中露会談・自分達に都合がよい話をしたい中国の12項目(前編・ロシアの視点)
- 2023/03/26
- 22:06
中露会談・自分達に都合がよい話をしたい中国の12項目(前編・ロシアの視点)
副題:「台湾は中国固有の領土」との設定を押し通すつもりの中国。ウクライナでのロシアの動きを利用して存在感をアピールしている中国。
岸田のウクライナ訪問は西側諸国(G7・NATO)との関係維持が主眼。「訪問しない」との選択肢は我が国安全保障上、なかったものと想定される。
一方、訪問のタイミングについては、プーチン・習近平の会談と日程がダブリ、その影に隠れてしまったと思う。中露会談がなくてもWBCの日本優勝があったので、岸田の訪宇が「もっとも関心の高いニュース」ではなかったのは致し方ないであろう。
岸田のウクライナ訪問は「戦闘が継続している中での戦争当事国への首相訪問」という視点からは「凄い前例をつくってしまった」という事なのだが、これについて憲法的視点で述べると相当長くなるので、今回はそこには触れない。
中露会談の方も、WBCでの日本優勝への各試合がまるでシナリオがあったかの様な劇的展開であり、取り分け決勝戦の最後が大谷vsトラウトの対戦だったなど特別な盛り上がりがあったことから、中露会談の方も注目度が低下したと感じられる。たしかに中露会談ではウクライナ事態の停戦に関する具体的な方策の提示は行われなかったのだから、WBCとは無関係にメディアの注目度は低く「報道」される内容もたいしたことがないものであった。
とは言え、「中露がこの時期に会談を行った」という事実は、ただ単に「西側諸国に対抗する結束を誇示」するだけなのか?との疑問があり、今回の題材として取り上げたものである。
中露会談は日本時間3月21日にモスクワで行われたプーチン・習近平による会談である。
同会談を報じたニュース(*1)によれば、上記した様にウクライナ事態の停戦に関する具体的な方策の提示はなかった。
↓
<当該部分を抜粋引用>
・「ウクライナでの戦闘を終結させる突破口が見いだされた兆しはない(AFP)」
・「会談後の共同声明ではウクライナ情勢をめぐって具体的な解決策が示されない(NHK)」
・「ウクライナ情勢については「責任ある対話が危機の持続的な解決を見いだす最善の方法だ。国際社会はこの点で建設的な努力を支援すべきだ」と強調していますが、具体的な解決策は示されませんでした(NHK)」
<引用終わり>
現状、ロシアはウクライナに侵攻して1年と1ヶ月が経過しているのだが、そんな中での中露会談で両国からはウクライナ停戦に向けた具体的な方策の提示がまったくなかったのかというとそうではない。
AFP記事で書いてある様に、中国は今回の会談に先立ち「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と称する12項目の文書を発表している。(*2)
↓
<AFP記事から抜粋引用>
プーチン氏は習氏との会談後、ウクライナ危機解決に向け中国が提示した文書を称賛。「各国の主権」の尊重などを呼び掛けた12項目の多くは「平和的解決の基礎として採用可能だ」と評価した上で、ロシア側は「常に協議に臨む用意がある」ものの、ウクライナと西側にはこれに応じる姿勢が依然見られないと批判した。
<引用終わり>
中国が発表した12項目は以下の様なものである。
↓
(1)各国の主権尊重
(2)冷戦思考の排除
(3)停戦、戦闘の終了
(4)和平対話の始動
(5)人道危機の解決
(6)民間人と捕虜の保護
(7)原子力発電所の安全確保
(8)戦略的リスクの減少
(9)食糧の国外輸送の保障
(10)一方的制裁の停止
(11)産業チェーン・サプライチェーンの安定確保
(12)戦後復興の推進
この様な項目の他に中国は「和平交渉プラットフォームの設立」や「ロシア・ウクライナ間の捕虜交換、戦後復興の推進支援に役割を発揮する」としているものである。
要するに中国は1人だけ蚊帳の外状態に置かれていることから、「世界パワーの1国」であることを誇示する為に、ロシア・ウクライナ情勢を利用しているのである。
上述した<今回の中露会談はただ単に「西側諸国に対抗する結束を誇示」するだけなのか?との疑問>に対しての答の1つは、「中国は自分達を世界に誇示する為」「プレステージアピール」であろうと推測される。
ロシア自身は、ウクライナ侵攻直後から自分達の立場・考え方を表明(*3)しており、侵攻後1年1ヶ月が経過した現在、新たなことを言い出すことはなかったという状態であろう。
ロシアの言い分を我が国メディアが報じることは稀で、かつ、西側メディアも今回の件ではロシアの言い分を封じ込めているので、多くの方々は「ロシアの言い分」を認知していないと思うので、以前の論考(*3)を用いながら幾つかのポイントを紹介しておく。
↓
【プーチンとしては領土的野心ではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保、という観点から行動を起こしているということだろう】
これはロシアのウクライナ侵攻後に故安倍首相がTV番組で述べた言葉である。
安倍首相は、モスクワから見た地政学的限界点を理解していたので、この様な正鵠を射ている言葉を発したのだと考えている。
ロシア西方の地図を見ていただければ分かると思うが、モスクワから見れば、その西方にはフランスやドイツがある。モスクワは、ナポレオンには蹂躙され、ヒットラーには直前まで迫られた歴史を持つ。
