(解説編3)資料・マッカーサー3原則
- 2016/08/01
- 09:21
(解説編3)資料・マッカーサー3原則

今回(解説編3)は前回及び前々回からの続きで、マッカーサー3原則の原則Ⅲの部分の解説である。
3)原則Ⅲ
先ず、原則Ⅲの全部の原文の英文及び以下での当方和訳を提示する。
2016/07/29登録:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
原則Ⅲ-1The feudal system of Japan will cease.
(日本の封建制度は停止される。)
原則Ⅲ-2①No rights of peerage ②except those of the Imperial family ③will extend beyond the lives of those now existent.
(①貴族(華族他)の権利はない。②皇族を除き、③現存生存する一代限りに於いて)
(皇族を除き、現在生存する一代限りを除き、貴族の権利はない。)
原則Ⅲ-3①No patent of nobility will from this time ②forth embody within itself any National or Civic power of government.
(①今より貴族特権はない。②それ(貴族)が内包的に持つ国または地方に於ける統治権力はなくなることを具体的に示しなさい。)
原則Ⅲ-4Pattern budget after British system.
(予算制度は、英国のシステムに合わせて形づくる。)
マッカーサー3原則の原則Ⅲはとても訳し難い事が書いてある。
単純な直訳では理解するのが難しい文章になってしまう。
その為に、特に原則Ⅲ-3については以下の脚注を資料編では記載している。
<引用開始>
注:マッカーサーのⅢ-3の記述は訳し難いが、これは日本の社会制度を知らず、あたかも中世絶対王政下(封建制度下)の国政貴族集団や地方領主が存在しているとの思い込みで作成したものと考えれば解決する。
特に、この-3①及び②の記述は、その様な前提で書かれたものだと解される。
<引用終わり>
この様に考えないと理解できないものとなっており、原則Ⅰ及びⅡは、そのまま現行憲法の条文または前文に採用されているのだが、原則Ⅲは必ずしもそうはなっていないとの特徴がある。
F:原則Ⅲ-1
原則Ⅲ-1は上記の通り、(日本の封建制度は停止される。)である。
現行憲法には「封建制度の停止」なる表現は存在しない。
当たり前である。そもそも、マッカーサー3原則が出された1946年時点で「封建制度」など我が国には存在してはいない。
西欧文明と違うもの総てを「遅れたもの」とする偏見から「封建制度」なる語句を用いたものと解される。
G:原則Ⅲ-2
①No rights of peerage ②except those of the Imperial family ③will extend beyond the lives of those now existent.
(①貴族(華族他)の権利はない。②皇族を除き、③現存生存する一代限りに於いて)
(皇族を除き、現在生存する一代限りを除き、貴族の権利はない。)
マッカーサー3原則のⅢで現行憲法条文になっているのは、この-2①の華族の廃止部分である。現行憲法第14条の第2項には以下の様な条文がある。
また、-2③の「一代限り」はまったく別の文意で同第3項に登場する。
これは当方による推察になるのだが、マッカーサーは我が国の華族制度を知らず、貴族院が存在することを以て、世襲貴族の他にイギリスにあるサーの称号授与(一代貴族待遇)と勘違いしていたのではないかと思われる。
以下の憲法第14条の新設条文の内容の他、帝国憲法下貴族院が公選制参議院へと変わっていることからの類推であり、文献等での証明はないので、これは当方の推察である。
<現行憲法:第14条>
(第1項略)
同第2項 華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
同第3項 栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。
<引用終わり>
H:原則Ⅲ-3
①No patent of nobility will from this time ②forth embody within itself any National or Civic power of government.
(①今より貴族特権はない。②それ(貴族)が内包的に持つ国または地方に於ける統治権力はなくなることを具体的に示しなさい。)
前述した脚注の通り、これでは意味が通じないが、その理由は、我が国に、あたかも中世絶対王政下(封建制度下)の国政貴族集団や地方領主が存在しているとの、誤った思い込みで作成された文章としか理解のしようがない。
フワフワっとした感覚では、華族制度の廃止、貴族院の廃止という理解になるのだろうが、文章としての意味を考えると、上記の様な状態ではないかと解される書き様である。
この様な「原則」を提示されても、具体的条文化は不可能であり、多分、前文の中の以下に反映したのではないだろうか?
