通常国会閉会に伴う首相記者会見
- 2017/06/21
- 19:51
通常国会閉会に伴う首相記者会見

今年(2017年)1月20日にはじまった第193回通常国会は、150日の会期となる6月18日に閉会したが、6月18日は日曜日である為に、先週末の16日金曜日に衆参両院本会議にて閉会に向けた手続きが行われ、実質的には16日に閉会した。
国会閉会に伴い安倍首相は翌19日に、今国会の総括及び今後についての記者会見を開いた。その様子は、文末脚注(*1)の首相官邸HPにある動画及び記事で確認出来るが、その中から、主として憲法関連について論述する。
首相記者会見は、先ず、安倍首相の「冒頭発言」があり、その後に記者との「質疑応答」が行われる形式である。
このうち、「冒頭発言」では、憲法改正について特に触れられていない。
「憲法」との言葉が出てくるのは、他の施策のタイムフレームの修飾語として「憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら」との箇所だけである。
これは、改憲発議は、「国会が発議し」て国民に提案するものだとの憲法第96条規定(*2)に従い、行政府の長である総理大臣としての立場での発言として、憲法改正については触れていないのだと解される。
一方、記者との質疑応答では、記者からの憲法改正時期及び自民党の動きに関する質問を受け、安倍首相は、自民党総裁でもあるので、自民党での憲法改正に関する動き等を具体的に答えている。その要約は以下の通りである。
①:自民党・憲法改正推進本部で、衆参憲法審査会に提出する具体的改正案の検討が始まっている。
②:その改正案を国会の憲法審査会にまだ提出していない現時点では、その後のスケジュールなどを言う段階ではない。
③:与野党を越えて建設的な議論を行える様な自民党提案となる様に【中身の検討を優先したい。】
上記要約の①にある「自民党・憲法改正推進本部」での「具体的改正案」に関しては、先日6月6日に開催された同本部会合について既に論考している(*3)ので、それを参照願いたいが、その姿勢としては、上記③にある様に、憲法議論を意義あるものにする為に重点項目を4点選び、具体的な議論をやっていくというものである。
知っての通り、所謂「護憲派」がやっていることは、「憲法議論を邪魔して改憲を阻止する」というもので、邪魔をする為に、憲法の中身に入らない神学論争・空理空論を繰り返すとの遷延を続けている(*4)。
そういう不毛な国民不在の茶番に与することがない様にするとの姿勢を安倍首相は示している。これらは、「議論を通じて物事を進めていく」との民主主義原則に則った方針であり、妥当なものである。
以上が今国会閉会に際しての記者会見での憲法関連部分である。
憲法研究との本ブログの立ち位置からは、これで御仕舞なのだが、今国会は、多くの特徴ある議論が行われているので、それについても若干述べておきたい。
◇国会で議論をしない野党
今回の首相記者会見を偏向マスコミ(*5)は、相変わらずの印象操作・見出し詐欺で「報道」している。あたかも安倍首相の国会運営がダメであったかの様な印象を与えることを目的に、「安倍首相「批判の応酬に終始、反省」との見出しをつけている。
この様な「見出し詐欺」は、事実で払拭できるので、首相記者会見の「冒頭発言」の一番最初の部分で、「どんな反省」をしているのかを以下に紹介する。
読めばわかる通り、反省の対象となる事象の原因は、ほぼ総てが民進党や共産党等の野党側によるものだ。
<首相記者会見冒頭発言の出だし部分引用>
昨日、通常国会が閉会しました。
4年前、政権奪還後の最初の通常国会において私は、建設的な議論を行い、結果を出していこう、こう各党各会派に呼び掛けました。
その原点は今なお変わることはありません。
しかし、この国会では建設的議論という言葉からは大きく懸け離れた批判の応酬に終始してしまった。政策とは関係のない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまいました。
国民の皆様に大変申し訳なく感じております。
印象操作のような議論に対して、つい、強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が、結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省しております。
<引用終わり>
安倍首相が掲げている「反省の対象となる事象」は以下の通りである。
①:「建設的議論」とは違う「批判の応酬に終始」。
②:「政策とは関係のない議論ばかり」だった。
③:野党がやっていたのは「印象操作のような議論」
④:「つい、強い口調で反論して」野党を釣り上げてしまった。反省する(笑)
⑤:「政策論争以外の話」ばかりが盛り上がった。
これらのほぼ総てが、野党側の「中身の議論をしない」との審議姿勢が原因のものである。
安倍首相が「反省」しているのは、「ゴメンネ、中身に入ってこない野党に誘い水を向けても相変わらずでした」ということだけだ。これは、作家・百田尚樹氏の新刊「今こそ、韓国に謝ろう」(*6)と同じ、アイロニカルな手法であろう。
◇獣医師既得権益問題
民進党や偏向マスコミは、「加計学園問題」と称して、その意思決定プロセスで、あたかも「総理の関与があった」かの様な「疑惑」を喧伝して「行政がゆがめられ」との印象操作をした。それに対して、国家戦略特区は「行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すもの」だとして、以下のポイント引用の通り、獣医学部新設に関しての公正な意思決定プロセスを安倍首相は紹介している。
