真珠湾オバマ演説1・2016/12/28
- 2017/01/03
- 23:23
真珠湾オバマ演説1・2016/12/28

副題:オバマ真珠湾演説は広島演説と1セット。歴史から教訓を選び取り、自身の未来像を描く為に生かすことができる。
真珠湾・安倍演説2「和解の力」の解説に続き、真珠湾でのオバマ演説を読解してみる。
オバマ真珠湾演説は、その主旨として、日米両国の未来志向の同盟関係を称える内容なのだが、演説の多くの部分を自国アメリカ人の心を鎮める話に費やしている。
それは、未だアメリカ人は、オバマが広島で提示した21世紀の新たなパラダイムへの理解が進んでおらず、20世紀旧パラダイムを引きずっているからであろう。
それはそれで仕方ない。何故なら、広島演説で提示した新たなパラダイムは日本文明由来の寛容さに軸足があるからだ。西欧文明のアメリカ人の五臓六腑に浸みわたるのには、まだ時間が必要なのだろう。
21世紀の新パラダイムを理解するには、それ以前の19世紀パラダイムから20世紀パラダイムへの転換を理解しておく必要がある。
19世紀パラダイム下での欧米列強の植民地主義は、自称「文明国」の「人類」であった欧米列強が、有色人種現地人の故郷であるアジア・アフリカを支配下に置き、現地人を使役・労働させ、その際に現地有色人種は、けして「文明国」「人類」の範疇には入っていないとの設定であった。それは、キリスト教が示す隣人愛の対象と看做されず、人権さえも認められていない状態であった。
大航海時代から続く、この様なパラダイムを便宜上「19世紀の」として説明しているが、我々有色人種の一員である日本人は、日露戦争での勝利、即ち、近代以降初めて有色人種が白色人種に大戦争で勝利して以降、国際社会に於いて、唯一まともな地位を得ていたので、白色人種の身勝手なパラダイムに異議を申し立てた。
それは1919年、第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、我が国は人種差別の撤廃を明記すべきという提案をした。「人種的差別撤廃提案」と言われるものだが、その会議では多数決で決定されたものの、アメリカ民主党大統領ウィルソンによる「全会一致でないため提案は不成立である」との後だしジャンケン宣言で、採用には至らなかった。
1919年から約10数年後、有色人種に偏見を持つアメリカ民主党大統領ルーズベルトによる対日経済戦争が始まり、1941年12月に冷戦は戦争に発展し、東南アジア植民地は解放されたが、やはり同じ民主党大統領のトルーマンが原爆投下との大虐殺を行い1945年に先の大戦は終わった。その後、オランダ植民地ジャワは独立戦争を経てインドネシアへ、イギリス植民地はマレーシア、ミャンマー等に独立し、フランス植民地はインドシナ・ベトナム戦争を経て各々独立した。
多くの民族を抑圧の鎖のもとにおいた植民地体制は完全に崩壊し、民族の自決権は公認の世界的な原理という地位を獲得し、100を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家となったのである。(*1)
一方、当のアメリカは1960年代に至るも、黒人差別が継続していた。
その後、約半世紀を経て、あのアメリカでは2008年の大統領選でアメリカ民主党のオバマが当選し、初めて非白人がアメリカ大統領となった。
2009年1月20日、オバマは大統領に就任した。
それは1919年の人種的差別撤廃提案から90年が経っていた。
パラダイムが変わってしまえば、以前のパラダイムはなかったかの様に忘れ去られる。
19世紀のパラダイムが20世紀に我が国により提示されたパラダイムへと変換され、今や、一昨年4月の安倍総理アメリカ議会演説で21世紀の新パラダイムが提示され、昨年5月には、そのパラダイムがオバマ広島演説でアメリカ側からも提示された。
それは、まだ端緒についたばかりであり、我々日本人にとっては当たり前のことだが、アメリカ人にはまだ腑に落ちない新たなパラダイムである。
安倍首相は「寛容の心」と「和解の力」との語句に集約して説明をしていたが、オバマ大統領の演説は、その多くの部分を、自国アメリカ人の心を鎮める話に費やしている。
オバマ自身が19世紀パラダイムからの脱却・変換の結果を象徴する20世紀のパラダイムを体現した人物である様に、人類史上空前絶後の激戦を乗り越える21世紀のパラダイムを象徴・体現する人物として、真珠湾基地を含むアメリカ太平洋軍の司令官であるハリー・ハリス海軍大将がいる。
安倍総理も、ハリー・ハリス海軍大将の名前を演説で述べており、オバマ大統領は自軍司令官を詳しく紹介している。
3-③:Earlier this year, near Pearl Harbor, Japan joined with two dozen nations in the world’s largest maritime military exercise. That included our forces from U.S. Pacific Command, led by Admiral Harry Harris, the son of an American Naval officer and a Japanese mother. Harry was born in Yokosuka, but you wouldn’t know it from his Tennessee twang.
