フーバー回顧録・目次３

フーバー回顧録・目次３

副題：フーバー元大統領の歴史観を、その記述項目から見ていく。

全ページ数が1100ページ弱の大著である故に、先ずは目次で全体の流れを紹介している。
各章・各節の内容紹介には至っていないことを予めご了承願いたい。
また、本編の「目次１」で述べた通り、全節（Chapter）を紹介してしまうと、著者の権利を侵害してしまう可能性があることから、全体の大きな流れと日本関係部分のみを抜粋して紹介していることを予めご了承いただきたい。

尚、題名に使用した「フーバー回顧録」とは通称である。
同著の英語原題は以下の通り「裏切られた自由」である。
Freedom Betrayed:
（裏切られた自由）
Herbert Hoover's Secret History of the Second World War and Its Aftermath
（ハーバート・フーバーの知られざる歴史、第二次世界大戦と、その後の影響（余波））

さて、前回からの続きである。
前回は、SectionⅧ：The Revolution in America Foreign Policies Continued（アメリカ外交方針の転換の継続）の章迄であった。
アメリカのモンロー主義＝各地域縄張り親分政策＝欧州不干渉の政策がどんどんと変わっていく様を描写した章であった。
今回は、その続きである。

＜引用開始＞
SectionⅨ：The Opportunity to Make Lasting Peace Comes to Franklin Roosevelt
（ルーズベルトに訪れた、平和を持続させる機会）
Chapter33：Hitler Turns His Might against Communist Russia
（ヒットラーの転換、その勢力はソビエト・ロシアに向けられた）
Chapter35：The Reaction in the Western World
（西欧社会の反応）
＜引用終わり＞

ルーズベルトの最大の過ちであるとフーバーが指摘するのが、この時期の共産主義ロシアを支援するとの選択である。
ヒットラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党支配下の全体主義ドイツと、スターリン率いる共産主義ソビエト・ロシアが東欧・ロシアで戦う情勢である。
フーバーは自由主義者であり、全体主義は危険だとの考え方である。
一番最初のSectionⅠの書き出しが共産主義に関してであることからも、戦後体制が平和ではなく、自由主義vs共産主義との対立構造になってしまったルーズベルトの選択が尽く失敗であった事を指摘している。
その中でも、ナチスドイツvs共産主義ロシア＝ソ連の構図で共産主義を育ててしまった、この選択は最悪だとしている。

フランスが降服した1940年6月の時点でのヒットラーは取り敢えず「no immediate danger」（緊急性を要する危険はなかった）状態であったとフーバーは書いている。
イギリスはダンケルク撤退で戦力を失っており、アメリカ世論は8～9割が参戦不可の状態であり、対ソ連に関しては、ポーランド侵攻直前の1939年8月23日に独ソ不可侵条約を締結していた状態だったからである。

独ソ不可侵条約に関しては、「ヒットラーは悪人」「共産主義は正義」なる歪んだ歴史観で捻じ曲げられているが、ソ連の協定違反事案が多々ありドイツ側からすれば「条約は守られていない」との認識があり、そもそも、ヒットラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党とはドイツ共産党のアンチテーゼでもあり、本来、スターリンとは犬猿の仲であり、この仲たがいはむしろ当然の帰結である。

この状況に対して、ルーズベルトが選択したのは、共産主義スターリンソ連への支援であった。フーバーはこの選択を批判している。
モンロー主義で南北アメリカ大陸地域に留まり、敵Aのヒットラードイツと敵Bの共産主義スターリンソ連が互いに戦っているのを見ていれば、それはそれでアメリカにとって損のない選択であったと。
それなのに、実質的宣戦布告であるレンドリース法に基づき、アメリカはスターリンに対して、航空機、戦車、艦船を供与するとの政策を選択した。

それに対して、Chapter35：The Reaction in the Western World（西欧社会の反応）では、特にイギリスに於いては共産主義スターリンとの事実上の同盟に困惑した旨が、また、アメリカ国内でも混乱があった様子、カソリック総本山のバチカンの懸念する態度等が書かれている。
共産主義とは、共産党という指導政党による独裁である。個人の自由は制限され、一般国民は共産党指導に従うことが求められる。また、宗教は麻薬に似たり、との教組マルクスの御言葉の通り宗教的自由もない。そういう相手と「同盟」することの衝撃はキリスト教文化圏諸国にとって、かなり衝撃的なものである。


