自民党改憲草案の紹介1【コラム】

副題:自民党改憲草案の良いところ・悪いところの概要。
現行憲法の改憲必要性については、幾度も繰り返し述べてきた通りであるが、世間一般にそれが正しく広がっているとは言えない状況であることは当方も認識している。
ましてや、改憲をするなら「どの様な新憲法が良いのか」の議論がまともに行われていない状況も認識している。
現状でもっともメジャーな「改憲草案」は題記した自民党の改憲草案であるが、もっともメジャーなはずが、その内容を知る方は少ない。
本ブログでは、自民党改憲草案の全条文の分析を通じて、その良いところ、悪いところを総て論評済である。
そして、単なる批判に終わらせない為に、当方自身による対案である「改正私案α版」を提示している。これらは、文末に記載した過去ログで今も参照出来る。
さて、件の自民党改憲草案を先ず紹介し直す。
<自民党改憲草案>
平成24年4月27日付自民党「日本国憲法改正草案」
(以降、自民党案と表記する、以下のURLはPDFなのでアクセス注意)
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf上記の自民党案は、法改正時の標準形式で作成されており、新旧対比の書き方は法文を読む事に慣れている方にはお馴染みの形式であるが、法文に馴染薄い普通の方々には取っ付き難いであろう。大枠を理解する為には、以下の「日本国憲法改正草案 Q&A(増補版)」の方を先ずはご覧になると良い。(こちらもPDFなのでアクセス注意)
日本国憲法改正草案 Q&A(増補版) - 自由民主党
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/pamphlet/kenpou_qa.pdf自民党案の内容については、詳しくは本ブログの過去ログをご覧いただくとして、その概要を紹介する。
先ず、自民党案の全体構成は、前文及び第1章から第11章となっており、現行憲法と似た章立てになっている。
章建てで一番の違いは、先ず、第2章の章名が「戦争の放棄」から「安全保障」へとなっている点である。次に、新たな章として第9章「緊急事態」が新設されていることである。
また、現行憲法では経過条項が第11章補則となっているが、自民党案は巻末の附則とする形式となっており、章の数は1増1減で同数の11章の形式としている。
1.前文
自民党案の前文は、単なる箇条書きでしかなく、我々日本人の憲法の前文としては、まったく格調がなく、がっかりものである。
がっかりものだったので、対案を作成する上での考え方を以下で提示している。
2015/05/09投稿:
14-25 新憲法前文私案
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-102.htmlまた、前文対案は当方私案α版で提示している。
「α版」と称しているのは、他にもっと良い案があれば、それを採用するなり、取り込むなど、より良いものにしていきたいと考えているからである。
2015年08月13日投稿:
*(1/5)前文、第1章・天皇、第2章・安全保障
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-183.html2.第1章・天皇
自民党案の全体について言えることなのだが、良いところと悪いところが混在する。
自民党案の第1章・天皇も良いところと悪いところが混在している。
先ず、良いところは、天皇が日本国の元首であることを明示しているところである。
悪いところは、主権概念の整理をせず、また、現行憲法の条文間矛盾を放置している点である。
現行憲法の最大の欠陥の1つである、我が国本義天皇の位置を示す条項に、安直な共和制の考え方を残置していることは、不見識も甚だしい。
また、以下に自民党案の1~4条を引用したが、天皇条項である第1章に、違う次元の国旗・国歌規定、元号規定を入れ込んでいるところ等である。
この不見識は看過できない。
<自民党案:第1章の第1条から第3条までを引用>
●第一章 天皇
○第1条(天皇)
天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
○第2条(皇位の継承)
皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
○第3条(国旗及び国歌)
1 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。
第4条(元号)
元号は、法律の定めるところにより、皇位の継承があったときに制定する。
(以下略)
<引用終わり>
3.第2章・安全保障
自民党案第2章・安全保障にも、良いところと悪いところが混在している。
先ず、良いところは、国防軍を持つとしているところである。
国家の自存自立に必須であり、かつ、国際社会に於いての国家主権遂行国家組織として必須の「軍」の存在を明示したことは良い。
現行憲法の最大の欠陥の1つである、武装解除永続化条項である現行憲法第9条・第2項を改正しているとことは良いところである。
一方、悪いところは、現行憲法第9条・第1項の誤魔化し文章をそのまま引き継いでいるところである。あの文章は、巷間言われている「パリ不戦条約の文章」などではない。
マッカーサー3原則の「交戦権という基本的国家主権を制限する」という考え方に則ったものであり、そんな主権制限敗戦国占領基本法の文言を残すのは、極めて不見識である。
現行憲法9条・第1項の問題点は以下で論評済なので、詳しくはそちらを参照いただきたい。
2016/05/18投稿:
憲法9条第1項を読む1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-415.html2016/05/19投稿:
憲法9条第1項を読む2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-416.html2016/05/20投稿:
憲法9条第1項を読む3
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-417.html<自民党案:第2章の第9条から第9条の二第2項までを引用>
●第二章 安全保障
○第9条(平和主義)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
○第9条の2(国防軍)
1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。(以下略)
<引用終わり>
長くなったので、第3章以降の概要紹介は次回以降とする。
【文末資料】
1.<自民党改憲草案の分析・検討>
タグ「憲法研究」での以下の投稿以降が、自民党改憲草案に対する分析・検討である。
2015/04/03投稿:
14-2 自民党「日本国憲法改正草案」の紹介
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-68.html2.<自民党改憲草案の問題点を修正した当方の私案>
本ブログの本来目的の結果として提示した【日本国憲法改正私案α版】
2015年08月13日投稿:
*(1/5)前文、第1章・天皇、第2章・安全保障
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-183.html上記を含め、それ以降の以下の5投稿が私案α版である。
*(2/5)第3章・国民の権利及び義務(URL略)
*(3/5)第4章・国会、第5章・内閣
*(4/5)第6章・司法、第7章・財政、第8章・地方自治、第9章・緊急事態
*(5/5)第10章・改正、第11章最高法規、附則
※上記の【日本国憲法改正私案α版】の内容の自己検証をタグ【α版検証】で続けている。興味ある部分を以下より選択の上、ご一読いただきたければ幸である。
<
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-category-4.html >
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