「国民憲法制定」白寿中曽根、相変わらずです。
- 2017/05/13
- 20:15
「国民憲法制定」白寿中曽根、相変わらずです。

副題:今年5月27日で99歳になる中曽根元首相。相変わらずで何よりです。論はご立派です。
白寿とは、漢字の「百」から上の棒「一」を引いて、「白=99」とした長寿99歳の慶事を表す言葉である。1980年代の初期から後期に至る5年間、我国総理大臣を務めた中曽根元首相は、今年5月27日で99歳になる。
NHKニュース(*1)が伝える所によると、中曽根元首相は、今般、『国民憲法制定への道』との書籍を出版するそうだ。同ニュースに書かれている、中曽根元首相の発言要旨は概ね妥当であり、幾つかのポイントを除き、だいたい賛同出来る内容であった。
一方、NHKニュースなので、何かしらの「報道しない自由」を行使しているのではないかと思い他のニュースを探したところ、産経ニュース(*2)がより詳しく報道していた。
産経ニュースも文末脚注(*2)で全文引用したが、そこで語られている事を基に以下、少々論評する。
※以下、<>でくくった部分は産経ニュースからの抜粋引用である。
1:<○連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策のもとでできた憲法は、マッカーサー(元帥)の超法規的な力が働いていたと言わざるをえない。>
↓
中曽根元首相は「現行憲法はGHQ押し付け憲法」との史実をサラっと述べている。まことに結構、その通りである。
多分、中曽根元首相は、昨年11月の衆議院・憲法審査会での、連立与党であるはすの公明党(北側)が、あたかも「押し付け憲法」とのではないとの史実ネジ曲げ発言(*3)をしていることを意識してのことだと思われる。現行憲法は、間違いなく「押し付け憲法」である。
それは、憲法制定時の経緯を時系列で見れば明らかだ。(*4)
1945年(昭和20年)10月4日、マッカーサーの示唆により憲法改正の作業が開始された。
翌1946年(昭和21年)2月8日に日本側の「憲法改正要領」(松本案)をGHQに提出したが、その数日後の2月13日に、ホイットニー等がGHQ草案を吉田外相他に手交し、松本案の拒否を示達している。
この押し付けの経緯については、憲法1条(天皇条項)の変遷を時系列にした考察(*5)をしているので、是非、ご一読いただきたい。先人の苦労の跡がわかると思う。
2:<○9条の起源を一部では当時の幣原喜重郎首相がマッカーサーへ申し出たものといわれるが、明らかな間違いだ。マッカーサー草案が付された昭和21年2月の閣議で幣原首相は明確に反対している。当時の秘書の記録にも「9条については反対」と首相自身が発言していることが記されている。>
↓
中曽根元首相は「憲法9条幣原起源」との最近提示された捏造話を、幣原と同時代を生きた「生き証人」として、サラっと「あれはウソだから」と述べている。まことに結構、その通りである。
中曽根元首相は、昨年2016年2月25日の報道ステーションの捏造を念頭に置いて発言している。この捏造話は、多分、同番組に出ていた護憲芸人・木村草太あたりが最近作り上げたお伽噺である。
穏健路線の「幣原外交」で知られる幣原喜重郎は、我国総理大臣を務めた人物である。
当時、GHQは「人質」として、我国の根幹である天皇陛下と皇統の生殺与奪の権を握っていた。そういう状況下で、「新憲法」との難題を「松本案」としてGHQに提示したものの、ちゃぶ台返しをされたのが幣原総理である。
1)松本4原則(1945年12月8日)
↓
2)マッカーサー3原則(1946年2月3日)
↓
3)松本案「憲法改正要綱」をGHQに提出・拒否(1946年2月8日)
↓
4)GHQ草案を日本側に手交(1946年2月13日)
↓
5)以降、GHQ草案に基づき調整が続き1946年11月3日公布、1947年5月3日施行
↓
6)サンフランシスコ講和条約1951年9月8日調印、1952年4月28日発効
このうち、1)の松本案は、結局は、3)で拒否されており、5)での調整も根本的部分の調整は行われていない。
幣原喜重郎ほどの人物が自身が総理の時代に起草した「松本案」とまったく違うことを自身が言いだすことに違和感を持たない感性が日本人的ではないことにお気づきだろうか?