先の大戦前、ナチス・ドイツとスターリン・ソ連はポーランドを分割し、そこが対峙点だったが、先の大戦後・冷戦時、ソ連は東欧を衛星国にしたことで西側諸国と対峙する縦深地を手に入れた。西側諸国と対峙する場所は東西ドイツの国境線となり、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニアがモスクワに至る前の縦深防壁として存在していた。
ソ連崩壊・冷戦終結後の東ヨーロッパはそれ以前と様変わりし、大戦以前からソ連邦の一部であったのがベラルーシ、ウクライナは独立国となった。
同様、ソ連邦の一部であったバルト三国は独立した。
東欧諸国は、冷戦時はワルシャワ機構軍に属していたのだが、ソ連崩壊後は独立し、西側のEU・NATOに参加した。冷戦構造崩壊後にNATOに加盟した旧ソ連邦・旧衛星国としては、1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランドが加盟し、2004年にはバルト三国、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアが加盟しており、その後も旧ユーゴや中央アジアの国々が加盟したことで、モスクワから見れば、多くの縦深陣地を失ったことになり、ベラルーシ・ウクライナとポーランド国境が対峙点となったものである。
ロシアが多くの縦深陣地を失ってもベラルーシ・ウクライナが自陣営であれば、ロシアは武力行使をしていなかったが、ウクライナに西側が「民主化」浸透してきて、反ロシア勢力がウクライナ国内で台頭したことから、ロシアは地政学的危機感からクリミアを併合する動きとなった。
モスクワから見た地政学的限界点はキエフの東のドニエプル川東岸であり、そこに脅威が至ることになれば、ロシアは自国の安全の確保の為に軍事行動を起こすことになるのだが、クリミア併合後もウクライナ国内では西側への接近とロシア離れは続いた。
ウクライナがNATO加盟を希望しだしたので、もしもウクライナがEU・NATOに加盟するとロシアは最後の緩衝地帯だったウクライナを失うので、ロシアはクリミア半島に隣接するウクライナ東部の州を占拠したものである。
上記した様に、ロシアのウクライナ侵攻は「ロシアにとっては自国の安全の確保の為の軍事行動」である。多くの日本人にとっては「腑に落ちない話」であろうが、彼等にとっては切実な問題である。
そのことは、昨年(2022年)5月9日の対独戦勝記念日の演説でプーチンは【ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ。現代のウクライナは完全にロシア(中略)によってつくられた。レーニンや同志たちがロシアの歴史的領土を切り離すという方法でつくった】と述べているのでことからもある。
この様なロシア側の認知を踏まえて「ウクライナ情勢の停戦条件」を考える場合、西側諸国・ゼレンスキーがいう「ロシアのウクライナからの全面撤退(クリミア半島も含め)」は、かなりハードルが高い。
ロシアにとっては死活問題であり、「核(戦術核)を使わない通常戦闘のままでのウクライナからの撤退」はロシア側の選択肢としてはないと考えて良いであろう。
戦術核の使用が戦略核の使用へとエスカレートするリスクは勿論存在するのだが、ロシアが持っている能力を使用せずにクリミア半島を含めて全面撤退する情勢になることは、かなり難しいと想定される。
この様な諸条件を熟知しているアメリカのシンクタンク(戦略国際問題研究所)はロシアの侵攻の約4週間前の 1月27日付のレポートで、ロシアの対ウクライナ作戦の6つのケーススタディを提示している。
侵略前のケーススタディなので、ケース1として「武力侵攻しないケース」が掲げられているが、それ以外のケース2からケース6は総て「侵攻した後、何処まで侵攻するのか」のケーススタダイである。
「何処まで侵攻するのか」とは逆に言えば、それは「ウクライナ侵攻の着地点」であり、その際の「ロシアはウクライナの領土のうち、何処まで侵攻すれば停戦するのか」についてのレポートである。
6つのケースの概要は以下の通りである。
↓
ケース1:武力侵攻しない・ロシア領内からサイバー攻撃他
ケース2:ロシア軍をドネツクとルハンシクの親ロシア派が実効支配している地域に派遣
ケース3:ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領
ケース4:ドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそった地帯占領
ケース5:.黒海沿岸にそった地域を帯状に占領。
ケース6:ウクライナ全土の占領
これらのケースのうち、当方は2022年3月3日時点の論考で、もっとも確率が高いのは地政学的観点からケース3だろうと述べた。
あれから1年ちょっとが経過した現状では、ケース4~6はあり得ないと考えられるので、ケース2かケース3にならないと、ウクライナでの戦闘は継続してしまうと考えている。
中露会談をこの時期にした中国の狙いの1つは「中国は自分達を世界に誇示する為」「プレステージアピール」であろうと推測されるが、他にもあると考える。
今回の中露会談でウクライナに関して具体的な解決策が示されなかったことは、逆に言えば、中国流のやり方では「中国は「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」での12項目で提起済」だとするものだと理解できる。
