軽空母を「空母化」したとの形容矛盾・朝日新聞記事
- 2023/11/18
- 23:25
軽空母を「空母化」したとの形容矛盾・朝日新聞記事
副題:国民に奇妙な設定での記事を読ませる奇妙な左巻きメディア。その様な事例の1つが空母の「空母化」という言い方。
今回の題材は朝日新聞の見出し「◆飛行甲板が長方形に 「空母化」した護衛艦かが 初の試験航海」との記事である。(*1)
ヘリ空母である我が国海上自衛隊の「ヘリコプター搭載護衛艦DDHかが」が「空母化」したとの記事である。
「空母が空母化した」というものだが、要するに朝日新聞は「日本が軍拡してるぅ~」との印象操作をしているものでしかない。
我が国自衛隊での呼称が歪んでいることは多くの方々がご存じのことだと思う。
今回題材の「ヘリコプター搭載護衛艦DDHかが」は「護衛艦」と称されているが、その実際はヘリコプターを搭載するヘリ空母・軽空母である。
陸上自衛隊の戦車は、その昔は「特車」などと称されていたが、さすがに違和感満載であることから今は普通に戦車と呼称されている。一方、歩兵科は普通科・砲兵科は特科とか、中尉が二尉、少佐が一佐、大将が陸将など未だに特殊な呼称を用いている。これも「自衛隊は現行憲法第9条第2項にある「陸海空その他の戦力」に該当しない」との設定上の言い換えである。
とは言え、これは我が国だけの特徴ではない。
今回題材の「かが」が搭載する固定翼機はF-35B垂直離着陸機(VSTOL機)であるが、同じF-35でも陸上滑走路を用いる普通の空軍型のF-35Aに比べてBの方は性能が落ちる。垂直離着陸能力を付与した分、通常型のAに比べて25mm機関砲を搭載していないなどの搭載量とか航続距離が短いなどで性能が落ちるのは致し方がない。
この手のVSTOL機やヘリコプターを搭載する艦船のことを総称して軽空母というのだが、VSTOL機ではない固定翼艦上機を運用する空母であっても「空母」を名乗らない事例がある。
それはロシア海軍の「重航空巡洋艦」である「アドミラル・クズネツォフ」である。
同艦の外見を画像で確認していただければ分かると思うが、どう見ても空母そのものである。
「かが」の飛行甲板が単純な長方形であるのに比して、「アドミラル・クズネツォフ」の飛行甲板はアメリカ空母と同じく着艦用の斜め甲板(アングルド・デッキ)を備えており、VSTOL機ではない固定翼艦上機を運用する為の空母であることが分かると思う。
「重航空巡洋艦・アドミラル・クズネツォフ」がアメリカ海軍のフルスペック空母(ニミッツ級他)に劣る部分は発艦用のカタパルトがない所である。発艦の大きな補助となるカタパルトがないと、発艦時に重量制限が生じ、搭載量がアメリカ空母機に比して不利になるとの弱点がある。
その弱点をカバーする為にアドミラル・クズネツォフがカタパルトの増設をしたとしても、これを「空母化」と言う間抜けはいない。
尚、アドミラル・クズネツォフを手本とした中国空母は、現在、3番艦の「福建」を建造中だが、1番艦「遼寧」、2番艦「山東」とは異なり3番艦にはカタパルトを装備することで建造されていると見られている。
朝日新聞は「かが」の改装を「空母化」と表現しているのだが、我が国が保有する軽空母は「かが」だけではない。
「かが」の同系艦のいずも級1番艦の「いずも」(「かが」はいずも級の2番艦)、それと、ひゅうが級の1番艦「ひゅうが」と2番艦「いせ」の合計4隻の軽空母を保有している。
「ひゅうが」「いせ」の2隻は固定翼機の運用計画はなく、ヘリコプターのみを運用する軽空母なのでヘリ空母と呼称される艦船である。
「いずも」「かが」の両艦も当初は前級のひゅうが級と同様のヘリコプターを運用する目的で建造されたものだが、我が国周辺の状況の変化に応じて、今般、ヘリコプターのみならずVSTOL機の運用も出来る様に改装されたものである。
これら4隻のヘリ空母DDHは、その前の「ヘリコプター3機搭載型護衛艦DDH」である、はるな級の「はるな」「ひえい」としらね級の「しらね」「くらま」の代替艦である。
「ヘリコプター3機搭載型護衛艦DDH」は対潜作戦で必要とされる8機のヘリのうちの全部を搭載出来ないので、他に汎用護衛艦DD5隻が1機づつ搭載して8機を確保していた。
