3.大日本帝国憲法の告文・憲法発布勅語と日本国憲法の前文の比較 3-1大日本帝国憲法 告文
- 2015/01/23
- 21:58
大日本帝国憲法と日本国憲法を大きく比較した結果、章建てが似ていることは確認出来た。
もっとはっきり言えば、日本国憲法は大日本帝国憲法の章建てに米国憲法本文1~7条(章に該当)を挿入した様な構成となっていることを論評した。
今回からは大日本帝国憲法と日本国憲法の比較を条文レベルにしていきたいと思っている。
そこで先ずは大日本帝国憲法の告文及び憲法発布勅語と日本国憲法の前文を比較してみたい。
ところが大日本帝国憲法の告文及び憲法発布勅語は現代日本人には馴染が薄くなってしまった文語体で書かれており「読むだけで難しい」との状態にある。
そこで、不敬を百も承知の上、勝手に現代語に意訳させていただいた。
この現代語訳の目的は意味・理念の理解にあるので厳密な意味での現代語訳ではない。
意訳だとご理解いただき度い。多分、訳し方には異論があると思うので意味・理念的に致命的な間違いがある場合にはコメントをいだたき度い。コメント内容に得心した場合には適宜訂正をすること吝かではない。
<Fact・勝手な意訳>
大日本帝国憲法 告文
私(明治天皇)は神武天皇から始まる我が国歴代天皇の御神霊に誓って国民の皆さんに告げます。
私は三種の神器とともに御神霊の皇位を正統に継承し、伝統文化を保持し、決して失墜することのない様にし、また、我が国の歴史をかえりみて、世の中の進歩・向上していく機運や傾向、人倫の発達を我が国歴史の遺訓に則り(我が国の良き伝統)としてこれを推進していく所存です。
ここに皇室典範と憲法を制定しその条章を明示し、皇室では子孫がこれにより従うところとし、臣民(国民)には天皇(国家運営)を補佐する道を広めて永遠に憲法に従うようにして、益々大事業(国家運営統治)の基礎を強固にして臣民(国民)の幸福を増進する為にここに皇室典範および憲法を制定するものです。
良く考えればわかりますが、これは以前から続いてきた我が国の良き伝統として我が国歴代天皇が子孫である私(明治天皇とその子孫)に言い残した国家運営の規範に従うこととに他なりません。
時代が私(明治天皇)の番となり、国家運営をするにあたり、神武天皇から始まる我が国歴代天皇の御威光と我が先帝(孝明天皇)の御威光に頼り、そのお助けを祈願して、あわせて私(明治天皇)の現在および将来に於いて、率先してこの憲法を実行し、憲法に背くことが無いようにすることを誓います。
*1皇祖皇宗:
皇祖とは初代天皇の神武天皇のこと。皇宗とは今に至るまでの歴代の天皇、皇統のこと。
古事記・日本書紀は我が国にとって聖書にあたる民族・我が国の成り立ちの物語であり、単なる正統性のレベルではなく我が国の歴史の背骨であるとの概念を抱合していると評価している。
*2仁徳天皇の民のかまど:
我が国の良き伝統の典型例。仁徳天皇は高台にのぼって家々を見渡したところ、炊事の煙が立上っておらず人々は貧しい生活をしているのだと気づき、3年間の年貢等を免除。
そのため仁徳天皇の着物や履物は破れてもそのままにし宮殿が荒れ果ててもそのままにしていた。そして3年後、気候も順調で国民は豊かになり、高台に立つと炊事の煙があちこちに上がっているのが見えた。それを見て仁徳天皇はたいそう喜ばれた。
我が国天皇は国民を「おおみたから」と呼び、国民を奴隷として搾取する対象とは見ておらず宝だとし、仁徳天皇は困窮者を救い病者を慰問し孤児や寡婦を扶助したと日本書紀に書かれている。
<分析・意見>
大日本帝国憲法が公布されたのは明治22年(1889年)。
大政奉還後22年とかなり長い期間が過ぎた様に感じるかもしれないが、幕藩体制から近代国家を目指したあの時代に、何もないのによくぞその期間で憲法制定出来たものだと感じている。
さて、告文であるが、勝手な意訳にある通り、以下のことを明示していると理解している。
・広く国民に公知するとの姿勢。
・我が国の国体である皇祖皇宗に誓う形式=西洋で言えば「神に誓う」と同じ意味。
・憲法・皇室典範を制定し、その決まりに自分は従うと天皇自身が宣言している。
・基本理念は従前からの我が国の規範に沿ったものだとの説明。
・臣民(国民)の幸福を増進する為だとの日本の良き伝統に則っていることの説明。
・最後に天皇自身がこの決まりに従うと再度の宣言をしている。
憲法が自身をも規程するとの形式は西洋の立憲君主制に似ているが、そもそも我が国天皇は仁徳天皇の民のかまどの故事にある通り、西洋の絶対王政とは国民に対する姿勢が全然違う。従い、この宣言は西欧での絶対王政を制限する立憲君主制とは歴史的意味がまった逆で君民一体の我が国の国柄に沿った姿勢に立った上での「憲法を守る」というものだと理解している。
告文にも我が国国柄のままにやっていきますよ、との明記があることは重要な点だと考えている。
また、識字率が当時にあっては抜群に高い我が国で、告文の対象が国民全般であり、対象者が限定されてないことも重要だと考えている。
大日本帝国憲法は「臣民(国民)の幸福を増進する為」だと天皇陛下自身が我が国国柄に沿った国民重視を明示していることは忘れてはならない重要点である。
<長くなったので項を分けます。>
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