幣原喜重郎は我が国国体の本義たる皇統の維持を最優先に考え行動した人物であり、あの時代にあって誠に正しい判断基準である。
GHQの上位「極東委員会」が天皇不起訴確定したのは1946年(昭和21年)4月3日とされているが、それはGHQ草案ベースの「憲法改正草案要領」を内閣が発表した3月6日から、約1ヶ月後のことである。
中曽根元首相は、幣原が率いる党の国会議員であり、幣原と同時代を生きた「生き証人」として、捏造話をちゃんと否定しているのである。
報道ステーションの捏造話は、極めて悪質なる「後年になってから切り貼りで創り上げられたウソ話」であるので、別項にて論じる予定である。
3.<○淵源(えんげん)は20年9月に発表された「占領の基本方針」であり、それにしたがって「マッカーサー三原則(天皇の地位、戦争放棄、封建制度廃止)」が実行された。「基本方針」は、日本が再びアメリカの脅威とならないこと、他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立することを目的に武装解除と非軍国主義化を断行するものであった。>
↓
ここで言われていることも、まったくに正しい。
「占領の基本方針」と、それに基づき提示された「マッカッサー3原則」に関して、「柔らかい言葉」で語っている。
「柔らかい言葉」とは、「他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立する」の部分のことである。実態は、そんなものではなく、ナチスドイツに対する懲罰的占領政策である初期モーゲンソープランを流用した、国家破壊占領政策である。
先に記した文末脚注(*4)「憲法制定時経緯の時系列」に「占領政策」の一旦があるので、それを紹介する。
「1945年・昭和20年・9月12日」
・マッカーサー記者会見、日本は四等国転落。強国復活は不可能
同様、マッカーサー3原則とは、けして「他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立する」ようなものではなく、国家の存立基盤を認めない亡国強制する内容である。
その様なものが、現行憲法の前文と9条に反映されているのが現行憲法である。
マッカーサー3原則に関しては、以前に論評(*6)してあるので、是非とも、ご一読いただきたい。
そこでは、憲法の前文+9条がマッカーサー3原則のⅡそのものだということを、マッカーサー3原則の文章と前文、9条を併記して論証してある。
国家主権でもっとも大事な自己決定権がない、自身の命の生殺与奪の権を「「平和を愛する諸国民」に委ねるとの奴隷状態の宣言となっているのである。
現行憲法の前文+9条との猛毒を押し付けたマッカーサーだが、朝鮮半島にて戦争が勃発すると、この「原則」を無視して、占領時主権喪失期日本を再武装させた。
サンフランシスコ講和条約発効後、この憲法の条文と現実の矛盾を我が国先人達は、日本人の安全保障確保の為に「解釈」でしのいできたのが現実だ。
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【文末脚注】
(*1):NHKニュース
NHK WEB NEWS 5月12日 5時08分
見出し:◆中曽根元首相「改憲に勇断を」 自衛隊の存在位置づけるべき
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170512/k10010978521000.html
記事:○中曽根元総理大臣は、憲法施行から70年を迎えたのにあわせて著書を出版することになり、この中で「改憲の環境は整いつつあり、勇断を持って進むべきだ」と訴えるとともに、戦力の不保持を定めた9条2項を改正し、自衛隊の存在を憲法に位置づけるべきだと提案しています。
○今月27日に99歳となる中曽根元総理大臣は、憲法施行から70年を迎えたのにあわせて、『国民憲法制定への道』と題してみずからの憲法論をまとめた著書を今月下旬に出版することになりました。
○この中で、中曽根氏は現行憲法について「GHQ=連合国軍総司令部の最高司令官、マッカーサーの超法規的な力が働いてできたものだったと言わざるをえない。日本の国民の総意に基づく新しい憲法を国民みずからがつくるべきだった」と指摘しています。
○この中で、中曽根氏は現行憲法について「GHQ=連合国軍総司令部の最高司令官、マッカーサーの超法規的な力が働いてできたものだったと言わざるをえない。日本の国民の総意に基づく新しい憲法を国民みずからがつくるべきだった」と指摘しています。