マスコミは肝心なポイントを「報道しない自由」で国民の目から隠し、国会では民進党などが、あたかも「違法な関与」があったかの様な印象操作を延々と続けていた。
この件について安倍首相は、記者会見冒頭発言の中盤部分で、偏向マスコミが「報道してこなかった事実」を幾つか開陳している。
ちょっと長いので、別途、文末脚注(*7)で獣医学部新設=国家戦略特区に関する部分を引用したのだが、それでも長いので、ポイントの部分だけを以下に掲げる。
1):国家戦略特区・獣医学部新設に関する意思決定プロセスの紹介
<引用開始>
★①:当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入った、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事は全て公開しています。
・むしろそうした透明で公平、公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。
・半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます。
<引用終わり>
引用した部分の第1段落にある「議事は全て公開しています」は、具体的に何処にあるのかと言うと、内閣府地方創成推進事務局HPの中の国家戦略特区ワーキンググループ・平成27年度・関係省庁等からのヒアリング6月8日にある。(*8)
その議事録には、最初から文科省は「獣医学部の定員は増やさない」との規制を前面に出して否定的な意見を述べていることが記録されている。所謂「獣医は足りている」という話である。
圧巻は後半である。獣医学部の新設を認めないのは質の維持の為だとの論を文科省・農水省の官僚は展開するが、獣医師は国家試験の合否で質的問題をコントロールしており、獣医学部の定員を増やさないとの量的コントロールが何故必要なのか、と民間議員から質問が発せられる。
また、同じく国家試験で質的問題をクリアしている弁護士を例にして、法学部や法科大学院の定員規制はなく量的コントロールをまったくしていない事例との整合性を問われ、官僚達は納得性ある回答を出来ずにいることが記録されている。
ここら辺は、霞が関話法で書かれている議事録(*8)を読むよりも、それらを分かり易く解説・論考している動画があるので、お時間があれば、それを視聴することをお勧めする。
<お勧めの議事録解説>
ふわっち:すみれ(2017/6/18 22:35 配信)
タイトル:JKすみれの加計関係の議事録を漁ってみたの巻(◉◞◟◉`
https://whowatch.tv/archives/2559009
※URLをクリックしていただくと動画を視聴できる。会員登録等は不要である。
尚、タイトルの「JKすみれ」のJKを誤解してはいけない。
「J 充分にK高齢」とか「J熟女K怖い」の方が可能性は高いのだが、動画をご覧いただければJKとは「J熟慮K考察」のことだとわかるであろう。
話を戻す。
加計学園の獣医学部新設に対して「疑惑」をもっとも吹聴していたのは民進党の玉木雄一郎議員である。同議員は、紹介した議事録にある議論済みの意思決定プロセスとは無関係に、議事録冒頭で文科省の官僚が言っていた否定的理屈に戻って、それに「関与疑惑」をふりかけて国会で騒いでいたのである。
ネット情報では、同議員の父親と弟が獣医師であり、同議員も獣医師会から献金を受けていたとの話が多々ある。これらは事実確認をしていないので確信的なことは書けないが、国家戦略特区の委員からは、「激しく抵抗する既得権益側」の一味だと見られている様だ。
詳しくは文末脚注(*9)で国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員八田達夫氏の5月22日の発言の通りなのだが、最後に、八田氏の発言のポイントを紹介して〆と致したい。
○獣医学部の新設が需給関係を崩し、既存の大学や獣医に不利益をもたらすことは、学部の新設を制限する理由にはなりません
○しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。
○この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
○最後に、明治4年に前島密が国際標準の郵政事業を開設しようとしたときに、飛脚業界が猛反対いたしました。前島は、大変な苦労を強いられました。長い目で見て必要な岩盤規制改革には、摩擦はつきものです。既得権者は必死に抵抗します。今起きていることもそういうことだと思います。
しかし、革命テロ集団取り締まりの新法の成立を妨害・遷延させる為に、国家戦略特区という国民経済の増進策を、逆サイドの既得権益側が邪魔するという構図は、国民不在の異常事態だと感じている。
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【文末脚注】
(*1):第193回通常国会閉会に伴う首相記者会見(憲法部分)
首相官邸HP 平成29年(2017年)6月19日(動画あり)
見出し:◆安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0619kaiken.html
