(解説編1)資料・マッカーサー3原則
- 2016/07/30
- 15:34
(解説編1)資料・マッカーサー3原則

今回の(解説編)は、前回提示した「(資料編)マッカーサー3原則」の解説である。
2016/07/29投稿:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
1.現行憲法に入り込んでいるマッカーサー3原則
上記URLにて提示した「マッカーサー3原則」の最初の一文は以下の通り「改憲の際の必須の原則」との一文である。
Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision About 4 Feb 1946
↓
最高司令官により述べられた、改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント(原則)。
1946年2月4日
マッカーサー3原則は前回和訳時に段落数字等は付した様に、Ⅰは3つ、Ⅱは2つ、Ⅲは4つの段落があり実際は中項目分類で9つの原則がある。
現行憲法の条文が頭に入っている方からすれば、どの「原則」が現行憲法のどの「条文」に入り込んでいるのかが分かると思うが、あらためて、「原則」と「条文」を並列して、明示しておく。
「現行憲法は占領憲法」「マッカーサーが占領軍強権で押し付けた憲法」とのスローガンを知っている方でも、「何処が「占領憲法」なのか」の具体的箇所になると迷う方もいると思うので、あらためて明示するものである。
1)原則Ⅰ
A:原則I-1Emperor is at the head of the state.
(天皇は国家元首である。)
↓
<現行憲法:第1条の前半>
天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く。
<同:第6条>これらは天皇の元首行為である。(統治権の行使権を委ねる行為である)
天皇は,国会の指名に基いて,内閣総理大臣を任命する。
同第2項 天皇は,内閣の指名に基いて,最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
<同:第7条>これらは天皇の元首行為である。個別具体的には帝国憲法コピペである。
天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,左の国事に関する行為を行う。
1 憲法改正,法律,政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6 大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10儀式を行ふこと。
現行憲法第6条及び第7条の天皇の元首行為は、第7条に於いて「国事行為」との名称となっているが、その個別具体的「国事行為」の多くは帝国憲法コピペである。
・現行第6条のうち行政部分は帝国憲法第55条+10条、司法部分は第57条+10条である。
・現行憲法:第7条1法の公布他→帝国憲法:第6条
・同第7条2国会を召集→帝国憲法:第7条
・同第7条3衆議院を解散→帝国憲法:第7条
・同第7条4総選挙→帝国憲法:第45条
・同第7条5任免→帝国憲法:第10条
・同第7条6大赦特赦→帝国憲法:第16条
・同第7条7栄典→帝国憲法:第15条
・同第7条8外交文書認証→帝国憲法:第13条
9の外国大使・公使の接受、10の儀式は帝国憲法自体の建て付けから当然のことであり、明文条文は不要なのでない。
帝国憲法は文語体・旧カナ使いで書かれており、現代人には読みにくいので、当方による現代語・口語体訳を以下に投稿してあるので、上記に明示した帝国憲法の条文は、それを参照いただきたい。
2016/04/26投稿:
(資料編)大日本帝国憲法・現代語訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-395.html
B:原則Ⅰ-2His succession is dynastic.
(皇統は継続される。(皇位は世襲される))
↓
<現行憲法:第2条>
皇位は世襲のものであって,国会の議決した皇室典範の定めるところにより,これを継承する。
↓
<帝国憲法:第2条(現代語訳)>
皇位は皇室典範の定めに従い皇統の男系男子が継承する。
マッカーサー原則の原則Ⅰ-1及び原則Ⅰ-2を見ると、ポツダム宣言の受諾の際の我が国の最重要点である国体の護持であること他から、ある程度の理解をしていた様に見えるのだが、そうではなく、異民族による王朝断絶なる直接的極悪人の立場を避けたのではないかと推察している。
マッカーサーと彼のスタッフであるGHQは帝国憲法を調べ、米国式都合でこねくり回して現行憲法第1条を作文し、第2条に関しては、上記の原則Ⅰ-2に基づき、若干の手を加えることでお茶を濁した。
その結果、論理的に現行憲法第1条と第2条は矛盾したものとなっているのである。
詳しくは以下他で何回か論評済なので、参照いただきたい。
2015/09/17投稿:
【コラム】現行憲法の矛盾・混乱1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-212.html
2015/11/04投稿:
【コラム】現行憲法に紛れ込むアメリカの風
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-252.html
C:原則Ⅰ-3His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and responsive to the basic will of the people as provided therein.