Thank you, Harry, for your outstanding leadership.
3-③:この真珠湾の近くで、日本は今年、20余の国々と共に世界最大級の軍事演習に参加した。この演習には、ハリー・ハリス司令官が率いる米太平洋軍も加わった。ハリス司令官は、米海軍士官と日本人の母の息子だ。テネシーなまりからは分からないが、横須賀生まれだ。
ハリー、傑出した指導力に感謝している。
<引用終わり>
この様にオバマはハリー・ハリス司令官を紹介している。
さて、オバマ演説は、全体で6つの部分で構成されていると読んでいる。
原文の英語及びマスコミ報道された訳文の全文は以下のURLに収録されているので、適宜、参照願いたい。尚、収録の際に引用者の当方が区分番号を付している。
2016/12/29投稿:
(資料編)真珠湾両首脳ステートメント
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
最初の「1-①」及び「1-②」は導入部である。
オバマ真珠湾演説は、形式としては安倍総理の演説に続き行われるもので、昨年5月のオバマ広島演説の際に安倍総理が短く答礼の演説をしたのと同じである。
違うのは、両国の国民性であり、日本の安倍総理は短く、アメリカのオバマ大統領は明示的に演説をしている。
オバマ真珠湾演説は、冒頭の1-①で安倍総理の演説を全面的に肯定する言葉から入っている。
<上記URLから抜粋引用。(尚、()内は当方により追加訳文である)>
1-①:Prime Minister Abe, on behalf of the American people, thank you for your gracious words. Thank you for your presence here today -- an historic gesture that speaks to the power of reconciliation and the alliance between the American and Japanese peoples; a reminder that even the deepest wounds of war can give way to friendship and lasting peace.
1-①:安倍首相、米国民を代表し、(米国民に成り代わり)思いやりのある言葉(恵み深い言葉)とこの地への訪問に感謝する。(感謝します。)歴史的な行動は、和解の力や日米両国民の同盟関係を示しており、戦争の最も深い傷でさえ、友情と永遠の平和に転じ得るということを思い起こさせる。
<引用終わり>
導入部「1-②」でオバマ大統領が明示したwhoは「来賓、米軍将兵、そして何より真珠湾を生き抜いた人々とその愛する家族の皆さん」である。
そして、次の「2-」では史実の開示が続く。
「2-」の部分は、①から⑧の部分の分かれ、かなり長く、これは自国アメリカ人の心を鎮める為の話だと解している。
2-①で75年前の真珠湾米海軍基地攻撃の際の「米軍の英雄的行為を振り返る」として、2-②から2-⑥までを費やし、当時の戦闘で起こった「英雄的」エピソードを幾つも紹介しているのだが、これはオバマが「あの時のことを知っているよ」と自国民アメリカ人に語り掛けている部分である。
これら「英雄的」なエピソードに続き、2-⑦で442連隊の第100大隊のエピソードを紹介する。日系人部隊442連隊はアメリカ合衆国史上最も多くの勲章を受けた部隊とし知られており、最も英雄的な部隊である。
「英雄的」エピソードとして、地元ハワイ出身の日系人が多数入隊した第100大隊が紹介されることに誰も異論は言えない流れである。そして、先に没したが、誰もが知る442連隊出身の日系議員ダニエル・イノウエ上院議員を紹介する。
<上記URLから抜粋引用。(尚、()内は当方により追加訳文である)>
2-⑦:And it is here that we reflect on how war tests our most enduring values -- how, even as Japanese Americans were deprived of their own liberty during the war, one of the most decorated military units in the history of the United States was the 442nd Infantry Regiment and its 100th Infantry Battalion -- the Japanese-American Nisei. In that 442nd served my friend and proud Hawaiian, Daniel Inouye -- a man who was a senator from Hawaii for most of my life and with whom I would find myself proud to serve in the Senate chamber; a man who was not only a recipient of the Medal of Honor and the Presidential Medal of Freedom, but was one of the most distinguished statesmen of his generation as well.
