緊急事態条項の必要性3
- 2016/07/25
- 00:33
緊急事態条項の必要性3

副題:法治主義を維持する為には緊急事態条項は必要。緊急事態を想定させないのは非武装と同じ。改憲阻止・護憲をしたがっている勢力が、国民を守り・法治主義を貫徹させる「緊急事態条項」にウソの偽看板を貼り付けているのが実態。
<目次1>前々回
Ⅰ:最初に
Ⅱ:緊急事態条項って何?
<目次2>前回
Ⅲ:我が国現行憲法には緊急事態条項がないのは何故か?
副題:帝国憲法にあった緊急事態条項は削除された。
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
<目次3>今回
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
(続き・後半)
Ⅴ:「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派。
再開します。
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
(続き・後半)
ドイツ憲法(ドイツ基本法)には「緊急事態条項」が存在する。
ドイツ憲法の正式名は「ドイツ連邦共和国基本法」と言う。
東西ドイツに分断されていた1949年に旧西ドイツの首都ボンで制定された。
憲法と言わずに基本法としているのは、東西ドイツ統一までの仮の名称として基本法とし、東西ドイツ統一の時に改めて憲法を制定することとしていた為である。
しかしながら、1990年の東西ドイツ統一後も新たな憲法は制定されておらず、ドイツ連邦共和国基本法が統一ドイツの憲法の役割に担っているのがドイツ基本法である。
以下のURLにドイツ基本法の全文が記載されている。
< http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/ >
ドイツ憲法(ドイツ基本法)第10章のa<防衛事態>が同法の緊急事態条項である。
上記で見ていただければわかる通り、ドイツ憲法の第9章が<司法>、第10章が<財政>であり、第10章のaが<防衛自体>、第11章が<経過規定および終末規定>になっている。
既存の第10章<財政>の最後の条文が115条であるが、後日、改憲で追加された第10章のa<防衛事態>は第115a条から始まり、第115j条がなくなっており、第115l条迄の11条で構成されている。
次の既存の第11章は第116条から始まっている。
我が国に於いても同様なのだが、法改正により「第○○条の二」とか「第○○条の四」とかの条文追加が行われるが、ドイツ憲法に於ける、この様な章番号・条文番号を見れば、ドイツ憲法の緊急事態条項は、後日の改憲の結果、追加された条文であることが瞬時にわかるものとなっているのである。
欧州の地で2度の大戦を引き起こし敗戦したドイツは、戦後、厳しい武装楷書状態に置かれた。我が国の憲法9条の交戦権否定・非武装規定と同じことである。
ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発する。
我が国が併合した朝鮮半島で戦後起こった朝鮮戦争とは、自由主義vs共産主義の戦争である。同年、ソ連支配下の東ドイツが再軍備を計画していることが判明すると、英米仏支配下西ドイツでも再軍備の検討が始まった。
結局、朝鮮戦争後の1955年西ドイツの再軍備が決まった。その際の改憲の足跡が上記のドイツ憲法【第10章のa】であり、第115a条からの条文である。
最初の第115a条<概念および確認>は、緊急事態条項の標準である「緊急事態の宣言」である。そして次の115b条は、防衛事態の公布とともに軍隊に対する命令権および指揮権は「連邦首相」に移行する旨の規定である。
次の第115c条は、有事に於ける政府権限の拡張に関する規定である。
我が国の所謂「サヨク」達が盛んに言う「国家権力の拡大・独裁の始まり」なるウソ話の多くは、有事の権限拡大の話を針小棒大にネジ曲げものである。
現行のドイツ憲法の条文を以下に引用する。
<ドイツ憲法(ドイツ基本法)第10章のa<防衛事態>>
第115C条<連邦の立法権限の拡張>
(1) 連邦は、防衛事態に対処するために、連邦の立法権限に属する分野においても、競合的立法権を行使する。これらの法律は、連邦参議院の同意を必要とする。
(2) 連邦は、防衛事態の間、事情が必要とする限り、連邦法により、防衛事態の対処のために次のことをすることができる。
1.公用収用の補償に関して、暫定的に第14条3項2段と異なる措置を定めること。
