韓国大統領選挙考
- 2017/05/08
- 22:42
韓国大統領選挙考

副題:「内集団」の範囲が狭くないかい?
大勢が決した後に公開することになるだろうが、投票が始まる前の段階での考察であることを最初に記しておく。逆に言えば、結果が出た後の「後知恵」ではない、ということである。
(別原稿をボツにしたので、投票日前日の8日の投稿とした(笑))
韓国大統領選の下馬評によれば、支持率トップは「共に民主党の文在寅」候補だということだが、過去の韓国大統領選挙で見られた傾向として、下馬評段階で「優勢」や「拮抗」が必ずしも結果と同じではなかったと記憶している。
韓国マスコミは、世論調査の結果に「自分達の願望」を加えて「報道」しているのではないかとの疑念を持っており、そんな韓国マスコミの「報道」数値を、そのまま伝える我国マスコミの記事も、「そういう事」なのではないかと思っている。
選挙結果が出れば、下馬評の数値など忘れ去られ話題にならなくなるので、敢えて、現時点での下馬評(*1)を引用しておく。
文在寅・共に民主党40%、安哲秀・国民の声24%、洪準杓・自由韓国党12%との数値が「報道」されている。
現在、下馬評トップの文在寅候補は、前回2012年の韓国大統領選挙でクネクネこと朴槿恵と互角に争った候補だった。得票率は、朴槿恵(セヌリ党)が51.55%、文在寅(民主統合党)が48.02%であり、この2名の候補以外で1%以上の得票をした候補はおらず、事実上の一騎打ちであった。
クネクネの前の大統領は、通名「月山明博」こと李明博(ハンナラ党)である。
李明博が大統領に選出されたのは2007年選挙である。その際の李明博の得票率は48.7%であった。その選挙で1%以上の得票率だった候補は、以下の4候補であるが、第2位の候補であっても李明博との差は22.6%であり、李明博の1強4弱、一人勝ち状態であった。
<2007年大統領選の他の候補・所属政党・得票率>
鄭東泳(大統合民主新党):26.1%
李会昌(無所属) :15.1%
文国現(創造韓国党) : 5.8%
権永吉(民主労働党) : 3.0%
李明博の前の大統領は、ノムタンこと盧武鉉(新千年民主党)である。
盧武鉉が大統領に選出されたのは2002年選挙である。その際の盧武鉉の得票率は48.91%であった。その選挙で1%以上の得票率だった候補は、以下の2候補であるが、実態は、第2位の候補との一騎打ち状態であった。
<2002年大統領選の他の候補・所属政党・得票率>
李会昌(ハンナラ党):46.59%
権永吉(民主労働党): 3.9%
お気づきのことだとは思うが、大統領候補の「所属政党」の名称に拘ってはいけない。
5年毎の大統領選挙なのだが、たった5年でも政党名がコロコロ変わるのである。
現状下馬評トップの文在寅の現在の所属政党名は「共に民主党」であるが、前回クネクネとの大統領選の時点の所属政党眼名は「民主統合党」である。これは文在寅候補が政党を移動したのではなく、政党名がコロコロと変わったのが原因だ。
我国の場合、政権与党の自由民主党は、1955年の保守合同以来60年以上党名を変えていないが、韓国の政党はそうではない。
離合集散だとか心機一転だとかで、党名がコロコロと変わるのである。
それはまるで、民主党が民進党へと党名ロンダリングをしたのとうり二つである。
民進党は、民主党の既存の政党助成金を引き継いでいるので間違いなく民主党の後継なのだが、民進党は「民進党は民主党と関係ない」と称して、党名が変わると民主党時代の不都合な実績は「なかったこと」にしてしまうとの、我国文化とは異質な対応をしている。
民進党のセンチメントは韓国の政党名変更と親和性がある様に思われる。
さて、今回選挙での有力候補だとされる、文在寅の政治姿勢は、「保守・革新」「右派・左派」との言い古された区分では、「革新」「左派」と言われている。
この区分で言えば、クネクネは「保守」「右派」、李明博も「保守」「右派」、その前のノムタンは「革新」「左派」となる。
