【コラム】「君民一致」って、こういうこと。
インターネットの「まとめサイト」の一つ「U-1速報」の記事が面白かったので少し論評してみたい。
URL:http://u1sokuhou.ldblog.jp/archives/50455710.html
2015年03月19日06:30
タイトル:『なぜ日本企業は賃上げするんだ』と韓国人が”理解不能”だと激怒。我々はこんなに苦しいのに日本だけ賃上げなんて
記事は上記のURLで参照して欲しい。引用したタイトルで十分に意味はわかるので続ける。
資本主義下の株式会社の仕組みの基本は、資本家・投資家が資本金を出し株主となり、株主の信任を得た経営者が資本を元手に事業を遂行し、その事業で得た利益を株主に配当金として還元する仕組みだ。
決算は毎年行い、年度毎に当年度利益は「利益処分案」として株主総会に諮られる。
当年度利益のうち、幾らを配当に回し、幾らを事業投資に回すか等の株主総会議案が利益処分案である。
株主にしてみれば、自分の金になる配当金が高ければ高いほど望ましい。
一方、投資先企業が更なる利益拡大を図ることも望ましく、その為に将来の事業拡大資金にすることを目的に配当ではなく内部留保として企業に留め置くこともあり得るのである。
この話に登場したのは株主の資本家・投資家と会社経営を任された経営者である。
賃上げ対象の従業員は出てこない。
何故なら、我が国会社法や英米の商法・企業法では「会社は誰のものか」との質問の正解が「株主のもの」だからだ。
株主総会とは、事業執行役の経営者が、事業年度の事業結果を会社の持ち主である株主に説明し了解を得る為の場であるからだ。
一方、我が国では法的に会社は株主のものであっても、一般的には「会社は従業員のもの」という答えも正解だと考えられている。
「会社利益は株主・従業員・内部留保と公平に1/3づつ分配すればいいんじゃね?」との言説に違和感がないのが日本社会である。
資本主義原則バリバリの株主だったら、配当金の原資となる当期利益を減額する従業員コストの上昇に対して、こんな鷹揚なことは言わない。
従業員の賃上げをすれば、原価・販売管理費等のコストは当然上昇する。
これは確実な費用増であり、そうなると収益計算上は利益の減となる。
一方、日本人の多くは「従業員のやる気が出て、売上の増加が見込めるんじゃないか?」とか考えちゃう。ところが「従業員のやる気が出る」と考えるところが日本人であり、日本人以外は「売上増の根拠を示せ」とか言ってくる(笑)。
タイトルからおわかりだと思うが、要するに、これが現代の見られる君民一致の一事例である。
日本人の「感覚」が君民一致とか労使協調とか上下心を一つにしてということは良いことだ、対決するより良いことだ、と理屈ではなく感覚として持っているのは永き君民一致の考え方の中で歴史を歩んできたからだ。
1980年代の前半までは春闘の時期になると国労や動労が政治ショー的なストをやって、よく電車が止まったものだ。決算時期に重なりストでも休めない金融関係や企業の決算関係者は貸布団屋から借りた布団で会社に泊まりこむとかは毎年の風物詩だった。独り善がりの国鉄ストには多くの労働者がイライラしたものだ。
炭鉱閉鎖ストは雇用の問題なのでストは当然だろうが、労働組合が労働者の為の組織ではなく、政治目的を第一義に置くサヨク運動組織になってからはまともなストライキはなくなったのではないか? 閑話休題
今春のトヨタの賃上げに対して、トヨタの株主の誰かが「賃上げは配当減額に等しいので、賃上げを決断した経営者は株主に対する背任であり、退陣を要求する」との議案を株主総会で提示しても、日本人株主の多くは賛成しまい。
これが我が国の君民一致のお国柄というものだ。
FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト