(資料編)大日本帝国憲法・現代語訳

<大日本帝国憲法 告文>
私(明治天皇)は神武天皇から始まる我が国歴代天皇の御神霊に誓って国民の皆さんに告げます。
私は三種の神器とともに御神霊の皇位を正統に継承し、伝統文化を保持し、決して失墜することのない様にし、また、我が国の歴史をかえりみて、世の中の進歩・向上していく機運や傾向、人倫の発達を我が国歴史の遺訓に則り(我が国の良き伝統)としてこれを推進していく所存です。
ここに皇室典範と憲法を制定しその条章を明示し、皇室では子孫がこれにより従うところとし、臣民(国民)には天皇(国家運営)を補佐する道を広めて永遠に憲法に従うようにして、益々大事業(国家運営統治)の基礎を強固にして臣民(国民)の幸福を増進する為にここに皇室典範および憲法を制定するものです。
良く考えればわかりますが、これは以前から続いてきた我が国の良き伝統として我が国歴代天皇が子孫である私(明治天皇とその子孫)に言い残した国家運営の規範に従うこととに他なりません。
時代が私(明治天皇)の番となり、国家運営をするにあたり、神武天皇から始まる我が国歴代天皇の御威光と我が先帝(孝明天皇)の御威光に頼り、そのお助けを祈願して、あわせて私(明治天皇)の現在および将来に於いて、率先してこの憲法を実行し、憲法に背くことが無いようにすることを誓います。
<憲法発布勅語>
私(明治天皇)は国家の隆盛と臣民(国民)の幸福が我が国の栄光だとの理念を持ったこの憲法を、神武天皇から始まる我が国歴代天皇から受け継いだ大権によって、現在から将来にわたる臣民(国民)に対し広く公布する。
我が国があるのは、神武天皇から始まる我が国歴代天皇と我が国臣民(国民)の祖先が一致協力して国を創ってきたからであり、神聖なる皇統の威徳と臣民(国民)の忠実さと勇武、愛国の心で公に殉じた臣民(国民)のこの光輝ある我が国の歴史が我が国を創ってきたのである。我が国臣民(国民)は即ち、皇統の忠良なる臣民(国民)の子孫なのだから、私(明治天皇)が望む我が国の栄光を和衷協同して成し遂げ、永く維持していけることに何らの疑いもない。
<上諭>
私(明治天皇)は神武天皇から始まる我が国歴代天皇の功績を受けて、万世一系の帝位を受け継ぎ、我が親愛なる臣民(国民)は、我が皇統が恵み、愛し、慈しみ、養ったところの臣民(国民)であることを思い、その幸福を増進し、その徳と才能を育成させることを願い、またその補佐により、ともに国家運営を補助してくれることを希望します。
そこで明治十四年十月十二日の勅命(国会開設の勅諭)を実践し、ここに憲法を制定し、私とともに憲法に従うことを示し、私の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
国家統治の大権は私(明治天皇)がこれを皇統より受け継ぎ、また子孫へと伝えていくものである。私または私の子孫は将来、この憲法の条文に従って政治を行うことから外れてはならない。
私は、我が臣民の権利および財産の安全を貴び重んじ、これを保護し、この憲法および法律の範囲内においてその享有を完全に確かなものだと宣言する。
帝国議会は明治二十三年を以てこれを召集し議会開会の時を以てこの憲法は有効となる。
将来、この憲法の条文を改定する必要が生じたときには、私または私の子孫はその改正を発議する権利を行使し、これを議会に付して、議会はこの憲法に定められた要件によって議決するとの方法以外では改定してはならない。私の子孫および臣民は決してこの方法以外の方法に掻き乱して憲法を変えてはならない。
私を補佐する大臣は私のためにこの憲法を施行する責任を全うし、私の現在および将来の臣民(国民)はこの憲法に対し永遠に従う義務を負わなければならない。
御名御璽
明治二十二年二月十一日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
枢密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西郷従道
農商務大臣 伯爵 井上馨
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山巌
文部大臣 子爵 森有礼
逓信大臣 子爵 榎本武揚
【大日本帝国憲法】
<第1章・天皇>
第1条:大日本帝国は万世一系の天皇により統治される。
第2条:皇位は皇室典範の定めに従い皇統の男系男子孫が継承する。
第3条:天皇は神聖にして侵してはならない。
第4条:天皇は国家元首であり統治権を統合掌握し憲法の規定により統治を行う。
第5条:天皇は帝国議会の協賛により立法権を行使する。
第6条:天皇は法律を裁可し、その公布と執行を命じる。
第7条:天皇は帝国議会を召集し、その開会・閉会・停会および衆議院の解散を命じる。