○そのうえで中曽根氏は、衆参両院で憲法改正に前向きな勢力が改正の発議に必要な3分の2の議席を占めていることを踏まえ、「改憲の環境は整いつつある。政治は、改正のための障害を一つ一つ取り除きながら、勇断を持って進むべきときにきている」と訴えています。
○そして、憲法9条については、1項の『戦争放棄』はそのまま残し、『戦力の不保持』を定めた2項を改正し、自衛隊の存在を憲法に位置づけるべきだと提案しています。
<引用終わり>
(*2):産経ニュース
産経ニュース 2017.5.12 07:18更新
見出し:◆中曽根康弘元首相の“最後の提言”「憲法施行70周年によせて」要旨
http://www.sankei.com/politics/news/170512/plt1705120013-n1.html
記事本文:○連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策のもとでできた憲法は、マッカーサー(元帥)の超法規的な力が働いていたと言わざるをえない。
○9条の起源を一部では当時の幣原喜重郎首相がマッカーサーへ申し出たものといわれるが、明らかな間違いだ。マッカーサー草案が付された昭和21年2月の閣議で幣原首相は明確に反対している。当時の秘書の記録にも「9条については反対」と首相自身が発言していることが記されている。
○淵源(えんげん)は20年9月に発表された「占領の基本方針」であり、それにしたがって「マッカーサー三原則(天皇の地位、戦争放棄、封建制度廃止)」が実行された。「基本方針」は、日本が再びアメリカの脅威とならないこと、他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立することを目的に武装解除と非軍国主義化を断行するものであった。
○主権者たる日本民族の意志や在り方が国民に問われることもなく改正は進められ、強い疑問と義憤を覚えずにはいられなかった。日本の歴史にとって汚点ともいうべき敗戦と占領という状況から一日も早く抜け出し、日本を独立させ国際社会に復帰させることが、私にとって政治的大目標であった。二度とあのような悲劇を起こさぬ意味でも、国家統治の根幹をなす憲法はもっとも重要であると考えてきた。
○法治国家では、国民の権利は国家権力の裏付けと保証なしには機能しない。国家が緊急的な危機に直面したときに、混乱を回避し速やかな国民生活の復旧を図るためにも個々の権利が一時的に制約されることはあってしかるべきだ。
○国防、テロ、大規模自然災害等の緊急事態に対しては首相へ一時的に権力を集中させ、基本的人権の制約など憲法条項の一時的停止を可能とする。緊急事態条項の独り歩きを許さないためにも、政府に対する国会の事前事後の承認手続きを必要とする。現行憲法に非常事態、国家緊急事態に対する十分な条項がないまま今日まで来たのは統治機能の瑕疵(かし)欠落であり、放置する責任は政治の不作為、怠慢と言わざるをえない。
○マッカーサーの虎の威を借り推し進めようとした平和主義も朝鮮戦争の勃発や東西冷戦によってもろくも形骸化し、国家にとって重要な国防の位置づけを曖昧にしてしまった。自衛のための国防を憲法の中にしっかりと位置づけるべきだ。
○9条に対しては、1項の「戦争放棄」はそのまま残す。2項の戦力不保持と国の交戦権否定は、安全保障環境が厳しくなる中で自分の国は自分で守るという意思を明確に示しておく必要がある。自衛権を認め、自衛隊を自衛軍として正式に承認する必要がある。自衛権は専守防衛であることに変わりはなく、自衛権は個別、集団の区別はなく一体と考えるべきだ。
○自衛隊の国際社会への貢献を一層明確にし、国連や地域の安全保障機構の下で国際平和の維持や人道的支援に取り組むための根拠を憲法上明らかにしておく必要がある。国際協力における必要最小限の武力行使や自衛権の発動は国会承認を前提とし、指揮権発動権の首相への帰属、文民統制を明確にした上で民主的統制を担保する必要がある。「国家安全保障基本法」などの一般法の下に、どのような場合にどのような協力をするのか具体的に基準を決めておく必要があろう。
○明治以降、1つの憲法制度のもとに政治経済社会が成熟を迎えるとすれば、太平洋戦争と敗戦を境とする70~80年が1つの周期と考えねばならない。来年の明治150年を考えれば、現行憲法による社会全体の捉え方も見直す時期に来ている。
