防衛3文書Final・資料編その3b・防衛力整備計画
- 2023/01/21
- 22:07
防衛3文書Final・資料編その3b・防衛力整備計画
副題:国家・国民を守る為に必要な装備は何か。どの様な装備をどの様な理由で整備するのか。それをまとめたのが防衛力整備計画である。
防衛力整備計画の「7つの重視分野」のうち、重要な最初の2つの紹介・説明だけで記述が長くなってしまったことから、前回「資料編その3a」(*1)は途中で項を分けることとなった。
今回はその続きである。とは言え、最初の2つ以外は未確定事項が多い研究段階であったり、運用方法の革新であったりで、重要だが地味な話が続く。
尚、本稿の論拠・ソース等に関しては前回の文末脚注にurlリンクを貼ってあるので、適宜、それらを参照していただきたい。
「無人アセット」とは①遠隔操縦をする無人の移動体、及び②自律運航する無人移動体のことである。一言で言えば②のドローンのことだと考えて大きな間違いはない。
ウクライナでの戦闘でドローンが有用装備であることは実戦証明(Battle Proof)されており、所謂「兵士の命の値段」が高い我が国の情勢からは、大いに活用すべき装備だと考える。
本文中にも「人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。」との方針が示されており、今後益々無人機関係は増大していくものと考えられる。
尚、無人アセット防衛能力に関しては略語が都度登場するので、最初にその意味を紹介しておく。
↓
UAV(Unmanned Aerial Vehicle)=無人航空機
USV(Unmanned Surface Vehicle=無人水上艇
UGV(Unmanned Ground Vehicle)=無人地上車両
UUV(Unmanned Undersea Vehicle)=無人水中航走体
防衛力整備計画・別表1での無人アセット防衛能力の5年以内の達成目標は「無人機(UAV)の活用を拡大し、実践的に運用する能力を強化」であり、おおむね10年後の目標は「無人アセットの複数同時制御能力等を強化」である。
要するに、現状では、まだ緒に就いた段階だと言える。
5年後までに揃える装備が記載されている別表2には、「各種UAV、USV、UGV、UUV」との記載があるだけで、その数量は未定である。
おおむね10年後とのタイムスパンで書かれている別表3には部隊規模が記載されており、以下の様に陸海空各自衛隊に無人機部隊が置かれ運用されることを目指している。
↓
陸上自衛隊無人機部隊:1個多用途無人航空機部隊
海上自衛隊無人機部隊:2個隊 航空自衛隊無人機部隊:1個飛行隊
本文中には、これら各種無人アセットの利用・運用について以下の様な記述があるので、紹介しておく。
↓
・早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。
・隙のない情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング施するため、洋上監視に資する滞空型無人機及び艦載型の無人アセットや相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る偵察用無人機のほか、用途に応じた様々な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング用無人アセットを整備する。
・離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機の導入について検討
・我が国への侵攻を阻止・排除するため、空中から人員・車両・艦艇等を捜索・識別し、迅速に目標に対処することが可能となるよう、各種攻撃機能を効果的に保持した多用途/攻撃用無人機及び小型攻撃用無人機を整備する。
・艦艇と連携し、効果的に各種作戦運用が可能な無人水上航走体を開発・整備する。また、水中優勢を獲得するための各種無人水中航走体を整備する。
・駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図る(無人車両と無人機を効果的に組み合わる)
領域横断作戦能力とは、従前の陸海空のみにとどまらず、宇宙空間及びサイバー空間を含む、より広範囲な領域における国防活動を実施できる能力のことであるが、防衛力整備計画の領域横断作戦能力に関する記述を読むと、従前の陸海空領域での作戦遂行力の強化・統合やスタンド・オフ防衛能力を発揮する為の地理的拡大も含まれているものである。
別表1の領域横断作戦能力の5年以内の達成目標としは「宇宙領域把握能力、サイバーセキュリティ能力、電磁波能力等を強化」と「領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化」の2点が掲げられている。
また、おおむね10年後の目標としては「宇宙作戦能力を更に強化」「自衛隊以外の組織へのサイバーセキュリティ支援を強化」「無人機と連携する陸海空能力を強化」の3点が掲げられている。
別表2には、5年後までに揃える装備が記載されているのだが「領域横断作戦能力」に関しては通常の新規取得装備で記載されているので混乱するかもしれないが、これは上記した別表1の「領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化」に該当するものとして記載されているものと理解すべきであろう。
↓
<別表2・「領域横断作戦能力」部分から抜粋引用開始>
・護衛艦:12 隻
・潜水艦:5 隻
・哨戒艦:10 隻
・固定翼哨戒機(P-1):19 機
・戦闘機(F-35A):40 機
・戦闘機(F-35B):25 機
・戦闘機(F-15)の能力向上:54 機
・スタンド・オフ電子戦機:1 機
・ネットワーク電子戦システム(NEWS):2 式
<引用終わり>
先ず最初の「護衛艦:12隻」だが、以前の中期防に比して、隻数が従前の中期防に比してかなり多くなっている。
これは30大綱でも明示されていた新型フリゲイトFFM(*2)の短期での大量導入(毎年2隻ペース)が表れているものだと考えられる。
「毎年2隻」なのだから5年間で10隻となるものだが、12隻が計画されている。
これは多分、前回「資料編その3a」の「統合防空ミサイル防衛能力」で言及した、現有8隻のDDGイージス艦の10隻体制化の為の2隻であろう。
次の「潜水艦:5隻」は「毎年1隻の新造」との以前からの方針を継承するものであろう。
その次の「哨戒艦:10隻」は、従前にはなかった新艦種の導入計画である、
もれ聞こえてくる話では、全長約95m、配水量約1,900ton、速力20knot、主武装30mm機関砲、乗員約40人とするもので、従来の護衛艦やミサイル高速艇や旧魚雷艇の様な防衛戦闘を実施する艦艇ではないことが分かる。
主武装が海保の巡視船と同程度の30mmであり、他国の戦闘艦艇と対峙することを考えていないことが分かる。パトカーや白バイではない、軽自動車パトカーの様な位置付けだと思われる。
その一方、1,900tonとの大きさは先の大戦の駆逐艦と同じぐらいだが、乗員40人との省人化設計であり、島嶼部やその近海でのそれなりの長期にわたる哨戒を可能にするものだと推測される。この推測からは、この艦艇はレーダや通信機器等の電子機器を重視したものになるのではないかと思われる。