これについては、最高指揮官のマッカーサーがメモの頭書きに「改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント」と書いてあるのだから、一切が無視されたと考える方が無理筋であり、前文に採用されたと考える方が自然である。
<メモの頭書き引用>
Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision About 4 Feb 1946
↓
最高司令官により述べられた、改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント(原則)。
1946年2月4日
<引用終わり>
<現行憲法:前文(抜粋引用)>
(前略)われらとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果と,わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し(中略)ここに主権が国民に存することを宣言し(中略)これに反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する。(中略)人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する(後略)
<引用終わり>
現行憲法前文が、鼻につくのは、この様な、あたかも我が国が「封建社会」であるかの様な決め付けが根底にあるからだと解している。
上記の「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢」の部分などは米国憲法前文からのコピペであることは、以前の論評で指摘済である。
I:原則Ⅲ-4
Pattern budget after British system.
(予算制度は、英国のシステムに合わせて形づくる。)
この最後の部分は、マッカーサーメモの実物画像を見ればわかる通り、空白段落が他の部分よりも多くなった後に書かれたものである。
米国の大統領制下の行政府+立法府議会との制度下での予算決定プロセスと、我が国の議院内閣制行政府+議会との制度下での予算決定プロセスは違うので、同じ議院内閣制の英国のシステムだったら良いだろうと、取って付けた様な書き様となっている部分である。
現行憲法で「予算」に係わる条文があるのは第4章・国会、第5章・内閣、第7章・財政であるが、これらの多くは帝国憲法条文のコピペ条文である。
以上、マッカーサー3原則を全件解説した。
まとめとしては以下の様になる。
1)マッカーサーメモの頭書きにある様に、これら「原則」は条文または前文等に、何らかの形で容れ込まれている。
2)原則Ⅰ天皇に関する原則は総て条文化されている。
元首との規定であることに注目。
3)原則Ⅱ非武装・交戦権否定に関する原則は総て条文及び前文に反映されている。
基本コンセプトは自衛戦争さえも非武装・交戦権否定で否定されているという点である。
4)原則Ⅲを読めば、マッカーサーの我が国制度・文化への理解がかなり劣ったものだとわかる。
以上である。
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今回(解説編3)は前回及び前々回からの続きで、マッカーサー3原則の原則Ⅲの部分の解説である。
3)原則Ⅲ
先ず、原則Ⅲの全部の原文の英文及び以下での当方和訳を提示する。
2016/07/29登録:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
原則Ⅲ-1The feudal system of Japan will cease.
(日本の封建制度は停止される。)
原則Ⅲ-2①No rights of peerage ②except those of the Imperial family ③will extend beyond the lives of those now existent.
(①貴族(華族他)の権利はない。②皇族を除き、③現存生存する一代限りに於いて)
(皇族を除き、現在生存する一代限りを除き、貴族の権利はない。)
原則Ⅲ-3①No patent of nobility will from this time ②forth embody within itself any National or Civic power of government.
(①今より貴族特権はない。②それ(貴族)が内包的に持つ国または地方に於ける統治権力はなくなることを具体的に示しなさい。)
原則Ⅲ-4Pattern budget after British system.
(予算制度は、英国のシステムに合わせて形づくる。)
マッカーサー3原則の原則Ⅲはとても訳し難い事が書いてある。
単純な直訳では理解するのが難しい文章になってしまう。
その為に、特に原則Ⅲ-3については以下の脚注を資料編では記載している。
<引用開始>
注:マッカーサーのⅢ-3の記述は訳し難いが、これは日本の社会制度を知らず、あたかも中世絶対王政下(封建制度下)の国政貴族集団や地方領主が存在しているとの思い込みで作成したものと考えれば解決する。
特に、この-3①及び②の記述は、その様な前提で書かれたものだと解される。
<引用終わり>
この様に考えないと理解できないものとなっており、原則Ⅰ及びⅡは、そのまま現行憲法の条文または前文に採用されているのだが、原則Ⅲは必ずしもそうはなっていないとの特徴がある。
F:原則Ⅲ-1
原則Ⅲ-1は上記の通り、(日本の封建制度は停止される。)である。
現行憲法には「封建制度の停止」なる表現は存在しない。
当たり前である。そもそも、マッカーサー3原則が出された1946年時点で「封建制度」など我が国には存在してはいない。
西欧文明と違うもの総てを「遅れたもの」とする偏見から「封建制度」なる語句を用いたものと解される。
G:原則Ⅲ-2
①No rights of peerage ②except those of the Imperial family ③will extend beyond the lives of those now existent.
