マイナンバー制度がプライバシー権の侵害だとする裁判・最高裁で敗訴、合憲確定
- 2023/03/13
- 22:04
マイナンバー制度がプライバシー権の侵害だとする裁判・最高裁で敗訴、合憲確定
副題:「プライバシー権侵害ナンチャラ」は、昔は監視カメラ、今回はマイナンバー制度。どちらも普通の日本人にとって不利になることはない。
今回の題材は、マイナンバー制度に関する最高裁判決のニュース(*1)である。
「「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し違憲だ」とした「「住民」訴訟」が一審、二審、最高裁と総て敗訴し、マイナンバー制度は「プライバシー権」を侵害しないことが確定したものである。
原告側が何を以て「「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し違憲だ」と称しているのかをちょっと知らベてみたのだが、残念ながら「神奈川県保険医協会」の2016年3月の一審提訴の際の記事(*2)を同会のHP発見でするだけにとどまった。
そこに書かれていた「訴えた理由」を抜粋引用すると以下の様になる。
↓
<抜粋引用開始>付番は引用・要約者
①・「マイナンバー制度の最大の問題点は個人情報の漏洩の危険にある」
②・「ネットワークの選択・利用は個人の意思によるもの」だが「本人の同意なく個人情報をネットワークに取り込み、紐付け・マッチングすることは憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権の侵害に他ならない」
③・住基ネットは対象が基本4情報に限定、紐付け・マッチングしないこと等から合憲判決が下されており、「マイナンバーは紐付け・マッチングを目的とした制度。住基ネットの最高裁判決に照らしても違憲性が高い」
④原告の一人で横浜市民の宮崎俊郎氏が発言。制度の全貌が見えず、「漠然とした不安が拭えない」と懸念を示しました。また、制度拡大とともに個人番号の提示や記載、個人番号カードの所持が徐々に強制され、「拒否する者は"非国民"として扱われる可能性もある」と強調し、訴訟という手段で抵抗したいと述べました。
<引用終わり>
この様に色々と言っているのだが、それらはまとまったものではなく、摘み食い的なもので、特に最後の④などは、単なる個人の思い込みでしかない。
そんな個人の「漠然とした不安」だけで提訴してしまうのであろうか?との疑問がある。
むしろ「マイナンバー制度への反対ありき」で、その理由が言えないので感情を述べるているだけの様である。
他の「理由」も、まったく理由になっていない。
最初の①個人情報漏洩の危険性について言えば、クレジットカードにも同等のリスクは存在しており、マイナカード特有の問題とは言えない。
次の②「憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権」も相変わらずのものだ。
現行憲法第13条の条文は以下の通りであり、プライバシー権、自己情報コントロール権なる語句などは登場しない。
↓
<引用開始>
第13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
<引用終わり>
集団訴訟の原告側弁護士が言う「プライバシー権」は、三島由紀夫の「宴のあと」裁判の判例などと組み合わせて言っているものだが、監視カメラやマイナンバーカードに反対する側がかなりの拡大解釈をしていると考えている。
以前は、路上他の公共の場所での監視カメラの増設に対して「プライバシー権の侵害」なる「理屈」で反対していた勢力がいるが、今や、監視カメラがることによって重大事件の容疑者・犯人を捕らえられる様になり、公共安全の観点からは社会に有用な措置と言って良い。
一方、公共の場ではない個人の住宅やその出入り口他には当然の様に監視カメラは相応しくない。同様、公共施設であっても公衆トイレ、更衣室他は相応しくない。こういうコモンセンスが成立しているはずであり、こういう一般的に公正妥当な基準からは、「プライバシー権の侵害」なる「理屈」は失当である。
今回のマイナンバー制度に対する最高裁判決も同様に、そういう観点から同制度は妥当としたものである。
最後の③「住基ネットに比べてマイナンバーは「紐付け・マッチングを目的とした制度」なので違憲」なる「理由」が書かれているが、これはデジタル化社会に於いても「ずっと手作業の名寄せをする」ことを継続するという間抜けな運用をしないと「違憲」になるというトンデモ話でしかない。
当方はマイナンバー制度についてデジタル化が進んだ社会では、人物認定をする際に必須のKey dataだと認知しているので、特に問題を感じないのだが、世の中にはマイナンバー制度がお嫌いな方々が存在していることも知っている。最高裁で敗訴した「集団訴訟」の方々も、そういう人達なのであろう。
と言う事で、いったいマイナンバー制度の何が問題なのか?を調べてみた。
その結果、以下の様な「問題点」をネットで発見した。
↓
<引用開始>
○マイナンバーカードを持つデメリットとは?