その次のP-1哨戒機:19 機は、老朽化したP-3Cの代替だと思われる。
P-1哨戒機と言えば、2018年12月20日午後3時頃に我が国EEZ内の日本海大和堆で韓国海軍駆逐艦「広開土大王」と北朝鮮漁船による不審な行動を発見した哨戒機として有名である。韓国海軍は、この時にP-1哨戒機に向けて射撃統制レーダを照射するとの準戦闘行為を行うとの蛮行をしたことは記憶に新しく、その後の韓国国防部・韓国海軍の嘘に嘘を重ねる矛盾だらけの言い訳には呆れたものである。(*3)
ここ迄は海上自衛隊の装備であるが、次からは航空自衛隊の装備となる。
「戦闘機(F-35A):40 機」と「戦闘機(F-35B):25 機」を今後5年間で調達するものであるが、このうちF-35Aは米軍では空軍型とされる通常の地上滑走路を用いるF-35である。F-35Bの方は、米軍では海兵隊が全通甲板型揚陸艦(素人が見たら空母と誤認する外形をしている)での運用が可能な様に、短距離発艦・垂直着艦(STOVL)が出来るタイプでのある。我が国では、全通甲板型護衛艦のいずも型(いずも&かがの2隻)での運用及び長い滑走路が確保できない場所での運用を目的に導入するものである。
次の「F-15の能力向上:54 機」だが、長らく我が国の空の守りの中核であったF-15戦闘機だが、さすがに最初の導入から40数年が経過しており、非ステルス機世代最強の戦闘機であったF-15(213機)も、その半数が近代化改修に適さず退役が決まっている。
そして、近代化改修をすでに済ませた機体であっても、電子機器が向上しステルス機を中心とした現状に於いては、そのままでは不充分なので能力向上が必要になっているものである。F-15自体の飛行性能は素晴らしいので、能力向上策は妥当なものだと考えている。
国防の要である戦闘機(*4)に関しては、本文中に以下の記述があるので、それを紹介しておく。
↓
<戦闘機関係抜粋引用開始>
・近代化改修に適さないF-15についてはF-35A及びF-35Bへの代替ペースを加速させる。
・近代化改修を行ったF-15については電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。
・F-2については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12 式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与する。
・次期戦闘機についてはF-2の退役が見込まれる 2035 年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。
・新戦闘機には、無人機等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。
<引用終わり>
その次の「スタンド・オフ電子戦機:1 機」が何を意味しているのかは不明確で分からない。
我が国自衛隊で「電子戦機」と呼ばれるのは頭に「E」が付く機体で、海上自衛隊では哨戒機P-3Cの機体に電子戦機器を搭載したEP-3と航空自衛隊の輸送機C-1の機体に電子戦機器を搭載したEC-1があるのだが、海自のEP-3は「電子戦データ収集機」であり、むしろ「電波情報偵察機」と呼称する方が相応しい。
「電波情報偵察機」としては、次の重視分野である「指揮統制・情報関連機能」でRC-2を取得する旨が書いてある。RC-2とは川崎重工製の新輸送機C-2に電子戦機器を搭載した機体で、頭文字「R」が付いている様に偵察機である。
そうなると「スタンド・オフ電子戦機:1 機」は多分、EC-1の代替ではないかと類推されるが確信はない。本文中に「スタンド・オフ電子戦機」に関する記載がないので仕方がない。
話がちょっと逸れるがEC-1では長射程のスタンド・オフミサイルに関する電子戦を遂行できる能力は薄いと考えている。
EC-1の基の機体はC-1であるが、C-1が開発・導入されたのは1970年代初期であり、老朽化が進んでいるので、その代替機が必要な状態である。また、このC-1という機体は輸送機であるにも関わらず航続距離が短く、我が国領土の南北縦断も出来ないので滞空時間が少な過ぎて、とてもじゃないが「スタンド・オフ電子戦」を遂行することは出来ない機体である。
C-1輸送機の航続距離が極端に貧弱なのは、1970年代当時の社会党などの反日野党が、「航続距離が長い航空機は周辺国に脅威を与える」などと、攻撃力を持たない輸送機であっても日本列島を縦断できない短い航続距離の航空機しか製造・保有させなかったからだ。
この様なバカな対応のツケは、後年、テヘラン空港に取り残された日本人駐在員が払う事となったのである。詳しくは後段の「機動展開能力・国民保護」にて述べる事としたい。
別表2の「領域横断作戦能力」の最後は「ネットワーク電子戦システム(NEWS):2式」である。
NEWS(Network Electronic Warfare System)は陸上自衛隊が運用する電波の収集・分析を行う装備である。また、相手方の通信電子活動の妨害能力を有する。旧式機の代替であり、これにより離島・島嶼部でも電子戦を実行できる様になるものである。
別表2の記載内容は以上である。1
「領域横断作戦能力」については「宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦」を実行する能力であるのだが「5年以内」とのタイムスパンの別表2には宇宙空間はまったく登場しない。
宇宙空間についてに登場するのは別表3の航空自衛隊の編成部分である。別表3のタイムスパンは「おおむね10年後」なので、かなり先になりそうであるが、空自の主要部隊として「宇宙領域専門部隊:1個隊」との記載がある。
宇宙領域に関しての本文中の記載は主として「これから研究開発します」という内容だが、以下の記載は興味深いので、それを抜粋引用して紹介する。
↓
<引用開始>
Ⅲ 自衛隊の体制等
4 航空自衛
⑵ 基幹部隊の見直し等
ク 宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。
<引用終わり>
航空自衛隊は航空宇宙自衛隊になるのだそうだが、当方としては「地球防衛軍」だと思っている。ww
「7つの重視分野」の総てに言及してもよいのだが、文字数がかなり多くなってきたので、機動展開能力・国民保護を最後としたい。
「機動展開能力・国民保護」の基本的考え方としては数少ない自衛隊員を以て防衛する手段についての方策実現である。
我が国国土は南北に長く、かつ、数多くの島嶼部が存在している。
これら我が国の主権が及び領土・領海への侵攻を許さない事は世界共通の主権国家の責務であるが、だからと言ってたった23万人(人口比0.2%未満)の自衛官しかいないとう状態では、総ての国土にくまなく配置することは不可能である。また、その様な分散配置は遊兵化リスクが高く偽合理的ではない。
従い、侵攻されると予想される地域へ各拠点からの迅速なる配備が出来る体制を以て対処することになるのである。それを実現化する為に、自衛隊自体の輸送能力の強化、民間フェリーの活用、島嶼部の港湾・空港設備の強化、補給拠点の強化などが掲げられている。
これらの実現化時期として、別表1での5年以内での目標としては、「自衛隊の輸送アセットの強化、PF1船舶の活用等により、輸送・補給能力を強化(部隊展開・国民保護)」との記載がある。