<憲法関係部分抜粋引用>
【安倍総理冒頭発言】部分から
(前略)人づくりこそ次なる時代を切り拓く原動力であります。これまでの画一的な発想にとらわれない「人づくり革命」を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく。そのエンジンとなる有識者会議をこの夏、立ち上げます。いわば「みんなにチャンス!構想会議」であります。そのための体制を来月中に整えます。【憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら、】「人づくり革命」の実現に向けて、総合的かつ大胆な戦略を構想したいと考えています。(後略)
【質疑応答】部分から抜粋
○記者から質問部分:幹事社のTBSの岩田と申します。(中略)また、憲法改正について、自民党は年内に原案をまとめる考えですけれども、そのあたりも見据えまして(中略)自民党内には来年の通常国会で改憲を発議して、次の衆議院選挙と同時に国民投票を行うという案も浮上していますが、この国政選挙と同時に国民投票を行うということの是非も含めてお考えをお願いします。
○首相応答部分から抜粋
(前略)また、憲法改正については、自民党立党以来の党是であります。先日、自民党総裁としての私の考え方をお示ししました。これを受けて、党の憲法改正推進本部において既に衆参の憲法審査会に提出する具体的な改正案の検討が始まっています。その上で、自民党としての提案をいまだ国会の憲法審査会に提出をしていない段階でありまして、現時点においては、その後の発議などについて申し上げる段階ではないと考えています。
そもそも衆参両院の3分の2を形成すること自体がそう簡単なことではない、容易なことではありません。まずは、与野党を越えて、建設的な議論を行えるような、そうした自民党提案となるよう、中身の検討を優先したいと考えています。(後略)
<引用終わり>
(*2):憲法第96条
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第9章・改正
第96条:この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
同第2項 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
<引用終わり>
(*3):6月6日の自民党・憲法改正推進本部会合
2017/06/08投稿:
自民党・憲法改正推進本部2017/06/06
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-689.html
2017/06/09投稿:
続・自民党・憲法改正推進本部2017/06/06
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-690.html
(*4):憲法議論を邪魔することで改憲を阻止するとの戦法
2016/10/28投稿:
憲法議論を避けて蛸壺から騒ぐ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-529.html
2016/11/28投稿:
憲法審査会冒頭で審査を拒否する民進党
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-552.html
(*5):朝日新聞の見出し詐欺
見出し:◆安倍首相「批判の応酬に終始、反省」 会見詳報
朝日新聞デジタル 2017年6月19日19時31分
http://www.asahi.com/articles/ASK6M632XK6MUTFK00X.html
(朝日記事の本文は引用省略)
(*6):作家・百田尚樹氏の新刊「今こそ、韓国に謝ろう」
「今こそ、韓国に謝ろう」百田尚樹著 飛鳥新社(2017/06発売)
商品コード:9784864105569 NDC分類:319.102
第一章 踏みにじられた朝鮮半島/第二章 伝統文化の破壊/第三章 「七奪」の勘違い/第四章 ウリジナルの不思議/第五章 日本は朝鮮人に何も教えなかった/第六章 慰安婦問題/第七章 韓国人はなぜ日本に内政干渉をするのか
(*7):第193回通常国会閉会に伴う首相記者会見(獣医学部部分)
首相官邸HP 平成29年(2017年)6月19日(動画あり)
見出し:◆安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0619kaiken.html
<獣医学部関係部分抜粋引用>
○岩盤のように固い規制や制度に風穴をあける、国家戦略特区法の改正案も成立いたしました。これまでこの制度を活用して、長年認められてこなかった一般企業による農地取得や学校教育に民間の知恵を取り入れる公設民営学校も解禁しました。千葉県の成田市では、国際的な医療人材の育成を目指し、38年ぶりの医学部新設が実現しました。
○国会終盤では、国家戦略特区における獣医学部新設について、行政がゆがめられたかどうかをめぐり、大きな議論となりました。
○獣医学部はこの50年以上新設が全く認められてきませんでした。しかし、今、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題となっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。