(天皇の責務と権能は憲法に基づき行使され、そして、国民の為に国民の基本的希望に対しての責を負う。)
↓
<現行憲法:第3条>
天皇の国事に関するすべての行為には,内閣の助言と承認を必要とし,内閣が,その責任を負う。
<現行憲法:第4条(第2項省略)>
天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行い,国政に関する機能を有しない。
マッカーサー原則Ⅰ-3の適用条文で代表的なものは、上記の第3条と第4条であろうが、第1条の後半部分も該当すると解している。
<現行憲法:第1条の後半>
天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く。
マッカーサー原則Ⅰ-3を第Ⅰ条にむりくり入れ込んで作文した結果、矛盾が発生していることは、前述した過去論評通りである。
GHQの様な共和国制・連邦制国家を自国に持つ集団では、我が国の天皇大権建て付けの立憲民主主義はおろか、英国型の立憲君主制民主主義も理解に至っていなかったのだと解される。
帝国憲法は、その建て付けが「天皇大権に集約する形式」なのだが、条文内容を見ると、立憲民主主義・議会制民主主義である。
参考に帝国憲法の条文の幾つか紹介する。個別の条文は前述した帝国憲法の現代語訳を参照願いたい。これら規定に憲政の常道、明治大帝の発布告文・上諭を合わせて、その構造をみれば、立憲民主主義・議会制民主主義であることがわかると思う。
帝国憲法:第5条→帝国議会の協賛との議会制民主主義制度規定
同第8条→緊急事態条項に於ける議会不承認権限規定
同第49条→議会から天皇への上奏権条項
同第55条→国務大臣の輔弼条項(輔弼という名の行政統治行使権を大臣に委任する条項)
同第56条→今はない制度だが枢密顧問の輔弼との上記と同様の「内閣の助言と承認」に該当する条項
同第70条第2項→緊急事態条項に於ける議会不承認権限規定
同第73条→憲法改正条項には議会の賛成2/3が必要との議会制民主主義制度規定
<長くなったので項を分けます>
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今回の(解説編)は、前回提示した「(資料編)マッカーサー3原則」の解説である。
2016/07/29投稿:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
1.現行憲法に入り込んでいるマッカーサー3原則
上記URLにて提示した「マッカーサー3原則」の最初の一文は以下の通り「改憲の際の必須の原則」との一文である。
Three basic points stated by Supreme Commander to be "musts" in constitutional revision About 4 Feb 1946
↓
最高司令官により述べられた、改憲に際して“必須”の3点の基本的ポイント(原則)。
1946年2月4日
マッカーサー3原則は前回和訳時に段落数字等は付した様に、Ⅰは3つ、Ⅱは2つ、Ⅲは4つの段落があり実際は中項目分類で9つの原則がある。
現行憲法の条文が頭に入っている方からすれば、どの「原則」が現行憲法のどの「条文」に入り込んでいるのかが分かると思うが、あらためて、「原則」と「条文」を並列して、明示しておく。
「現行憲法は占領憲法」「マッカーサーが占領軍強権で押し付けた憲法」とのスローガンを知っている方でも、「何処が「占領憲法」なのか」の具体的箇所になると迷う方もいると思うので、あらためて明示するものである。
1)原則Ⅰ
A:原則I-1Emperor is at the head of the state.
(天皇は国家元首である。)
↓
<現行憲法:第1条の前半>
天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く。
<同:第6条>これらは天皇の元首行為である。(統治権の行使権を委ねる行為である)
天皇は,国会の指名に基いて,内閣総理大臣を任命する。
同第2項 天皇は,内閣の指名に基いて,最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
<同:第7条>これらは天皇の元首行為である。個別具体的には帝国憲法コピペである。
天皇は,内閣の助言と承認により,国民のために,左の国事に関する行為を行う。
1 憲法改正,法律,政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6 大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10儀式を行ふこと。
現行憲法第6条及び第7条の天皇の元首行為は、第7条に於いて「国事行為」との名称となっているが、その個別具体的「国事行為」の多くは帝国憲法コピペである。
・現行第6条のうち行政部分は帝国憲法第55条+10条、司法部分は第57条+10条である。
・現行憲法:第7条1法の公布他→帝国憲法:第6条
・同第7条2国会を召集→帝国憲法:第7条
・同第7条3衆議院を解散→帝国憲法:第7条
・同第7条4総選挙→帝国憲法:第45条
・同第7条5任免→帝国憲法:第10条
・同第7条6大赦特赦→帝国憲法:第16条
・同第7条7栄典→帝国憲法:第15条
・同第7条8外交文書認証→帝国憲法:第13条
9の外国大使・公使の接受、10の儀式は帝国憲法自体の建て付けから当然のことであり、明文条文は不要なのでない。
帝国憲法は文語体・旧カナ使いで書かれており、現代人には読みにくいので、当方による現代語・口語体訳を以下に投稿してあるので、上記に明示した帝国憲法の条文は、それを参照いただきたい。
2016/04/26投稿:
(資料編)大日本帝国憲法・現代語訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-395.html
B:原則Ⅰ-2His succession is dynastic.