2-⑦:この場所でわれわれは、戦争が私たちの最も不朽の価値観にどれほど試練を与えるかに思いを巡らせる。日系米国人が戦時中、自由を奪われていたにもかかわらず、米国史上最も勲章を授与された軍部隊の一つは日系2世らでつくる第442連隊、その中の第100歩兵大隊だった。
その第442連隊には、私の友人で誇り高きハワイ出身者だったダニエル・イノウエ氏がいた。私の人生のほとんどを通じてハワイ選出の上院議員を務め、上院の議場で一緒に働けることが誇らしく思える人物だった。名誉勲章と大統領自由勲章を授与されただけでなく、彼の世代で最も傑出した政治家の一人でもあった。
<引用終わり>
日系人部隊442連隊とダニエル・イノウエ氏を紹介することで、第二次世界大戦でのアメリカ人の「英雄的」エピソードは、何も白人に限定されていないことを示し、次の話へと移っていく。
次の「3-」の部分は、戦後の日米関係をあらためて評価する部分である。
冒頭「3-①」で「The character of nations is tested in war, but it is defined in peace.(国家の品格は戦争で問われるが、品格を決めるのは平和な時代だ。)」とオバマは自国民に問い掛けている。
新聞報道では「character of nations」を「国家の品格」と訳しているが、概ね良いと思う。
「character」との単語には、その人物の性格・性質・気質等の意味があるが、同時に「道徳的・倫理的な面における個人の性格・正確」との意味がある。
従い、「character of nations」を「国家としての特性(しかも道徳面に於いて)」という意味でここでは用いているものと解される。
このニュアンスを訳文に反映するのなら、「国家としての特性、しかも道徳面に於ける国家の品格は、戦時に於いて試される。そして、それへの評価は、戦後、平和になってから行われる」とするのが相応しい。
アメリカ人のcharacter(国民性)からすれば、アメリカは道徳的であるとの設定が揺らぐことを好まない。
その特性を踏まえ、オバマは戦後の日米同盟の戦後70年間続く歩みを安倍総理と同様の主旨、激しく戦った両者が選択したのは「友情」と「同盟」であるとし、「日米同盟が両国を成功へと導き」、「新たな世界大戦を防いだ国際秩序の構築を支え」、「10億人以上の人々を極度の貧困から救い出し」、「日米共通の利害だけでなく共通の価値観に根差してアジア太平洋の平和と安定を礎石として支え世界の進歩の原動力となっている」との評価を示している。3-②で東日本大震災の時の「トモダチ作戦」に触れ、「地球上の至る所で、日米は肩を並べてアジア太平洋と世界の安全保障の強化に努めている」ことを紹介し、日米同盟が世界平和に資する「希望の同盟」であるとの安倍総理演説を別の繰り口で、オバマ大統領は裏書き(endorse)しているのである
良いことだらけなのだが、我が国の左巻きマスコミが語らない一方の真実であることは間違いのない事実であり、オバマの評価は真っ当なものである。
そして、この様な日米同盟を象徴・体現する人物として、現太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍司令官を前述した様に3-③で紹介しているのである。
この様に3-①、3-②、3-③で、戦後70年間の日米同盟と今を、オバマ大統領は事実に基づき、日米関係をあらためて評価しているのである。
そして、この部分の最後3-④で安倍総理演説の要諦たる、もっとも激しく戦った両国が寛容の心と和解の力で希望の同盟を育んできた歴史と現在と未来志向に呼応することで締めくくっている。
オバマ演説でも、以下の様に、パールハーバーは21世紀の和解の象徴となったとしているのである。
3-④:In this sense, our presence here today -- the connections not just between our governments, but between our people, the presence of Prime Minister Abe here today -- remind us of what is possible between nations and between peoples. Wars can end. The most bitter of adversaries can become the strongest of allies. The fruits of peace always outweigh the plunder of war. This is the enduring truth of this hallowed harbor.