PF1船舶とはPFI(Private Finance Initiative)で建造したカーフェリーのことで、それを有事または演習時にリースして自衛隊員等の人員や軽車両他の移動に利用するものである。
一方、別表1の「機動展開能力・国民保護」の「おおむね10年後」については「輸送能力を更に強化」、「補給拠点の改善等により、輸送・補給を迅速化」と記載されている。
この分野ではあまり目新しい記載はないが、前回紹介した「無人アセット防衛能力」の中に、補給に関して「広域に分散展開した部隊、離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機(UAV)の導入について検討の上、必要な措置を講じる。」との記載があり、その様な策を以て「輸送・補給能力を強化」するものと理解できる。
クロネコヤマトや日通のドローン配達に負けていられないということであろう。
地味ではあるが「正面装備編重・ロジスティックス軽視」では、我が国の防衛線が「第二のインパール作戦」になりかねないので、「輸送・補給能力を強化」を重視分野にすることは高く評価できる。
「機動展開能力・国民保護」を実現化する為の装備として別表2で掲げられているのは、以下の船舶・航空機である。
↓
<別表2・「機動展開能力・国民保護」部分から抜粋引用開始>
・輸送船舶:8隻
・輸送機(C-2):6機
・空中給油・輸送機(KC-46A等):13機
<引用終わり>
輸送船舶に関しては、本文中に「輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇」との記載がある。
これら輸送船に関しては、艦船系でもっとも詳しい月刊誌「世界の艦船」にも詳細情報は載っておらず、せいぜいが輸送船舶(中型級船舶(LSV)が1,700~2,000ton程度、小型級船舶(LCU)が350~400ton程度の予測記事しかない。
尚、我が国海上自衛隊の輸送艦といえば8,900tonのおおすみ型輸送艦であるが、本文中に書かれた両船舶は随分と小型なので、離島・島嶼部への輸送に軸足を置いたものだと想定される。
次の「C-2輸送機:6機」であるが、前述した短距離輸送機C-1とは異なり、中距離国際線旅客機と同程度の航続性能を持つ。C-2は世界レベルで優秀な輸送機で、舗装滑走路以外の不整地離着陸性能・短距離離着陸性能を持っているで、これは期待できる方針である。
その次の「空中給油・輸送機(KC-46A等):13機」であるが、この機体の基はボーイング767である。
ボーイング767はワイドボディの国際線用旅客機である。この機体の下半分は旅客機の場合は貨物室になっているもので、その部分に航空燃料タンクを設置し、機体尾部に空中給油装置を設置し空中給油機としたのがKC-46Aである。
客室部分にもタンクを設置すると重量的に過大となり過ぎるので、KC-46Aの機体上部はボーイング767と同様の客室となっており、空中給油以外にこれら客室部分を活用して輸送機として運用できる機体である。ただし、基の機体がボーイング767なので、不整地離着陸能力はない。
尚、別表3には輸送船舶・輸送機関係の記載は省略されている。
「機動展開能力・国民保護」のうち、「国民保護」に関しての記載は主として本文中にあるのだが、残念ながら海外在留邦人の保護への明確な言及はなかった。
実際は、タイ国で行われる多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」でタイ在住日本人駐在員家族なども参加する在外邦人救護訓練をしており、けして無視している訳ではないのだが、明確な言及はない。
これは多分、朝鮮半島有事の際の在韓邦人避難などに難色を示している韓国(*5)などの反日特定アジア諸国からの無用な難癖を避ける為であろう。
しかし、我が国は在外邦人が命の危険にさらされているにも関わらず何も出来ず、「国家が国民を守れない」という痛恨事を経験しているのだから、何があっても国民を守るとの姿勢をもっと前面に出す必要があると考える。
その痛恨事とは1985年のイラン・イラク戦争時のテヘラン脱出のことである。
イラン・イラク戦争時のテヘラン脱出は、トルコ航空による美談として残っているが、あれは、諸外国各国が自国民を脱出させる中で、我が国だけが憲法の制約で何も出来ず、万事休すの状態になった話である。(*6)
トルコ航空の英雄的行動には感謝してもしきれない程に感謝しているが、それ一色で、何故、自国で救助出来なかったのか、その理由は何か、という本質の議論はメディアを中心に意図的に避けられた。理由は簡単だ。憲法9条の制約があり、当時の我が国自衛隊が装備していた輸送機は日本列島さえも縦断できないC-1しかなかったし、在外邦人を救出しようとの発想もなかった。
「国家が国民を守る」という本質に立脚しない「報道」には意味がない。「在外邦人保護をすべきだ」との問題に対して、「平和の為には在外邦人を見捨てる」が如き意見を言う異常な言論空間が早くなくなることを願っている。
今回やっと「対GDP比1%」との呪縛から脱したのだが、国家・国民を守るとの国防の本質に立脚した検討はまだ不充分なものだと思う。多分、「1年前倒し」となり、時間がなかったのであろう。
ずっと先送りにされてきた問題をやっと実行できる様になったのは良かったと思うが、まだまだ従前の発想の範囲から出ていないとも感じる。
次が何時になるのかは分からないが、その時は、より良きものになっていることを期待する。
以上である。
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【文末脚注】
(*1):前回「資料編その3a」
↓
2023/01/18投稿:
防衛3文書について・資料編その3a・防衛力整備計画
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1726.html
【ご参考】
防衛省・自衛隊HP
表題:◆「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/
<①国家安全保障戦略>※PDF File。スマホの方は要注意
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshounss-j.pdf
<同文書に関する論考>
2023/01/04投稿:
防衛3文書について・資料編その1a・国家安全保障戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1722.html
2023/01/07投稿:
防衛3文書について・資料編その1b・国家安全保障戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1723.html
<②国家防衛戦略>※PDF File:スマホの方は要注意
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/strategy/pdf/strategy.pdf
2023/01/13投稿:
防衛3文書について・資料編その2・国家防衛戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1725.html