そういう視点で、あらためて中国は12項目で何を主張しているのかを見る事にしたいのだが、長くなったので、それは後編にて論じることとする。
後編に続く。
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【文末脚注】
(*1):中露会談は日本時間3月21日にモスクワで行われたプーチン・習近平会談である。同会談を報じたニュース
↓
<その1:AFP=時事>
Yahooニュース(AFP=時事) 3/22(水) 21:04配信
見出し:◆習氏、訪ロ終え帰国 ウクライナ情勢で突破口なく
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ec72ffbdd95f75b342ae0119dffafe9bc75f91f
記事:○【AFP=時事】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は22日、3日間のロシア訪問を終え帰途に就いた。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領との会談では、西側諸国に対抗する結束を誇示したものの、ウクライナでの戦闘を終結させる突破口が見いだされた兆しはない。
○西側をけん制したい中ロ両国は、北大西洋条約機構(NATO)のアジアへの拡大に懸念を示すとともに、ウクライナ侵攻開始後緊密さを増している両国のパートナーシップをいっそう深化させていくことで一致した。
○プーチン氏は習氏との会談後、ウクライナ危機解決に向け中国が提示した文書を称賛。「各国の主権」の尊重などを呼び掛けた12項目の多くは「平和的解決の基礎として採用可能だ」と評価した上で、ロシア側は「常に協議に臨む用意がある」ものの、ウクライナと西側にはこれに応じる姿勢が依然見られないと批判した。
○ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、協議のため習氏を自国に招待したとしている。
○ゼレンスキー氏は会見で「われわれは中国に対し、和平案を実行するパートナーになるよう要請した。あらゆるルートでわれわれの案を伝えた」と明かし、中国からの回答を待っていると述べた。
○一方米国政府は、中国が公平な仲介者になれるとはみていないとコメントし、ウクライナ紛争終結へ向けた仲介役を目指す中国に対してこれまでで最も直接的な批判を行った。【翻訳編集】 AFPBB News(引用終わり)
<その2:NHK NEWS WEB>
NHK NEWS WEB 2023年3月22日 11時47分
見出し:◆中ロ首脳会談 両国の緊密な関係を誇示 共同声明で対米けん制
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230322/k10014015581000.html
記事:○中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の首脳会談が21日行われ、両国の緊密な関係を誇示しました。
○会談後の共同声明ではウクライナ情勢をめぐって具体的な解決策が示されない一方で、両国と対立を深めるアメリカを強くけん制しています。
○ロシアを訪問している中国の習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談は、21日、首都モスクワのクレムリンで、両国の主要な閣僚も参加して行われました。
○会談後、共同声明が発表され「両国関係は歴史上最高のレベルに達し、着実に成長している」として両国の緊密な関係を誇示しました。
○一方、ウクライナ情勢については「責任ある対話が危機の持続的な解決を見いだす最善の方法だ。国際社会はこの点で建設的な努力を支援すべきだ」と強調していますが、具体的な解決策は示されませんでした。
○プーチン大統領は共同記者発表で、中国が示してきた対話と停戦の立場を支持する姿勢を示し「欧米とウクライナで準備が整えば、平和的な解決の基礎となり得るが、そうしたアプローチは今のところ見られない。むしろ西側は、徹底してロシアと戦うことを決めたようだ」と述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米をけん制しました。
○これに対し、習主席は「中国は一貫して客観的かつ公正な立場を堅持し、和平交渉を積極的に促してきた」などと、ウクライナ情勢をめぐる中国の立場を繰り返し主張しました。
○そのうえで「私は引き続き、さまざまな方法を通じて、プーチン大統領と密接な意思疎通を保ち、両国関係の安定的かつ長期的な発展へと、ともに導いていくことを期待している」と述べ、ロシアとのさらなる連携強化に意欲を示しました。
○一方で、アメリカなどが懸念する中国からロシアへの軍事支援について具体的な言及はありませんでした。
○また共同声明では、台湾をめぐる情勢などを念頭に「両国は冷戦思考に基づくアメリカのインド太平洋戦略がこの地域の平和と安定に及ぼす負の影響に留意する」として、ともに対立を深めるアメリカを強くけん制しました。
小見出し:◆対アメリカへ結束強調 原発処理水の放出へ懸念表明
○ロシア大統領府が21日に発表した中国とロシアの共同声明では「双方は多極化する世界秩序の構築を加速する」などとしてアメリカに結束して対抗する姿勢を強く打ち出しています。