○そうした時代のニーズに応える規制改革は、行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感をもって進めることは正に総理大臣としての私の意志であります。
★①当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入った、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事は全て公開しています。
・むしろそうした透明で公平、公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。
・半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます。
○正に岩盤規制改革の突破口です。
○しかし、この特区制度について、この国会では民進党の皆さんから、制度自体を停止する法案が提出されました。改革を後退させようとする発想であり、誠に残念でなりません。
○・岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。
○しかし、私は絶対に屈しません。既得権と手を結ぶことも決してありません。今後とも総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃(やいば)となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく。その決意であります。
<引用終わり>
(*8):「議事は全て公開しています」
内閣府地方創成推進事務局HP 国家戦略特区ワーキンググループ
<平成27年度・関係省庁等からのヒアリング>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/h27.html
<6月8日>文部科学省・農林水産省
国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)
<議事要旨(PDF形式)以下のURL>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf
(*9):「激しく抵抗する既得権益側」
内閣府地方創成推進事務局HP 国家戦略特別区域諮問会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/shimonkaigi.html
<第30回 平成29年5月22日>
議事要旨の中にある有識者議員八田達夫氏発言
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai30/gijiyoushi.pdf
○八田議員 次に、特区における獣医学部新設の審議の経緯について、個人的な考えを申し述べさせていただきたいと思います。本件は52年間にわたって学部新設を認めてこなかった岩盤規制に取り組んだものでございます。
○獣医学部の新設が認められなかったことが、なぜ岩盤規制なのでしょうか。(岩盤規制である理由を述べるとの意)新設の薬局は既存の薬局から100メートル以上離して立地すべしという薬事法における距離制限は違憲であるという最高裁の判決が1975年にありました。薬局の新設は需給関係を崩し、既存の薬局に不利益になります。したがって、既存の薬局が新設を嫌がることは当然であります。しかし、憲法が保障する営業の自由に鑑みると、新設が需給関係を崩すことは薬局の新設を制限する理由にはならないということをこの違憲判決は示しております。
○同様に、獣医学部の新設が需給関係を崩し、既存の大学や獣医に不利益をもたらすことは、学部の新設を制限する理由にはなりません。教育及び研究の質を担保するものであれば、大学や学部の新設は認められるべきものです。しかし、日本では、獣医学部、医学部、薬学部の新設は、需給調整を目的とした文科省の告示で、認められていません。これら3学部に限っては、大学設置審議会で教育や研究の質を審査することすら認めていないのです。営業の自由を保障するする観点、および競争によって利用者の利益を最大化するという観点からは、この文科省告示は明らかに撤廃すべき岩盤規制であります。
○今回の獣医学部の新設は、せめて特区ではこの告示に例外を作ろうという試みです。しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。そうである以上、地域的に獣医学部の必要性が極めて高く、しかも福田内閣以来、永年要求し続けた地域に新設を認めたのは当然であります。この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
○しかし、突破口を作ったことには、大きな意義があります。今後、続けて第二、第三の獣医学部が認められるべきです。
○最後に、明治4年に前島密が国際標準の郵政事業を開設しようとしたときに、飛脚業界が猛反対いたしました。前島は、大変な苦労を強いられました。長い目で見て必要な岩盤規制改革には、摩擦はつきものです。既得権者は必死に抵抗します。今起きていることもそういうことだと思います。しかし、こうしたことで改革のスピードが鈍ることがないよう、国家戦略特区における更なる改革を果敢に断行していきたいと考えます。そのために官邸のサポートを引き続きをお願いしたいと思います。