これに艦隊防空の為のミサイル搭載護衛艦DDG2隻を加えた8隻の艦隊を1単位とした「新88艦隊」が長い間、海上自衛隊の根幹となっていた。
3機搭載型を全通甲板型にすることで、新DDH1隻で対戦作戦に必要な8機のヘリコプターを搭載・運用できる様になり合理化・効率化が実施されたものである。
現状の対潜作戦は、新DDH1隻、汎用護衛艦DD2隻、防空用イージス艦DDG1隻の4隻で実施できる様になっており、納税者としても歓迎すべき状態へと進化している。
さて、そういう経緯でへり空母のいずも級が建造された訳だが、中国による不法な海洋侵出が増進される事態となり、更には空母「遼寧」を2012年秋に就役させ、海上での固定翼機の運用能力を保有するに至っており、それらが自由に海洋上空で活動してしまう事態は我が国の基本方針である「自由で開かれた海洋」にとって脅威であり、何等かの対抗手段が必要な事態となった。
海上での固定翼機運用能力を具備する為に空母を新たに建造するとの手段では、金銭的・技術的なハードルが高く、それを就役させるには相当な長期間を要し、その間、固定翼機運用能力がない状態を継続することは得策ではないことから、ヘリ空母にVSTOL機F-35Bを搭載する方法が選択され、その為にヘリ空母からVSTOL空母への改造を実施したものである。
ヘリ空母もVSTOL機空母も軽空母と総称される範疇の存在であることから、朝日新聞の当該記事の「空母化」との語句は適切ではないのである。
一般的な日本人は、日々の暮らしに直接関係がない軍事知識に対しての知見は薄い。
それは、我が国の平和が確保されている事の証左でもあり、悪い事ではないが、それを逆手にとってあたかも我が国が「戦争国家づくり(©共産党)」(*2)をしているが如きの虚偽・印象操作を左巻きメディアは言っているのである。
いずも級ヘリ空母に固定翼機運用能力を付与する改修計画が浮上した当時、左巻き連中である特定野党は朝日新聞他の反日偏向メディアは盛んに「我が国が空母を保有することは憲法違反になる」との虚偽での反対キャンペーンを展開した。(*3)
今回のニュースは、むしろ、当時(2017年から2018年辺り)の続報と考えるのが妥当であろう。
この様な形容矛盾をしてまで植え付けたいのは、「日本が軍拡している」とかの捻じ曲がったイメージである。
中国の数十年も続く毎年2桁パーセントの軍拡で東シナ海・南シナ海の軍事バランスは危うくなりつつあるのはご存じの通りであるが、古今東西言「地域の軍事バランスが崩れた時に、その地域で武力事態が発生する」との地政学的経験則からは、これ以上の軍事バランスが中国側に傾くことは武力事態を誘発させているに等しいのである。
そういう事なので、中国の「遼寧」「山東」「福建」との空母建造に対して、我が国が「かが」と「いずも」にVSTOL機を搭載できる様に改装することは、バランス維持=武力事態発生リスクの軽減策としてもっとも短期間で実現できるに実効性ある当然の対処である。
そうであるにま関わらず、あたかも我が国が軍拡を主導・牽引しているが如き印象を流布しているのが朝日新聞他の反日偏向メディアなのである。
いずも級のヘリ空母に固定翼機運用能力を付加することに対して左巻き連中は、その構想が出た時からずっと騒いでいるのだが、中国の空母に対しては何も言わない。
そして、例えば、我が国と同等の自由民主主義先進国の他国の事例についても何も紹介しない。
アメリカ海軍のフルヅペック原子力空母に関しては、別格なのでそれ以外のG7諸国の例では、イギリスとイタリアとフランスが空母を保有している。
むかしから海軍に重きを置いていない陸軍国のドイツと英連邦の一角のカナダは空母を保有していないが、G7のうち、我が国以外の6ヶ国中4ヶ国が空母を保有している。
海上における固定翼機運用能力を保有していないと、陸上から遠い海域・地域のエアカバー能力がないという事で、その空白は大きなリスクに該当するので、各国は固定翼機の海上運用能力を保持し安全保障上のリスクの軽減をはかっているものだ。
イギリス海軍が現在保有しているのは大型VSTOL空母2隻である。
クイーン・エリザベス級空母は「軽空母」との語感からイメージされる排水量よりも約2倍大きい6万7千トン、全長284mの巨艦であるのだが、運用する航空機がVSTOL機のF-35Bなのでジャンルとしては軽空母となる。
