700.html
(*2):先進諸外国憲法の緊急事態条項
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
(*3):ドイツ憲法(基本法)の他の緊急事態条項について
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
ドイツ憲法(ドイツ基本法)の緊急事態条項としては「第10章のa・国防」を提示している。それが、もっとも内容的に厳しい緊急事態条項だからである。
ドイツ憲法の緊急事態条項には、例示した「第10章のa・国防」以外に、「第8章・連邦法の執行および連邦行政第」の第91条に「内部的緊急事態」条項があるが、煩雑となることから、それらは例示対象とはしてない。
<ドイツ憲法:第91条 [内部的緊急事態]>
(1) 連邦およびラントの存立または自由で民主的な基本秩序に対する差し迫った危険を防止するために、ラントは、他諸ラントの警察力ならびに他の行政機関および連邦国境警備隊の力と施設を要請することができる。
(2) 危険が急迫しているラントが自ら危険に対処する用意がなく、または対処できないときは、連邦政府は、当該ラントの警察および他諸ラントの警察を指揮し、ならびに連邦国境警備隊の部隊を出動させることができる。この命令は、危険の除去後に、または、そうでなくても連邦参議院の要求があるときはいつでも、解除しなければならない。危険が二つ以上のラントの領域に及ぶときは、連邦政府は、有効な対処のために必要な限度で、ラント政府に指示を与えることができる。この場合、1段および2段は、影響を受けない。
<引用終わり>
(*4):現行憲法唯一の「緊急」である場合の規定(第54条・第2項、第3項)
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第54条:(第1項省略)
同第2項 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
同第3項 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。
【ご参考】検証で用いた各国の緊急事態条項の条文
<フランス憲法関係条文抜粋引用>
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/240/024003.pdf
第16条〔非常事態権限〕
1 共和国の制度、国の独立、領土の保全又は国際的取極めの履行が重大かつ切迫した脅威にさらされ、かつ、憲法上の公権力の正常な運営が妨げられた場合には、共和国大統領は、首相、両議院議長及び憲法院に公式に諮問した後に、状況により必要とされる措置をとる。
2,3,4略
5 国民議会は、非常事態権限の行使中に解散することができない。
6 非常事態権限の行使から30日後に、国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる。憲法院は、可及的速やかに公的な意見により裁定する。憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い、及び同一の要件により裁定する。
<ドイツ憲法(基本法)関係条文抜粋引用>
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
◇第115a条 [概念および確認]
(1) 連邦領域が武力で攻撃された、またはこのような攻撃が直接に切迫していること(防衛事態)の確認は、連邦議会が連邦参議院の同意を得て行う。確認は、連邦政府の申立てに基づいて行われ、連邦議会議員の過半数かつ投票の3分の2の多数を必要とする。
(2) 即時の行動が不可避とされる状況で、かつ、連邦議会の適時の集会に克服しがたい障害があり、または議決不能のときは、合同委員会か委員の過半数かつ投票の3分の2の多数をもって、この確認を行う。
(3)略
(4) 連邦領域が武力で攻撃され、かつ、権限を有する連邦機関が1項1段による確認を即時に行うことができる状況にないときは、この確認は行われたものとみなされ、かつ、攻撃が開始された時点で公布されたものとみなされる。
(5)略
◇第115d条 [緊急立法]
(1) 略
(2) 連邦政府が緊急なものと表明した連邦政府の法律案は、連邦議会に提出されるのと同時に連邦参議院に送付される。連邦議会と連邦参議院は、速やかに法律案を合同で審議する。法律が連邦参議院の同意を必要とするときは、その法律の成立には、連邦参議院の投票の過半数の同意を必要とする。詳細は、連邦議会が議決し、かつ連邦参議院の同意を必要とする議事規則で定める。
(3)略
◇第115h条 [憲法機関の機能]
(1) 防衛事態中に満了する連邦議会または州国民代表機関の議員の任期は、防衛事態の終了後6カ月を経て終了する。防衛事態中に満了する連邦大統領の任期、ならびに、連邦大統領が任期満了前に欠けたときの連邦参議院議長による連邦大統領の権限の行使は、防衛事態の終了後9カ月を経て終了する。
(2)略
(3) 防衛事態の期間中は、連邦議会の解散は禁止される。
◇第115l条 [防衛事態における法律および措置の廃止、防衛事態の終了、講和]
(1) 略
(2) 連邦議会は、いつでも、連邦参議院の同意を得て、連邦大統領が公布する議決によって防衛事態の終了を宣言することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。防衛事態は、その確認の前提となった条件が存在しなくなったときは、遅滞なくその終了を宣言しなけれはならない。
(3)略
<イタリア憲法関係条文抜粋引用>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
・第60条:共和国議会の上院及び下院議員の任期は5年である。各議員の任期は法改正又は戦時の場合を除き延長できない
・第77条:(前略)緊急性を要する必要性ある特別なケースに於いては、政府は効力を有する「暫定措置」をとることが出来る。その場合、大統領は措置設定の当日に議会に対して報告・説明し、法令化の手続きをとる必要がある。その際、議会が解散状態であっても、特別に5日以内に召集される。
法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る
・第78条:議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える



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