1:盗難・紛失による個人情報漏えいのリスク
2:有効期限到来前に更新が必要
3:銀行口座などと紐づけされることにより、資産が管理されてしまう?
<引用終わり>
これらを見ての第一印象は、「集団訴訟」の人達が言っていたことと同じ「反対ありきの後付け理由」でしかない、である。
「1:盗難・紛失による個人情報漏えいのリスク」などともっともらしい事を言っているが、クレジットカードやキャッシュカードも「盗難・紛失」すれば同様のリスクがあるもので、マイナンバーカード特有のリスクではない。
「2:有効期限到来前に更新が必要」もマイナンバーカード特有のものではない。
運転免許証も有効期限があることは多くの人がご存知のことである。
確かに更新手続きは面倒である。特に銃砲所持許可の面倒さにはウンザリしている。(*3)
とは言え、鉄砲・狩猟は3年更新、運転免許証はゴールド免許で5年更新、マイナカードは18歳以上であれば10年更新であり、各々の制度趣旨からは妥当なもので「問題点だと大騒ぎ」する様なものではない。
最後の「3:銀行口座などと紐づけされることにより、資産が管理されてしまう?」は、笑ってしまうのだが、多分、反対派の本音なのだと思う。
「資産が管理されてしまう」とあるが、本音は「所得が把握されてしまう」だと考えている。
日本人の就業者の割合は、所謂「サラリーマン」が87%、自営業者が10数%だと言われている。
そして、今は殆ど言われなくなった言葉に「トーゴーサンピン」とか「クロヨン」がある。
これらは、税務署による課税所得の捕捉率に関する格差に対する不公平感を表す言葉である。
「トーゴーサンピン」とは、サラリーマンは所得の10割(トウ)が補則されているのに対して、自営業者は本当の所得のうちの半分の約5割(ゴ)しか把握されず、農林水産業者は約3割(サン)しか把握されず、政治家の所得は1割(ピン)しか把握されてないというごろ合わせである。同様、「クロヨン」とは、サラリーマンの所得は9割(ク)、自営業者は6割(ロ)、農林水産業者は4割(ヨン)しか把握されず、この様な、課税の公平性のスタート地点である課税所得額の把握が業種によって格差があるというものである。
サラリーマンの様な給与所得者は、自分自身で納税している訳ではなく、給与支払側の企業が給与から天引きして納税しているので、給与に関しては10割把握されているものである。クロヨンの9割の場合は給与以外の雑所得などが把握されていない場合があるので、「10割ではない」という意味で「9割」としているものである。
給与所得者の不公平感の解消は長い間実現化されてこなかった。
不公平感を解消する策としては、所得側での把握率の改善は難しいので、支出側で公平化をする策として、給与所得者の所得税を減税し、減税分と同額の消費税という新税を導入したのだが、メディアは所得税減税の方を「報道しない自由」で報道せず、消費税という新税側を叩いた。
3%から5%への消費税増税の際は、所得税の減税は国会で議論されたのだが、5%から二段階で10%に倍増する際には、所得税減税の話は出てこなかったのは本当におかしな話だと思っている。(*4)
勿論、「福祉の為に使う」という建て付けなので、低所得者や子育て世代への保障財源というものから、給与所得者全般が対象ではないというのが財務相の「言い分」であることは承知している。
その一方、財務省は倍増消費税の増税分の80%を国債償還に使うとの国民経済を脇に置いた財政至上主義者ファシズムをしており、その様な「言い分」は誤魔化しでしかないことも承知している。それを変更させた安倍首相は本当に国民のことを考えていた政治家だと思う(*5)
話を戻す。IT技術の進展に伴い、マイナンバー制度が実現可能となり「トーゴーサンピン」「クロヨン」問題は解消可能となったのである。
就業者の87%にとっては、そもそもが「脱税」や「グレーな「節税」」は最初から無理なことで、マイナンバー制度で所得把握が公平化されても何等の不利はない。
その一方、金銭の流れがクリアになるとお困りの方々もいる様で、マイナンバー制度で所得が把握されたくないとして反対しているのである。
そもそも、所得税法・法人税法の規定に則り正直な申告をしていれば何等の問題もないのだが、従前、それをしていなかった方々にとってはマイナンバー制度は確かに脅威であろう。
所得税法・法人税法の規定に則り申告することは、けしてプライバシー権の侵害には該当しないのである。
ズルっこをして納税をしていない人達から、法規定通りの納税を得ることは、我々多くの納税者にとっては、公平性の確保の点で望ましいことだと考えている。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):マイナンバー制度に関する最高裁判決のニュース
↓
<その1>NHK NEWS WEB 2023年3月9日 18時43分
見出し:◆: “マイナンバー制度 憲法違反でない” 集団訴訟で最高裁初判断
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230309/k10014003271000.html