○特に、安全保障分野では解釈も限界になりつつある。先進国の一員となった日本に、国際社会はその立場にふさわしい役割を求めている。戦争を知る世代にとっては、「戦力不保持」が非現実的なものであることを知る。われわれ世代が消え去った後、戦力放棄条項の独り歩きとともに自縄自縛となることを懸念、心配する。
○現下、今上天皇の退位問題が大きな議題となっている。国の在り方の根幹である天皇制度を考えるとき、天皇制の永続性との兼ね合いで支障のなきよう十分にもじゅうぶんな注意を払い、万全な手立てを計る必要がある。政府も国民感情や世論に左右されることなく、歴史と中長期の視野に立った冷静な議論を積み重ね、国民に説明を尽くす形で判断してゆかねばならない。
○100歳を目前にする年齢となり、日本国憲法施行70年を期に、私の憲法論を総括していく必要もある。こうしたことを考える上で2つの思いがあった。ひとつには、志を同じくする人たちへのなにがしかの参考となること。同時にこの際、自らがたどった憲法改正の道を学術的な視点を加えながら振り返ることで、今の国会での憲法論議活性化の一助となればとの思いからだ。
○繁栄の代償として日本のさまざまな分野に巣くう欠陥を克服し、新しい国の在り方とともに失った美徳や規範を取り戻すための青写真が必要とされる。それらは憲法に集約される。明治の日本立国以来、初めて国民の手によってつくられた真の主権在民の憲法でなければならない。
<引用終わり>
(*3):公明党の史実ネジ曲げ
2016/12/23投稿:
憲法審査会2-2・衆議院2016/11/17
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-568.html
公明党・北側一雄発言
「一部に、占領下で作られた「押し付け憲法」であり、自主憲法の制定が必要との意見があるが、賛同できない」
「「押し付け憲法」という主張自体、今や意味がないと言わざるを得ない」
(*4):憲法制定時経緯の時系列
2016/05/23投稿:
歴史年表・戦後史部分の概観
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-419.html
<1945~1946年占領期憲法改正と東京裁判に関する史実>
○1945年・昭和20年
・9月12日:マッカーサー記者会見、日本は四等国転落。強国復活は不可能
・10月4日:マッカーサーの示唆により憲法改正の作業が開始
・11月20日:ニュールンベルグ裁判開廷
○1946年・昭和21年
・1月19日:マッカーサー「極東国際軍事裁判所」設立を宣言
・2月3日:マッカーサー3原則(2月4日との説も)
・2月8日:日本側「憲法改正要領」(松本案)GHQに提出
・2月12日:GHQ草案完成
・2月13日:ホイットニー等がGHQ草案を吉田外相他に手交。松本案拒否
・2月22日:GHQ草案の事実上の受入を閣議決定
・2月26日:GHQ草案ベース憲法草案起草を閣議決定
・3月6日:GHQ草案ベースの「憲法改正草案要領」を内閣が発表
・4月3日:GHQの上位「極東委員会」が天皇不起訴確定した日とされる
<抜粋引用終わり>
(*5):憲法1条の変遷に見る先人達の苦労の跡
2017/02/28投稿:
続・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-616.html
2017/03/01投稿:
続々・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-617.html
2017/03/02投稿:
(資料編)続&続々・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-618.html
2017/03/03投稿:
完・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-619.html
(*6):マッカーサー3原則
2016/07/31投稿:
(解説編2)資料・マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-469.html※憲法の前文+9条がマッカーサー3原則のⅡそのものだということを、マッカーサー3原則の文章と前文、9条を併記して論証した。
