たまに撃つ弾がないのが玉に傷・防衛予算が足りないままで良いのか?
副題:弾薬の在庫が少ないとの話の他に、防衛予算が限られているので、駐屯地のトイレットペーパーも充分に確保出来ず、隊員は自腹で私物のトイレットペーパーを持っているとの話も聞こえてくる。なんと情けない話であろうか。
「たまに撃つ弾がないのが玉に傷」とは随分と昔からある自衛隊自虐川柳である。
意味としては、①「たまに撃つ」=実弾射撃訓練の機会が少なく、②「弾がない」=備蓄量・在庫が少ないので撃つ数が少なく苦労する、③「のが玉に傷」=一生懸命やっているのに備蓄弾薬が少ないので防衛するのに心もとない、というものだ。
要するに、防衛予算が少なく表に出ないが本当は重要な弾薬の備蓄量を確保出来ていないというものである。
これは由々しき問題である。
そういう状態のままになっているのは、防衛費の「対GDP比1%以内」とする無意味な岩盤規制があるからだ。(*1)
「防衛費」の目的と本質
防衛費とは、国家・国民を防衛する事を可能にする為の費用であり、その主眼点は「我国を守る・国民を守る」にあるはずなのだが、我国の場合は、「国が守れるかどうか」との議論は避けられ「対GDP比1%」が「予算上限枠」として存在している。
これも「憲法の制約」と称する壁の1つである。
防衛費の本来的目的である「国民を守る」との視点よりも、「憲法の制約」が優先される状態とは、国民の命を軽視する姿勢であることを本ブログでは以前から指摘している。(*2)
「弾薬の在庫が少ない」という事を具体的に言えば、例えば、北朝鮮や中国の弾道ミサイル防衛の要であるイージズ艦は4艦隊2隻づつの8隻体制がやっと完成したが、弾道ミサイル防衛の為の迎撃ミサイルSM-3は各艦あたり数発程度しかないと言われている。
配備数は機密情報に該当し、正確な数は分からないが、北朝鮮や中国が保有し発射されるであろうと考えられる弾道ミサイル数よりも少なく、アメリカ第7艦隊の支援がなければ自衛隊は「ミサイル数」が理由で弾道ミサイル防衛が出来なくなる。
同様、日本列島に来襲してくる敵性航空機(爆撃機や戦闘爆撃機等)や艦船(強襲揚陸艦等)の近接阻止を担うF-35、F-15、F-2などの航空自衛隊の戦闘機は、搭載する空対空ミサイルや空対艦ミサイルで以て目的を達成する。従い、いくら航空機自体が無傷であっても搭載するミサイルがなければ、敵性航空機や敵性艦船の侵入を阻止できない。
機銃だけでの出撃は自殺行為であり、ミサイルの在庫枯渇を以て航空自衛隊の自衛活動は終焉する。
如何であろうか?かなりマズイ状態であることが分かると思う。
そもそも防衛力とは、むやみやたらにちょっかいを出すと手痛い反撃を被ると相手思わせ、軍事力行使や武力事態発生を未然に防止する抑止力であることが、その本質だ。
ところが弾薬の備蓄量が1週間分しかないのならば、侵攻する側は緒戦に弾薬を浪費させる陽動作戦を仕掛け、その後、抵抗力が弱体化したところで本格的な侵攻作戦を開始することになるのである。これでは抑止力としての効力が低下してしまう。
この様な弾薬の在庫が少ないとの話の他に、防衛予算が限られているので、駐屯地のトイレットペーパーも充分に確保出来ず、隊員は自腹で私物のトイレットペーパーを持っているとの話も聞こえてくる。
なんと情けない話であろうか。
外的要因の変化に対応しないことは政府の無責任に該当する
長らく軽武装だった我が国だが外的要因の変化に応じ、それに対応する必要性が増し、都度、それなりの対処をしてきた。
過去約30年を振り返れば、1993年の北朝鮮による弾道ミサイル発射に対処する為に、新型対空ミサイル装備型護衛艦にBMD能力を付与するなどの対応をしてきた。
今やBMDの中核となっているイージス艦8隻体制の嚆矢である。
その後の北朝鮮の核・弾道ミサイル開発及び多数のミサイル発射を考えれば、あの時にイージス艦にBMD能力を付与した決断は正しいものであったことは明らかである。
近隣諸国が軍事費を増大させている中で経済成長が僅かしかない我が国が「対GDP比1%」なる岩盤規制を続けることは「相対的な1人軍縮」であり、地域の軍事バランスを我が国側が崩している様なものである。
古今東西、地域の軍事バランスが崩れると、その地域で武力事態が発生するとの経験則を無視し国内の政局に阿る様な態度は国民の命を蔑ろにするものであり、それは無責任に該当する。
上記した様な弾薬備蓄量の必要数を確保できないという問題と同時に、昨今は、従前とは異なり近隣地域だけの軍事バランスだけを考慮していればよいという状態ではなくなっているのである。
別の言い方をすれば、陸海空以外の軍事バランスをも考慮すべき状態となっており、その対象としては宇宙空間とサイバー空間がある。宇宙空間及びサイバー空間での防衛が我が国の安全確保の為には必要である旨は安倍政権時にアナウンスされていたのだが、残念ながらあまり話題にならなかった。(*3)
話題にならなかったのでご存知ない方もいると思うが、新たな分野・空間での防衛を実行するのであるのだから、当然の様にそれなりの予算が必要となってくるものである。
宇宙空間及びサイバー空間での防衛の為の予算を従来の陸海空防衛予算を削って調達することは本末転倒であることは、弾薬備蓄の話やトイレットペーパー私物購入の話から分かると思う。
この様な状態なのだから、防衛費が「対GDP比1%」なる「枠」を越えるの当然の動きである。
本当のことを言っている安倍元首相
冒頭に書いた通り、防衛費の目的は「我国を守る・国民を守る」為に必要な予算である。
従い、日本人の命、平和・安寧を確保できない様な規模の予算では本末転倒である。
そういう当たり前の話をすると、左巻き勢力は「軍国主義だぁ~」とか「戦争をしたがっているぅ~」などとの頓珍漢なレッテル貼り・ネガティブキャンパーンをしてくるので、中途半端な知見・覚悟しかない政治家はこの話を避けてしまう。