ここで「言い古された区分」としたのは、そもそも「右派・左派」の元となった議会での着席位置での「右翼・左翼」との西欧文化起源の区分定義では、我国の政治勢力も、韓国の政治勢力も正しく定義し得ないと考えているからである。
今では、随分と曖昧になってきたのだが、以前のアメリカの共和党・民主党、イギリスの保守党・労働党の様な「保守・革新」「右派・左派」区分での色分けを我国に適用すると、その本質を見誤るが、それを同じことが韓国にもある。
我国の場合、欧米的な所謂「保守・革新」「右派・左派」区分は、自民党内派閥の色分けにこそ相応しく、アンチ日本人・反日売国・日本解体を是とする勢力に対して「革新」「左派」との語句を用いるのは誤解のもとであり、相応しくない。
我国にいるには、そういう国家を破壊して、日本人を蔑ろにする勢力であり、本来的意味での革新でも左派でもない。
韓国の場合は、他国なので、より分かり難い。
東西冷戦構造下では水面下に隠れたいたものが、冷戦構造終了後に顕在化していると思われる。彼等の価値基準で優先されるのは、「ウリ」という内集団(*2)と、「ウリ以外」との外集団との比較・対立軸であると推定している。
典型的な事例が、北朝鮮の核兵器に対する見方である。
敵対・対峙する分断国家の相手国である北朝鮮が核兵器を開発しているのだが、一般的には、そういう状況を、自身が被害を受けるリスクだと認識するのだが、韓国人に中には「同じ民族の北が核兵器を所有しているのだから、統一したら、あの核兵器はウリのものになるニダ」などと称する事例がある。
東西冷戦構造のまま分断国家となっている南北朝鮮は、1950年の朝鮮戦争で殺し合いをした関係なので、一般的には、北朝鮮は対峙対象の外集団であり、朝鮮戦争時に北朝鮮側につき「抗美援朝」と称し参戦し、現在も北朝鮮と同盟関係にある中共支那(中華人民共和国)も含めた中・朝は外集団であるはずなのである。
ところが、韓国人の中には、そう考えていない様子である。彼等の判断基準では、北朝鮮に対して「同じ民族」だとし、むしろ、北朝鮮と韓国を朝鮮民族とのキーワードで内集団とみている様だ。
そういうセンチメントなので、逆の作用として、朝鮮戦争の時に韓国の独立を守ったアメリカを「外集団」と看做し、反米運動が激烈化するとの一般的には論理性が欠落した動きになってしまうのである。
この様な視点を踏まえ、今回の大統領選挙候補者の下馬評で1%以上の支持率がある5人の候補者を「親北か反北か」の補助線で見ると、次の様になると言われている。
(候補者名の●は機種依存文字の為に記載省略)
○親北 = 文在寅・共に民主党/沈相●・正義党
○親北傾向= 安哲秀・国民の声
- - - - - - - - - - - - - -
○反北傾向=
○反北 = 洪準杓・自由韓国党/劉承●・正しい政党
この様に、下馬評での1位・文在寅と2位・安哲秀は「親北」であり、その合計支持率64%である。「親北」が過半数とは実に奇妙な話なのだが、韓国人の感覚、ウリ意識からは、むしろ自然なのであろう。
韓国人が考える内集団は、「韓国」との「国家」ではなく「朝鮮民族」が、その範囲になっているのであろうが、これは多分に北朝鮮による概念工作により引き起こされている様に思う。そして同時に、そういう素地がなければ、いくら工作をしても、これほど多数にはならないので、やはり、基本的センチメントとしての「ウリ=同じ民族」との意識が強いのだと考察している。
「ウリ」と「ウリ以外」との感覚を重視する候補がいる一方で、現実世界での対立・対峙状態を認知する「反北」の候補もいるが、どうやら劣勢の様である。
「ウリ感覚」をスマートに言えば「内集団」である。内集団なのに、国家が分断している状態は望ましくなく、分断国家が統一を果たすことは望ましいとされている。