<引用終わり>
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今年(2017年)1月20日にはじまった第193回通常国会は、150日の会期となる6月18日に閉会したが、6月18日は日曜日である為に、先週末の16日金曜日に衆参両院本会議にて閉会に向けた手続きが行われ、実質的には16日に閉会した。
国会閉会に伴い安倍首相は翌19日に、今国会の総括及び今後についての記者会見を開いた。その様子は、文末脚注(*1)の首相官邸HPにある動画及び記事で確認出来るが、その中から、主として憲法関連について論述する。
首相記者会見は、先ず、安倍首相の「冒頭発言」があり、その後に記者との「質疑応答」が行われる形式である。
このうち、「冒頭発言」では、憲法改正について特に触れられていない。
「憲法」との言葉が出てくるのは、他の施策のタイムフレームの修飾語として「憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら」との箇所だけである。
これは、改憲発議は、「国会が発議し」て国民に提案するものだとの憲法第96条規定(*2)に従い、行政府の長である総理大臣としての立場での発言として、憲法改正については触れていないのだと解される。
一方、記者との質疑応答では、記者からの憲法改正時期及び自民党の動きに関する質問を受け、安倍首相は、自民党総裁でもあるので、自民党での憲法改正に関する動き等を具体的に答えている。その要約は以下の通りである。
①:自民党・憲法改正推進本部で、衆参憲法審査会に提出する具体的改正案の検討が始まっている。
②:その改正案を国会の憲法審査会にまだ提出していない現時点では、その後のスケジュールなどを言う段階ではない。
③:与野党を越えて建設的な議論を行える様な自民党提案となる様に【中身の検討を優先したい。】
上記要約の①にある「自民党・憲法改正推進本部」での「具体的改正案」に関しては、先日6月6日に開催された同本部会合について既に論考している(*3)ので、それを参照願いたいが、その姿勢としては、上記③にある様に、憲法議論を意義あるものにする為に重点項目を4点選び、具体的な議論をやっていくというものである。
知っての通り、所謂「護憲派」がやっていることは、「憲法議論を邪魔して改憲を阻止する」というもので、邪魔をする為に、憲法の中身に入らない神学論争・空理空論を繰り返すとの遷延を続けている(*4)。
そういう不毛な国民不在の茶番に与することがない様にするとの姿勢を安倍首相は示している。これらは、「議論を通じて物事を進めていく」との民主主義原則に則った方針であり、妥当なものである。
以上が今国会閉会に際しての記者会見での憲法関連部分である。
憲法研究との本ブログの立ち位置からは、これで御仕舞なのだが、今国会は、多くの特徴ある議論が行われているので、それについても若干述べておきたい。
◇国会で議論をしない野党
今回の首相記者会見を偏向マスコミ(*5)は、相変わらずの印象操作・見出し詐欺で「報道」している。あたかも安倍首相の国会運営がダメであったかの様な印象を与えることを目的に、「安倍首相「批判の応酬に終始、反省」との見出しをつけている。
この様な「見出し詐欺」は、事実で払拭できるので、首相記者会見の「冒頭発言」の一番最初の部分で、「どんな反省」をしているのかを以下に紹介する。
読めばわかる通り、反省の対象となる事象の原因は、ほぼ総てが民進党や共産党等の野党側によるものだ。
<首相記者会見冒頭発言の出だし部分引用>
昨日、通常国会が閉会しました。
4年前、政権奪還後の最初の通常国会において私は、建設的な議論を行い、結果を出していこう、こう各党各会派に呼び掛けました。
その原点は今なお変わることはありません。
しかし、この国会では建設的議論という言葉からは大きく懸け離れた批判の応酬に終始してしまった。政策とは関係のない議論ばかりに多くの審議時間が割かれてしまいました。
国民の皆様に大変申し訳なく感じております。
印象操作のような議論に対して、つい、強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が、結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった。深く反省しております。
<引用終わり>
安倍首相が掲げている「反省の対象となる事象」は以下の通りである。
①:「建設的議論」とは違う「批判の応酬に終始」。
②:「政策とは関係のない議論ばかり」だった。
③:野党がやっていたのは「印象操作のような議論」
④:「つい、強い口調で反論して」野党を釣り上げてしまった。反省する(笑)
⑤:「政策論争以外の話」ばかりが盛り上がった。
これらのほぼ総てが、野党側の「中身の議論をしない」との審議姿勢が原因のものである。
安倍首相が「反省」しているのは、「ゴメンネ、中身に入ってこない野党に誘い水を向けても相変わらずでした」ということだけだ。これは、作家・百田尚樹氏の新刊「今こそ、韓国に謝ろう」(*6)と同じ、アイロニカルな手法であろう。
◇獣医師既得権益問題
民進党や偏向マスコミは、「加計学園問題」と称して、その意思決定プロセスで、あたかも「総理の関与があった」かの様な「疑惑」を喧伝して「行政がゆがめられ」との印象操作をした。それに対して、国家戦略特区は「行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すもの」だとして、以下のポイント引用の通り、獣医学部新設に関しての公正な意思決定プロセスを安倍首相は紹介している。