○この中では、アメリカとイギリス、オーストラリアの3か国による安全保障の枠組みAUKUSや、2030年代にアメリカ製の原子力潜水艦がオーストラリアに初めて配備される見通しになったことについて「深刻な懸念を表明する」と反発しています。
○一方、共同声明で中ロ両国は東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画についても「深刻な懸念を表明する。近隣諸国や国際機関に対して透明性を確保し科学的で安全な方法で処分する必要がある」と主張して、日本をけん制しています。
小見出し:◆松野官房長官 “和平の兆し見られない現実に目を向けて”
○松野官房長官は、閣議の後の記者会見で「中国の習近平国家主席は、寄稿で仲裁と和平交渉の促進に積極的な姿勢を示したものの、ロシアのウクライナ領土からの即時撤兵などについての言及はなかったと承知している」と指摘しました。
○また「プーチン大統領も、侵略を継続するとともに併合した一部地域は交渉の対象でない旨述べるなど、和平に向けて歩み寄ろうとする兆しは一切見られず、こうした現実にまずは目を向ける必要がある。引き続き、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しつつ、ロシアに強い制裁を行うなどの外交的取り組みを進めていく」と述べました。
<引用終わり>
(*2):中国は今回の会談に先立ち「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と称する12項目の文書を発表している。
↓
JETRO HP 2023年02月28日
見出し:◆中国、ウクライナ危機に対するポジションペーパーを発表、和平交渉プラットフォーム設立を提案
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/02/64070a42d40bb102.html
記事:○中国の外交部は2月24日、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する文章を公開した。ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の主張を12項目にまとめたもの。
○同文書は、(1)各国の主権尊重、(2)冷戦思考の排除、(3)停戦、戦闘の終了、(4)和平対話の始動、(5)人道危機の解決、(6)民間人と捕虜の保護、(7)原子力発電所の安全確保、(8)戦略的リスクの減少、(9)食糧の国外輸送の保障、(10)一方的制裁の停止、(11)産業チェーン・サプライチェーンの安定確保、(12)戦後復興の推進、という項目からなる(添付資料表参照)。従来からの主張に加えて、中国は和平交渉プラットフォームの設立やロシア・ウクライナ間の捕虜交換、戦後復興の推進支援に役割を発揮するとしている。
○外交部は同日の記者会見で、「中国はウクライナ問題について、終始、客観的で公正な立場を取り、積極的に和平を促し対話を促進し、危機の解決のために建設的な役割を果たしてきた」との認識を示し、同文書に基づいて、引き続き国際社会とともにウクライナ危機の政治的解決のために貢献するとした。一方で、和平交渉プラットフォーム設立などに向けた具体的な方策については言及しなかった。
○2月24日の中国中央テレビは「中国はウクライナ危機の当事者ではないが、手をこまねいて見ているわけではない」として、文書はウクライナ危機の政治的解決のために、詳細で確実な、実行可能な解決策を提供したものと報じた。
○2月25日付の人民日報は「ウクライナ危機の政治的解決のために中国の知恵と中国の解決策を提供し、動揺する世界にさらなる安定と確実性をもたらすために、大国の責任を体現したもの」と評価した。
○中国国際問題研究院ユーラシア研究所の李自国所長は、2月21日に発表された「グローバル安全保障イニシアチブコンセプトペーパー」と合わせて、中国は平和の側、対話の側、歴史的に正しい側に立ち、国際社会とともにグローバルな安全を守るという立場を表明したものだとした(「新華網」2月24日)。
○中国国際問題研究院欧州研究所の崔洪健所長は、文書について「西側諸国の言ういわゆる和平案ではなく、中国のウクライナ危機に対する見方や、国際社会が受けている影響に対する認識に基づいた基本的な判断」とした(「澎湃新聞」2月24日)。(河野円洋)
<引用終わり>
【ご参考】※中国語(自動翻訳で日本語になる)
关于政治解决乌克兰危机的中国立场
2023-02-24 09:00
https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202302/t20230224_11030707.shtml
(*3):ロシアの言い分に言及している以前の論考
↓
<地政学的視点>
2022/02/28投稿:
ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1624.html
<2022年5月9日プーチン演説>
2022/05/11投稿:
2022年5月9日・プーチン演説への雑感(序・全体印象)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1647.html
2022/05/13投稿:
2022年5月9日・プーチン演説への雑感(地理・地名編&ロシアの設定)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1648.html