＜引用開始＞
SectionⅩ：The Road to War
（戦争への道程）
Chapter36：Via Germany
（ドイツから）
Chapter38：Via Japan-the Total Economic Sanction on Japan and Japanese Proposals of Peace
（日本から－対日経済制裁と日本からの和平提案）
Chapter39：Via Japan-Yet Again Comes a Chance for Peace in the Pacific
（日本から－太平洋の平和を確保する機会は、まだあった。再度の機会も）
Chapter40：Via Japan-the Ultimatum
（日本から－最後通牒（ハルノート））
Chapter41：Via Japan-Pearl Harbor
（日本から－真珠湾）
Chapter42：Via Japan-Finding Someone to Blame
（日本から－生贄探し）
＜引用終わり＞

VolumeⅠ（第1部）の最後の章がSectionⅩ：The Road to War（第10章・戦争への道程）である。ここからいきなり対日戦の記述が一気に増える。
Chapter38からChapter42までの5節、本著263ページから310ページまでの約50ページにわたり、以下の歴史が書かれている。

・数段階に及ぶ対日経済制裁（事実上の宣戦布告）
　↓
・日本からの和平提案（アメリカ側が拒否）
　↓
・再度の和平提案（再度の拒否）
　↓
・ハルノートの手交
　↓
・真珠湾攻撃
　↓
・ルーズベルト、参戦理由を確保し、欧州戦線への参戦

アメリカが戦闘に参加してドンパチを始めた理由は、「パールハーバーアタック」である。
それ以前から始まっていた欧州戦線への参戦は、中立法の存在、国民世論の存在で参戦出来ない状態だったのだが、真珠湾攻撃で、アメリカ自身が「戦争当事国」となったことにより、それらの「ルーズベルトにとっての障壁」がなくなったからである。

アメリカが戦争に入る「真珠湾攻撃」、そして日本が真珠湾攻撃に至る経緯、それこそがアメリカにとっての「The Road to War・戦争への道程」なのである。

フーバーはその開始時点を「数段階に及ぶ対日経済制裁」に置いている。
歴史的事実を見れば、対日制裁は、ルーズベルトが大統領に就任した後から始まる。
具体的に目に見える経済制裁は、1939年7月の日米通商航海条約破棄からである。
続けて1939年12月には航空機ガソリン製造設備の禁輸等を行い、翌年の1940年7月31日には航空機用燃料及び潤滑油、鉄・屑鉄の「輸出許可制品目」に指定するなど、事実上の禁輸を行っている。
更に、1941年8月1日には、対日石油全面禁輸をしている。
当時の我が国の石油輸入先の約80%は米国である。
現在、我が国が輸入する石油の約80%は中東湾岸諸国からであるのだが、中東からの輸入が全面禁止となった場合の影響を考えれば「対日石油全面禁輸」との「経済制裁」の影響の多大さは想像できるだろう。
ルーズベルトが大統領就任後に行った対日貿易制限については以下の投稿で紹介済なので、詳しくは以下URLを参照願いたい。

2016/05/21投稿：
（資料編）歴史年表・戦後史部分
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-418.html

我が国での対米戦争の話は、だいたいが「真珠湾攻撃」で始まる。
しかし、歴史とは、連続する人間の営みであり、歴史的事件は、それ以前の歴史と無関係に起きる訳ではない。
その点、フーバーはアメリカの1941年の戦争勃発を1933年から書き始めている。
歴史を論じる姿勢として見習いたいものである。

この部分はVolumeⅠ（第1部）の最後の章であり、Chapter38からChapter42までの5節、約50ページにわたり日本関係が記述されている部分であり、もっとも注目すべき部分であるが、今は目次紹介で大きな流れの把握を目的に書いているので、内容については、後日としたい。

＜目次のVolumeⅠ（第1部）は以上である。次回はVolumeⅡ（第2部）の目次紹介をする予定である。＞

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