マスコミは肝心なポイントを「報道しない自由」で国民の目から隠し、国会では民進党などが、あたかも「違法な関与」があったかの様な印象操作を延々と続けていた。
この件について安倍首相は、記者会見冒頭発言の中盤部分で、偏向マスコミが「報道してこなかった事実」を幾つか開陳している。
ちょっと長いので、別途、文末脚注(*7)で獣医学部新設=国家戦略特区に関する部分を引用したのだが、それでも長いので、ポイントの部分だけを以下に掲げる。
1):国家戦略特区・獣医学部新設に関する意思決定プロセスの紹介
<引用開始>
★①:当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入った、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事は全て公開しています。
・むしろそうした透明で公平、公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。
・半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます。
<引用終わり>
引用した部分の第1段落にある「議事は全て公開しています」は、具体的に何処にあるのかと言うと、内閣府地方創成推進事務局HPの中の国家戦略特区ワーキンググループ・平成27年度・関係省庁等からのヒアリング6月8日にある。(*8)
その議事録には、最初から文科省は「獣医学部の定員は増やさない」との規制を前面に出して否定的な意見を述べていることが記録されている。所謂「獣医は足りている」という話である。
圧巻は後半である。獣医学部の新設を認めないのは質の維持の為だとの論を文科省・農水省の官僚は展開するが、獣医師は国家試験の合否で質的問題をコントロールしており、獣医学部の定員を増やさないとの量的コントロールが何故必要なのか、と民間議員から質問が発せられる。
また、同じく国家試験で質的問題をクリアしている弁護士を例にして、法学部や法科大学院の定員規制はなく量的コントロールをまったくしていない事例との整合性を問われ、官僚達は納得性ある回答を出来ずにいることが記録されている。
ここら辺は、霞が関話法で書かれている議事録(*8)を読むよりも、それらを分かり易く解説・論考している動画があるので、お時間があれば、それを視聴することをお勧めする。
<お勧めの議事録解説>
ふわっち:すみれ(2017/6/18 22:35 配信)
タイトル:JKすみれの加計関係の議事録を漁ってみたの巻(◉◞◟◉`
https://whowatch.tv/archives/2559009
※URLをクリックしていただくと動画を視聴できる。会員登録等は不要である。
尚、タイトルの「JKすみれ」のJKを誤解してはいけない。
「J 充分にK高齢」とか「J熟女K怖い」の方が可能性は高いのだが、動画をご覧いただければJKとは「J熟慮K考察」のことだとわかるであろう。
話を戻す。
加計学園の獣医学部新設に対して「疑惑」をもっとも吹聴していたのは民進党の玉木雄一郎議員である。同議員は、紹介した議事録にある議論済みの意思決定プロセスとは無関係に、議事録冒頭で文科省の官僚が言っていた否定的理屈に戻って、それに「関与疑惑」をふりかけて国会で騒いでいたのである。
ネット情報では、同議員の父親と弟が獣医師であり、同議員も獣医師会から献金を受けていたとの話が多々ある。これらは事実確認をしていないので確信的なことは書けないが、国家戦略特区の委員からは、「激しく抵抗する既得権益側」の一味だと見られている様だ。
詳しくは文末脚注(*9)で国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員八田達夫氏の5月22日の発言の通りなのだが、最後に、八田氏の発言のポイントを紹介して〆と致したい。
○獣医学部の新設が需給関係を崩し、既存の大学や獣医に不利益をもたらすことは、学部の新設を制限する理由にはなりません
○しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。
○この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
○最後に、明治4年に前島密が国際標準の郵政事業を開設しようとしたときに、飛脚業界が猛反対いたしました。前島は、大変な苦労を強いられました。長い目で見て必要な岩盤規制改革には、摩擦はつきものです。既得権者は必死に抵抗します。今起きていることもそういうことだと思います。
しかし、革命テロ集団取り締まりの新法の成立を妨害・遷延させる為に、国家戦略特区という国民経済の増進策を、逆サイドの既得権益側が邪魔するという構図は、国民不在の異常事態だと感じている。
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【文末脚注】
(*1):第193回通常国会閉会に伴う首相記者会見(憲法部分)
首相官邸HP 平成29年(2017年)6月19日(動画あり)
見出し:◆安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0619kaiken.html