<ウクライナ停戦時の領土>
2022/03/03投稿:
ウクライナ情勢雑感3:ウクライナ侵攻後の着地点は?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1626.html
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副題:「台湾は中国固有の領土」との設定を押し通すつもりの中国。ウクライナでのロシアの動きを利用して存在感をアピールしている中国。
岸田のウクライナ訪問は西側諸国(G7・NATO)との関係維持が主眼。「訪問しない」との選択肢は我が国安全保障上、なかったものと想定される。
一方、訪問のタイミングについては、プーチン・習近平の会談と日程がダブリ、その影に隠れてしまったと思う。中露会談がなくてもWBCの日本優勝があったので、岸田の訪宇が「もっとも関心の高いニュース」ではなかったのは致し方ないであろう。
岸田のウクライナ訪問は「戦闘が継続している中での戦争当事国への首相訪問」という視点からは「凄い前例をつくってしまった」という事なのだが、これについて憲法的視点で述べると相当長くなるので、今回はそこには触れない。
中露会談の方も、WBCでの日本優勝への各試合がまるでシナリオがあったかの様な劇的展開であり、取り分け決勝戦の最後が大谷vsトラウトの対戦だったなど特別な盛り上がりがあったことから、中露会談の方も注目度が低下したと感じられる。たしかに中露会談ではウクライナ事態の停戦に関する具体的な方策の提示は行われなかったのだから、WBCとは無関係にメディアの注目度は低く「報道」される内容もたいしたことがないものであった。
とは言え、「中露がこの時期に会談を行った」という事実は、ただ単に「西側諸国に対抗する結束を誇示」するだけなのか?との疑問があり、今回の題材として取り上げたものである。
中露会談で中国は何をやりたかったのか?
中露会談は日本時間3月21日にモスクワで行われたプーチン・習近平による会談である。
同会談を報じたニュース(*1)によれば、上記した様にウクライナ事態の停戦に関する具体的な方策の提示はなかった。
↓
<当該部分を抜粋引用>
・「ウクライナでの戦闘を終結させる突破口が見いだされた兆しはない(AFP)」
・「会談後の共同声明ではウクライナ情勢をめぐって具体的な解決策が示されない(NHK)」
・「ウクライナ情勢については「責任ある対話が危機の持続的な解決を見いだす最善の方法だ。国際社会はこの点で建設的な努力を支援すべきだ」と強調していますが、具体的な解決策は示されませんでした(NHK)」
<引用終わり>
現状、ロシアはウクライナに侵攻して1年と1ヶ月が経過しているのだが、そんな中での中露会談で両国からはウクライナ停戦に向けた具体的な方策の提示がまったくなかったのかというとそうではない。
AFP記事で書いてある様に、中国は今回の会談に先立ち「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と称する12項目の文書を発表している。(*2)
↓
<AFP記事から抜粋引用>
プーチン氏は習氏との会談後、ウクライナ危機解決に向け中国が提示した文書を称賛。「各国の主権」の尊重などを呼び掛けた12項目の多くは「平和的解決の基礎として採用可能だ」と評価した上で、ロシア側は「常に協議に臨む用意がある」ものの、ウクライナと西側にはこれに応じる姿勢が依然見られないと批判した。
<引用終わり>
中国が発表した12項目は以下の様なものである。
↓
(1)各国の主権尊重
(2)冷戦思考の排除
(3)停戦、戦闘の終了
(4)和平対話の始動
(5)人道危機の解決
(6)民間人と捕虜の保護
(7)原子力発電所の安全確保
(8)戦略的リスクの減少
(9)食糧の国外輸送の保障
(10)一方的制裁の停止
(11)産業チェーン・サプライチェーンの安定確保
(12)戦後復興の推進
この様な項目の他に中国は「和平交渉プラットフォームの設立」や「ロシア・ウクライナ間の捕虜交換、戦後復興の推進支援に役割を発揮する」としているものである。
要するに中国は1人だけ蚊帳の外状態に置かれていることから、「世界パワーの1国」であることを誇示する為に、ロシア・ウクライナ情勢を利用しているのである。
上述した<今回の中露会談はただ単に「西側諸国に対抗する結束を誇示」するだけなのか?との疑問>に対しての答の1つは、「中国は自分達を世界に誇示する為」「プレステージアピール」であろうと推測される。
「報道」されないロシアの言い分
ロシア自身は、ウクライナ侵攻直後から自分達の立場・考え方を表明(*3)しており、侵攻後1年1ヶ月が経過した現在、新たなことを言い出すことはなかったという状態であろう。
ロシアの言い分を我が国メディアが報じることは稀で、かつ、西側メディアも今回の件ではロシアの言い分を封じ込めているので、多くの方々は「ロシアの言い分」を認知していないと思うので、以前の論考(*3)を用いながら幾つかのポイントを紹介しておく。
↓
【プーチンとしては領土的野心ではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保、という観点から行動を起こしているということだろう】
これはロシアのウクライナ侵攻後に故安倍首相がTV番組で述べた言葉である。