<同文書に関する論考>
2023/01/13投稿:
防衛3文書について・資料編その2・国家防衛戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1725.html
<③防衛力整備計画>※PDF File:スマホの方は要注意
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/plan/pdf/plan.pdf
【ご参考】
2022/12/31投稿:
防衛3文書について・総論編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1720.html
(*2):新型フリゲイトFFM
↓
2020/08/11投稿:
30FFMの命名基準を予想する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1407.html
2020/11/20投稿:
雑木林艦隊ならず・順当に河川名が命名基準となるFFM2「くまの」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1442.html
(*3):2018年12月20日午後3時頃に我が国EEZ内の日本海大和堆で韓国海軍駆逐艦「広開土大王」と北朝鮮漁船による不審な行動を発見した哨戒機として有名である。韓国海軍は、この時にP-1哨戒機に向けて射撃統制レーダを照射するとの準戦闘行為を行うとの蛮行をしたことは記憶に新しく、その後の韓国国防部・韓国海軍の嘘に嘘を重ねる矛盾だらけの言い訳には呆れたものである。
↓
2019/04/23投稿:
韓国国防部の対応は最初のウソを糊塗する、あのパターン
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1162.html
2018/12/26投稿:
「韓国の反応」は相変わらずの「あの論法」その3・レーダー照射
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1078.html
2018/12/27投稿:
射撃統制レーダー照射・防衛省発表が的確
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1079.html
2018/12/30投稿:
公開映像の分析・韓国海軍・国防部のウソが明白に(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1080.html
2018/12/31投稿:
公開映像の分析・韓国海軍・国防部のウソが明白に(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1081.html
2019/01/06投稿:
韓国国防部動画の分析・「這っても黒豆」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1084.html
2019/01/07投稿:
韓国国防部動画の分析2・やっぱし「あの論法」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1085.html
【ご参考】
2019/01/19投稿:
「「反日という名分があれば何でもできる」と思っている獣の集団」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1094.html
(*4):国防の要である戦闘機
↓
2018/07/12投稿:
国防の要・航空自衛隊新戦闘機
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-979.html
2020/11/11投稿:
F-2後継機正式契約を歓迎する・空の時代の国防の要
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1439.html
【ご参考】
2018/12/07 20:06
新防衛大綱を報じる記事・雑感2・(買い替え需要は軍拡にあらず)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1068.html
(*5):朝鮮半島有事の際の在韓邦人避難などに難色を示している韓国
↓
2022/12/21投稿:
未だに「韓国の許可が必要」との観念論を言い張る韓国
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1717.html
2020/12/23投稿:
韓国紙報道・北朝鮮が自衛隊の在外邦人救出演習を批判・相変わらずの難癖
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1451.html
【ご参考】
2017/09/07投稿:
再度・朝鮮半島有事の際の在韓邦人保護
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-747.html
2018/01/29投稿:
邦人退避・元護衛艦隊司令の見る朝鮮半島有事1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-853.html
2017/11/23投稿:
邦人退避計画問題点の現状・朝鮮半島有事対応2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-808.html
2017/11/24投稿:
在韓外国人の避難先・朝鮮半島有事対応3
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-809.html
(*6):イラン・イラク戦争時のテヘラン脱出は、トルコ航空による美談として残っているが、あれは、諸外国各国が自国民を脱出させる中で、我が国だけが憲法の制約で何も出来ず、万事休すの状態になった話である。
↓
2017/04/14投稿:
「いかなる事態でも国民守り抜く」安倍首相
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-648.html
2017/01/30投稿:
自民党改憲草案・第25条の3の紹介
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-593.html
2015/11/12投稿:
【コラム】在外国民の保護
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-261.html
2015/02/21投稿:
【コラム】在外邦人保護に反対してる人は鬼畜
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-29.html
【ご参考】
2015/11/12投稿:
【緊急投稿】アフガンへの救援機派遣を批判する冷酷なる共産党
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1549.html
2021/10/04 21:39
在外邦人保護の更なる法的整備が必要・カブール&テヘランを繰り返さぬ為に