そもそも「分断国家」となる前は、1つの国であったのである。それが、その国の国民の意志とは違う意志により分断された、という問題があるからだ。
内集団として同一だと思われる地域・集団が別の意思により、「違う国」とされたのが分断国家である。
20世紀の「分断国家」としては、東西ドイツ、南北ベトナム、南北朝鮮があったが、現在は、南北朝鮮以外は、統一を話している。
一方、まったく逆に、内集団となり得ない集合単位が、別の意思により1つの国家とされていた場合は、「別の意志」の軛が外れた場合、無理に1つの国である必要性がなくなるので、内集団毎にまとまり直す。
冷戦終結後チェコスロバキアは、チェコとスロバキアに別れ各々独立国家となっており、ユーゴスラビアは、共産主義衛星国の軛から脱した際に、内戦を経て6ヶ国に分裂した。
尚、これらチェコスロバキアやユーゴスラビアの内集団毎の独立の動きを、表面的に持ってきて「沖縄独立」を騒ぐ集団がいるが、沖縄返還時の沖縄の普通の人々の反応からは、日本こそが内集団だとするものであったことを想起すれば良い。
更に、別の事例としては、ミャンマーの事例がある。
ミャンマーがビルマから国名を変えたのは、部族間宥和が目的だ。
同国には大きくは8つの部族があり、その最大部族がビルマ族であることから、国名をビルマとしていたが、部族融和連邦国家であることを重視するとの方針からの国名変更である。
(とは言え、ミャンマーの語源もビルマ族のことなので、多分に情緒的ではある。)
ミャンマーには、7管区(Division)と7州(State)の14地方行政区がある。州とされた地域は以下の通り、基本的にはビルマ族以外の大部族の州となっている。
①:カチン族のカチン州
②:カヤー族のカヤー州
③:カレン族のカレン州
④:シャン族のシャン州
⑤:チン族のチン州
⑥:モン族のモン州
⑦:ラカイン族のラカイン州
ミャンマーの人口の約65%はビルマ族であり、州ではない、7つの管区が基本的にはビルマ族であると考えて良い。とは言え、ミャンマー自身が発表している部族数は、135にも及び、上記の各部族州であっても、各管区であっても、単一の部族だけが、そこにいる訳ではない。
ミャンマーでは、現在のスーチー政権も、その前のテインセイン政権でも、少数民族問題を重要課題と位置づけた政策をとっている。ビルマ独立直前からアウンサン将軍が各部族と話し合った「ビンロン精神」を継承している。
この話を現地ミャンマー人とすると、要するに、無力な状態で民族毎に独立国家となっても、中国と国境を接する地域などは、中国に望まぬ併呑をされてしまい、異質な「外集団からの支配」になってしまう悲劇を避けたい、というのが主な理由なのだと解した。
イギリス植民地から脱したビルマは、各部族内だけを内集団だとするのではなく、多部族独立ビルマを内集団にするとの話をアウンサン将軍は各部族と結んだのである。
このアウンサン将軍の思考は素晴らしい。八紘一宇の精神が通底しているのではないかと考えている。
ミャンマーの事例からは、内集団・外集団を各自・各部族がどの様に意識するのかは、とても難しい問題であるのと同時に、一番避けなければならないのは、明かに異質な外集団が支配する事態が一番悲惨な結果を生むということである。
さて、そこで韓国での「内集団」なのだが、韓国人が内集団だと感じる優先順位が高いのが「同じ民族」である、ということならば、それを実現する為のグランドデザインやロードマップがあって良いはずなのに、その様な話は聞いたことがない。
今回の大統領選挙のTV討論では、安全保障問題は質問に出た様だが、南北統一に関しては何も聞こえてこない。
大統領という、共和制国家での最高指導者を選ぶ選挙であるのだが、北朝鮮の核・ミサイル問題への対処についての具体的な話は聞こえてこない。
そんな状態からは、彼等韓国人の「内集団」として「国家」ではなく「民族」を持ちだすのは、実は本音ではないのではないか、との疑念がある。