イギリス海軍は同級1番艦「クイーン・エリザベス」と2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の2隻を保有している。
フランスは現在、原子力空母1隻を保有している。
原子力空母と言うと、アメリカ海軍のフルスペック空母(ニミッツ級で排水量約10万トン、全長333m)をイメージするだろうが、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」は排水量約4万3千トン、全長261mと随分と小ぶりである。
とは言え、発艦カタパルト及び着艦用の斜め甲板を備えたフルスペック空母である。
イタリア海軍は、随分と昔からVSTOL機を運用する軽空母を保有し続けている。
現在は2008年に就役した「カヴール」がF-35Bを搭載している。
それ以前は、1985年に就役した「ジュゼッペ・ガリバルディ」がVSTOL機のハリアーを搭載・運用していた。
「ジュゼッペ・ガリバルディ」は当初、ヘリ空母として建造・就役したが、1994年にVSTOL機を搭載・運用し始めた。ヘリ空母から固定翼機搭載能力が付与されたとの経緯は、我が国いずも級の改装の前例であるとされている。
「ジュゼッペ・ガリバルディ」は、後継艦の「カヴール」が就役すると固定翼機の運用を取りやめ固定翼機関係設備を改装しヘリ空母へと戻った。
尚、「カヴール」及び「ジュゼッペ・ガリバルディ」の排水量・全長は以下の通りであるが、ここまでに登場したG7諸国の空母を並べて表示しておく。
↓
国 名 :艦名(級) :排水量 :全 長
米:ニミッツ級:約10万トン:333m
英:QE2級 :約6万7千トン:284m(VSTOL機運用軽空母)
仏:CDG級 :約4万3千トン:261m
伊:カヴール :約2万7千トン:236 m(VSTOL機運用軽空母)
伊:G・G :約1万3千トン:180 m(ヘリ運用軽空母)
日:いずも級 :約2万6千トン:248m(VSTOL機運用軽空母)
日:ひゅうが級:約1万9千トン:197m(ヘリ運用軽空母)
ヘリコプター運用のヘリ空母はだ全長が200m未満、VSTOL機運用の場合はもっとも短いイタリアの「カブール」でも230mはある。
とは言え、「ジュゼッペ・ガリバルディ」は全長180mでもVSTOL機を運用していたので、けして不可能ではない。
尚、これら以外に、上陸作戦用の艦船としてLHA・強襲揚陸艦という艦種がある。見た目は空母によく似ておりVSTOL機を運用する艦もあるが、その目的が異なり、上陸作戦用の艦であるので、航空機以外の車両・兵員を輸送・上陸させる為に車両・兵員を格納するスペースがある。
その為に、水面からの飛行甲板の位置が高いとか、軽空母が作戦上必要な30knot/hr程度の高速を発揮するのに対して、LHAは22Knot/hr程度に速力がおさえられている。
従い、スペインの「ファン・カルロス一世」とか豪州の「アデレード」ろか我が国の輸送艦・おおすみ型や韓国の広報艦・毒島型などは空母ではないので、今回論考の対象としていない。
この様に、イタリアの先例から見て我が国がヘリ空母を改装することは、そんなに危ないことなのか?との疑問が湧く。
30数年も前からのイタリアでの先例を多くの日本人は知らないので、それを逆手に取って左巻きメディアは騒いでいるものであることが分かりと思う。
我が国の場合、国土面積は約38万km2 で世界第60位程度の「狭い国土」の国なのだが、海洋面積EEZを含めた面積は一挙に485万km2となり、世界第8位の広さとなる。
この様な広大な海域に対して、戦後の我が国の長距離海洋航空は哨戒機と飛行艇だけが頼りの「非武装状態」そのものであり、心許ない状態がずっと続いていた。
米軍が圧倒的だった時代はそれでも問題はなかったのだが、アメリカの対外政策が「自国防衛は自国の責任」との姿勢を明確化したことにより、欧州のNATO諸国以外の我が国も、自前の装備を保持する必要性が増したこともいずも級の固定翼機運用能力具備策の背景には存在している。