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1569.html
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副題:国家・国民を守る為に必要な装備は何か。どの様な装備をどの様な理由で整備するのか。それをまとめたのが防衛力整備計画である。
防衛力整備計画の「7つの重視分野」のうち、重要な最初の2つの紹介・説明だけで記述が長くなってしまったことから、前回「資料編その3a」(*1)は途中で項を分けることとなった。
今回はその続きである。とは言え、最初の2つ以外は未確定事項が多い研究段階であったり、運用方法の革新であったりで、重要だが地味な話が続く。
尚、本稿の論拠・ソース等に関しては前回の文末脚注にurlリンクを貼ってあるので、適宜、それらを参照していただきたい。
防衛力整備計画の別表・どの様な装備をどの様な理由で整備するのか
無人アセット防衛能力
「無人アセット」とは①遠隔操縦をする無人の移動体、及び②自律運航する無人移動体のことである。一言で言えば②のドローンのことだと考えて大きな間違いはない。
ウクライナでの戦闘でドローンが有用装備であることは実戦証明(Battle Proof)されており、所謂「兵士の命の値段」が高い我が国の情勢からは、大いに活用すべき装備だと考える。
本文中にも「人口減少と少子高齢化を踏まえ、無人化・省人化・最適化を徹底していく。」との方針が示されており、今後益々無人機関係は増大していくものと考えられる。
尚、無人アセット防衛能力に関しては略語が都度登場するので、最初にその意味を紹介しておく。
↓
UAV(Unmanned Aerial Vehicle)=無人航空機
USV(Unmanned Surface Vehicle=無人水上艇
UGV(Unmanned Ground Vehicle)=無人地上車両
UUV(Unmanned Undersea Vehicle)=無人水中航走体
防衛力整備計画・別表1での無人アセット防衛能力の5年以内の達成目標は「無人機(UAV)の活用を拡大し、実践的に運用する能力を強化」であり、おおむね10年後の目標は「無人アセットの複数同時制御能力等を強化」である。
要するに、現状では、まだ緒に就いた段階だと言える。
5年後までに揃える装備が記載されている別表2には、「各種UAV、USV、UGV、UUV」との記載があるだけで、その数量は未定である。
おおむね10年後とのタイムスパンで書かれている別表3には部隊規模が記載されており、以下の様に陸海空各自衛隊に無人機部隊が置かれ運用されることを目指している。
↓
陸上自衛隊無人機部隊:1個多用途無人航空機部隊
海上自衛隊無人機部隊:2個隊 航空自衛隊無人機部隊:1個飛行隊
本文中には、これら各種無人アセットの利用・運用について以下の様な記述があるので、紹介しておく。
↓
・早期に整備する。その整備に当たっては、安全性の確保と効果的な任務遂行の両立を図るものとする。
・隙のない情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング施するため、洋上監視に資する滞空型無人機及び艦載型の無人アセットや相手の脅威圏内において目標情報を継続的に収集し得る偵察用無人機のほか、用途に応じた様々な情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング用無人アセットを整備する。
・離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機の導入について検討
・我が国への侵攻を阻止・排除するため、空中から人員・車両・艦艇等を捜索・識別し、迅速に目標に対処することが可能となるよう、各種攻撃機能を効果的に保持した多用途/攻撃用無人機及び小型攻撃用無人機を整備する。
・艦艇と連携し、効果的に各種作戦運用が可能な無人水上航走体を開発・整備する。また、水中優勢を獲得するための各種無人水中航走体を整備する。
・駐屯地・基地等や重要施設の警備及び防護体制の効率化を図る(無人車両と無人機を効果的に組み合わる)
領域横断作戦能力
領域横断作戦能力とは、従前の陸海空のみにとどまらず、宇宙空間及びサイバー空間を含む、より広範囲な領域における国防活動を実施できる能力のことであるが、防衛力整備計画の領域横断作戦能力に関する記述を読むと、従前の陸海空領域での作戦遂行力の強化・統合やスタンド・オフ防衛能力を発揮する為の地理的拡大も含まれているものである。
別表1の領域横断作戦能力の5年以内の達成目標としは「宇宙領域把握能力、サイバーセキュリティ能力、電磁波能力等を強化」と「領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化」の2点が掲げられている。
また、おおむね10年後の目標としては「宇宙作戦能力を更に強化」「自衛隊以外の組織へのサイバーセキュリティ支援を強化」「無人機と連携する陸海空能力を強化」の3点が掲げられている。
別表2には、5年後までに揃える装備が記載されているのだが「領域横断作戦能力」に関しては通常の新規取得装備で記載されているので混乱するかもしれないが、これは上記した別表1の「領域横断作戦の基本となる陸・海・空の領域の能力を強化」に該当するものとして記載されているものと理解すべきであろう。
↓
<別表2・「領域横断作戦能力」部分から抜粋引用開始>
・護衛艦:12 隻
・潜水艦:5 隻
・哨戒艦:10 隻
・固定翼哨戒機(P-1):19 機
・戦闘機(F-35A):40 機
・戦闘機(F-35B):25 機
・戦闘機(F-15)の能力向上:54 機
・スタンド・オフ電子戦機:1 機
・ネットワーク電子戦システム(NEWS):2 式
<引用終わり>
先ず最初の「護衛艦:12隻」だが、以前の中期防に比して、隻数が従前の中期防に比してかなり多くなっている。
これは30大綱でも明示されていた新型フリゲイトFFM(*2)の短期での大量導入(毎年2隻ペース)が表れているものだと考えられる。
「毎年2隻」なのだから5年間で10隻となるものだが、12隻が計画されている。
これは多分、前回「資料編その3a」の「統合防空ミサイル防衛能力」で言及した、現有8隻のDDGイージス艦の10隻体制化の為の2隻であろう。
次の「潜水艦:5隻」は「毎年1隻の新造」との以前からの方針を継承するものであろう。
その次の「哨戒艦:10隻」は、従前にはなかった新艦種の導入計画である、
もれ聞こえてくる話では、全長約95m、配水量約1,900ton、速力20knot、主武装30mm機関砲、乗員約40人とするもので、従来の護衛艦やミサイル高速艇や旧魚雷艇の様な防衛戦闘を実施する艦艇ではないことが分かる。
主武装が海保の巡視船と同程度の30mmであり、他国の戦闘艦艇と対峙することを考えていないことが分かる。パトカーや白バイではない、軽自動車パトカーの様な位置付けだと思われる。
その一方、1,900tonとの大きさは先の大戦の駆逐艦と同じぐらいだが、乗員40人との省人化設計であり、島嶼部やその近海でのそれなりの長期にわたる哨戒を可能にするものだと推測される。この推測からは、この艦艇はレーダや通信機器等の電子機器を重視したものになるのではないかと思われる。
その次のP-1哨戒機:19 機は、老朽化したP-3Cの代替だと思われる。