2.自由剥奪に関して、裁判官が、平時に適用される期間内では活動することができないとき、第104条2項および3項1段とは異なる期間、ただし最高限4日の期間を定めること。
(3) 連邦は、防衛事態において、現在の攻撃または直接切迫した攻撃を防御するために必要な限りで、連邦参議院の同意を必要とする連邦法により、連邦およびラントの行政または財政制度について、第8章、第8a章および第10章と異なる規律を定めることができる。この場合、連邦、市町村および市町村連合の生存能力が、とくに財政的な観点からも保護されなければならない。
(4) 1項および2項1号による連邦法は、その執行の準備のために、防衛事態の発生前であっても適用することができる。
<引用終わり>
基本的に法は、平時を想定して作成してある。
しかし、緊急事態に於いては、平時規定が、かえって法の大目的である「国民の平和と安寧」を毀損してしまう事態が発生する。その為に、緊急事態に於いては、平時とは違う「○○については有事には△△」との規定を設ける。
これも国際的に標準的な条項である。
「国際的に標準的なこと」との知識があれば、上記の現行ドイツ憲法の有事特例規定とワイマール憲法第48条・第二段落も腑に落ちる内容であれことがわかるだろう。
<ワイマール憲法第48条:第一段落・二段落を引用>
○もしも、国家が混乱に陥り、国家責務である公共の安全・秩序の確保に失敗した場合には、ドイツ国大統領は、憲法または国法に則り、政府機能の回復を命令することが出来る。
その場合、軍隊等を回復行使に使用することが出来る。
○もしも、ドイツ国内に於いて公共の安全及び秩序が 深刻な妨害または脅威にさらされている場合、ドイツ国大統領は公的な安全を回復するために、必要な手段を取り、命令することができる。その場合、必要があるならば、軍隊の支援を得ることが出来る。
また、この目的の為に以下の条文に列挙される基本的人権の一部または全部を一時的に中断(停止)することができる。第114条、第115条、第 117条、第118条、第123条、第124条及び第153条。
<引用終わり>
如何であろう?
現行ドイツ憲法とワイマール憲法の緊急事態時の条文を並べて読んでみれば、緊急時の特例としては、概ね「当たり前」の内容であるのだが、例えば、報道ステーションの特集番組の様に「ワイマール憲法にあった緊急事態条項が独裁の入り口だ」とのデマを聞かされた後に、ワイマール憲法第48条の第二段落を見せられると、「国家権限の拡大だぁ!」と過敏になってしまうのだろうと思われる。
「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派・護憲派は、ワイマール憲法の「目的の為に以下の条文に列挙される基本的人権の一部または全部を一時的に中断(停止)することができる。」の一文を悪者にしたがっているのである。
「火事の際に、普段使っている道が通行止めにするとの権限が消防署にある」という意味の法文なのに、それを殊更悪く言っているのである。
「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
答えは既に前回提示済だ。
「緊急事態条項」はちっとも危険じゃなく、むしろ平時と違う事態に於いても国民を守り、法治主義を貫徹することを目的にするものだからである。
最後になるが、ドイツは連邦制国家であり、我が国やイギリスやフランスとは主権の存在位置が違ういので、厳密には、その部分他を深める論評が必要なのだが、緊急事態条項の建て付けとその評価は変わらないので、その部分他には言及していないことを、為念、申し添える。
Ⅴ:「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派。
「緊急事態条項」をあたかも危険な条項だとするウソ言説で、改憲がまるで「戦争への道」だとの印象付けをしたのが、カタカナ表記の所謂「サヨク」である。
緊急事態条項の存在に関しての「理」や「論」を言い、議論するのならまだわかるのだが、カタカナ表記の所謂「サヨク」がやっていることは、ウソや隠蔽のインチキ、デマの流布でしかない。
本年3月下旬頃に論評した、報道ステーション「ワイマール憲法特集」が虚偽宣伝である旨の論評をした際に、当方は、以下の様に、同特集が扱う「ワイマール憲法・緊急事態条項」の和訳を紹介した。
2016/03/21投稿:
【コラム】資料編:ワイマール憲法第48条全文和訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-367.html