我々日本人の命、平和・安寧を確保する手段のうちの1つが防衛力であり、その為の道具が機能することは、我々日本人にとって良い話なのだが、左巻き連中は、話を捻じ曲げ、あたかも、これら艦船が他国を侵略する為の道具であるかの様に騒いできたのである。(*4)そういう主客逆転した話をしていることにもっと多くの人達に知っていただきたいと願っているものである。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):今回題材の朝日新聞記事。
↓
朝日新聞デジタル 2023年11月13日 20時00分
見出し:◆飛行甲板が長方形に 「空母化」した護衛艦かが 初の試験航海
有料記事
https://www.asahi.com/articles/ASRCF6D5VRCFTOLB008.html
記事:○飛行甲板で戦闘機を発着艦させるための第1次改修をしていた海上自衛隊最大の護衛艦「かが」(基準排水量1万9950トン)が試験航海を始めている。艦首が四角形に変わり、甲板上に発着艦用の標識も塗られるなど、「空母化」した姿を初めて見せた。
○かがは13日朝、海自呉基地(広島県)を出港。日本近海で速力などの性能を試験した。かがは2017年3月就役。全長248メートル、全幅38メートルで、海自最大の「いずも型」護衛艦の2番艦だ。
○政府は18年末、いずも型護衛艦の甲板で戦闘機を運用できるよう改修する「空母化」を決定。その後、短距離(数百メートル)で離陸し、垂直着陸できる戦闘機(STOVL機)として、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを導入することも決めた。F35Bは24年度以降、配備される予定だ。
○21年度末から始まったかがの改修では、F35Bの滑走距離を確保し乱気流を抑えるため、艦首が先細く台形だった飛行甲板の形状が四角形に変わった。着艦時に備えて甲板の一部の区画の耐熱が強化され、発艦の際の目印となる標識も塗られた。米海軍のアメリカ級強襲揚陸艦に似た外観となった。
○1番艦のいずもは耐熱強化や標識の塗装などの第1次改修を終えており、24年度以降、艦首の形状を変えるなど第2次改修に入る予定だ。
○政府は「空母化」が必要な理…この記事は有料記事です。残り304文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
<無料部分引用終わり>
(*2):「戦争国家づくり(©共産党)」
↓
2023/11/15投稿:
共産党の言葉の定義が特異・「野党」「民主主義」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1834.html
(*3):いずも級ヘリ空母に固定翼機運用能力を付与する改修計画が浮上した当時、左巻き連中である特定野党は朝日新聞他の反日偏向メディアは盛んに「我が国が空母を保有することは憲法違反になる」との虚偽での反対キャンペーンを展開した。
↓
新防衛大綱を報じる記事・雑感1(「空母化」だってwww)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1067.html
2018/12/07投稿:
新防衛大綱を報じる記事・雑感2・(買い替え需要は軍拡にあらず)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1068.html
2018/12/17投稿:
印象操作に躍起な偏向マスコミ達・「攻撃型空母」の政府見解を捻じ曲げてる
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1073.html
2018/12/18投稿:
印象操作に躍起な偏向マスコミ達・朝日の布石記事「憲法との整合性」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1074.html
【ご参考】
2017/12/28投稿:
粗雑な分類・F-1もダンプトラックも「自動車」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-833.html
2017/12/29投稿:
続・粗雑な分類・F-1もダンプトラックも「自動車」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-834.html