「民族」を持ちだし、自国の危機を脇に置く論法からは、自国を内集団として認識していないことであり、その事を糊塗する為に「民族」を持ちだしているのではないか?との疑念である。
むしろ、彼等の本音としての「内集団」は、逆に国家よりも範囲が狭く、基本は自分自身が大事との極めて利己的なものであり、精々が家族や一族、その地域程度ではないか?、「国民」「国家」とのレベルでは内集団意識が薄いのではないか?、と疑っている。
もしも、この仮定が正しいのだとしたら、親北とは、自己利益実現の手段でしかない。
それは恐ろしいことだと思う。
最後に一言。
親北・反北との対立軸は存在していると思うが、親日・反日との対立軸は存在しない。
おしなべて、総て反日である。
日本は外集団であり、「自分ではない」「自分が所属していない」という存在だが、その実態からは、「理想の外集団」である。普通、理想の外集団が存在する場合、それに近づく努力をするのだが、韓国人には、それが出来ないので、「酸っぱいブドウ」の逸話通りの反応をするのである。
それが治らない限り、おしなべて反日に成らざるを得ないので、親日・反日の対立軸など存在し得ないのである。
そんなことを考えながら、韓国大統領選を見ている。
【文末脚注】
(*1):支持率に関するニュース
時事ドットコムニュース(2017年5月1日)
見出し:【図解・国際】韓国大統領選の主な候補者と支持率(2017年5月)
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_korea20170501j-03-w460本文:【ソウル時事】韓国大統領選は2日、投開票日の9日まで1週間を迎える。レースは、最大野党「共に民主党」の文在寅前代表(64)が各種世論調査で支持率トップを独走する展開。一時は、文氏との差を数ポイントまで縮めた中道野党「国民の党」の安哲秀元共同代表(55)は、終盤にきて差を広げられている。
韓国ギャラップの世論調査(4月25~27日実施)によると、文氏の支持率は40%と前週から1ポイント下落したもののトップを維持。一方、安氏は6ポイント下落し、24%に低迷。各政党候補者が出そろった4月初めに、支持率を急激に伸ばした安氏だったが、テレビ討論で振るわなかったこともあり、支持を急速に失っている。
(記事掲載にグラフのテキスト化)
文在寅・共に民主党・38-40-41-40%
安哲秀・国民の声 ・35-37-30-24%
洪準杓・自由韓国党・**-**-**-12%
沈相●・正義党 ・**-**-**-07%
劉承●・正しい政党・**-**-**-04%
<引用終わり:●は機種依存文字の為に記載省略、**はグラフに数値情報なし>
(*2):内集団、外集団
社会学用語で「内集団」とは、各個人が自分が所属していると感じる集団のこと。一方、「外集団」は「他者」と感じられる集団のこと。
内集団の括りは単一ではなく、多種あるが、同時に、それが相反する様な場合でも、矛盾することはない。内集団の括りとして考えられる集団としては、家族、職場、地域社会、同窓会、国家、民族、宗教宗派、人種、性別等がある。
横浜生まれの人物が、実は北海道日本ハムファイターズファンであったりした場合、プロ野球ではファイターズを応援しても、甲子園大会では神奈川代表の桐蔭学園を応援したり、大学野球では出身の慶応を応援したりするのは矛盾しない行動である。
同様、オリンピックやWBCやワールドカップでは母国・日本を応援する方々が、Jリーグや国内のペナントレースでは別々のチームを応援することも矛盾しない。
現在の政治的仕組みでの基本的内集団の最大範囲は各国民の国籍国だとされており、各国家間での同盟関係で、政治的最大範囲は拡大される。逆に言えば、ある範囲を内集団だと考える人々が作っているのが国家である。
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副題:「内集団」の範囲が狭くないかい?