3-④:こうした意味で、安倍首相と私がきょう、ここを訪れたこと、すなわち政府同士だけでなく国民同士のつながりは、両国間そして両国民間で成し遂げ得るものを思い起こさせる。戦争は終わらせることができる。最も激しく対立した敵同士が、最も強固な同盟関係になれる。平和の恩恵は常に、戦争の略奪品に勝る。これこそが、この神聖な真珠湾の不朽の真実だ。
<長くなったので項を分けます>
【文末脚注】*1
2015/03/26投稿:
【コラム】戦後の新世界秩序<民族自決・自存自立>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-65.html
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副題:オバマ真珠湾演説は広島演説と1セット。歴史から教訓を選び取り、自身の未来像を描く為に生かすことができる。
真珠湾・安倍演説2「和解の力」の解説に続き、真珠湾でのオバマ演説を読解してみる。
オバマ真珠湾演説は、その主旨として、日米両国の未来志向の同盟関係を称える内容なのだが、演説の多くの部分を自国アメリカ人の心を鎮める話に費やしている。
それは、未だアメリカ人は、オバマが広島で提示した21世紀の新たなパラダイムへの理解が進んでおらず、20世紀旧パラダイムを引きずっているからであろう。
それはそれで仕方ない。何故なら、広島演説で提示した新たなパラダイムは日本文明由来の寛容さに軸足があるからだ。西欧文明のアメリカ人の五臓六腑に浸みわたるのには、まだ時間が必要なのだろう。
21世紀の新パラダイムを理解するには、それ以前の19世紀パラダイムから20世紀パラダイムへの転換を理解しておく必要がある。
19世紀パラダイム下での欧米列強の植民地主義は、自称「文明国」の「人類」であった欧米列強が、有色人種現地人の故郷であるアジア・アフリカを支配下に置き、現地人を使役・労働させ、その際に現地有色人種は、けして「文明国」「人類」の範疇には入っていないとの設定であった。それは、キリスト教が示す隣人愛の対象と看做されず、人権さえも認められていない状態であった。
大航海時代から続く、この様なパラダイムを便宜上「19世紀の」として説明しているが、我々有色人種の一員である日本人は、日露戦争での勝利、即ち、近代以降初めて有色人種が白色人種に大戦争で勝利して以降、国際社会に於いて、唯一まともな地位を得ていたので、白色人種の身勝手なパラダイムに異議を申し立てた。
それは1919年、第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会において、我が国は人種差別の撤廃を明記すべきという提案をした。「人種的差別撤廃提案」と言われるものだが、その会議では多数決で決定されたものの、アメリカ民主党大統領ウィルソンによる「全会一致でないため提案は不成立である」との後だしジャンケン宣言で、採用には至らなかった。
1919年から約10数年後、有色人種に偏見を持つアメリカ民主党大統領ルーズベルトによる対日経済戦争が始まり、1941年12月に冷戦は戦争に発展し、東南アジア植民地は解放されたが、やはり同じ民主党大統領のトルーマンが原爆投下との大虐殺を行い1945年に先の大戦は終わった。その後、オランダ植民地ジャワは独立戦争を経てインドネシアへ、イギリス植民地はマレーシア、ミャンマー等に独立し、フランス植民地はインドシナ・ベトナム戦争を経て各々独立した。
多くの民族を抑圧の鎖のもとにおいた植民地体制は完全に崩壊し、民族の自決権は公認の世界的な原理という地位を獲得し、100を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家となったのである。(*1)
一方、当のアメリカは1960年代に至るも、黒人差別が継続していた。
その後、約半世紀を経て、あのアメリカでは2008年の大統領選でアメリカ民主党のオバマが当選し、初めて非白人がアメリカ大統領となった。
2009年1月20日、オバマは大統領に就任した。
それは1919年の人種的差別撤廃提案から90年が経っていた。
パラダイムが変わってしまえば、以前のパラダイムはなかったかの様に忘れ去られる。
19世紀のパラダイムが20世紀に我が国により提示されたパラダイムへと変換され、今や、一昨年4月の安倍総理アメリカ議会演説で21世紀の新パラダイムが提示され、昨年5月には、そのパラダイムがオバマ広島演説でアメリカ側からも提示された。
それは、まだ端緒についたばかりであり、我々日本人にとっては当たり前のことだが、アメリカ人にはまだ腑に落ちない新たなパラダイムである。
安倍首相は「寛容の心」と「和解の力」との語句に集約して説明をしていたが、オバマ大統領の演説は、その多くの部分を、自国アメリカ人の心を鎮める話に費やしている。
オバマ自身が19世紀パラダイムからの脱却・変換の結果を象徴する20世紀のパラダイムを体現した人物である様に、人類史上空前絶後の激戦を乗り越える21世紀のパラダイムを象徴・体現する人物として、真珠湾基地を含むアメリカ太平洋軍の司令官であるハリー・ハリス海軍大将がいる。
安倍総理も、ハリー・ハリス海軍大将の名前を演説で述べており、オバマ大統領は自軍司令官を詳しく紹介している。
3-③:Earlier this year, near Pearl Harbor, Japan joined with two dozen nations in the world’s largest maritime military exercise. That included our forces from U.S. Pacific Command, led by Admiral Harry Harris, the son of an American Naval officer and a Japanese mother. Harry was born in Yokosuka, but you wouldn’t know it from his Tennessee twang.