2018/03/06投稿:
調査費用計上・F-35Bの運用可能性
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-874.html
2018/06/06投稿:
枝野の詐欺話・DDHいずもへのF-35B搭載
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-950.html
(*4):左巻き連中は、話を捻じ曲げ、あたかも、これら艦船が他国を侵略する為の道具であるかの様に騒いできたのである。
↓
2017/03/31投稿:
世論調査・「敵基地攻撃能力の保有」75%が肯定的
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-636.html
2015/11/23投稿:
【憲法9条】「日本人は好戦的民族」? それ違いますから。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
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副題:国民に奇妙な設定での記事を読ませる奇妙な左巻きメディア。その様な事例の1つが空母の「空母化」という言い方。
今回の題材は朝日新聞の見出し「◆飛行甲板が長方形に 「空母化」した護衛艦かが 初の試験航海」との記事である。(*1)
ヘリ空母である我が国海上自衛隊の「ヘリコプター搭載護衛艦DDHかが」が「空母化」したとの記事である。
「空母が空母化した」というものだが、要するに朝日新聞は「日本が軍拡してるぅ~」との印象操作をしているものでしかない。
「重航空巡洋艦」との空母
我が国自衛隊での呼称が歪んでいることは多くの方々がご存じのことだと思う。
今回題材の「ヘリコプター搭載護衛艦DDHかが」は「護衛艦」と称されているが、その実際はヘリコプターを搭載するヘリ空母・軽空母である。
陸上自衛隊の戦車は、その昔は「特車」などと称されていたが、さすがに違和感満載であることから今は普通に戦車と呼称されている。一方、歩兵科は普通科・砲兵科は特科とか、中尉が二尉、少佐が一佐、大将が陸将など未だに特殊な呼称を用いている。これも「自衛隊は現行憲法第9条第2項にある「陸海空その他の戦力」に該当しない」との設定上の言い換えである。
とは言え、これは我が国だけの特徴ではない。
今回題材の「かが」が搭載する固定翼機はF-35B垂直離着陸機(VSTOL機)であるが、同じF-35でも陸上滑走路を用いる普通の空軍型のF-35Aに比べてBの方は性能が落ちる。垂直離着陸能力を付与した分、通常型のAに比べて25mm機関砲を搭載していないなどの搭載量とか航続距離が短いなどで性能が落ちるのは致し方がない。
この手のVSTOL機やヘリコプターを搭載する艦船のことを総称して軽空母というのだが、VSTOL機ではない固定翼艦上機を運用する空母であっても「空母」を名乗らない事例がある。
それはロシア海軍の「重航空巡洋艦」である「アドミラル・クズネツォフ」である。
同艦の外見を画像で確認していただければ分かると思うが、どう見ても空母そのものである。
「かが」の飛行甲板が単純な長方形であるのに比して、「アドミラル・クズネツォフ」の飛行甲板はアメリカ空母と同じく着艦用の斜め甲板(アングルド・デッキ)を備えており、VSTOL機ではない固定翼艦上機を運用する為の空母であることが分かると思う。
「重航空巡洋艦・アドミラル・クズネツォフ」がアメリカ海軍のフルスペック空母(ニミッツ級他)に劣る部分は発艦用のカタパルトがない所である。発艦の大きな補助となるカタパルトがないと、発艦時に重量制限が生じ、搭載量がアメリカ空母機に比して不利になるとの弱点がある。
その弱点をカバーする為にアドミラル・クズネツォフがカタパルトの増設をしたとしても、これを「空母化」と言う間抜けはいない。
尚、アドミラル・クズネツォフを手本とした中国空母は、現在、3番艦の「福建」を建造中だが、1番艦「遼寧」、2番艦「山東」とは異なり3番艦にはカタパルトを装備することで建造されていると見られている。
軽空母を「空母化」したとの形容矛盾
朝日新聞は「かが」の改装を「空母化」と表現しているのだが、我が国が保有する軽空母は「かが」だけではない。