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副題:今年5月27日で99歳になる中曽根元首相。相変わらずで何よりです。論はご立派です。
白寿とは、漢字の「百」から上の棒「一」を引いて、「白=99」とした長寿99歳の慶事を表す言葉である。1980年代の初期から後期に至る5年間、我国総理大臣を務めた中曽根元首相は、今年5月27日で99歳になる。
NHKニュース(*1)が伝える所によると、中曽根元首相は、今般、『国民憲法制定への道』との書籍を出版するそうだ。同ニュースに書かれている、中曽根元首相の発言要旨は概ね妥当であり、幾つかのポイントを除き、だいたい賛同出来る内容であった。
一方、NHKニュースなので、何かしらの「報道しない自由」を行使しているのではないかと思い他のニュースを探したところ、産経ニュース(*2)がより詳しく報道していた。
産経ニュースも文末脚注(*2)で全文引用したが、そこで語られている事を基に以下、少々論評する。
※以下、<>でくくった部分は産経ニュースからの抜粋引用である。
1:<○連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策のもとでできた憲法は、マッカーサー(元帥)の超法規的な力が働いていたと言わざるをえない。>
↓
中曽根元首相は「現行憲法はGHQ押し付け憲法」との史実をサラっと述べている。まことに結構、その通りである。
多分、中曽根元首相は、昨年11月の衆議院・憲法審査会での、連立与党であるはすの公明党(北側)が、あたかも「押し付け憲法」とのではないとの史実ネジ曲げ発言(*3)をしていることを意識してのことだと思われる。現行憲法は、間違いなく「押し付け憲法」である。
それは、憲法制定時の経緯を時系列で見れば明らかだ。(*4)
1945年(昭和20年)10月4日、マッカーサーの示唆により憲法改正の作業が開始された。
翌1946年(昭和21年)2月8日に日本側の「憲法改正要領」(松本案)をGHQに提出したが、その数日後の2月13日に、ホイットニー等がGHQ草案を吉田外相他に手交し、松本案の拒否を示達している。
この押し付けの経緯については、憲法1条(天皇条項)の変遷を時系列にした考察(*5)をしているので、是非、ご一読いただきたい。先人の苦労の跡がわかると思う。
2:<○9条の起源を一部では当時の幣原喜重郎首相がマッカーサーへ申し出たものといわれるが、明らかな間違いだ。マッカーサー草案が付された昭和21年2月の閣議で幣原首相は明確に反対している。当時の秘書の記録にも「9条については反対」と首相自身が発言していることが記されている。>
↓
中曽根元首相は「憲法9条幣原起源」との最近提示された捏造話を、幣原と同時代を生きた「生き証人」として、サラっと「あれはウソだから」と述べている。まことに結構、その通りである。
中曽根元首相は、昨年2016年2月25日の報道ステーションの捏造を念頭に置いて発言している。この捏造話は、多分、同番組に出ていた護憲芸人・木村草太あたりが最近作り上げたお伽噺である。
穏健路線の「幣原外交」で知られる幣原喜重郎は、我国総理大臣を務めた人物である。
当時、GHQは「人質」として、我国の根幹である天皇陛下と皇統の生殺与奪の権を握っていた。そういう状況下で、「新憲法」との難題を「松本案」としてGHQに提示したものの、ちゃぶ台返しをされたのが幣原総理である。
1)松本4原則(1945年12月8日)
↓
2)マッカーサー3原則(1946年2月3日)
↓
3)松本案「憲法改正要綱」をGHQに提出・拒否(1946年2月8日)
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4)GHQ草案を日本側に手交(1946年2月13日)
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5)以降、GHQ草案に基づき調整が続き1946年11月3日公布、1947年5月3日施行
↓
6)サンフランシスコ講和条約1951年9月8日調印、1952年4月28日発効
このうち、1)の松本案は、結局は、3)で拒否されており、5)での調整も根本的部分の調整は行われていない。
幣原喜重郎ほどの人物が自身が総理の時代に起草した「松本案」とまったく違うことを自身が言いだすことに違和感を持たない感性が日本人的ではないことにお気づきだろうか?