Thank you, Harry, for your outstanding leadership.
3-③:この真珠湾の近くで、日本は今年、20余の国々と共に世界最大級の軍事演習に参加した。この演習には、ハリー・ハリス司令官が率いる米太平洋軍も加わった。ハリス司令官は、米海軍士官と日本人の母の息子だ。テネシーなまりからは分からないが、横須賀生まれだ。
ハリー、傑出した指導力に感謝している。
<引用終わり>
この様にオバマはハリー・ハリス司令官を紹介している。
さて、オバマ演説は、全体で6つの部分で構成されていると読んでいる。
原文の英語及びマスコミ報道された訳文の全文は以下のURLに収録されているので、適宜、参照願いたい。尚、収録の際に引用者の当方が区分番号を付している。
2016/12/29投稿:
(資料編)真珠湾両首脳ステートメント
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
最初の「1-①」及び「1-②」は導入部である。
オバマ真珠湾演説は、形式としては安倍総理の演説に続き行われるもので、昨年5月のオバマ広島演説の際に安倍総理が短く答礼の演説をしたのと同じである。
違うのは、両国の国民性であり、日本の安倍総理は短く、アメリカのオバマ大統領は明示的に演説をしている。
オバマ真珠湾演説は、冒頭の1-①で安倍総理の演説を全面的に肯定する言葉から入っている。
<上記URLから抜粋引用。(尚、()内は当方により追加訳文である)>
1-①:Prime Minister Abe, on behalf of the American people, thank you for your gracious words. Thank you for your presence here today -- an historic gesture that speaks to the power of reconciliation and the alliance between the American and Japanese peoples; a reminder that even the deepest wounds of war can give way to friendship and lasting peace.
1-①:安倍首相、米国民を代表し、(米国民に成り代わり)思いやりのある言葉(恵み深い言葉)とこの地への訪問に感謝する。(感謝します。)歴史的な行動は、和解の力や日米両国民の同盟関係を示しており、戦争の最も深い傷でさえ、友情と永遠の平和に転じ得るということを思い起こさせる。
<引用終わり>
導入部「1-②」でオバマ大統領が明示したwhoは「来賓、米軍将兵、そして何より真珠湾を生き抜いた人々とその愛する家族の皆さん」である。
そして、次の「2-」では史実の開示が続く。
「2-」の部分は、①から⑧の部分の分かれ、かなり長く、これは自国アメリカ人の心を鎮める為の話だと解している。
2-①で75年前の真珠湾米海軍基地攻撃の際の「米軍の英雄的行為を振り返る」として、2-②から2-⑥までを費やし、当時の戦闘で起こった「英雄的」エピソードを幾つも紹介しているのだが、これはオバマが「あの時のことを知っているよ」と自国民アメリカ人に語り掛けている部分である。
これら「英雄的」なエピソードに続き、2-⑦で442連隊の第100大隊のエピソードを紹介する。日系人部隊442連隊はアメリカ合衆国史上最も多くの勲章を受けた部隊とし知られており、最も英雄的な部隊である。
「英雄的」エピソードとして、地元ハワイ出身の日系人が多数入隊した第100大隊が紹介されることに誰も異論は言えない流れである。そして、先に没したが、誰もが知る442連隊出身の日系議員ダニエル・イノウエ上院議員を紹介する。
<上記URLから抜粋引用。(尚、()内は当方により追加訳文である)>
2-⑦:And it is here that we reflect on how war tests our most enduring values -- how, even as Japanese Americans were deprived of their own liberty during the war, one of the most decorated military units in the history of the United States was the 442nd Infantry Regiment and its 100th Infantry Battalion -- the Japanese-American Nisei. In that 442nd served my friend and proud Hawaiian, Daniel Inouye -- a man who was a senator from Hawaii for most of my life and with whom I would find myself proud to serve in the Senate chamber; a man who was not only a recipient of the Medal of Honor and the Presidential Medal of Freedom, but was one of the most distinguished statesmen of his generation as well.