記事:○マイナンバー制度が憲法違反かどうかが争われた3件の集団訴訟で、最高裁判所は「正当な行政目的の範囲内で利用や提供がされていて、プライバシー権は侵害しない」として、憲法違反ではないとする統一的な判断を初めて示し、国に対しマイナンバーの利用中止などを求めた訴えを退けました。
○7年前に運用が始まったマイナンバー制度について、住民たちが「個人情報が漏えいする危険性が非常に高く、プライバシー権を保障した憲法に違反する」と主張して国に対しマイナンバーを利用せず削除するよう求めた集団訴訟は、2015年以降全国8か所で起こされました。
○このうち仙台と福岡、それに名古屋で起こされた3件の訴訟の判決が9日に言い渡され、最高裁判所第1小法廷の深山卓也裁判長は「マイナンバー制度は行政運営の効率化や国民の利便性向上を目的としているほか、個人情報の利用範囲も社会保障や税などに限定されていて、正当な行政目的の範囲内で利用や提供がされている。情報管理システムから情報が漏えいする危険性も極めて低い」と指摘しました。
○そのうえで「個人情報が正当な目的の範囲を逸脱して第三者に開示される具体的な危険はなく、プライバシー権は侵害しない」として、マイナンバー制度は憲法違反ではないとする統一的な判断を示し、住民側の敗訴が確定しました。
○マイナンバー制度が憲法違反かどうかについて最高裁が判断を示したのは初めてです。
小見出し:◆*原告側弁護士「訴え認められず残念」
○判決について、福岡の訴訟を担当した武藤糾明弁護士は会見で「結論からいえば訴えは認められず残念だ」と話しました。
○そのうえで、判決のあと「マイナンバーに歯止め」と書いた紙を最高裁前で掲げた思いとして「政府は税と社会保障、それに災害対策以外にも利用範囲を広げようとしている。政府の動きに歯止めはかかったのではないか」と述べました。
小見出し:◆松野官房長官「個人情報保護に留意し 制度を利活用」
○松野官房長官は、午後の記者会見で「マイナンバー制度では制度面やシステム面で各種の対策を講じており、個人情報保護に十分配慮した仕組みとしている。引き続き個人情報の保護に十分留意しながら、制度の利活用を推進していきたい」と述べました。(引用終わり)
<その2>
テレ朝news [2023/03/09 17:30]
見出し:◆マイナンバー制度違憲訴訟 最高裁が初の合憲判断
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000290823.html
記事:○「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し、違憲だとして、全国各地の住民らが個人番号の利用差し止めなどを求めた裁判で、最高裁は制度は合憲だとする初めての判決を言い渡しました。
○全国各地の住民らは様々な個人情報を紐付けることができるマイナンバー制度は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し、違憲だとして、個人番号の利用差し止めなどを求めて全国8カ所の裁判所に提訴していました。
○そのうち3つの裁判について住民側は一審と二審で敗訴し、上告していました。
○9日の判決で、最高裁は制度について「行政運営の効率化や国民の利便性向上を図ることなどを目的とするもので正当な行政目的を有する」と指摘しました。
○そのうえで、個人情報の目的外利用や外部漏洩(ろうえい)を防ぐ措置も講じられているとして「個人に関する情報をみだりに第三者に開示、または公表されない自由を侵害するものではない」と述べ、プライバシー権を侵害せず合憲であるとの判断を示しました。
○マイナンバー制度の合憲性について最高裁が判断を示したのは初めてです。
○これで住民側の敗訴が確定しました。
<引用終わり>
(*2):「神奈川県保険医協会」の2016年3月の一審提訴の際の記事
↓
神奈川県保険医協会HP
(日付不記載・記事中の記載からは2016年3月24日当日以降の記事と類推される)
見出し:◆マイナンバー違憲訴訟神奈川 全国最多201名の集団訴訟 横浜地裁に提訴しました
https://www.hoken-i.co.jp/outline/commentary/201.html
記事:○マイナンバー制度はプライバシー権を侵害するとして、2016年3月24日、県内住民を中心に201名が国に対して個人番号の収集・利用停止等を求める訴えを横浜地裁に起こしました。
○当日は名古屋・福岡でも提訴。すでに昨年末、東京など5地裁で一斉提訴されており、この「マイナンバー(共通番号)違憲訴訟」は全国8地裁での裁判闘争となります。
○なお、原告数は神奈川が全国で最多。神奈川県保険医協会からも役員・会員・事務局員等20名が原告になるなど、全面的に支援しています。
○当日開かれた記者会見では、訴状等について弁護団の小賀坂徹弁護士が説明。
○小賀坂氏は、マイナンバー制度の最大の問題点は個人情報の漏洩の危険にあるとし、昨年の年金情報流出を引き合いに、中小の事業者も従業員等の個人番号収集・管理を強要されることから、漏洩リスクは飛躍的に高まる。昨年10月の施行直後から事故や事件、システム障害が頻発しており、「危険はすでに現実化している」と指摘しました。