第8条:天皇は公共の安全を保持し、またはその災厄を避けるため緊急の必要があって帝国議会が閉会中の場合には法律に代わる勅令を発する。この勅令は次の会期に帝国議会に提出しなければならない。もし議会において承認されなかった時には政府は将来には、その勅令の効力が失われることを公布しなければならない。
第9条:天皇は法律を執行するため、または公共の安寧と秩序を保持し、及び臣民の幸福を増進する為に必要な命令を発するか発令させる事が出来る。ただし命令で法律を変更する事は出来ない。
第10条:天皇は行政各部の制度および文官と武官の俸給を定め文官と武官を任免する。但し、この憲法、又は他の法律で特例があるものは、各々その条項による。
第11条:天皇は陸海軍を統帥する。
第12条:天皇は陸海軍の編成と常備軍の兵員数を定める。
第13条:天皇は宣戦布告を行い講和条約を結び、その他の条約を締結する。
第14条:天皇は戒厳令を宣告する。戒厳の要件と効力は法律によって定められる。
第15条:天皇は爵位、勲章およびその他の栄典を授与する。
第16条:天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命令する。
第17条:皇室典範の定めるところによる摂政を置くことが出来る。摂政は天皇の名において大権を行使する。
<第2章・臣民権利義務>
第18条:日本臣民であるための要件は法律の定めるところによる。
第19条:日本臣民は法律命令の定める資格に応じ等しく文官武官に任命されるし、その他の公務に就くことが出来る。
第20条:日本臣民は法律の定めに従って兵役に就く義務を有する。
第21条:日本臣民は法律の定める所により納税の義務を有する。
第22条:日本臣民は法律の範囲内に於て居住と転居の自由を有する。
第23条:日本臣民は法律によることなく逮捕、監禁、審問、処罰を受けることはない。
第24条:日本臣民は法律に定められた裁判官による裁判を受ける権利を奪われる事はない。
第25条:日本臣民は法律に定めた場合を除き、その許諾なしに住居に侵入されたり、捜索されたりする事はない。
第26条:日本臣民は法律で定められた場合を除き通信の秘密をおかされる事はない。
第27条:日本臣民は所有権を侵される事はない。
同第2項 公益の為に必要な処分は法律で定める所による。
第28条:日本臣民は安寧秩序を乱さず臣民の義務に背かない限り信教の自由を有する。
第29条:日本臣民は法律の範囲内で言論・著作・出版・集会及び結社の自由を有する。
第30条:日本臣民は敬意と礼節を守り別に定めた規定に従って請願を行う事が出来る。
第31条:本章に掲げた条規は戦時又は国家事変の場合に於て天皇大権(戒厳令他)の施行を妨げるものではない。
第32条:本章に掲げた条規で陸海軍の法令又は規律に抵触しない物に限って軍人にも準用する。
<第3章・帝国議会>
第33条:帝国議会は貴族院と衆議院の両院で成立する。
第34条:貴族院は貴族院令の定める所により皇族・華族及び勅任された議員をもって組織する。
第35条:衆議院は選挙法に定める所によって公選された議員をもって組織する。
第36条:何人たりとも同時に両議院の議員になる事は出来ない。
第37条:全ての法律は帝国議会の議決を経る必要がある。
第38条:両議院は政府の提出する法律案を議決し法律案を提出する事が出来る。
第39条:両議院の片方で否決された法律案は同じ会期中に再び提出する事は出来ない。
第40条:両議院は法律又はその他の事項について各々その意見を政府に建議(意見具申)する事が出来る。但し政府が採用しなかった建議は同会期中に再び建議する事は出来ない。
第41条:帝国議会は毎年召集する。
第42条:帝国議会の会期は3ヶ月とする。必要が有る場合には勅命で延長することが有る。
第43条:臨時・緊急の必要がある場合は通常会のほかに臨時会を召集すること。
同第2項 臨時会の会期は勅命により定める。
第44条:帝国議会の開会・閉会・会期の延長および停会は両院同時に行わなければならない。
同第2項 衆議院の解散命令が出た場合は貴族院も同時に停会しなければならない。
第45条:衆議院の解散を命じられたときは勅命をもって新たに議員を選挙させ解散の日より5ヶ月以内に次期衆議院を召集すること。
第46条:両議院はそれぞれの議院の総議員の3分の1以上の出席がなければ議事を開き議決する事が出来ない。
第47条:両議院の議事は(出席議員の)過半数で決まる。可否が同数であるときは議長の可否決定で決まる。
第48条:両議院の会議は公開とする。ただし政府の要求またはその院の決議によって秘密会とする事が出来る。
第49条:両議院は各々天皇に上奏する(意見申し述べる)事が出来る。