「かが」の同系艦のいずも級1番艦の「いずも」(「かが」はいずも級の2番艦)、それと、ひゅうが級の1番艦「ひゅうが」と2番艦「いせ」の合計4隻の軽空母を保有している。
「ひゅうが」「いせ」の2隻は固定翼機の運用計画はなく、ヘリコプターのみを運用する軽空母なのでヘリ空母と呼称される艦船である。
「いずも」「かが」の両艦も当初は前級のひゅうが級と同様のヘリコプターを運用する目的で建造されたものだが、我が国周辺の状況の変化に応じて、今般、ヘリコプターのみならずVSTOL機の運用も出来る様に改装されたものである。
これら4隻のヘリ空母DDHは、その前の「ヘリコプター3機搭載型護衛艦DDH」である、はるな級の「はるな」「ひえい」としらね級の「しらね」「くらま」の代替艦である。
「ヘリコプター3機搭載型護衛艦DDH」は対潜作戦で必要とされる8機のヘリのうちの全部を搭載出来ないので、他に汎用護衛艦DD5隻が1機づつ搭載して8機を確保していた。
これに艦隊防空の為のミサイル搭載護衛艦DDG2隻を加えた8隻の艦隊を1単位とした「新88艦隊」が長い間、海上自衛隊の根幹となっていた。
3機搭載型を全通甲板型にすることで、新DDH1隻で対戦作戦に必要な8機のヘリコプターを搭載・運用できる様になり合理化・効率化が実施されたものである。
現状の対潜作戦は、新DDH1隻、汎用護衛艦DD2隻、防空用イージス艦DDG1隻の4隻で実施できる様になっており、納税者としても歓迎すべき状態へと進化している。
さて、そういう経緯でへり空母のいずも級が建造された訳だが、中国による不法な海洋侵出が増進される事態となり、更には空母「遼寧」を2012年秋に就役させ、海上での固定翼機の運用能力を保有するに至っており、それらが自由に海洋上空で活動してしまう事態は我が国の基本方針である「自由で開かれた海洋」にとって脅威であり、何等かの対抗手段が必要な事態となった。
海上での固定翼機運用能力を具備する為に空母を新たに建造するとの手段では、金銭的・技術的なハードルが高く、それを就役させるには相当な長期間を要し、その間、固定翼機運用能力がない状態を継続することは得策ではないことから、ヘリ空母にVSTOL機F-35Bを搭載する方法が選択され、その為にヘリ空母からVSTOL空母への改造を実施したものである。
ヘリ空母もVSTOL機空母も軽空母と総称される範疇の存在であることから、朝日新聞の当該記事の「空母化」との語句は適切ではないのである。
「空母化」との語句での印象操作を続ける左巻き連中
一般的な日本人は、日々の暮らしに直接関係がない軍事知識に対しての知見は薄い。
それは、我が国の平和が確保されている事の証左でもあり、悪い事ではないが、それを逆手にとってあたかも我が国が「戦争国家づくり(©共産党)」(*2)をしているが如きの虚偽・印象操作を左巻きメディアは言っているのである。
いずも級ヘリ空母に固定翼機運用能力を付与する改修計画が浮上した当時、左巻き連中である特定野党は朝日新聞他の反日偏向メディアは盛んに「我が国が空母を保有することは憲法違反になる」との虚偽での反対キャンペーンを展開した。(*3)
今回のニュースは、むしろ、当時(2017年から2018年辺り)の続報と考えるのが妥当であろう。
この様な形容矛盾をしてまで植え付けたいのは、「日本が軍拡している」とかの捻じ曲がったイメージである。
中国の数十年も続く毎年2桁パーセントの軍拡で東シナ海・南シナ海の軍事バランスは危うくなりつつあるのはご存じの通りであるが、古今東西言「地域の軍事バランスが崩れた時に、その地域で武力事態が発生する」との地政学的経験則からは、これ以上の軍事バランスが中国側に傾くことは武力事態を誘発させているに等しいのである。
そういう事なので、中国の「遼寧」「山東」「福建」との空母建造に対して、我が国が「かが」と「いずも」にVSTOL機を搭載できる様に改装することは、バランス維持=武力事態発生リスクの軽減策としてもっとも短期間で実現できるに実効性ある当然の対処である。
そうであるにま関わらず、あたかも我が国が軍拡を主導・牽引しているが如き印象を流布しているのが朝日新聞他の反日偏向メディアなのである。
我が国がヘリ空母を改装することは、そんなに危ないことなのか?