○また、ネットワークの選択・利用は個人の意思によるもの。本人の同意なく個人情報をネットワークに取り込み、紐付け・マッチングすることは、憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権の侵害に他ならないと強調。裁判では様々な立場や角度から問題点を豊かに語り、国による個人情報の管理・利用の範囲や内容をどこまで認めるのか等、「個人と国家の関係性について問い直したい」と説明しました。
○次に、原告の一人で横浜市民の宮崎俊郎氏が発言。制度の全貌が見えず、「漠然とした不安が拭えない」と懸念を示しました。また、制度拡大とともに個人番号の提示や記載、個人番号カードの所持が徐々に強制され、「拒否する者は"非国民"として扱われる可能性もある」と強調し、訴訟という手段で抵抗したいと述べました。
○記者からは、住基ネット裁判の最高裁判決との比較や、多くの原告が集まった要因等について質問が寄せられました。
○小賀坂氏は、住基ネットは対象が基本4情報に限定、紐付け・マッチングしないこと等から合憲判決が下されており、「マイナンバーは紐付け・マッチングを目的とした制度。住基ネットの最高裁判決に照らしても違憲性が高い」と回答しました。また、201名もの原告が集まったことに驚きを示しつつも、「マイナンバーに不安や不満を持つ人が潜在的に多くいることを物語っている」と説明しました。
○なお、当日の模様は、NHK、TVKをはじめ、毎日、読売、朝日、神奈川、日刊ゲンダイ各紙が報じました。
○会見終了後の集会では、原告の一人として藤田協会理事が発言しました。特定健診情報がマイナンバーの対象となることで、開業医が何らかの形で制度に巻き込まれるのではないかと懸念を示しました。
○また、税や公的保険など、マイナンバーで管理する「お金の出入り」の情報を使って社会保障給付を負担の範囲内に抑制するという、政府・財界が2001年から提唱する「社会保障個人会計」が導入される危険性を示唆しました。
○この他、憲法学者や社労士、損保代理店経営者など、様々な職種・立場の原告からマイナンバーの問題点、訴訟に向けての意気込みが述べられました。
○最後に、今後の予定について、裁判の第一回目は5月下旬となる見通しで、5月20日に協会会議室で決起集会を開催することが報告されました。
<引用終わり>
(*3):確かに更新手続きは面倒である。特に銃砲所持許可の面倒さにはウンザリである。
↓
2021/02/27投稿:
愚者の悪行が普通の人々の自由を奪う・ボウガン規制・銃刀法改正案(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1473.html
2021/03/01投稿:
愚者の悪行が普通の人々の自由を奪う・ボウガン規制・銃刀法改正案(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1474.html
(*4):3%から5%への消費税増税の際は、所得税の減税は国会で議論されたのだが、5%から二段階で10%に倍増する際には、所得税減税の話は出てこなかったのは本当におかしな話だと思っている。
↓
2015/12/04投稿:
【コラム】2009年時点で民主党が目指した改憲
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-281.html
(*5):財務省は倍増消費税の増税分の80%を国債償還に使うとの国民経済を脇に置いた財政至上主義者ファシズムをしており、その様な「言い分」は誤魔化しでしかないことも承知している。それを変更させた安倍首相は本当に国民のことを考えていた政治家だと思う
↓
2017/10/10投稿:
2019/10/01 22:10
民主党野田政権が法制化した消費税10%化がとうとうスタート
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1263.html
【ご参考】
消費税10%化は民主党・野田政権の置き土産
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-775.html
2019/07/08投稿:
消費税増税法は民主党・野田政権が法制化したもの
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1214.html
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副題:「プライバシー権侵害ナンチャラ」は、昔は監視カメラ、今回はマイナンバー制度。どちらも普通の日本人にとって不利になることはない。
今回の題材は、マイナンバー制度に関する最高裁判決のニュース(*1)である。
「「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し違憲だ」とした「「住民」訴訟」が一審、二審、最高裁と総て敗訴し、マイナンバー制度は「プライバシー権」を侵害しないことが確定したものである。
「「プライバシー権」の侵害」とは何?広範囲過ぎるのではないか?