その理由は、当時、ネット検索をしても「ワイマール憲法・緊急事態条項」の全文が見当たらなく、もっぱら同条文の第二段落までの内容を紹介したものしか見当たらなかったからである。
「ワイマール憲法・緊急事態条項」は5つの段落からなるのだが、第一段落と第二段落は前記引用した通りであるが、見当たらなかった第三段落は以下の通り、行政府が緊急事態条項を発動しても、立法府・国会には、緊急事態の停止権限がある旨の条文である。
<ワイマール憲法第48条:第三段落を引用>
○ドイツ国大統領は、この条文の第一段落又は第二段落の規定に基づき発せられた総ての措置を、直ちに、国会に対して通知(コミュニケート)しなければならない。
これらの措置は、国会の要求がある場合には、廃止されなければならない。
<引用終わり>
立法府・国会に緊急事態停止権限があるのだから、「ワイマール憲法・緊急事態条項」が「独裁の原因」である訳がない。
それがわかってしまうから「ネットで見当たらない」理由だと当方は推定している。
この様な「隠蔽」は、この事例だけではない。
実際、報道ステーション「ワイマール憲法特集」のスタジオでの「憲法学者」の「解説」も「隠蔽」手法を使っていたのである。
詳しくは以下で論評しているので、是非ともご一読いただきたい。
2016/03/23投稿:
【コラム】スタジオ編1報ステ「ワイマール憲法」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-370.html
2016/03/24投稿:
【コラム】スタジオ編2報ステ「ワイマール憲法」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-371.html
報道ステーションのワイマール憲法特集は、以下の様なデマ展開で自民党の改憲草案に偽看板を貼り付けるのが目的のインチキ番組である。
1)ワイマール憲法の緊急事態条項がヒットラーの独裁を産んだ危険な条項
(もちろん、これ自体が大嘘である。)
↓
2)自民党の改憲草案には緊急事態条項がある。
(世界標準の普通の内容の緊急事態条項案がある)
↓
3)緊急事態条項がある自民党の改憲草案は危険だ。改憲阻止!
(これが言いたいだけのデマ)
上記1)の段階での「隠蔽」が「ワイマール憲法・緊急事態条項・第三段落」の隠蔽である。そして、同番組で行われたのが、上記2)の段階で「自民党改選草案の緊急事態条項案」の中にある議会承認部分の隠蔽である。
(第2項、第3項部分)
<自民党改憲草案・第98条>
内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
同第2項:緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項:内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
(第4項省略)
<引用終わり>
第2項には「国会による民主的統制の確保」の条文があるのは、ワイマール憲法の第三段落、ドイツ基本法の緊急事態条項第115l条と同じ、世界標準である。
また、第3項には「緊急事態の宣言の終了」についての規定がある。
緊急事態の宣言と、その宣言の終了がちゃんと書かれているのであるが、報道ステーションでは、この部分は隠蔽され、放送には登場していないのである。
如何であろう?
議論のポイントとなる条文を隠蔽して、ウソの印象操作をしていることがご理解いただけただろうか?
今後、憲法議論を行う際には、報道ステーションの様なインチキに騙されず、中身の議論が必要だということだけはご理解いただきたい。
<お知らせ>
本年3月下旬頃に論評した、報道ステーション「ワイマール憲法特集」はタグ【コラム】で登録していたが、今般の「緊急事態条項の必要性」の登録を機に、タグを「緊急事態条項」に変更したことをお知らせする。
報ステ・ワイマール憲法特集の欺瞞性を含め、以下で一連の投稿を参照できる様にしたのでお知らせする。
<カテゴリー「緊急事態条項」の一覧>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-category-9.html
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副題:法治主義を維持する為には緊急事態条項は必要。緊急事態を想定させないのは非武装と同じ。改憲阻止・護憲をしたがっている勢力が、国民を守り・法治主義を貫徹させる「緊急事態条項」にウソの偽看板を貼り付けているのが実態。
<目次1>前々回
Ⅰ:最初に
Ⅱ:緊急事態条項って何?