幣原喜重郎は我が国国体の本義たる皇統の維持を最優先に考え行動した人物であり、あの時代にあって誠に正しい判断基準である。
GHQの上位「極東委員会」が天皇不起訴確定したのは1946年(昭和21年)4月3日とされているが、それはGHQ草案ベースの「憲法改正草案要領」を内閣が発表した3月6日から、約1ヶ月後のことである。
中曽根元首相は、幣原が率いる党の国会議員であり、幣原と同時代を生きた「生き証人」として、捏造話をちゃんと否定しているのである。
報道ステーションの捏造話は、極めて悪質なる「後年になってから切り貼りで創り上げられたウソ話」であるので、別項にて論じる予定である。
3.<○淵源(えんげん)は20年9月に発表された「占領の基本方針」であり、それにしたがって「マッカーサー三原則(天皇の地位、戦争放棄、封建制度廃止)」が実行された。「基本方針」は、日本が再びアメリカの脅威とならないこと、他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立することを目的に武装解除と非軍国主義化を断行するものであった。>
↓
ここで言われていることも、まったくに正しい。
「占領の基本方針」と、それに基づき提示された「マッカッサー3原則」に関して、「柔らかい言葉」で語っている。
「柔らかい言葉」とは、「他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立する」の部分のことである。実態は、そんなものではなく、ナチスドイツに対する懲罰的占領政策である初期モーゲンソープランを流用した、国家破壊占領政策である。
先に記した文末脚注(*4)「憲法制定時経緯の時系列」に「占領政策」の一旦があるので、それを紹介する。
「1945年・昭和20年・9月12日」
・マッカーサー記者会見、日本は四等国転落。強国復活は不可能
同様、マッカーサー3原則とは、けして「他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立する」ようなものではなく、国家の存立基盤を認めない亡国強制する内容である。
その様なものが、現行憲法の前文と9条に反映されているのが現行憲法である。
マッカーサー3原則に関しては、以前に論評(*6)してあるので、是非とも、ご一読いただきたい。
そこでは、憲法の前文+9条がマッカーサー3原則のⅡそのものだということを、マッカーサー3原則の文章と前文、9条を併記して論証してある。
国家主権でもっとも大事な自己決定権がない、自身の命の生殺与奪の権を「「平和を愛する諸国民」に委ねるとの奴隷状態の宣言となっているのである。
現行憲法の前文+9条との猛毒を押し付けたマッカーサーだが、朝鮮半島にて戦争が勃発すると、この「原則」を無視して、占領時主権喪失期日本を再武装させた。
サンフランシスコ講和条約発効後、この憲法の条文と現実の矛盾を我が国先人達は、日本人の安全保障確保の為に「解釈」でしのいできたのが現実だ。
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【文末脚注】
(*1):NHKニュース
NHK WEB NEWS 5月12日 5時08分
見出し:◆中曽根元首相「改憲に勇断を」 自衛隊の存在位置づけるべき
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170512/k10010978521000.html
記事:○中曽根元総理大臣は、憲法施行から70年を迎えたのにあわせて著書を出版することになり、この中で「改憲の環境は整いつつあり、勇断を持って進むべきだ」と訴えるとともに、戦力の不保持を定めた9条2項を改正し、自衛隊の存在を憲法に位置づけるべきだと提案しています。
○今月27日に99歳となる中曽根元総理大臣は、憲法施行から70年を迎えたのにあわせて、『国民憲法制定への道』と題してみずからの憲法論をまとめた著書を今月下旬に出版することになりました。
○この中で、中曽根氏は現行憲法について「GHQ=連合国軍総司令部の最高司令官、マッカーサーの超法規的な力が働いてできたものだったと言わざるをえない。日本の国民の総意に基づく新しい憲法を国民みずからがつくるべきだった」と指摘しています。
○この中で、中曽根氏は現行憲法について「GHQ=連合国軍総司令部の最高司令官、マッカーサーの超法規的な力が働いてできたものだったと言わざるをえない。日本の国民の総意に基づく新しい憲法を国民みずからがつくるべきだった」と指摘しています。