原告側が何を以て「「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し違憲だ」と称しているのかをちょっと知らベてみたのだが、残念ながら「神奈川県保険医協会」の2016年3月の一審提訴の際の記事(*2)を同会のHP発見でするだけにとどまった。
そこに書かれていた「訴えた理由」を抜粋引用すると以下の様になる。
↓
<抜粋引用開始>付番は引用・要約者
①・「マイナンバー制度の最大の問題点は個人情報の漏洩の危険にある」
②・「ネットワークの選択・利用は個人の意思によるもの」だが「本人の同意なく個人情報をネットワークに取り込み、紐付け・マッチングすることは憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権の侵害に他ならない」
③・住基ネットは対象が基本4情報に限定、紐付け・マッチングしないこと等から合憲判決が下されており、「マイナンバーは紐付け・マッチングを目的とした制度。住基ネットの最高裁判決に照らしても違憲性が高い」
④原告の一人で横浜市民の宮崎俊郎氏が発言。制度の全貌が見えず、「漠然とした不安が拭えない」と懸念を示しました。また、制度拡大とともに個人番号の提示や記載、個人番号カードの所持が徐々に強制され、「拒否する者は"非国民"として扱われる可能性もある」と強調し、訴訟という手段で抵抗したいと述べました。
<引用終わり>
この様に色々と言っているのだが、それらはまとまったものではなく、摘み食い的なもので、特に最後の④などは、単なる個人の思い込みでしかない。
そんな個人の「漠然とした不安」だけで提訴してしまうのであろうか?との疑問がある。
むしろ「マイナンバー制度への反対ありき」で、その理由が言えないので感情を述べるているだけの様である。
他の「理由」も、まったく理由になっていない。
最初の①個人情報漏洩の危険性について言えば、クレジットカードにも同等のリスクは存在しており、マイナカード特有の問題とは言えない。
次の②「憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権」も相変わらずのものだ。
現行憲法第13条の条文は以下の通りであり、プライバシー権、自己情報コントロール権なる語句などは登場しない。
↓
<引用開始>
第13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
<引用終わり>
集団訴訟の原告側弁護士が言う「プライバシー権」は、三島由紀夫の「宴のあと」裁判の判例などと組み合わせて言っているものだが、監視カメラやマイナンバーカードに反対する側がかなりの拡大解釈をしていると考えている。
以前は、路上他の公共の場所での監視カメラの増設に対して「プライバシー権の侵害」なる「理屈」で反対していた勢力がいるが、今や、監視カメラがることによって重大事件の容疑者・犯人を捕らえられる様になり、公共安全の観点からは社会に有用な措置と言って良い。
一方、公共の場ではない個人の住宅やその出入り口他には当然の様に監視カメラは相応しくない。同様、公共施設であっても公衆トイレ、更衣室他は相応しくない。こういうコモンセンスが成立しているはずであり、こういう一般的に公正妥当な基準からは、「プライバシー権の侵害」なる「理屈」は失当である。
今回のマイナンバー制度に対する最高裁判決も同様に、そういう観点から同制度は妥当としたものである。
最後の③「住基ネットに比べてマイナンバーは「紐付け・マッチングを目的とした制度」なので違憲」なる「理由」が書かれているが、これはデジタル化社会に於いても「ずっと手作業の名寄せをする」ことを継続するという間抜けな運用をしないと「違憲」になるというトンデモ話でしかない。
マイナンバー制度の何が問題なのか?
当方はマイナンバー制度についてデジタル化が進んだ社会では、人物認定をする際に必須のKey dataだと認知しているので、特に問題を感じないのだが、世の中にはマイナンバー制度がお嫌いな方々が存在していることも知っている。最高裁で敗訴した「集団訴訟」の方々も、そういう人達なのであろう。
と言う事で、いったいマイナンバー制度の何が問題なのか?を調べてみた。
その結果、以下の様な「問題点」をネットで発見した。
↓
<引用開始>
○マイナンバーカードを持つデメリットとは?