<目次2>前回
Ⅲ:我が国現行憲法には緊急事態条項がないのは何故か?
副題:帝国憲法にあった緊急事態条項は削除された。
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
<目次3>今回
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
(続き・後半)
Ⅴ:「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派。
再開します。
Ⅳ:「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
(続き・後半)
ドイツ憲法(ドイツ基本法)には「緊急事態条項」が存在する。
ドイツ憲法の正式名は「ドイツ連邦共和国基本法」と言う。
東西ドイツに分断されていた1949年に旧西ドイツの首都ボンで制定された。
憲法と言わずに基本法としているのは、東西ドイツ統一までの仮の名称として基本法とし、東西ドイツ統一の時に改めて憲法を制定することとしていた為である。
しかしながら、1990年の東西ドイツ統一後も新たな憲法は制定されておらず、ドイツ連邦共和国基本法が統一ドイツの憲法の役割に担っているのがドイツ基本法である。
以下のURLにドイツ基本法の全文が記載されている。
< http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/ >
ドイツ憲法(ドイツ基本法)第10章のa<防衛事態>が同法の緊急事態条項である。
上記で見ていただければわかる通り、ドイツ憲法の第9章が<司法>、第10章が<財政>であり、第10章のaが<防衛自体>、第11章が<経過規定および終末規定>になっている。
既存の第10章<財政>の最後の条文が115条であるが、後日、改憲で追加された第10章のa<防衛事態>は第115a条から始まり、第115j条がなくなっており、第115l条迄の11条で構成されている。
次の既存の第11章は第116条から始まっている。
我が国に於いても同様なのだが、法改正により「第○○条の二」とか「第○○条の四」とかの条文追加が行われるが、ドイツ憲法に於ける、この様な章番号・条文番号を見れば、ドイツ憲法の緊急事態条項は、後日の改憲の結果、追加された条文であることが瞬時にわかるものとなっているのである。
欧州の地で2度の大戦を引き起こし敗戦したドイツは、戦後、厳しい武装楷書状態に置かれた。我が国の憲法9条の交戦権否定・非武装規定と同じことである。
ところが、1950年に朝鮮戦争が勃発する。
我が国が併合した朝鮮半島で戦後起こった朝鮮戦争とは、自由主義vs共産主義の戦争である。同年、ソ連支配下の東ドイツが再軍備を計画していることが判明すると、英米仏支配下西ドイツでも再軍備の検討が始まった。
結局、朝鮮戦争後の1955年西ドイツの再軍備が決まった。その際の改憲の足跡が上記のドイツ憲法【第10章のa】であり、第115a条からの条文である。
最初の第115a条<概念および確認>は、緊急事態条項の標準である「緊急事態の宣言」である。そして次の115b条は、防衛事態の公布とともに軍隊に対する命令権および指揮権は「連邦首相」に移行する旨の規定である。
次の第115c条は、有事に於ける政府権限の拡張に関する規定である。
我が国の所謂「サヨク」達が盛んに言う「国家権力の拡大・独裁の始まり」なるウソ話の多くは、有事の権限拡大の話を針小棒大にネジ曲げものである。
現行のドイツ憲法の条文を以下に引用する。