(別原稿をボツにしたので、投票日前日の8日の投稿とした(笑))
韓国大統領選の下馬評によれば、支持率トップは「共に民主党の文在寅」候補だということだが、過去の韓国大統領選挙で見られた傾向として、下馬評段階で「優勢」や「拮抗」が必ずしも結果と同じではなかったと記憶している。
韓国マスコミは、世論調査の結果に「自分達の願望」を加えて「報道」しているのではないかとの疑念を持っており、そんな韓国マスコミの「報道」数値を、そのまま伝える我国マスコミの記事も、「そういう事」なのではないかと思っている。
選挙結果が出れば、下馬評の数値など忘れ去られ話題にならなくなるので、敢えて、現時点での下馬評(*1)を引用しておく。
文在寅・共に民主党40%、安哲秀・国民の声24%、洪準杓・自由韓国党12%との数値が「報道」されている。
現在、下馬評トップの文在寅候補は、前回2012年の韓国大統領選挙でクネクネこと朴槿恵と互角に争った候補だった。得票率は、朴槿恵(セヌリ党)が51.55%、文在寅(民主統合党)が48.02%であり、この2名の候補以外で1%以上の得票をした候補はおらず、事実上の一騎打ちであった。
クネクネの前の大統領は、通名「月山明博」こと李明博(ハンナラ党)である。
李明博が大統領に選出されたのは2007年選挙である。その際の李明博の得票率は48.7%であった。その選挙で1%以上の得票率だった候補は、以下の4候補であるが、第2位の候補であっても李明博との差は22.6%であり、李明博の1強4弱、一人勝ち状態であった。
<2007年大統領選の他の候補・所属政党・得票率>
鄭東泳(大統合民主新党):26.1%
李会昌(無所属) :15.1%
文国現(創造韓国党) : 5.8%
権永吉(民主労働党) : 3.0%
李明博の前の大統領は、ノムタンこと盧武鉉(新千年民主党)である。
盧武鉉が大統領に選出されたのは2002年選挙である。その際の盧武鉉の得票率は48.91%であった。その選挙で1%以上の得票率だった候補は、以下の2候補であるが、実態は、第2位の候補との一騎打ち状態であった。
<2002年大統領選の他の候補・所属政党・得票率>
李会昌(ハンナラ党):46.59%
権永吉(民主労働党): 3.9%
お気づきのことだとは思うが、大統領候補の「所属政党」の名称に拘ってはいけない。
5年毎の大統領選挙なのだが、たった5年でも政党名がコロコロ変わるのである。
現状下馬評トップの文在寅の現在の所属政党名は「共に民主党」であるが、前回クネクネとの大統領選の時点の所属政党眼名は「民主統合党」である。これは文在寅候補が政党を移動したのではなく、政党名がコロコロと変わったのが原因だ。
我国の場合、政権与党の自由民主党は、1955年の保守合同以来60年以上党名を変えていないが、韓国の政党はそうではない。
離合集散だとか心機一転だとかで、党名がコロコロと変わるのである。
それはまるで、民主党が民進党へと党名ロンダリングをしたのとうり二つである。
民進党は、民主党の既存の政党助成金を引き継いでいるので間違いなく民主党の後継なのだが、民進党は「民進党は民主党と関係ない」と称して、党名が変わると民主党時代の不都合な実績は「なかったこと」にしてしまうとの、我国文化とは異質な対応をしている。
民進党のセンチメントは韓国の政党名変更と親和性がある様に思われる。
さて、今回選挙での有力候補だとされる、文在寅の政治姿勢は、「保守・革新」「右派・左派」との言い古された区分では、「革新」「左派」と言われている。
この区分で言えば、クネクネは「保守」「右派」、李明博も「保守」「右派」、その前のノムタンは「革新」「左派」となる。
ここで「言い古された区分」としたのは、そもそも「右派・左派」の元となった議会での着席位置での「右翼・左翼」との西欧文化起源の区分定義では、我国の政治勢力も、韓国の政治勢力も正しく定義し得ないと考えているからである。