安倍首相は、モスクワから見た地政学的限界点を理解していたので、この様な正鵠を射ている言葉を発したのだと考えている。
ロシア西方の地図を見ていただければ分かると思うが、モスクワから見れば、その西方にはフランスやドイツがある。モスクワは、ナポレオンには蹂躙され、ヒットラーには直前まで迫られた歴史を持つ。
先の大戦前、ナチス・ドイツとスターリン・ソ連はポーランドを分割し、そこが対峙点だったが、先の大戦後・冷戦時、ソ連は東欧を衛星国にしたことで西側諸国と対峙する縦深地を手に入れた。西側諸国と対峙する場所は東西ドイツの国境線となり、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、ルーマニアがモスクワに至る前の縦深防壁として存在していた。
ソ連崩壊・冷戦終結後の東ヨーロッパはそれ以前と様変わりし、大戦以前からソ連邦の一部であったのがベラルーシ、ウクライナは独立国となった。
同様、ソ連邦の一部であったバルト三国は独立した。
東欧諸国は、冷戦時はワルシャワ機構軍に属していたのだが、ソ連崩壊後は独立し、西側のEU・NATOに参加した。冷戦構造崩壊後にNATOに加盟した旧ソ連邦・旧衛星国としては、1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランドが加盟し、2004年にはバルト三国、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアが加盟しており、その後も旧ユーゴや中央アジアの国々が加盟したことで、モスクワから見れば、多くの縦深陣地を失ったことになり、ベラルーシ・ウクライナとポーランド国境が対峙点となったものである。
ロシアが多くの縦深陣地を失ってもベラルーシ・ウクライナが自陣営であれば、ロシアは武力行使をしていなかったが、ウクライナに西側が「民主化」浸透してきて、反ロシア勢力がウクライナ国内で台頭したことから、ロシアは地政学的危機感からクリミアを併合する動きとなった。
モスクワから見た地政学的限界点はキエフの東のドニエプル川東岸であり、そこに脅威が至ることになれば、ロシアは自国の安全の確保の為に軍事行動を起こすことになるのだが、クリミア併合後もウクライナ国内では西側への接近とロシア離れは続いた。
ウクライナがNATO加盟を希望しだしたので、もしもウクライナがEU・NATOに加盟するとロシアは最後の緩衝地帯だったウクライナを失うので、ロシアはクリミア半島に隣接するウクライナ東部の州を占拠したものである。
ロシアが停戦する場合の諸条件をロシアの視点で考える
上記した様に、ロシアのウクライナ侵攻は「ロシアにとっては自国の安全の確保の為の軍事行動」である。多くの日本人にとっては「腑に落ちない話」であろうが、彼等にとっては切実な問題である。
そのことは、昨年(2022年)5月9日の対独戦勝記念日の演説でプーチンは【ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ。現代のウクライナは完全にロシア(中略)によってつくられた。レーニンや同志たちがロシアの歴史的領土を切り離すという方法でつくった】と述べているのでことからもある。
この様なロシア側の認知を踏まえて「ウクライナ情勢の停戦条件」を考える場合、西側諸国・ゼレンスキーがいう「ロシアのウクライナからの全面撤退(クリミア半島も含め)」は、かなりハードルが高い。
ロシアにとっては死活問題であり、「核(戦術核)を使わない通常戦闘のままでのウクライナからの撤退」はロシア側の選択肢としてはないと考えて良いであろう。
戦術核の使用が戦略核の使用へとエスカレートするリスクは勿論存在するのだが、ロシアが持っている能力を使用せずにクリミア半島を含めて全面撤退する情勢になることは、かなり難しいと想定される。
この様な諸条件を熟知しているアメリカのシンクタンク(戦略国際問題研究所)はロシアの侵攻の約4週間前の 1月27日付のレポートで、ロシアの対ウクライナ作戦の6つのケーススタディを提示している。
侵略前のケーススタディなので、ケース1として「武力侵攻しないケース」が掲げられているが、それ以外のケース2からケース6は総て「侵攻した後、何処まで侵攻するのか」のケーススタダイである。
「何処まで侵攻するのか」とは逆に言えば、それは「ウクライナ侵攻の着地点」であり、その際の「ロシアはウクライナの領土のうち、何処まで侵攻すれば停戦するのか」についてのレポートである。
6つのケースの概要は以下の通りである。
↓
ケース1:武力侵攻しない・ロシア領内からサイバー攻撃他
ケース2:ロシア軍をドネツクとルハンシクの親ロシア派が実効支配している地域に派遣
ケース3:ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領
ケース4:ドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそった地帯占領
ケース5:.黒海沿岸にそった地域を帯状に占領。
ケース6:ウクライナ全土の占領
これらのケースのうち、当方は2022年3月3日時点の論考で、もっとも確率が高いのは地政学的観点からケース3だろうと述べた。
あれから1年ちょっとが経過した現状では、ケース4~6はあり得ないと考えられるので、ケース2かケース3にならないと、ウクライナでの戦闘は継続してしまうと考えている。
中国の12項目は何を言っているのか?