1:盗難・紛失による個人情報漏えいのリスク
2:有効期限到来前に更新が必要
3:銀行口座などと紐づけされることにより、資産が管理されてしまう?
<引用終わり>
これらを見ての第一印象は、「集団訴訟」の人達が言っていたことと同じ「反対ありきの後付け理由」でしかない、である。
「1:盗難・紛失による個人情報漏えいのリスク」などともっともらしい事を言っているが、クレジットカードやキャッシュカードも「盗難・紛失」すれば同様のリスクがあるもので、マイナンバーカード特有のリスクではない。
「2:有効期限到来前に更新が必要」もマイナンバーカード特有のものではない。
運転免許証も有効期限があることは多くの人がご存知のことである。
確かに更新手続きは面倒である。特に銃砲所持許可の面倒さにはウンザリしている。(*3)
とは言え、鉄砲・狩猟は3年更新、運転免許証はゴールド免許で5年更新、マイナカードは18歳以上であれば10年更新であり、各々の制度趣旨からは妥当なもので「問題点だと大騒ぎ」する様なものではない。
最後の「3:銀行口座などと紐づけされることにより、資産が管理されてしまう?」は、笑ってしまうのだが、多分、反対派の本音なのだと思う。
「資産が管理されてしまう」とあるが、本音は「所得が把握されてしまう」だと考えている。
サラリーマンにとってマイナンバー制度はむしろ望ましい
日本人の就業者の割合は、所謂「サラリーマン」が87%、自営業者が10数%だと言われている。
そして、今は殆ど言われなくなった言葉に「トーゴーサンピン」とか「クロヨン」がある。
これらは、税務署による課税所得の捕捉率に関する格差に対する不公平感を表す言葉である。
「トーゴーサンピン」とは、サラリーマンは所得の10割(トウ)が補則されているのに対して、自営業者は本当の所得のうちの半分の約5割(ゴ)しか把握されず、農林水産業者は約3割(サン)しか把握されず、政治家の所得は1割(ピン)しか把握されてないというごろ合わせである。同様、「クロヨン」とは、サラリーマンの所得は9割(ク)、自営業者は6割(ロ)、農林水産業者は4割(ヨン)しか把握されず、この様な、課税の公平性のスタート地点である課税所得額の把握が業種によって格差があるというものである。
サラリーマンの様な給与所得者は、自分自身で納税している訳ではなく、給与支払側の企業が給与から天引きして納税しているので、給与に関しては10割把握されているものである。クロヨンの9割の場合は給与以外の雑所得などが把握されていない場合があるので、「10割ではない」という意味で「9割」としているものである。
給与所得者の不公平感の解消は長い間実現化されてこなかった。
不公平感を解消する策としては、所得側での把握率の改善は難しいので、支出側で公平化をする策として、給与所得者の所得税を減税し、減税分と同額の消費税という新税を導入したのだが、メディアは所得税減税の方を「報道しない自由」で報道せず、消費税という新税側を叩いた。
3%から5%への消費税増税の際は、所得税の減税は国会で議論されたのだが、5%から二段階で10%に倍増する際には、所得税減税の話は出てこなかったのは本当におかしな話だと思っている。(*4)
勿論、「福祉の為に使う」という建て付けなので、低所得者や子育て世代への保障財源というものから、給与所得者全般が対象ではないというのが財務相の「言い分」であることは承知している。
その一方、財務省は倍増消費税の増税分の80%を国債償還に使うとの国民経済を脇に置いた財政至上主義者ファシズムをしており、その様な「言い分」は誤魔化しでしかないことも承知している。それを変更させた安倍首相は本当に国民のことを考えていた政治家だと思う(*5)
話を戻す。IT技術の進展に伴い、マイナンバー制度が実現可能となり「トーゴーサンピン」「クロヨン」問題は解消可能となったのである。
就業者の87%にとっては、そもそもが「脱税」や「グレーな「節税」」は最初から無理なことで、マイナンバー制度で所得把握が公平化されても何等の不利はない。
その一方、金銭の流れがクリアになるとお困りの方々もいる様で、マイナンバー制度で所得が把握されたくないとして反対しているのである。
そもそも、所得税法・法人税法の規定に則り正直な申告をしていれば何等の問題もないのだが、従前、それをしていなかった方々にとってはマイナンバー制度は確かに脅威であろう。
所得税法・法人税法の規定に則り申告することは、けしてプライバシー権の侵害には該当しないのである。
ズルっこをして納税をしていない人達から、法規定通りの納税を得ることは、我々多くの納税者にとっては、公平性の確保の点で望ましいことだと考えている。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):マイナンバー制度に関する最高裁判決のニュース
↓
<その1>NHK NEWS WEB 2023年3月9日 18時43分
見出し:◆: “マイナンバー制度 憲法違反でない” 集団訴訟で最高裁初判断