<憲法関係部分抜粋引用>
【安倍総理冒頭発言】部分から
(前略)人づくりこそ次なる時代を切り拓く原動力であります。これまでの画一的な発想にとらわれない「人づくり革命」を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく。そのエンジンとなる有識者会議をこの夏、立ち上げます。いわば「みんなにチャンス!構想会議」であります。そのための体制を来月中に整えます。【憲法施行70年の節目である本年、次なる70年、その先の未来をしっかりと見据えながら、】「人づくり革命」の実現に向けて、総合的かつ大胆な戦略を構想したいと考えています。(後略)
【質疑応答】部分から抜粋
○記者から質問部分:幹事社のTBSの岩田と申します。(中略)また、憲法改正について、自民党は年内に原案をまとめる考えですけれども、そのあたりも見据えまして(中略)自民党内には来年の通常国会で改憲を発議して、次の衆議院選挙と同時に国民投票を行うという案も浮上していますが、この国政選挙と同時に国民投票を行うということの是非も含めてお考えをお願いします。
○首相応答部分から抜粋
(前略)また、憲法改正については、自民党立党以来の党是であります。先日、自民党総裁としての私の考え方をお示ししました。これを受けて、党の憲法改正推進本部において既に衆参の憲法審査会に提出する具体的な改正案の検討が始まっています。その上で、自民党としての提案をいまだ国会の憲法審査会に提出をしていない段階でありまして、現時点においては、その後の発議などについて申し上げる段階ではないと考えています。
そもそも衆参両院の3分の2を形成すること自体がそう簡単なことではない、容易なことではありません。まずは、与野党を越えて、建設的な議論を行えるような、そうした自民党提案となるよう、中身の検討を優先したいと考えています。(後略)
<引用終わり>
(*2):憲法第96条
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第9章・改正
第96条:この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
同第2項 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
<引用終わり>
(*3):6月6日の自民党・憲法改正推進本部会合
2017/06/08投稿:
自民党・憲法改正推進本部2017/06/06
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-689.html
2017/06/09投稿:
続・自民党・憲法改正推進本部2017/06/06
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-690.html
(*4):憲法議論を邪魔することで改憲を阻止するとの戦法
2016/10/28投稿:
憲法議論を避けて蛸壺から騒ぐ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-529.html
2016/11/28投稿:
憲法審査会冒頭で審査を拒否する民進党
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-552.html
(*5):朝日新聞の見出し詐欺
見出し:◆安倍首相「批判の応酬に終始、反省」 会見詳報
朝日新聞デジタル 2017年6月19日19時31分
http://www.asahi.com/articles/ASK6M632XK6MUTFK00X.html
(朝日記事の本文は引用省略)
(*6):作家・百田尚樹氏の新刊「今こそ、韓国に謝ろう」
「今こそ、韓国に謝ろう」百田尚樹著 飛鳥新社(2017/06発売)
商品コード:9784864105569 NDC分類:319.102
第一章 踏みにじられた朝鮮半島/第二章 伝統文化の破壊/第三章 「七奪」の勘違い/第四章 ウリジナルの不思議/第五章 日本は朝鮮人に何も教えなかった/第六章 慰安婦問題/第七章 韓国人はなぜ日本に内政干渉をするのか
(*7):第193回通常国会閉会に伴う首相記者会見(獣医学部部分)
首相官邸HP 平成29年(2017年)6月19日(動画あり)
見出し:◆安倍内閣総理大臣記者会見
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0619kaiken.html
<獣医学部関係部分抜粋引用>
○岩盤のように固い規制や制度に風穴をあける、国家戦略特区法の改正案も成立いたしました。これまでこの制度を活用して、長年認められてこなかった一般企業による農地取得や学校教育に民間の知恵を取り入れる公設民営学校も解禁しました。千葉県の成田市では、国際的な医療人材の育成を目指し、38年ぶりの医学部新設が実現しました。
○国会終盤では、国家戦略特区における獣医学部新設について、行政がゆがめられたかどうかをめぐり、大きな議論となりました。
○獣医学部はこの50年以上新設が全く認められてきませんでした。しかし、今、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題となっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります。