<ドイツ憲法(ドイツ基本法)第10章のa<防衛事態>>
第115C条<連邦の立法権限の拡張>
(1) 連邦は、防衛事態に対処するために、連邦の立法権限に属する分野においても、競合的立法権を行使する。これらの法律は、連邦参議院の同意を必要とする。
(2) 連邦は、防衛事態の間、事情が必要とする限り、連邦法により、防衛事態の対処のために次のことをすることができる。
1.公用収用の補償に関して、暫定的に第14条3項2段と異なる措置を定めること。
2.自由剥奪に関して、裁判官が、平時に適用される期間内では活動することができないとき、第104条2項および3項1段とは異なる期間、ただし最高限4日の期間を定めること。
(3) 連邦は、防衛事態において、現在の攻撃または直接切迫した攻撃を防御するために必要な限りで、連邦参議院の同意を必要とする連邦法により、連邦およびラントの行政または財政制度について、第8章、第8a章および第10章と異なる規律を定めることができる。この場合、連邦、市町村および市町村連合の生存能力が、とくに財政的な観点からも保護されなければならない。
(4) 1項および2項1号による連邦法は、その執行の準備のために、防衛事態の発生前であっても適用することができる。
<引用終わり>
基本的に法は、平時を想定して作成してある。
しかし、緊急事態に於いては、平時規定が、かえって法の大目的である「国民の平和と安寧」を毀損してしまう事態が発生する。その為に、緊急事態に於いては、平時とは違う「○○については有事には△△」との規定を設ける。
これも国際的に標準的な条項である。
「国際的に標準的なこと」との知識があれば、上記の現行ドイツ憲法の有事特例規定とワイマール憲法第48条・第二段落も腑に落ちる内容であれことがわかるだろう。
<ワイマール憲法第48条:第一段落・二段落を引用>
○もしも、国家が混乱に陥り、国家責務である公共の安全・秩序の確保に失敗した場合には、ドイツ国大統領は、憲法または国法に則り、政府機能の回復を命令することが出来る。
その場合、軍隊等を回復行使に使用することが出来る。
○もしも、ドイツ国内に於いて公共の安全及び秩序が 深刻な妨害または脅威にさらされている場合、ドイツ国大統領は公的な安全を回復するために、必要な手段を取り、命令することができる。その場合、必要があるならば、軍隊の支援を得ることが出来る。
また、この目的の為に以下の条文に列挙される基本的人権の一部または全部を一時的に中断(停止)することができる。第114条、第115条、第 117条、第118条、第123条、第124条及び第153条。
<引用終わり>
如何であろう?
現行ドイツ憲法とワイマール憲法の緊急事態時の条文を並べて読んでみれば、緊急時の特例としては、概ね「当たり前」の内容であるのだが、例えば、報道ステーションの特集番組の様に「ワイマール憲法にあった緊急事態条項が独裁の入り口だ」とのデマを聞かされた後に、ワイマール憲法第48条の第二段落を見せられると、「国家権限の拡大だぁ!」と過敏になってしまうのだろうと思われる。
「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派・護憲派は、ワイマール憲法の「目的の為に以下の条文に列挙される基本的人権の一部または全部を一時的に中断(停止)することができる。」の一文を悪者にしたがっているのである。
「火事の際に、普段使っている道が通行止めにするとの権限が消防署にある」という意味の法文なのに、それを殊更悪く言っているのである。
「緊急事態条項」が危険な条項なら、何故戦後ドイツ憲法に存在するのか?