(皇統は継続される。(皇位は世襲される))
↓
<現行憲法:第2条>
皇位は世襲のものであって,国会の議決した皇室典範の定めるところにより,これを継承する。
↓
<帝国憲法:第2条(現代語訳)>
皇位は皇室典範の定めに従い皇統の男系男子が継承する。
マッカーサー原則の原則Ⅰ-1及び原則Ⅰ-2を見ると、ポツダム宣言の受諾の際の我が国の最重要点である国体の護持であること他から、ある程度の理解をしていた様に見えるのだが、そうではなく、異民族による王朝断絶なる直接的極悪人の立場を避けたのではないかと推察している。
マッカーサーと彼のスタッフであるGHQは帝国憲法を調べ、米国式都合でこねくり回して現行憲法第1条を作文し、第2条に関しては、上記の原則Ⅰ-2に基づき、若干の手を加えることでお茶を濁した。
その結果、論理的に現行憲法第1条と第2条は矛盾したものとなっているのである。
詳しくは以下他で何回か論評済なので、参照いただきたい。
2015/09/17投稿:
【コラム】現行憲法の矛盾・混乱1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-212.html
2015/11/04投稿:
【コラム】現行憲法に紛れ込むアメリカの風
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-252.html
C:原則Ⅰ-3His duties and powers will be exercised in accordance with the Constitution and responsive to the basic will of the people as provided therein.
(天皇の責務と権能は憲法に基づき行使され、そして、国民の為に国民の基本的希望に対しての責を負う。)
↓
<現行憲法:第3条>
天皇の国事に関するすべての行為には,内閣の助言と承認を必要とし,内閣が,その責任を負う。
<現行憲法:第4条(第2項省略)>
天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行い,国政に関する機能を有しない。
マッカーサー原則Ⅰ-3の適用条文で代表的なものは、上記の第3条と第4条であろうが、第1条の後半部分も該当すると解している。
<現行憲法:第1条の後半>
天皇は,日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって,この地位は,主権の存する日本国民の総意に基く。
マッカーサー原則Ⅰ-3を第Ⅰ条にむりくり入れ込んで作文した結果、矛盾が発生していることは、前述した過去論評通りである。
GHQの様な共和国制・連邦制国家を自国に持つ集団では、我が国の天皇大権建て付けの立憲民主主義はおろか、英国型の立憲君主制民主主義も理解に至っていなかったのだと解される。
帝国憲法は、その建て付けが「天皇大権に集約する形式」なのだが、条文内容を見ると、立憲民主主義・議会制民主主義である。
参考に帝国憲法の条文の幾つか紹介する。個別の条文は前述した帝国憲法の現代語訳を参照願いたい。これら規定に憲政の常道、明治大帝の発布告文・上諭を合わせて、その構造をみれば、立憲民主主義・議会制民主主義であることがわかると思う。
帝国憲法:第5条→帝国議会の協賛との議会制民主主義制度規定
同第8条→緊急事態条項に於ける議会不承認権限規定
同第49条→議会から天皇への上奏権条項
同第55条→国務大臣の輔弼条項(輔弼という名の行政統治行使権を大臣に委任する条項)
同第56条→今はない制度だが枢密顧問の輔弼との上記と同様の「内閣の助言と承認」に該当する条項
同第70条第2項→緊急事態条項に於ける議会不承認権限規定
同第73条→憲法改正条項には議会の賛成2/3が必要との議会制民主主義制度規定
<長くなったので項を分けます>



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