○そのうえで中曽根氏は、衆参両院で憲法改正に前向きな勢力が改正の発議に必要な3分の2の議席を占めていることを踏まえ、「改憲の環境は整いつつある。政治は、改正のための障害を一つ一つ取り除きながら、勇断を持って進むべきときにきている」と訴えています。
○そして、憲法9条については、1項の『戦争放棄』はそのまま残し、『戦力の不保持』を定めた2項を改正し、自衛隊の存在を憲法に位置づけるべきだと提案しています。
<引用終わり>
(*2):産経ニュース
産経ニュース 2017.5.12 07:18更新
見出し:◆中曽根康弘元首相の“最後の提言”「憲法施行70周年によせて」要旨
http://www.sankei.com/politics/news/170512/plt1705120013-n1.html
記事本文:○連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策のもとでできた憲法は、マッカーサー(元帥)の超法規的な力が働いていたと言わざるをえない。
○9条の起源を一部では当時の幣原喜重郎首相がマッカーサーへ申し出たものといわれるが、明らかな間違いだ。マッカーサー草案が付された昭和21年2月の閣議で幣原首相は明確に反対している。当時の秘書の記録にも「9条については反対」と首相自身が発言していることが記されている。
○淵源(えんげん)は20年9月に発表された「占領の基本方針」であり、それにしたがって「マッカーサー三原則(天皇の地位、戦争放棄、封建制度廃止)」が実行された。「基本方針」は、日本が再びアメリカの脅威とならないこと、他国の権利を尊重する平和的な政府を樹立することを目的に武装解除と非軍国主義化を断行するものであった。
○主権者たる日本民族の意志や在り方が国民に問われることもなく改正は進められ、強い疑問と義憤を覚えずにはいられなかった。日本の歴史にとって汚点ともいうべき敗戦と占領という状況から一日も早く抜け出し、日本を独立させ国際社会に復帰させることが、私にとって政治的大目標であった。二度とあのような悲劇を起こさぬ意味でも、国家統治の根幹をなす憲法はもっとも重要であると考えてきた。
○法治国家では、国民の権利は国家権力の裏付けと保証なしには機能しない。国家が緊急的な危機に直面したときに、混乱を回避し速やかな国民生活の復旧を図るためにも個々の権利が一時的に制約されることはあってしかるべきだ。
○国防、テロ、大規模自然災害等の緊急事態に対しては首相へ一時的に権力を集中させ、基本的人権の制約など憲法条項の一時的停止を可能とする。緊急事態条項の独り歩きを許さないためにも、政府に対する国会の事前事後の承認手続きを必要とする。現行憲法に非常事態、国家緊急事態に対する十分な条項がないまま今日まで来たのは統治機能の瑕疵(かし)欠落であり、放置する責任は政治の不作為、怠慢と言わざるをえない。
○マッカーサーの虎の威を借り推し進めようとした平和主義も朝鮮戦争の勃発や東西冷戦によってもろくも形骸化し、国家にとって重要な国防の位置づけを曖昧にしてしまった。自衛のための国防を憲法の中にしっかりと位置づけるべきだ。
○9条に対しては、1項の「戦争放棄」はそのまま残す。2項の戦力不保持と国の交戦権否定は、安全保障環境が厳しくなる中で自分の国は自分で守るという意思を明確に示しておく必要がある。自衛権を認め、自衛隊を自衛軍として正式に承認する必要がある。自衛権は専守防衛であることに変わりはなく、自衛権は個別、集団の区別はなく一体と考えるべきだ。
○自衛隊の国際社会への貢献を一層明確にし、国連や地域の安全保障機構の下で国際平和の維持や人道的支援に取り組むための根拠を憲法上明らかにしておく必要がある。国際協力における必要最小限の武力行使や自衛権の発動は国会承認を前提とし、指揮権発動権の首相への帰属、文民統制を明確にした上で民主的統制を担保する必要がある。「国家安全保障基本法」などの一般法の下に、どのような場合にどのような協力をするのか具体的に基準を決めておく必要があろう。
○明治以降、1つの憲法制度のもとに政治経済社会が成熟を迎えるとすれば、太平洋戦争と敗戦を境とする70~80年が1つの周期と考えねばならない。来年の明治150年を考えれば、現行憲法による社会全体の捉え方も見直す時期に来ている。