2-⑦:この場所でわれわれは、戦争が私たちの最も不朽の価値観にどれほど試練を与えるかに思いを巡らせる。日系米国人が戦時中、自由を奪われていたにもかかわらず、米国史上最も勲章を授与された軍部隊の一つは日系2世らでつくる第442連隊、その中の第100歩兵大隊だった。
その第442連隊には、私の友人で誇り高きハワイ出身者だったダニエル・イノウエ氏がいた。私の人生のほとんどを通じてハワイ選出の上院議員を務め、上院の議場で一緒に働けることが誇らしく思える人物だった。名誉勲章と大統領自由勲章を授与されただけでなく、彼の世代で最も傑出した政治家の一人でもあった。
<引用終わり>
日系人部隊442連隊とダニエル・イノウエ氏を紹介することで、第二次世界大戦でのアメリカ人の「英雄的」エピソードは、何も白人に限定されていないことを示し、次の話へと移っていく。
次の「3-」の部分は、戦後の日米関係をあらためて評価する部分である。
冒頭「3-①」で「The character of nations is tested in war, but it is defined in peace.(国家の品格は戦争で問われるが、品格を決めるのは平和な時代だ。)」とオバマは自国民に問い掛けている。
新聞報道では「character of nations」を「国家の品格」と訳しているが、概ね良いと思う。
「character」との単語には、その人物の性格・性質・気質等の意味があるが、同時に「道徳的・倫理的な面における個人の性格・正確」との意味がある。
従い、「character of nations」を「国家としての特性(しかも道徳面に於いて)」という意味でここでは用いているものと解される。
このニュアンスを訳文に反映するのなら、「国家としての特性、しかも道徳面に於ける国家の品格は、戦時に於いて試される。そして、それへの評価は、戦後、平和になってから行われる」とするのが相応しい。
アメリカ人のcharacter(国民性)からすれば、アメリカは道徳的であるとの設定が揺らぐことを好まない。
その特性を踏まえ、オバマは戦後の日米同盟の戦後70年間続く歩みを安倍総理と同様の主旨、激しく戦った両者が選択したのは「友情」と「同盟」であるとし、「日米同盟が両国を成功へと導き」、「新たな世界大戦を防いだ国際秩序の構築を支え」、「10億人以上の人々を極度の貧困から救い出し」、「日米共通の利害だけでなく共通の価値観に根差してアジア太平洋の平和と安定を礎石として支え世界の進歩の原動力となっている」との評価を示している。3-②で東日本大震災の時の「トモダチ作戦」に触れ、「地球上の至る所で、日米は肩を並べてアジア太平洋と世界の安全保障の強化に努めている」ことを紹介し、日米同盟が世界平和に資する「希望の同盟」であるとの安倍総理演説を別の繰り口で、オバマ大統領は裏書き(endorse)しているのである
良いことだらけなのだが、我が国の左巻きマスコミが語らない一方の真実であることは間違いのない事実であり、オバマの評価は真っ当なものである。
そして、この様な日米同盟を象徴・体現する人物として、現太平洋軍司令官ハリー・ハリス海軍司令官を前述した様に3-③で紹介しているのである。
この様に3-①、3-②、3-③で、戦後70年間の日米同盟と今を、オバマ大統領は事実に基づき、日米関係をあらためて評価しているのである。
そして、この部分の最後3-④で安倍総理演説の要諦たる、もっとも激しく戦った両国が寛容の心と和解の力で希望の同盟を育んできた歴史と現在と未来志向に呼応することで締めくくっている。
オバマ演説でも、以下の様に、パールハーバーは21世紀の和解の象徴となったとしているのである。
3-④:In this sense, our presence here today -- the connections not just between our governments, but between our people, the presence of Prime Minister Abe here today -- remind us of what is possible between nations and between peoples. Wars can end. The most bitter of adversaries can become the strongest of allies. The fruits of peace always outweigh the plunder of war. This is the enduring truth of this hallowed harbor.
3-④:こうした意味で、安倍首相と私がきょう、ここを訪れたこと、すなわち政府同士だけでなく国民同士のつながりは、両国間そして両国民間で成し遂げ得るものを思い起こさせる。戦争は終わらせることができる。最も激しく対立した敵同士が、最も強固な同盟関係になれる。平和の恩恵は常に、戦争の略奪品に勝る。これこそが、この神聖な真珠湾の不朽の真実だ。
<長くなったので項を分けます>
【文末脚注】*1
2015/03/26投稿:
【コラム】戦後の新世界秩序<民族自決・自存自立>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-65.html



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