(①貴族(華族他)の権利はない。②皇族を除き、③現存生存する一代限りに於いて)
(皇族を除き、現在生存する一代限りを除き、貴族の権利はない。)
マッカーサー3原則のⅢで現行憲法条文になっているのは、この-2①の華族の廃止部分である。現行憲法第14条の第2項には以下の様な条文がある。
また、-2③の「一代限り」はまったく別の文意で同第3項に登場する。
これは当方による推察になるのだが、マッカーサーは我が国の華族制度を知らず、貴族院が存在することを以て、世襲貴族の他にイギリスにあるサーの称号授与(一代貴族待遇)と勘違いしていたのではないかと思われる。
以下の憲法第14条の新設条文の内容の他、帝国憲法下貴族院が公選制参議院へと変わっていることからの類推であり、文献等での証明はないので、これは当方の推察である。
<現行憲法:第14条>
(第1項略)
同第2項 華族その他の貴族の制度は,これを認めない。
同第3項 栄誉,勲章その他の栄典の授与は,いかなる特権も伴はない。栄典の授与は,現にこれを有し,又は将来これを受ける者の一代に限り,その効力を有する。
<引用終わり>
H:原則Ⅲ-3
①No patent of nobility will from this time ②forth embody within itself any National or Civic power of government.
(①今より貴族特権はない。②それ(貴族)が内包的に持つ国または地方に於ける統治権力はなくなることを具体的に示しなさい。)
前述した脚注の通り、これでは意味が通じないが、その理由は、我が国に、あたかも中世絶対王政下(封建制度下)の国政貴族集団や地方領主が存在しているとの、誤った思い込みで作成された文章としか理解のしようがない。
フワフワっとした感覚では、華族制度の廃止、貴族院の廃止という理解になるのだろうが、文章としての意味を考えると、上記の様な状態ではないかと解される書き様である。
この様な「原則」を提示されても、具体的条文化は不可能であり、多分、前文の中の以下に反映したのではないだろうか?
これについては、最高指揮官のマッカーサーがメモの頭書きに「改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント」と書いてあるのだから、一切が無視されたと考える方が無理筋であり、前文に採用されたと考える方が自然である。
<メモの頭書き引用>
Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision About 4 Feb 1946
↓
最高司令官により述べられた、改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント(原則)。
1946年2月4日
<引用終わり>
<現行憲法:前文(抜粋引用)>
(前略)われらとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果と,わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し(中略)ここに主権が国民に存することを宣言し(中略)これに反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する。(中略)人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する(後略)
<引用終わり>
現行憲法前文が、鼻につくのは、この様な、あたかも我が国が「封建社会」であるかの様な決め付けが根底にあるからだと解している。
上記の「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢」の部分などは米国憲法前文からのコピペであることは、以前の論評で指摘済である。
I:原則Ⅲ-4
Pattern budget after British system.
(予算制度は、英国のシステムに合わせて形づくる。)
この最後の部分は、マッカーサーメモの実物画像を見ればわかる通り、空白段落が他の部分よりも多くなった後に書かれたものである。
米国の大統領制下の行政府+立法府議会との制度下での予算決定プロセスと、我が国の議院内閣制行政府+議会との制度下での予算決定プロセスは違うので、同じ議院内閣制の英国のシステムだったら良いだろうと、取って付けた様な書き様となっている部分である。
現行憲法で「予算」に係わる条文があるのは第4章・国会、第5章・内閣、第7章・財政であるが、これらの多くは帝国憲法条文のコピペ条文である。
以上、マッカーサー3原則を全件解説した。
まとめとしては以下の様になる。
1)マッカーサーメモの頭書きにある様に、これら「原則」は条文または前文等に、何らかの形で容れ込まれている。
2)原則Ⅰ天皇に関する原則は総て条文化されている。
元首との規定であることに注目。
3)原則Ⅱ非武装・交戦権否定に関する原則は総て条文及び前文に反映されている。
基本コンセプトは自衛戦争さえも非武装・交戦権否定で否定されているという点である。
4)原則Ⅲを読めば、マッカーサーの我が国制度・文化への理解がかなり劣ったものだとわかる。
以上である。



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