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230309/k10014003271000.html
記事:○マイナンバー制度が憲法違反かどうかが争われた3件の集団訴訟で、最高裁判所は「正当な行政目的の範囲内で利用や提供がされていて、プライバシー権は侵害しない」として、憲法違反ではないとする統一的な判断を初めて示し、国に対しマイナンバーの利用中止などを求めた訴えを退けました。
○7年前に運用が始まったマイナンバー制度について、住民たちが「個人情報が漏えいする危険性が非常に高く、プライバシー権を保障した憲法に違反する」と主張して国に対しマイナンバーを利用せず削除するよう求めた集団訴訟は、2015年以降全国8か所で起こされました。
○このうち仙台と福岡、それに名古屋で起こされた3件の訴訟の判決が9日に言い渡され、最高裁判所第1小法廷の深山卓也裁判長は「マイナンバー制度は行政運営の効率化や国民の利便性向上を目的としているほか、個人情報の利用範囲も社会保障や税などに限定されていて、正当な行政目的の範囲内で利用や提供がされている。情報管理システムから情報が漏えいする危険性も極めて低い」と指摘しました。
○そのうえで「個人情報が正当な目的の範囲を逸脱して第三者に開示される具体的な危険はなく、プライバシー権は侵害しない」として、マイナンバー制度は憲法違反ではないとする統一的な判断を示し、住民側の敗訴が確定しました。
○マイナンバー制度が憲法違反かどうかについて最高裁が判断を示したのは初めてです。
小見出し:◆*原告側弁護士「訴え認められず残念」
○判決について、福岡の訴訟を担当した武藤糾明弁護士は会見で「結論からいえば訴えは認められず残念だ」と話しました。
○そのうえで、判決のあと「マイナンバーに歯止め」と書いた紙を最高裁前で掲げた思いとして「政府は税と社会保障、それに災害対策以外にも利用範囲を広げようとしている。政府の動きに歯止めはかかったのではないか」と述べました。
小見出し:◆松野官房長官「個人情報保護に留意し 制度を利活用」
○松野官房長官は、午後の記者会見で「マイナンバー制度では制度面やシステム面で各種の対策を講じており、個人情報保護に十分配慮した仕組みとしている。引き続き個人情報の保護に十分留意しながら、制度の利活用を推進していきたい」と述べました。(引用終わり)
<その2>
テレ朝news [2023/03/09 17:30]
見出し:◆マイナンバー制度違憲訴訟 最高裁が初の合憲判断
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000290823.html
記事:○「マイナンバー制度」は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し、違憲だとして、全国各地の住民らが個人番号の利用差し止めなどを求めた裁判で、最高裁は制度は合憲だとする初めての判決を言い渡しました。
○全国各地の住民らは様々な個人情報を紐付けることができるマイナンバー制度は憲法で保障されるプライバシー権を侵害し、違憲だとして、個人番号の利用差し止めなどを求めて全国8カ所の裁判所に提訴していました。
○そのうち3つの裁判について住民側は一審と二審で敗訴し、上告していました。
○9日の判決で、最高裁は制度について「行政運営の効率化や国民の利便性向上を図ることなどを目的とするもので正当な行政目的を有する」と指摘しました。
○そのうえで、個人情報の目的外利用や外部漏洩(ろうえい)を防ぐ措置も講じられているとして「個人に関する情報をみだりに第三者に開示、または公表されない自由を侵害するものではない」と述べ、プライバシー権を侵害せず合憲であるとの判断を示しました。
○マイナンバー制度の合憲性について最高裁が判断を示したのは初めてです。
○これで住民側の敗訴が確定しました。
<引用終わり>
(*2):「神奈川県保険医協会」の2016年3月の一審提訴の際の記事
↓
神奈川県保険医協会HP
(日付不記載・記事中の記載からは2016年3月24日当日以降の記事と類推される)
見出し:◆マイナンバー違憲訴訟神奈川 全国最多201名の集団訴訟 横浜地裁に提訴しました
https://www.hoken-i.co.jp/outline/commentary/201.html
記事:○マイナンバー制度はプライバシー権を侵害するとして、2016年3月24日、県内住民を中心に201名が国に対して個人番号の収集・利用停止等を求める訴えを横浜地裁に起こしました。
○当日は名古屋・福岡でも提訴。すでに昨年末、東京など5地裁で一斉提訴されており、この「マイナンバー(共通番号)違憲訴訟」は全国8地裁での裁判闘争となります。
○なお、原告数は神奈川が全国で最多。神奈川県保険医協会からも役員・会員・事務局員等20名が原告になるなど、全面的に支援しています。
○当日開かれた記者会見では、訴状等について弁護団の小賀坂徹弁護士が説明。