P-1哨戒機と言えば、2018年12月20日午後3時頃に我が国EEZ内の日本海大和堆で韓国海軍駆逐艦「広開土大王」と北朝鮮漁船による不審な行動を発見した哨戒機として有名である。韓国海軍は、この時にP-1哨戒機に向けて射撃統制レーダを照射するとの準戦闘行為を行うとの蛮行をしたことは記憶に新しく、その後の韓国国防部・韓国海軍の嘘に嘘を重ねる矛盾だらけの言い訳には呆れたものである。(*3)
ここ迄は海上自衛隊の装備であるが、次からは航空自衛隊の装備となる。
「戦闘機(F-35A):40 機」と「戦闘機(F-35B):25 機」を今後5年間で調達するものであるが、このうちF-35Aは米軍では空軍型とされる通常の地上滑走路を用いるF-35である。F-35Bの方は、米軍では海兵隊が全通甲板型揚陸艦(素人が見たら空母と誤認する外形をしている)での運用が可能な様に、短距離発艦・垂直着艦(STOVL)が出来るタイプでのある。我が国では、全通甲板型護衛艦のいずも型(いずも&かがの2隻)での運用及び長い滑走路が確保できない場所での運用を目的に導入するものである。
次の「F-15の能力向上:54 機」だが、長らく我が国の空の守りの中核であったF-15戦闘機だが、さすがに最初の導入から40数年が経過しており、非ステルス機世代最強の戦闘機であったF-15(213機)も、その半数が近代化改修に適さず退役が決まっている。
そして、近代化改修をすでに済ませた機体であっても、電子機器が向上しステルス機を中心とした現状に於いては、そのままでは不充分なので能力向上が必要になっているものである。F-15自体の飛行性能は素晴らしいので、能力向上策は妥当なものだと考えている。
国防の要である戦闘機(*4)に関しては、本文中に以下の記述があるので、それを紹介しておく。
↓
<戦闘機関係抜粋引用開始>
・近代化改修に適さないF-15についてはF-35A及びF-35Bへの代替ペースを加速させる。
・近代化改修を行ったF-15については電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を引き続き行う。
・F-2については、スタンド・オフ防衛能力の強化の観点から、12 式地対艦誘導弾能力向上型の搭載能力等を付与する。
・次期戦闘機についてはF-2の退役が見込まれる 2035 年度までに、将来にわたって航空優勢を確保・維持することが可能な戦闘機を配備できるよう、改修の自由や同盟国との相互運用性を確保しつつ、英国及びイタリアと次期戦闘機の共同開発を推進する。
・新戦闘機には、無人機等を含むシステムについても、国際協力を視野に開発に取り組む。
<引用終わり>
その次の「スタンド・オフ電子戦機:1 機」が何を意味しているのかは不明確で分からない。
我が国自衛隊で「電子戦機」と呼ばれるのは頭に「E」が付く機体で、海上自衛隊では哨戒機P-3Cの機体に電子戦機器を搭載したEP-3と航空自衛隊の輸送機C-1の機体に電子戦機器を搭載したEC-1があるのだが、海自のEP-3は「電子戦データ収集機」であり、むしろ「電波情報偵察機」と呼称する方が相応しい。
「電波情報偵察機」としては、次の重視分野である「指揮統制・情報関連機能」でRC-2を取得する旨が書いてある。RC-2とは川崎重工製の新輸送機C-2に電子戦機器を搭載した機体で、頭文字「R」が付いている様に偵察機である。
そうなると「スタンド・オフ電子戦機:1 機」は多分、EC-1の代替ではないかと類推されるが確信はない。本文中に「スタンド・オフ電子戦機」に関する記載がないので仕方がない。
話がちょっと逸れるがEC-1では長射程のスタンド・オフミサイルに関する電子戦を遂行できる能力は薄いと考えている。
EC-1の基の機体はC-1であるが、C-1が開発・導入されたのは1970年代初期であり、老朽化が進んでいるので、その代替機が必要な状態である。また、このC-1という機体は輸送機であるにも関わらず航続距離が短く、我が国領土の南北縦断も出来ないので滞空時間が少な過ぎて、とてもじゃないが「スタンド・オフ電子戦」を遂行することは出来ない機体である。
C-1輸送機の航続距離が極端に貧弱なのは、1970年代当時の社会党などの反日野党が、「航続距離が長い航空機は周辺国に脅威を与える」などと、攻撃力を持たない輸送機であっても日本列島を縦断できない短い航続距離の航空機しか製造・保有させなかったからだ。
この様なバカな対応のツケは、後年、テヘラン空港に取り残された日本人駐在員が払う事となったのである。詳しくは後段の「機動展開能力・国民保護」にて述べる事としたい。
別表2の「領域横断作戦能力」の最後は「ネットワーク電子戦システム(NEWS):2式」である。
NEWS(Network Electronic Warfare System)は陸上自衛隊が運用する電波の収集・分析を行う装備である。また、相手方の通信電子活動の妨害能力を有する。旧式機の代替であり、これにより離島・島嶼部でも電子戦を実行できる様になるものである。
別表2の記載内容は以上である。1
「領域横断作戦能力」については「宇宙・サイバー・電磁波を含む領域横断作戦」を実行する能力であるのだが「5年以内」とのタイムスパンの別表2には宇宙空間はまったく登場しない。
宇宙空間についてに登場するのは別表3の航空自衛隊の編成部分である。別表3のタイムスパンは「おおむね10年後」なので、かなり先になりそうであるが、空自の主要部隊として「宇宙領域専門部隊:1個隊」との記載がある。
宇宙領域に関しての本文中の記載は主として「これから研究開発します」という内容だが、以下の記載は興味深いので、それを抜粋引用して紹介する。
↓
<引用開始>
Ⅲ 自衛隊の体制等
4 航空自衛
⑵ 基幹部隊の見直し等
ク 宇宙作戦能力を強化するため、宇宙領域把握(SDA)態勢の整備を着実に推進し、将官を指揮官とする宇宙領域専門部隊を新編するとともに、航空自衛隊を航空宇宙自衛隊とする。
<引用終わり>
航空自衛隊は航空宇宙自衛隊になるのだそうだが、当方としては「地球防衛軍」だと思っている。ww
機動展開能力・国民保護
「7つの重視分野」の総てに言及してもよいのだが、文字数がかなり多くなってきたので、機動展開能力・国民保護を最後としたい。
「機動展開能力・国民保護」の基本的考え方としては数少ない自衛隊員を以て防衛する手段についての方策実現である。
我が国国土は南北に長く、かつ、数多くの島嶼部が存在している。
これら我が国の主権が及び領土・領海への侵攻を許さない事は世界共通の主権国家の責務であるが、だからと言ってたった23万人(人口比0.2%未満)の自衛官しかいないとう状態では、総ての国土にくまなく配置することは不可能である。また、その様な分散配置は遊兵化リスクが高く偽合理的ではない。
従い、侵攻されると予想される地域へ各拠点からの迅速なる配備が出来る体制を以て対処することになるのである。それを実現化する為に、自衛隊自体の輸送能力の強化、民間フェリーの活用、島嶼部の港湾・空港設備の強化、補給拠点の強化などが掲げられている。
これらの実現化時期として、別表1での5年以内での目標としては、「自衛隊の輸送アセットの強化、PF1船舶の活用等により、輸送・補給能力を強化(部隊展開・国民保護)」との記載がある。