今では、随分と曖昧になってきたのだが、以前のアメリカの共和党・民主党、イギリスの保守党・労働党の様な「保守・革新」「右派・左派」区分での色分けを我国に適用すると、その本質を見誤るが、それを同じことが韓国にもある。
我国の場合、欧米的な所謂「保守・革新」「右派・左派」区分は、自民党内派閥の色分けにこそ相応しく、アンチ日本人・反日売国・日本解体を是とする勢力に対して「革新」「左派」との語句を用いるのは誤解のもとであり、相応しくない。
我国にいるには、そういう国家を破壊して、日本人を蔑ろにする勢力であり、本来的意味での革新でも左派でもない。
韓国の場合は、他国なので、より分かり難い。
東西冷戦構造下では水面下に隠れたいたものが、冷戦構造終了後に顕在化していると思われる。彼等の価値基準で優先されるのは、「ウリ」という内集団(*2)と、「ウリ以外」との外集団との比較・対立軸であると推定している。
典型的な事例が、北朝鮮の核兵器に対する見方である。
敵対・対峙する分断国家の相手国である北朝鮮が核兵器を開発しているのだが、一般的には、そういう状況を、自身が被害を受けるリスクだと認識するのだが、韓国人に中には「同じ民族の北が核兵器を所有しているのだから、統一したら、あの核兵器はウリのものになるニダ」などと称する事例がある。
東西冷戦構造のまま分断国家となっている南北朝鮮は、1950年の朝鮮戦争で殺し合いをした関係なので、一般的には、北朝鮮は対峙対象の外集団であり、朝鮮戦争時に北朝鮮側につき「抗美援朝」と称し参戦し、現在も北朝鮮と同盟関係にある中共支那(中華人民共和国)も含めた中・朝は外集団であるはずなのである。
ところが、韓国人の中には、そう考えていない様子である。彼等の判断基準では、北朝鮮に対して「同じ民族」だとし、むしろ、北朝鮮と韓国を朝鮮民族とのキーワードで内集団とみている様だ。
そういうセンチメントなので、逆の作用として、朝鮮戦争の時に韓国の独立を守ったアメリカを「外集団」と看做し、反米運動が激烈化するとの一般的には論理性が欠落した動きになってしまうのである。
この様な視点を踏まえ、今回の大統領選挙候補者の下馬評で1%以上の支持率がある5人の候補者を「親北か反北か」の補助線で見ると、次の様になると言われている。
(候補者名の●は機種依存文字の為に記載省略)
○親北 = 文在寅・共に民主党/沈相●・正義党
○親北傾向= 安哲秀・国民の声
- - - - - - - - - - - - - -
○反北傾向=
○反北 = 洪準杓・自由韓国党/劉承●・正しい政党
この様に、下馬評での1位・文在寅と2位・安哲秀は「親北」であり、その合計支持率64%である。「親北」が過半数とは実に奇妙な話なのだが、韓国人の感覚、ウリ意識からは、むしろ自然なのであろう。
韓国人が考える内集団は、「韓国」との「国家」ではなく「朝鮮民族」が、その範囲になっているのであろうが、これは多分に北朝鮮による概念工作により引き起こされている様に思う。そして同時に、そういう素地がなければ、いくら工作をしても、これほど多数にはならないので、やはり、基本的センチメントとしての「ウリ=同じ民族」との意識が強いのだと考察している。
「ウリ」と「ウリ以外」との感覚を重視する候補がいる一方で、現実世界での対立・対峙状態を認知する「反北」の候補もいるが、どうやら劣勢の様である。
「ウリ感覚」をスマートに言えば「内集団」である。内集団なのに、国家が分断している状態は望ましくなく、分断国家が統一を果たすことは望ましいとされている。
そもそも「分断国家」となる前は、1つの国であったのである。それが、その国の国民の意志とは違う意志により分断された、という問題があるからだ。
内集団として同一だと思われる地域・集団が別の意思により、「違う国」とされたのが分断国家である。