答えは既に前回提示済だ。
「緊急事態条項」はちっとも危険じゃなく、むしろ平時と違う事態に於いても国民を守り、法治主義を貫徹することを目的にするものだからである。
最後になるが、ドイツは連邦制国家であり、我が国やイギリスやフランスとは主権の存在位置が違ういので、厳密には、その部分他を深める論評が必要なのだが、緊急事態条項の建て付けとその評価は変わらないので、その部分他には言及していないことを、為念、申し添える。
Ⅴ:「緊急事態条項」を悪者にしたい改憲阻止派。
「緊急事態条項」をあたかも危険な条項だとするウソ言説で、改憲がまるで「戦争への道」だとの印象付けをしたのが、カタカナ表記の所謂「サヨク」である。
緊急事態条項の存在に関しての「理」や「論」を言い、議論するのならまだわかるのだが、カタカナ表記の所謂「サヨク」がやっていることは、ウソや隠蔽のインチキ、デマの流布でしかない。
本年3月下旬頃に論評した、報道ステーション「ワイマール憲法特集」が虚偽宣伝である旨の論評をした際に、当方は、以下の様に、同特集が扱う「ワイマール憲法・緊急事態条項」の和訳を紹介した。
2016/03/21投稿:
【コラム】資料編:ワイマール憲法第48条全文和訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-367.html
その理由は、当時、ネット検索をしても「ワイマール憲法・緊急事態条項」の全文が見当たらなく、もっぱら同条文の第二段落までの内容を紹介したものしか見当たらなかったからである。
「ワイマール憲法・緊急事態条項」は5つの段落からなるのだが、第一段落と第二段落は前記引用した通りであるが、見当たらなかった第三段落は以下の通り、行政府が緊急事態条項を発動しても、立法府・国会には、緊急事態の停止権限がある旨の条文である。
<ワイマール憲法第48条:第三段落を引用>
○ドイツ国大統領は、この条文の第一段落又は第二段落の規定に基づき発せられた総ての措置を、直ちに、国会に対して通知(コミュニケート)しなければならない。
これらの措置は、国会の要求がある場合には、廃止されなければならない。
<引用終わり>
立法府・国会に緊急事態停止権限があるのだから、「ワイマール憲法・緊急事態条項」が「独裁の原因」である訳がない。
それがわかってしまうから「ネットで見当たらない」理由だと当方は推定している。
この様な「隠蔽」は、この事例だけではない。
実際、報道ステーション「ワイマール憲法特集」のスタジオでの「憲法学者」の「解説」も「隠蔽」手法を使っていたのである。
詳しくは以下で論評しているので、是非ともご一読いただきたい。
2016/03/23投稿:
【コラム】スタジオ編1報ステ「ワイマール憲法」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-370.html
2016/03/24投稿:
【コラム】スタジオ編2報ステ「ワイマール憲法」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-371.html
報道ステーションのワイマール憲法特集は、以下の様なデマ展開で自民党の改憲草案に偽看板を貼り付けるのが目的のインチキ番組である。
1)ワイマール憲法の緊急事態条項がヒットラーの独裁を産んだ危険な条項
(もちろん、これ自体が大嘘である。)
↓
2)自民党の改憲草案には緊急事態条項がある。
(世界標準の普通の内容の緊急事態条項案がある)
↓
3)緊急事態条項がある自民党の改憲草案は危険だ。改憲阻止!
(これが言いたいだけのデマ)
上記1)の段階での「隠蔽」が「ワイマール憲法・緊急事態条項・第三段落」の隠蔽である。そして、同番組で行われたのが、上記2)の段階で「自民党改選草案の緊急事態条項案」の中にある議会承認部分の隠蔽である。
(第2項、第3項部分)
<自民党改憲草案・第98条>
内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
同第2項:緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項:内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
(第4項省略)
<引用終わり>
第2項には「国会による民主的統制の確保」の条文があるのは、ワイマール憲法の第三段落、ドイツ基本法の緊急事態条項第115l条と同じ、世界標準である。
また、第3項には「緊急事態の宣言の終了」についての規定がある。
緊急事態の宣言と、その宣言の終了がちゃんと書かれているのであるが、報道ステーションでは、この部分は隠蔽され、放送には登場していないのである。
如何であろう?
議論のポイントとなる条文を隠蔽して、ウソの印象操作をしていることがご理解いただけただろうか?
今後、憲法議論を行う際には、報道ステーションの様なインチキに騙されず、中身の議論が必要だということだけはご理解いただきたい。
<お知らせ>
本年3月下旬頃に論評した、報道ステーション「ワイマール憲法特集」はタグ【コラム】で登録していたが、今般の「緊急事態条項の必要性」の登録を機に、タグを「緊急事態条項」に変更したことをお知らせする。
報ステ・ワイマール憲法特集の欺瞞性を含め、以下で一連の投稿を参照できる様にしたのでお知らせする。
<カテゴリー「緊急事態条項」の一覧>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-category-9.html



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