そんな中で、きっちりと物事が分かった人物である安倍元首相は、特定野党や反日偏向メディアが「摘み食い批判」をしている防衛費の「対GDP比2%論」に対して「国際標準になりつつある」と本当のことを述べた。(*4)
記事にある安倍元首相の2%に関する発言部分を以下に引用する。
↓
<引用開始>
国防費を国内総生産(GDP)比2%とする北大西洋条約機構(NATO)諸国の目標に関し「国際標準となりつつある」と指摘した。
<引用終わり>
この安倍元首相の発言は、2014年9月のNATOウェールズ首脳会合での「NATO指標の対GDP比2%未達成国は10年以内に同水準に向けて引き上げる」との合意(*5)を踏まえたものである。
米ソ東西冷戦後のNATO諸国は軍備増強の必要性が薄れ、防衛費の対GDP比率は下降した。
東西冷戦時の軍事的最前線であったドイツの防衛費1960年代:4.08%、1970年代:3.16%、1980年代:2.91%レベルであったが、冷戦構造崩壊後の2010年代のドイツの防衛費は概ね1.25%程度で推移しており、2014年は1.14%迄下落していた。
ところが、2014年3月のクリミア併合後は上記した様に「対GDP比2%」へと増大することでNATO間は合意しているものである。
日本人の命、平和・安寧の確保を政治家が真面目に考えるのなら、従前からのイナーシャのままに「対GDP比1%以内」を踏襲することは無責任と言わざるをえない。
その点、安倍元首相の発言は的確だと判断している。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):防衛予算が少なく弾薬の備蓄量を確保出来ていないという由々しき問題がずっと続いているのは防衛費の「対GDP比1%以内」とする無意味な岩盤規制があるからだ。
↓
2017/07/17投稿:
国民の平和と安寧を阻害している岩盤規制
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-714.html(*2):防衛費の本来的目的である「国民を守る」との視点よりも、「憲法の制約」が優先される状態とは、国民の命を軽視する姿勢であることを本ブログでは以前から指摘している。
↓
2022/04/28投稿:
防衛予算議論の本質は「国民を守る為に必要な予算」・対GDP比について
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1641.html(*3):陸海空以外の軍事バランスをも考慮すべき状態となっており、その対象としては宇宙空間とサイバー空間がある。宇宙空間及びサイバー空間での防衛が我が国の安全確保の為には必要である旨は安倍政権時にアナウンスされていたのだが、残念ながらあまり話題にならなかった。
↓
2018/12/19投稿:
【速報】30防衛大綱・閣議決定(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1075.html2018/12/20投稿:
【速報】30防衛大綱・閣議決定(後編・装備編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1076.html(*4):安倍元首相は、特定野党や反日偏向メディアが「摘み食い批判」をしている防衛費の「対GDP比2%論」に対して「国際標準になりつつある」と本当のことを述べた。
↓
産経新聞 2022/6/12 17:08
見出し:◆安倍氏「打撃力保有は当然」 GDP比2%は国際標準
https://www.sankei.com/article/20220612-5ROOLX7YDFJB5EU6BDZ4O3QYBU/記事:○自民党の安倍晋三元首相は12日、大阪市で講演し、敵基地攻撃能力を言い換えた「反撃能力」について「打撃力を持つということだ。この時代には当然要求される」との認識を示した。国防費を国内総生産(GDP)比2%とする北大西洋条約機構(NATO)諸国の目標に関し「国際標準となりつつある」と指摘した。
○北朝鮮のミサイル技術を巡り「予想以上に進化している」と危機感を表明。その上で「抑止力は圧倒的でなければならない」と述べ、反撃能力の保有が日米同盟の強化につながると主張した。
<引用終わり>
(*5):2014年9月のNATOウェールズ首脳会合での「NATO指標の対GDP比2%未達成国は10年以内に同水準に向けて引き上げる」との合意
↓
外務省HP 平成26年9月8日
表題:◆NATOウェールズ首脳会合概要
(9月4日~5日,於:ニューポート(英国))
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/ep/page22_001428.html記事:○1.NATO軍の即応性・防衛能力の強化
(前略)
2.大西洋間の絆と責任の分担の再確認
(1)「大西洋間の絆に関するウェールズ宣言」を採択し,ロシアによる違法なクリミア併合・継続的攻撃,北アフリカと中東の暴力・過激派の拡大に備えるため,北米及び欧州の全加盟国の国民,領土,主権及び共通の価値を防衛する継続不変のコミットメントを再確認。
(2)防衛予算の反転,効果的使用と負担・責任の均衡達成のため,NATO指標の対GDP比2%未達成国は10年以内に同水準に向けて引き上げるよう目指し,防衛予算の研究開発を含む主要装備品支出充当率も20%に増額するよう目指すことに合意。
(後略)
【ご参考】
2022/04/28投稿:
防衛予算議論の本質は「国民を守る為に必要な予算」・対GDP比について
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1641.html1日1回ポチっとな ↓
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