いずも級のヘリ空母に固定翼機運用能力を付加することに対して左巻き連中は、その構想が出た時からずっと騒いでいるのだが、中国の空母に対しては何も言わない。
そして、例えば、我が国と同等の自由民主主義先進国の他国の事例についても何も紹介しない。
アメリカ海軍のフルヅペック原子力空母に関しては、別格なのでそれ以外のG7諸国の例では、イギリスとイタリアとフランスが空母を保有している。
むかしから海軍に重きを置いていない陸軍国のドイツと英連邦の一角のカナダは空母を保有していないが、G7のうち、我が国以外の6ヶ国中4ヶ国が空母を保有している。
海上における固定翼機運用能力を保有していないと、陸上から遠い海域・地域のエアカバー能力がないという事で、その空白は大きなリスクに該当するので、各国は固定翼機の海上運用能力を保持し安全保障上のリスクの軽減をはかっているものだ。
イギリス海軍が現在保有しているのは大型VSTOL空母2隻である。
クイーン・エリザベス級空母は「軽空母」との語感からイメージされる排水量よりも約2倍大きい6万7千トン、全長284mの巨艦であるのだが、運用する航空機がVSTOL機のF-35Bなのでジャンルとしては軽空母となる。
イギリス海軍は同級1番艦「クイーン・エリザベス」と2番艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の2隻を保有している。
フランスは現在、原子力空母1隻を保有している。
原子力空母と言うと、アメリカ海軍のフルスペック空母(ニミッツ級で排水量約10万トン、全長333m)をイメージするだろうが、フランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」は排水量約4万3千トン、全長261mと随分と小ぶりである。
とは言え、発艦カタパルト及び着艦用の斜め甲板を備えたフルスペック空母である。
イタリア海軍は、随分と昔からVSTOL機を運用する軽空母を保有し続けている。
現在は2008年に就役した「カヴール」がF-35Bを搭載している。
それ以前は、1985年に就役した「ジュゼッペ・ガリバルディ」がVSTOL機のハリアーを搭載・運用していた。
「ジュゼッペ・ガリバルディ」は当初、ヘリ空母として建造・就役したが、1994年にVSTOL機を搭載・運用し始めた。ヘリ空母から固定翼機搭載能力が付与されたとの経緯は、我が国いずも級の改装の前例であるとされている。
「ジュゼッペ・ガリバルディ」は、後継艦の「カヴール」が就役すると固定翼機の運用を取りやめ固定翼機関係設備を改装しヘリ空母へと戻った。
尚、「カヴール」及び「ジュゼッペ・ガリバルディ」の排水量・全長は以下の通りであるが、ここまでに登場したG7諸国の空母を並べて表示しておく。
↓
国 名 :艦名(級) :排水量 :全 長
米:ニミッツ級:約10万トン:333m
英:QE2級 :約6万7千トン:284m(VSTOL機運用軽空母)
仏:CDG級 :約4万3千トン:261m
伊:カヴール :約2万7千トン:236 m(VSTOL機運用軽空母)
伊:G・G :約1万3千トン:180 m(ヘリ運用軽空母)
日:いずも級 :約2万6千トン:248m(VSTOL機運用軽空母)
日:ひゅうが級:約1万9千トン:197m(ヘリ運用軽空母)
ヘリコプター運用のヘリ空母はだ全長が200m未満、VSTOL機運用の場合はもっとも短いイタリアの「カブール」でも230mはある。
とは言え、「ジュゼッペ・ガリバルディ」は全長180mでもVSTOL機を運用していたので、けして不可能ではない。
尚、これら以外に、上陸作戦用の艦船としてLHA・強襲揚陸艦という艦種がある。見た目は空母によく似ておりVSTOL機を運用する艦もあるが、その目的が異なり、上陸作戦用の艦であるので、航空機以外の車両・兵員を輸送・上陸させる為に車両・兵員を格納するスペースがある。
その為に、水面からの飛行甲板の位置が高いとか、軽空母が作戦上必要な30knot/hr程度の高速を発揮するのに対して、LHAは22Knot/hr程度に速力がおさえられている。
従い、スペインの「ファン・カルロス一世」とか豪州の「アデレード」ろか我が国の輸送艦・おおすみ型や韓国の広報艦・毒島型などは空母ではないので、今回論考の対象としていない。
この様に、イタリアの先例から見て我が国がヘリ空母を改装することは、そんなに危ないことなのか?との疑問が湧く。
30数年も前からのイタリアでの先例を多くの日本人は知らないので、それを逆手に取って左巻きメディアは騒いでいるものであることが分かりと思う。
最後に
我が国の場合、国土面積は約38万km2 で世界第60位程度の「狭い国土」の国なのだが、海洋面積EEZを含めた面積は一挙に485万km2となり、世界第8位の広さとなる。
この様な広大な海域に対して、戦後の我が国の長距離海洋航空は哨戒機と飛行艇だけが頼りの「非武装状態」そのものであり、心許ない状態がずっと続いていた。
米軍が圧倒的だった時代はそれでも問題はなかったのだが、アメリカの対外政策が「自国防衛は自国の責任」との姿勢を明確化したことにより、欧州のNATO諸国以外の我が国も、自前の装備を保持する必要性が増したこともいずも級の固定翼機運用能力具備策の背景には存在している。