中露会談をこの時期にした中国の狙いの1つは「中国は自分達を世界に誇示する為」「プレステージアピール」であろうと推測されるが、他にもあると考える。
今回の中露会談でウクライナに関して具体的な解決策が示されなかったことは、逆に言えば、中国流のやり方では「中国は「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」での12項目で提起済」だとするものだと理解できる。
そういう視点で、あらためて中国は12項目で何を主張しているのかを見る事にしたいのだが、長くなったので、それは後編にて論じることとする。
後編に続く。
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【文末脚注】
(*1):中露会談は日本時間3月21日にモスクワで行われたプーチン・習近平会談である。同会談を報じたニュース
↓
<その1:AFP=時事>
Yahooニュース(AFP=時事) 3/22(水) 21:04配信
見出し:◆習氏、訪ロ終え帰国 ウクライナ情勢で突破口なく
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ec72ffbdd95f75b342ae0119dffafe9bc75f91f
記事:○【AFP=時事】中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は22日、3日間のロシア訪問を終え帰途に就いた。ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領との会談では、西側諸国に対抗する結束を誇示したものの、ウクライナでの戦闘を終結させる突破口が見いだされた兆しはない。
○西側をけん制したい中ロ両国は、北大西洋条約機構(NATO)のアジアへの拡大に懸念を示すとともに、ウクライナ侵攻開始後緊密さを増している両国のパートナーシップをいっそう深化させていくことで一致した。
○プーチン氏は習氏との会談後、ウクライナ危機解決に向け中国が提示した文書を称賛。「各国の主権」の尊重などを呼び掛けた12項目の多くは「平和的解決の基礎として採用可能だ」と評価した上で、ロシア側は「常に協議に臨む用意がある」ものの、ウクライナと西側にはこれに応じる姿勢が依然見られないと批判した。
○ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、協議のため習氏を自国に招待したとしている。
○ゼレンスキー氏は会見で「われわれは中国に対し、和平案を実行するパートナーになるよう要請した。あらゆるルートでわれわれの案を伝えた」と明かし、中国からの回答を待っていると述べた。
○一方米国政府は、中国が公平な仲介者になれるとはみていないとコメントし、ウクライナ紛争終結へ向けた仲介役を目指す中国に対してこれまでで最も直接的な批判を行った。【翻訳編集】 AFPBB News(引用終わり)
<その2:NHK NEWS WEB>
NHK NEWS WEB 2023年3月22日 11時47分
見出し:◆中ロ首脳会談 両国の緊密な関係を誇示 共同声明で対米けん制
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230322/k10014015581000.html
記事:○中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の首脳会談が21日行われ、両国の緊密な関係を誇示しました。
○会談後の共同声明ではウクライナ情勢をめぐって具体的な解決策が示されない一方で、両国と対立を深めるアメリカを強くけん制しています。
○ロシアを訪問している中国の習近平国家主席とプーチン大統領の首脳会談は、21日、首都モスクワのクレムリンで、両国の主要な閣僚も参加して行われました。
○会談後、共同声明が発表され「両国関係は歴史上最高のレベルに達し、着実に成長している」として両国の緊密な関係を誇示しました。
○一方、ウクライナ情勢については「責任ある対話が危機の持続的な解決を見いだす最善の方法だ。国際社会はこの点で建設的な努力を支援すべきだ」と強調していますが、具体的な解決策は示されませんでした。
○プーチン大統領は共同記者発表で、中国が示してきた対話と停戦の立場を支持する姿勢を示し「欧米とウクライナで準備が整えば、平和的な解決の基礎となり得るが、そうしたアプローチは今のところ見られない。むしろ西側は、徹底してロシアと戦うことを決めたようだ」と述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米をけん制しました。
○これに対し、習主席は「中国は一貫して客観的かつ公正な立場を堅持し、和平交渉を積極的に促してきた」などと、ウクライナ情勢をめぐる中国の立場を繰り返し主張しました。
○そのうえで「私は引き続き、さまざまな方法を通じて、プーチン大統領と密接な意思疎通を保ち、両国関係の安定的かつ長期的な発展へと、ともに導いていくことを期待している」と述べ、ロシアとのさらなる連携強化に意欲を示しました。
○一方で、アメリカなどが懸念する中国からロシアへの軍事支援について具体的な言及はありませんでした。
○また共同声明では、台湾をめぐる情勢などを念頭に「両国は冷戦思考に基づくアメリカのインド太平洋戦略がこの地域の平和と安定に及ぼす負の影響に留意する」として、ともに対立を深めるアメリカを強くけん制しました。
小見出し:◆対アメリカへ結束強調 原発処理水の放出へ懸念表明
○ロシア大統領府が21日に発表した中国とロシアの共同声明では「双方は多極化する世界秩序の構築を加速する」などとしてアメリカに結束して対抗する姿勢を強く打ち出しています。