20世紀の「分断国家」としては、東西ドイツ、南北ベトナム、南北朝鮮があったが、現在は、南北朝鮮以外は、統一を話している。
一方、まったく逆に、内集団となり得ない集合単位が、別の意思により1つの国家とされていた場合は、「別の意志」の軛が外れた場合、無理に1つの国である必要性がなくなるので、内集団毎にまとまり直す。
冷戦終結後チェコスロバキアは、チェコとスロバキアに別れ各々独立国家となっており、ユーゴスラビアは、共産主義衛星国の軛から脱した際に、内戦を経て6ヶ国に分裂した。
尚、これらチェコスロバキアやユーゴスラビアの内集団毎の独立の動きを、表面的に持ってきて「沖縄独立」を騒ぐ集団がいるが、沖縄返還時の沖縄の普通の人々の反応からは、日本こそが内集団だとするものであったことを想起すれば良い。
更に、別の事例としては、ミャンマーの事例がある。
ミャンマーがビルマから国名を変えたのは、部族間宥和が目的だ。
同国には大きくは8つの部族があり、その最大部族がビルマ族であることから、国名をビルマとしていたが、部族融和連邦国家であることを重視するとの方針からの国名変更である。
(とは言え、ミャンマーの語源もビルマ族のことなので、多分に情緒的ではある。)
ミャンマーには、7管区(Division)と7州(State)の14地方行政区がある。州とされた地域は以下の通り、基本的にはビルマ族以外の大部族の州となっている。
①:カチン族のカチン州
②:カヤー族のカヤー州
③:カレン族のカレン州
④:シャン族のシャン州
⑤:チン族のチン州
⑥:モン族のモン州
⑦:ラカイン族のラカイン州
ミャンマーの人口の約65%はビルマ族であり、州ではない、7つの管区が基本的にはビルマ族であると考えて良い。とは言え、ミャンマー自身が発表している部族数は、135にも及び、上記の各部族州であっても、各管区であっても、単一の部族だけが、そこにいる訳ではない。
ミャンマーでは、現在のスーチー政権も、その前のテインセイン政権でも、少数民族問題を重要課題と位置づけた政策をとっている。ビルマ独立直前からアウンサン将軍が各部族と話し合った「ビンロン精神」を継承している。
この話を現地ミャンマー人とすると、要するに、無力な状態で民族毎に独立国家となっても、中国と国境を接する地域などは、中国に望まぬ併呑をされてしまい、異質な「外集団からの支配」になってしまう悲劇を避けたい、というのが主な理由なのだと解した。
イギリス植民地から脱したビルマは、各部族内だけを内集団だとするのではなく、多部族独立ビルマを内集団にするとの話をアウンサン将軍は各部族と結んだのである。
このアウンサン将軍の思考は素晴らしい。八紘一宇の精神が通底しているのではないかと考えている。
ミャンマーの事例からは、内集団・外集団を各自・各部族がどの様に意識するのかは、とても難しい問題であるのと同時に、一番避けなければならないのは、明かに異質な外集団が支配する事態が一番悲惨な結果を生むということである。
さて、そこで韓国での「内集団」なのだが、韓国人が内集団だと感じる優先順位が高いのが「同じ民族」である、ということならば、それを実現する為のグランドデザインやロードマップがあって良いはずなのに、その様な話は聞いたことがない。
今回の大統領選挙のTV討論では、安全保障問題は質問に出た様だが、南北統一に関しては何も聞こえてこない。
大統領という、共和制国家での最高指導者を選ぶ選挙であるのだが、北朝鮮の核・ミサイル問題への対処についての具体的な話は聞こえてこない。
そんな状態からは、彼等韓国人の「内集団」として「国家」ではなく「民族」を持ちだすのは、実は本音ではないのではないか、との疑念がある。
「民族」を持ちだし、自国の危機を脇に置く論法からは、自国を内集団として認識していないことであり、その事を糊塗する為に「民族」を持ちだしているのではないか?との疑念である。