PF1船舶とはPFI(Private Finance Initiative)で建造したカーフェリーのことで、それを有事または演習時にリースして自衛隊員等の人員や軽車両他の移動に利用するものである。
一方、別表1の「機動展開能力・国民保護」の「おおむね10年後」については「輸送能力を更に強化」、「補給拠点の改善等により、輸送・補給を迅速化」と記載されている。
この分野ではあまり目新しい記載はないが、前回紹介した「無人アセット防衛能力」の中に、補給に関して「広域に分散展開した部隊、離隔した基地、艦艇等への迅速な補給品の輸送を実施するため、輸送用無人機(UAV)の導入について検討の上、必要な措置を講じる。」との記載があり、その様な策を以て「輸送・補給能力を強化」するものと理解できる。
クロネコヤマトや日通のドローン配達に負けていられないということであろう。
地味ではあるが「正面装備編重・ロジスティックス軽視」では、我が国の防衛線が「第二のインパール作戦」になりかねないので、「輸送・補給能力を強化」を重視分野にすることは高く評価できる。
「機動展開能力・国民保護」を実現化する為の装備として別表2で掲げられているのは、以下の船舶・航空機である。
↓
<別表2・「機動展開能力・国民保護」部分から抜粋引用開始>
・輸送船舶:8隻
・輸送機(C-2):6機
・空中給油・輸送機(KC-46A等):13機
<引用終わり>
輸送船舶に関しては、本文中に「輸送船舶(中型級船舶(LSV)、小型級船舶(LCU)及び機動舟艇」との記載がある。
これら輸送船に関しては、艦船系でもっとも詳しい月刊誌「世界の艦船」にも詳細情報は載っておらず、せいぜいが輸送船舶(中型級船舶(LSV)が1,700~2,000ton程度、小型級船舶(LCU)が350~400ton程度の予測記事しかない。
尚、我が国海上自衛隊の輸送艦といえば8,900tonのおおすみ型輸送艦であるが、本文中に書かれた両船舶は随分と小型なので、離島・島嶼部への輸送に軸足を置いたものだと想定される。
次の「C-2輸送機:6機」であるが、前述した短距離輸送機C-1とは異なり、中距離国際線旅客機と同程度の航続性能を持つ。C-2は世界レベルで優秀な輸送機で、舗装滑走路以外の不整地離着陸性能・短距離離着陸性能を持っているで、これは期待できる方針である。
その次の「空中給油・輸送機(KC-46A等):13機」であるが、この機体の基はボーイング767である。
ボーイング767はワイドボディの国際線用旅客機である。この機体の下半分は旅客機の場合は貨物室になっているもので、その部分に航空燃料タンクを設置し、機体尾部に空中給油装置を設置し空中給油機としたのがKC-46Aである。
客室部分にもタンクを設置すると重量的に過大となり過ぎるので、KC-46Aの機体上部はボーイング767と同様の客室となっており、空中給油以外にこれら客室部分を活用して輸送機として運用できる機体である。ただし、基の機体がボーイング767なので、不整地離着陸能力はない。
尚、別表3には輸送船舶・輸送機関係の記載は省略されている。
「機動展開能力・国民保護」のうち、「国民保護」に関しての記載は主として本文中にあるのだが、残念ながら海外在留邦人の保護への明確な言及はなかった。
実際は、タイ国で行われる多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」でタイ在住日本人駐在員家族なども参加する在外邦人救護訓練をしており、けして無視している訳ではないのだが、明確な言及はない。
これは多分、朝鮮半島有事の際の在韓邦人避難などに難色を示している韓国(*5)などの反日特定アジア諸国からの無用な難癖を避ける為であろう。
しかし、我が国は在外邦人が命の危険にさらされているにも関わらず何も出来ず、「国家が国民を守れない」という痛恨事を経験しているのだから、何があっても国民を守るとの姿勢をもっと前面に出す必要があると考える。
その痛恨事とは1985年のイラン・イラク戦争時のテヘラン脱出のことである。
イラン・イラク戦争時のテヘラン脱出は、トルコ航空による美談として残っているが、あれは、諸外国各国が自国民を脱出させる中で、我が国だけが憲法の制約で何も出来ず、万事休すの状態になった話である。(*6)
トルコ航空の英雄的行動には感謝してもしきれない程に感謝しているが、それ一色で、何故、自国で救助出来なかったのか、その理由は何か、という本質の議論はメディアを中心に意図的に避けられた。理由は簡単だ。憲法9条の制約があり、当時の我が国自衛隊が装備していた輸送機は日本列島さえも縦断できないC-1しかなかったし、在外邦人を救出しようとの発想もなかった。
「国家が国民を守る」という本質に立脚しない「報道」には意味がない。「在外邦人保護をすべきだ」との問題に対して、「平和の為には在外邦人を見捨てる」が如き意見を言う異常な言論空間が早くなくなることを願っている。
最後に
今回やっと「対GDP比1%」との呪縛から脱したのだが、国家・国民を守るとの国防の本質に立脚した検討はまだ不充分なものだと思う。多分、「1年前倒し」となり、時間がなかったのであろう。
ずっと先送りにされてきた問題をやっと実行できる様になったのは良かったと思うが、まだまだ従前の発想の範囲から出ていないとも感じる。
次が何時になるのかは分からないが、その時は、より良きものになっていることを期待する。
以上である。
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【文末脚注】
(*1):前回「資料編その3a」
↓
2023/01/18投稿:
防衛3文書について・資料編その3a・防衛力整備計画
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1726.html
【ご参考】
防衛省・自衛隊HP
表題:◆「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/
<①国家安全保障戦略>※PDF File。スマホの方は要注意
https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshounss-j.pdf
<同文書に関する論考>
2023/01/04投稿:
防衛3文書について・資料編その1a・国家安全保障戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1722.html
2023/01/07投稿:
防衛3文書について・資料編その1b・国家安全保障戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1723.html
<②国家防衛戦略>※PDF File:スマホの方は要注意
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/strategy/pdf/strategy.pdf
2023/01/13投稿:
防衛3文書について・資料編その2・国家防衛戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1725.html
<同文書に関する論考>
2023/01/13投稿:
防衛3文書について・資料編その2・国家防衛戦略
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1725.html