第50条:両議院は国民から出された請願書を受け取る事が出来る。
第51条:両議院は憲法及び議院法に掲げられているものの他に内部の整理に必要な諸規則を定める事が出来る。
第52条:両議院の議員は議院において発言した意見及び表決について院外で責任を負うことはない。但し、議員自らがその言論を演説・刊行・筆記及びその他の方法で公布したときは一般の法律により対応される。
第53条:両議院の議員は現行犯の場合又は内乱罪、外患誘致罪以外の罪で会期中にその院の許諾なしに逮捕されることはない。
第54条:国務大臣及び政府委員はいつでも各議院に出席し発言する事が出来る。
<第4章・国務大臣および枢密顧問>
第55条:各国務大臣は天皇に助言を施し、その責任を負う。
同第2項 全ての法律・勅令・その他国務に関する詔勅は、国務大臣の副署が必要である。
第56条:枢密顧問は枢密院官制の定める所によって、天皇の諮問に応えて重要な国務を審議する。
<第5章・司法>
第57条:司法権は天皇の名において法律により裁判所が行使する。
同第2項 裁判所の構成は法律により定める。
第58条:裁判官は法律で定めた資格を持つ者を任命する。
同第2項 裁判官は刑法の宣告又は懲戒処分による場合以外はその職を罷免される事はない。
同第3項 懲戒規則は法律により定める。
第59条:裁判の対審(口頭弁論や公判)と判決は公開とする。但し、安寧・秩序及び風俗を害する恐れがある時は、法律により又は裁判所の決議により、対審の公開をしない事が出来る。
第60条:特別裁判所の管轄に属すべきものは別の法律により定める。
第61条:行政官庁の違法処分により権利を侵害されたという訴訟で、別に法律で定めた行政裁判所の裁判に属すべきものは司法裁判所において受理するものではない。
<第6章・会計>
第62条:新たに租税を課し及び税率を変更するには法律で定めなければならない。
同第2項 ただし報償に属する行政上の手数料及びその他の収納金は前項の限りではない。
同第3項 国債を起債し及び予算に定めたものを除く他の国庫の負担となる契約を結ぶ時は帝国議会の議決が必要である。
第63条:現行の租税は新たに法律をもって改めない限りは以前の法律によって租税を徴収する。
第64条:国家の歳入歳出は毎年予算案にまとめ帝国議会の議決が必要である。
同第2項 予算項目の額が超過した時、または予算のほかに生じた支出がある時は後日帝国議会の承諾が必要である。
第65条:予算は、先に衆議院に提出すべし。
第66条:皇室経費は現在の定額を毎年国庫より支出し、将来に増額を必要とした場合以外は帝国議会の議決を必要としない。
第67条:憲法上の大権に基づく規定の歳出及び法律の結果により、又は法律上政府の義務に属する歳出は政府の同意がなければ帝国議会がこれを排除または削減する事は出来ない。
第68条:特別な必要に迫られたとき政府は予め年限を定めて継続費として帝国議会の議決を求めることが出来る。
第69条:避ける事の出来ない予算の不足を補うため又は予算外に生じた必要な費用に当てるために予備費を設けなければならない。
第70条:公共の安全を保持する為、緊急に必要がある場合に内外の情勢によって政府は帝国議会を召集することが出来ない時は勅令によって財政上必要な処置を行う事が出来る。
同第2項 前項の場合には次の会期において帝国議会に提出し、その承諾を求める必要である。
第71条:帝国議会において予算が議決されず、又は予算が成立しない時は、政府は前年度の予算(の内容・額で今年度の予算として)施行しなければならない。
第72条:国家の歳出入の決算は会計検査院が検査・確定し、政府はその検査報告とともにその決算を帝国議会に提出しなければならない。
同第2項 会計検査院の組織と職権は法律によって定める。
<第7章・補則>
第73条:将来この憲法の条項を改正する必要がある時は勅命をもって議案を帝国議会の議決に付さなければならない。 この場合、両議院は各々総員の三分の二以上の出席がなければ議事を開く事は出来ない。また出席議員の三分の二以上の多数を得られなければ改正する事は出来ない。
第74条:皇室典範の改正は帝国議会の議決を経る必要はない。また皇室典範の変更によってこの憲法の条規を変更する事は出来ない。
第75条:憲法及び皇室典範は摂政を置いている間はこれを変更する事は出来ない。
第76条:法律・規則・命令又は何らかの名称を用いているものに拘わらず、この憲法に矛盾しない現行の法令は全て効力を有している。 歳出上政府の義務に係る現在の契約または命令は全て第67条の例による。
<以上 現代語訳は当方による。>
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