○特に、安全保障分野では解釈も限界になりつつある。先進国の一員となった日本に、国際社会はその立場にふさわしい役割を求めている。戦争を知る世代にとっては、「戦力不保持」が非現実的なものであることを知る。われわれ世代が消え去った後、戦力放棄条項の独り歩きとともに自縄自縛となることを懸念、心配する。
○現下、今上天皇の退位問題が大きな議題となっている。国の在り方の根幹である天皇制度を考えるとき、天皇制の永続性との兼ね合いで支障のなきよう十分にもじゅうぶんな注意を払い、万全な手立てを計る必要がある。政府も国民感情や世論に左右されることなく、歴史と中長期の視野に立った冷静な議論を積み重ね、国民に説明を尽くす形で判断してゆかねばならない。
○100歳を目前にする年齢となり、日本国憲法施行70年を期に、私の憲法論を総括していく必要もある。こうしたことを考える上で2つの思いがあった。ひとつには、志を同じくする人たちへのなにがしかの参考となること。同時にこの際、自らがたどった憲法改正の道を学術的な視点を加えながら振り返ることで、今の国会での憲法論議活性化の一助となればとの思いからだ。
○繁栄の代償として日本のさまざまな分野に巣くう欠陥を克服し、新しい国の在り方とともに失った美徳や規範を取り戻すための青写真が必要とされる。それらは憲法に集約される。明治の日本立国以来、初めて国民の手によってつくられた真の主権在民の憲法でなければならない。
<引用終わり>
(*3):公明党の史実ネジ曲げ
2016/12/23投稿:
憲法審査会2-2・衆議院2016/11/17
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-568.html
公明党・北側一雄発言
「一部に、占領下で作られた「押し付け憲法」であり、自主憲法の制定が必要との意見があるが、賛同できない」
「「押し付け憲法」という主張自体、今や意味がないと言わざるを得ない」
(*4):憲法制定時経緯の時系列
2016/05/23投稿:
歴史年表・戦後史部分の概観
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-419.html
<1945~1946年占領期憲法改正と東京裁判に関する史実>
○1945年・昭和20年
・9月12日:マッカーサー記者会見、日本は四等国転落。強国復活は不可能
・10月4日:マッカーサーの示唆により憲法改正の作業が開始
・11月20日:ニュールンベルグ裁判開廷
○1946年・昭和21年
・1月19日:マッカーサー「極東国際軍事裁判所」設立を宣言
・2月3日:マッカーサー3原則(2月4日との説も)
・2月8日:日本側「憲法改正要領」(松本案)GHQに提出
・2月12日:GHQ草案完成
・2月13日:ホイットニー等がGHQ草案を吉田外相他に手交。松本案拒否
・2月22日:GHQ草案の事実上の受入を閣議決定
・2月26日:GHQ草案ベース憲法草案起草を閣議決定
・3月6日:GHQ草案ベースの「憲法改正草案要領」を内閣が発表
・4月3日:GHQの上位「極東委員会」が天皇不起訴確定した日とされる
<抜粋引用終わり>
(*5):憲法1条の変遷に見る先人達の苦労の跡
2017/02/28投稿:
続・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-616.html
2017/03/01投稿:
続々・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-617.html
2017/03/02投稿:
(資料編)続&続々・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-618.html
2017/03/03投稿:
完・憲法1条に混入している共和制の罠:【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-619.html
(*6):マッカーサー3原則
2016/07/31投稿:
(解説編2)資料・マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-469.html※憲法の前文+9条がマッカーサー3原則のⅡそのものだということを、マッカーサー3原則の文章と前文、9条を併記して論証した。



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