<③防衛力整備計画>※PDF File:スマホの方は要注意
https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/plan/pdf/plan.pdf
【ご参考】
2022/12/31投稿:
防衛3文書について・総論編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1720.html
(*2):新型フリゲイトFFM
↓
2020/08/11投稿:
30FFMの命名基準を予想する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1407.html
2020/11/20投稿:
雑木林艦隊ならず・順当に河川名が命名基準となるFFM2「くまの」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1442.html
(*3):2018年12月20日午後3時頃に我が国EEZ内の日本海大和堆で韓国海軍駆逐艦「広開土大王」と北朝鮮漁船による不審な行動を発見した哨戒機として有名である。韓国海軍は、この時にP-1哨戒機に向けて射撃統制レーダを照射するとの準戦闘行為を行うとの蛮行をしたことは記憶に新しく、その後の韓国国防部・韓国海軍の嘘に嘘を重ねる矛盾だらけの言い訳には呆れたものである。
↓
2019/04/23投稿:
韓国国防部の対応は最初のウソを糊塗する、あのパターン
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1162.html
2018/12/26投稿:
「韓国の反応」は相変わらずの「あの論法」その3・レーダー照射
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1078.html
2018/12/27投稿:
射撃統制レーダー照射・防衛省発表が的確
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1079.html
2018/12/30投稿:
公開映像の分析・韓国海軍・国防部のウソが明白に(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1080.html
2018/12/31投稿:
公開映像の分析・韓国海軍・国防部のウソが明白に(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1081.html
2019/01/06投稿:
韓国国防部動画の分析・「這っても黒豆」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1084.html
2019/01/07投稿:
韓国国防部動画の分析2・やっぱし「あの論法」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1085.html
【ご参考】
2019/01/19投稿:
「「反日という名分があれば何でもできる」と思っている獣の集団」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1094.html
(*4):国防の要である戦闘機
↓
2018/07/12投稿:
国防の要・航空自衛隊新戦闘機
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-979.html
2020/11/11投稿:
F-2後継機正式契約を歓迎する・空の時代の国防の要
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1439.html
【ご参考】
2018/12/07 20:06
新防衛大綱を報じる記事・雑感2・(買い替え需要は軍拡にあらず)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1068.html
(*5):朝鮮半島有事の際の在韓邦人避難などに難色を示している韓国
↓
2022/12/21投稿:
未だに「韓国の許可が必要」との観念論を言い張る韓国
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1717.html
2020/12/23投稿:
韓国紙報道・北朝鮮が自衛隊の在外邦人救出演習を批判・相変わらずの難癖
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1451.html
【ご参考】
2017/09/07投稿:
再度・朝鮮半島有事の際の在韓邦人保護
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-747.html
2018/01/29投稿:
邦人退避・元護衛艦隊司令の見る朝鮮半島有事1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-853.html
2017/11/23投稿:
邦人退避計画問題点の現状・朝鮮半島有事対応2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-808.html
2017/11/24投稿:
在韓外国人の避難先・朝鮮半島有事対応3
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-809.html
(*6):イラン・イラク戦争時のテヘラン脱出は、トルコ航空による美談として残っているが、あれは、諸外国各国が自国民を脱出させる中で、我が国だけが憲法の制約で何も出来ず、万事休すの状態になった話である。
↓
2017/04/14投稿:
「いかなる事態でも国民守り抜く」安倍首相
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-648.html
2017/01/30投稿:
自民党改憲草案・第25条の3の紹介
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-593.html
2015/11/12投稿:
【コラム】在外国民の保護
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-261.html
2015/02/21投稿:
【コラム】在外邦人保護に反対してる人は鬼畜
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-29.html
【ご参考】
2015/11/12投稿:
【緊急投稿】アフガンへの救援機派遣を批判する冷酷なる共産党
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1549.html
2021/10/04 21:39
在外邦人保護の更なる法的整備が必要・カブール&テヘランを繰り返さぬ為に
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1569.html
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