むしろ、彼等の本音としての「内集団」は、逆に国家よりも範囲が狭く、基本は自分自身が大事との極めて利己的なものであり、精々が家族や一族、その地域程度ではないか?、「国民」「国家」とのレベルでは内集団意識が薄いのではないか?、と疑っている。
もしも、この仮定が正しいのだとしたら、親北とは、自己利益実現の手段でしかない。
それは恐ろしいことだと思う。
最後に一言。
親北・反北との対立軸は存在していると思うが、親日・反日との対立軸は存在しない。
おしなべて、総て反日である。
日本は外集団であり、「自分ではない」「自分が所属していない」という存在だが、その実態からは、「理想の外集団」である。普通、理想の外集団が存在する場合、それに近づく努力をするのだが、韓国人には、それが出来ないので、「酸っぱいブドウ」の逸話通りの反応をするのである。
それが治らない限り、おしなべて反日に成らざるを得ないので、親日・反日の対立軸など存在し得ないのである。
そんなことを考えながら、韓国大統領選を見ている。
【文末脚注】
(*1):支持率に関するニュース
時事ドットコムニュース(2017年5月1日)
見出し:【図解・国際】韓国大統領選の主な候補者と支持率(2017年5月)
http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_korea20170501j-03-w460本文:【ソウル時事】韓国大統領選は2日、投開票日の9日まで1週間を迎える。レースは、最大野党「共に民主党」の文在寅前代表(64)が各種世論調査で支持率トップを独走する展開。一時は、文氏との差を数ポイントまで縮めた中道野党「国民の党」の安哲秀元共同代表(55)は、終盤にきて差を広げられている。
韓国ギャラップの世論調査(4月25~27日実施)によると、文氏の支持率は40%と前週から1ポイント下落したもののトップを維持。一方、安氏は6ポイント下落し、24%に低迷。各政党候補者が出そろった4月初めに、支持率を急激に伸ばした安氏だったが、テレビ討論で振るわなかったこともあり、支持を急速に失っている。
(記事掲載にグラフのテキスト化)
文在寅・共に民主党・38-40-41-40%
安哲秀・国民の声 ・35-37-30-24%
洪準杓・自由韓国党・**-**-**-12%
沈相●・正義党 ・**-**-**-07%
劉承●・正しい政党・**-**-**-04%
<引用終わり:●は機種依存文字の為に記載省略、**はグラフに数値情報なし>
(*2):内集団、外集団
社会学用語で「内集団」とは、各個人が自分が所属していると感じる集団のこと。一方、「外集団」は「他者」と感じられる集団のこと。
内集団の括りは単一ではなく、多種あるが、同時に、それが相反する様な場合でも、矛盾することはない。内集団の括りとして考えられる集団としては、家族、職場、地域社会、同窓会、国家、民族、宗教宗派、人種、性別等がある。
横浜生まれの人物が、実は北海道日本ハムファイターズファンであったりした場合、プロ野球ではファイターズを応援しても、甲子園大会では神奈川代表の桐蔭学園を応援したり、大学野球では出身の慶応を応援したりするのは矛盾しない行動である。
同様、オリンピックやWBCやワールドカップでは母国・日本を応援する方々が、Jリーグや国内のペナントレースでは別々のチームを応援することも矛盾しない。
現在の政治的仕組みでの基本的内集団の最大範囲は各国民の国籍国だとされており、各国家間での同盟関係で、政治的最大範囲は拡大される。逆に言えば、ある範囲を内集団だと考える人々が作っているのが国家である。



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