○小賀坂氏は、マイナンバー制度の最大の問題点は個人情報の漏洩の危険にあるとし、昨年の年金情報流出を引き合いに、中小の事業者も従業員等の個人番号収集・管理を強要されることから、漏洩リスクは飛躍的に高まる。昨年10月の施行直後から事故や事件、システム障害が頻発しており、「危険はすでに現実化している」と指摘しました。
○また、ネットワークの選択・利用は個人の意思によるもの。本人の同意なく個人情報をネットワークに取り込み、紐付け・マッチングすることは、憲法13条が保障するプライバシー権、自己情報コントロール権の侵害に他ならないと強調。裁判では様々な立場や角度から問題点を豊かに語り、国による個人情報の管理・利用の範囲や内容をどこまで認めるのか等、「個人と国家の関係性について問い直したい」と説明しました。
○次に、原告の一人で横浜市民の宮崎俊郎氏が発言。制度の全貌が見えず、「漠然とした不安が拭えない」と懸念を示しました。また、制度拡大とともに個人番号の提示や記載、個人番号カードの所持が徐々に強制され、「拒否する者は"非国民"として扱われる可能性もある」と強調し、訴訟という手段で抵抗したいと述べました。
○記者からは、住基ネット裁判の最高裁判決との比較や、多くの原告が集まった要因等について質問が寄せられました。
○小賀坂氏は、住基ネットは対象が基本4情報に限定、紐付け・マッチングしないこと等から合憲判決が下されており、「マイナンバーは紐付け・マッチングを目的とした制度。住基ネットの最高裁判決に照らしても違憲性が高い」と回答しました。また、201名もの原告が集まったことに驚きを示しつつも、「マイナンバーに不安や不満を持つ人が潜在的に多くいることを物語っている」と説明しました。
○なお、当日の模様は、NHK、TVKをはじめ、毎日、読売、朝日、神奈川、日刊ゲンダイ各紙が報じました。
○会見終了後の集会では、原告の一人として藤田協会理事が発言しました。特定健診情報がマイナンバーの対象となることで、開業医が何らかの形で制度に巻き込まれるのではないかと懸念を示しました。
○また、税や公的保険など、マイナンバーで管理する「お金の出入り」の情報を使って社会保障給付を負担の範囲内に抑制するという、政府・財界が2001年から提唱する「社会保障個人会計」が導入される危険性を示唆しました。
○この他、憲法学者や社労士、損保代理店経営者など、様々な職種・立場の原告からマイナンバーの問題点、訴訟に向けての意気込みが述べられました。
○最後に、今後の予定について、裁判の第一回目は5月下旬となる見通しで、5月20日に協会会議室で決起集会を開催することが報告されました。
<引用終わり>
(*3):確かに更新手続きは面倒である。特に銃砲所持許可の面倒さにはウンザリである。
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2021/02/27投稿:
愚者の悪行が普通の人々の自由を奪う・ボウガン規制・銃刀法改正案(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1473.html
2021/03/01投稿:
愚者の悪行が普通の人々の自由を奪う・ボウガン規制・銃刀法改正案(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1474.html
(*4):3%から5%への消費税増税の際は、所得税の減税は国会で議論されたのだが、5%から二段階で10%に倍増する際には、所得税減税の話は出てこなかったのは本当におかしな話だと思っている。
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2015/12/04投稿:
【コラム】2009年時点で民主党が目指した改憲
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-281.html
(*5):財務省は倍増消費税の増税分の80%を国債償還に使うとの国民経済を脇に置いた財政至上主義者ファシズムをしており、その様な「言い分」は誤魔化しでしかないことも承知している。それを変更させた安倍首相は本当に国民のことを考えていた政治家だと思う
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2017/10/10投稿:
2019/10/01 22:10
民主党野田政権が法制化した消費税10%化がとうとうスタート
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1263.html
【ご参考】
消費税10%化は民主党・野田政権の置き土産
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-775.html
2019/07/08投稿:
消費税増税法は民主党・野田政権が法制化したもの
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1214.html
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