我々日本人の命、平和・安寧を確保する手段のうちの1つが防衛力であり、その為の道具が機能することは、我々日本人にとって良い話なのだが、左巻き連中は、話を捻じ曲げ、あたかも、これら艦船が他国を侵略する為の道具であるかの様に騒いできたのである。(*4)そういう主客逆転した話をしていることにもっと多くの人達に知っていただきたいと願っているものである。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):今回題材の朝日新聞記事。
↓
朝日新聞デジタル 2023年11月13日 20時00分
見出し:◆飛行甲板が長方形に 「空母化」した護衛艦かが 初の試験航海
有料記事
https://www.asahi.com/articles/ASRCF6D5VRCFTOLB008.html
記事:○飛行甲板で戦闘機を発着艦させるための第1次改修をしていた海上自衛隊最大の護衛艦「かが」(基準排水量1万9950トン)が試験航海を始めている。艦首が四角形に変わり、甲板上に発着艦用の標識も塗られるなど、「空母化」した姿を初めて見せた。
○かがは13日朝、海自呉基地(広島県)を出港。日本近海で速力などの性能を試験した。かがは2017年3月就役。全長248メートル、全幅38メートルで、海自最大の「いずも型」護衛艦の2番艦だ。
○政府は18年末、いずも型護衛艦の甲板で戦闘機を運用できるよう改修する「空母化」を決定。その後、短距離(数百メートル)で離陸し、垂直着陸できる戦闘機(STOVL機)として、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを導入することも決めた。F35Bは24年度以降、配備される予定だ。
○21年度末から始まったかがの改修では、F35Bの滑走距離を確保し乱気流を抑えるため、艦首が先細く台形だった飛行甲板の形状が四角形に変わった。着艦時に備えて甲板の一部の区画の耐熱が強化され、発艦の際の目印となる標識も塗られた。米海軍のアメリカ級強襲揚陸艦に似た外観となった。
○1番艦のいずもは耐熱強化や標識の塗装などの第1次改修を終えており、24年度以降、艦首の形状を変えるなど第2次改修に入る予定だ。
○政府は「空母化」が必要な理…この記事は有料記事です。残り304文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
<無料部分引用終わり>
(*2):「戦争国家づくり(©共産党)」
↓
2023/11/15投稿:
共産党の言葉の定義が特異・「野党」「民主主義」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1834.html
(*3):いずも級ヘリ空母に固定翼機運用能力を付与する改修計画が浮上した当時、左巻き連中である特定野党は朝日新聞他の反日偏向メディアは盛んに「我が国が空母を保有することは憲法違反になる」との虚偽での反対キャンペーンを展開した。
↓
新防衛大綱を報じる記事・雑感1(「空母化」だってwww)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1067.html
2018/12/07投稿:
新防衛大綱を報じる記事・雑感2・(買い替え需要は軍拡にあらず)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1068.html
2018/12/17投稿:
印象操作に躍起な偏向マスコミ達・「攻撃型空母」の政府見解を捻じ曲げてる
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1073.html
2018/12/18投稿:
印象操作に躍起な偏向マスコミ達・朝日の布石記事「憲法との整合性」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1074.html
【ご参考】
2017/12/28投稿:
粗雑な分類・F-1もダンプトラックも「自動車」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-833.html
2017/12/29投稿:
続・粗雑な分類・F-1もダンプトラックも「自動車」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-834.html
2018/03/06投稿:
調査費用計上・F-35Bの運用可能性
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-874.html
2018/06/06投稿:
枝野の詐欺話・DDHいずもへのF-35B搭載
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-950.html
(*4):左巻き連中は、話を捻じ曲げ、あたかも、これら艦船が他国を侵略する為の道具であるかの様に騒いできたのである。
↓
2017/03/31投稿:
世論調査・「敵基地攻撃能力の保有」75%が肯定的
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-636.html
2015/11/23投稿:
【憲法9条】「日本人は好戦的民族」? それ違いますから。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
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