○そうした時代のニーズに応える規制改革は、行政をゆがめるのではなく、ゆがんだ行政を正すものです。岩盤規制改革を全体としてスピード感をもって進めることは正に総理大臣としての私の意志であります。
★①当然、その決定プロセスは適正でなければなりません。ですから、国家戦略特区は民間メンバーが入った、諮問会議や専門家を交えたワーキンググループにおいて議論を進め、決定されていきます。議事は全て公開しています。
・むしろそうした透明で公平、公正なプロセスこそが内向きの議論を排除し、既得権でがんじがらめとなった岩盤規制を打ち破る大きな力となる。これが国家戦略特区であります。
・半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます。
○正に岩盤規制改革の突破口です。
○しかし、この特区制度について、この国会では民進党の皆さんから、制度自体を停止する法案が提出されました。改革を後退させようとする発想であり、誠に残念でなりません。
○・岩盤規制の改革には抵抗勢力が必ず存在します。
○しかし、私は絶対に屈しません。既得権と手を結ぶことも決してありません。今後とも総理大臣である私が先頭に立ち、ドリルの刃(やいば)となって、あらゆる岩盤規制を打ち破っていく。その決意であります。
<引用終わり>
(*8):「議事は全て公開しています」
内閣府地方創成推進事務局HP 国家戦略特区ワーキンググループ
<平成27年度・関係省庁等からのヒアリング>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/h27.html
<6月8日>文部科学省・農林水産省
国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)
<議事要旨(PDF形式)以下のURL>
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/150608_gijiyoushi_02.pdf
(*9):「激しく抵抗する既得権益側」
内閣府地方創成推進事務局HP 国家戦略特別区域諮問会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/shimonkaigi.html
<第30回 平成29年5月22日>
議事要旨の中にある有識者議員八田達夫氏発言
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai30/gijiyoushi.pdf
○八田議員 次に、特区における獣医学部新設の審議の経緯について、個人的な考えを申し述べさせていただきたいと思います。本件は52年間にわたって学部新設を認めてこなかった岩盤規制に取り組んだものでございます。
○獣医学部の新設が認められなかったことが、なぜ岩盤規制なのでしょうか。(岩盤規制である理由を述べるとの意)新設の薬局は既存の薬局から100メートル以上離して立地すべしという薬事法における距離制限は違憲であるという最高裁の判決が1975年にありました。薬局の新設は需給関係を崩し、既存の薬局に不利益になります。したがって、既存の薬局が新設を嫌がることは当然であります。しかし、憲法が保障する営業の自由に鑑みると、新設が需給関係を崩すことは薬局の新設を制限する理由にはならないということをこの違憲判決は示しております。
○同様に、獣医学部の新設が需給関係を崩し、既存の大学や獣医に不利益をもたらすことは、学部の新設を制限する理由にはなりません。教育及び研究の質を担保するものであれば、大学や学部の新設は認められるべきものです。しかし、日本では、獣医学部、医学部、薬学部の新設は、需給調整を目的とした文科省の告示で、認められていません。これら3学部に限っては、大学設置審議会で教育や研究の質を審査することすら認めていないのです。営業の自由を保障するする観点、および競争によって利用者の利益を最大化するという観点からは、この文科省告示は明らかに撤廃すべき岩盤規制であります。
○今回の獣医学部の新設は、せめて特区ではこの告示に例外を作ろうという試みです。しかし獣医学部の新設に当たっては、既得権益側が激しく抵抗し、新設するとしても2つ以上は認められないと主張するので、突破口として、まずは一地域に限定せざるを得ませんでした。そうである以上、地域的に獣医学部の必要性が極めて高く、しかも福田内閣以来、永年要求し続けた地域に新設を認めたのは当然であります。この選択が不透明だなどという指摘は全く的外れであります。むしろこれまでこの岩盤規制が維持されてきた政治的背景こそ、メディアは、究明すべきです。
○しかし、突破口を作ったことには、大きな意義があります。今後、続けて第二、第三の獣医学部が認められるべきです。
○最後に、明治4年に前島密が国際標準の郵政事業を開設しようとしたときに、飛脚業界が猛反対いたしました。前島は、大変な苦労を強いられました。長い目で見て必要な岩盤規制改革には、摩擦はつきものです。既得権者は必死に抵抗します。今起きていることもそういうことだと思います。しかし、こうしたことで改革のスピードが鈍ることがないよう、国家戦略特区における更なる改革を果敢に断行していきたいと考えます。そのために官邸のサポートを引き続きをお願いしたいと思います。
<引用終わり>



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