○この中では、アメリカとイギリス、オーストラリアの3か国による安全保障の枠組みAUKUSや、2030年代にアメリカ製の原子力潜水艦がオーストラリアに初めて配備される見通しになったことについて「深刻な懸念を表明する」と反発しています。
○一方、共同声明で中ロ両国は東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画についても「深刻な懸念を表明する。近隣諸国や国際機関に対して透明性を確保し科学的で安全な方法で処分する必要がある」と主張して、日本をけん制しています。
小見出し:◆松野官房長官 “和平の兆し見られない現実に目を向けて”
○松野官房長官は、閣議の後の記者会見で「中国の習近平国家主席は、寄稿で仲裁と和平交渉の促進に積極的な姿勢を示したものの、ロシアのウクライナ領土からの即時撤兵などについての言及はなかったと承知している」と指摘しました。
○また「プーチン大統領も、侵略を継続するとともに併合した一部地域は交渉の対象でない旨述べるなど、和平に向けて歩み寄ろうとする兆しは一切見られず、こうした現実にまずは目を向ける必要がある。引き続き、G7=主要7か国をはじめとする国際社会と連携しつつ、ロシアに強い制裁を行うなどの外交的取り組みを進めていく」と述べました。
<引用終わり>
(*2):中国は今回の会談に先立ち「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と称する12項目の文書を発表している。
↓
JETRO HP 2023年02月28日
見出し:◆中国、ウクライナ危機に対するポジションペーパーを発表、和平交渉プラットフォーム設立を提案
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/02/64070a42d40bb102.html
記事:○中国の外交部は2月24日、「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する文章を公開した。ロシアのウクライナ侵攻に対する中国の主張を12項目にまとめたもの。
○同文書は、(1)各国の主権尊重、(2)冷戦思考の排除、(3)停戦、戦闘の終了、(4)和平対話の始動、(5)人道危機の解決、(6)民間人と捕虜の保護、(7)原子力発電所の安全確保、(8)戦略的リスクの減少、(9)食糧の国外輸送の保障、(10)一方的制裁の停止、(11)産業チェーン・サプライチェーンの安定確保、(12)戦後復興の推進、という項目からなる(添付資料表参照)。従来からの主張に加えて、中国は和平交渉プラットフォームの設立やロシア・ウクライナ間の捕虜交換、戦後復興の推進支援に役割を発揮するとしている。
○外交部は同日の記者会見で、「中国はウクライナ問題について、終始、客観的で公正な立場を取り、積極的に和平を促し対話を促進し、危機の解決のために建設的な役割を果たしてきた」との認識を示し、同文書に基づいて、引き続き国際社会とともにウクライナ危機の政治的解決のために貢献するとした。一方で、和平交渉プラットフォーム設立などに向けた具体的な方策については言及しなかった。
○2月24日の中国中央テレビは「中国はウクライナ危機の当事者ではないが、手をこまねいて見ているわけではない」として、文書はウクライナ危機の政治的解決のために、詳細で確実な、実行可能な解決策を提供したものと報じた。
○2月25日付の人民日報は「ウクライナ危機の政治的解決のために中国の知恵と中国の解決策を提供し、動揺する世界にさらなる安定と確実性をもたらすために、大国の責任を体現したもの」と評価した。
○中国国際問題研究院ユーラシア研究所の李自国所長は、2月21日に発表された「グローバル安全保障イニシアチブコンセプトペーパー」と合わせて、中国は平和の側、対話の側、歴史的に正しい側に立ち、国際社会とともにグローバルな安全を守るという立場を表明したものだとした(「新華網」2月24日)。
○中国国際問題研究院欧州研究所の崔洪健所長は、文書について「西側諸国の言ういわゆる和平案ではなく、中国のウクライナ危機に対する見方や、国際社会が受けている影響に対する認識に基づいた基本的な判断」とした(「澎湃新聞」2月24日)。(河野円洋)
<引用終わり>
【ご参考】※中国語(自動翻訳で日本語になる)
关于政治解决乌克兰危机的中国立场
2023-02-24 09:00
https://www.fmprc.gov.cn/zyxw/202302/t20230224_11030707.shtml
(*3):ロシアの言い分に言及している以前の論考
↓
<地政学的視点>
2022/02/28投稿:
ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1624.html
<2022年5月9日プーチン演説>
2022/05/11投稿:
2022年5月9日・プーチン演説への雑感(序・全体印象)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1647.html
2022/05/13投稿:
2022年5月9日・プーチン演説への雑感(地理・地名編&ロシアの設定)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1648.html
<ウクライナ停戦時の領土>
2022/03/03投稿:
ウクライナ情勢雑感3:ウクライナ侵攻後の着地点は?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1626.html
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