ウクライナ情勢雑感3:ウクライナ侵攻後の着地点は?
- 2022/03/03
- 22:17
ウクライナ情勢雑感3:ウクライナ侵攻後の着地点は?
副題:武力事態が発生する時、そこには目的がある。その目的が達成されるか頓挫する時に武力事態は終結する。
先の論考「ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点」のコメント欄に「ロシアのウクライナ侵攻 この先どうなってゆくのか」とのコメント投稿があったので、現状での予測を少々述べることにする。
ロシアによるウクライナ侵攻との現象面ばかりがクローズアップされているが、「今後、どうなっていくのか」を考える時に注目すべきは、その目的である。
現在に於いて、武力進攻をした場合、国際社会から大きな批判が巻き起こることは誰もが知っていることである。
そうであるにも関わらず、ロシア大統領プーチンはウクライナに武力進攻をした。
それは、国際社会からの大きな批判やそれに伴う経済制裁などの不利益があるにも関わらず、武力進攻をしてまでも達成したい目的があるからだ。
その目的とは、先の論考「ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点」で述べた通り、ロシアにとっての安全保障の確保、「モスクワから見た地政学的限界線」の確保である。
先の論考では紹介できなかったが、プーチンはウクライナ東部(ウクライナ・ロシア国共近辺)の「国家承認」の際の2月22日未明(日本時間)の演説で、NATOの東方拡大問題について以下の様に言及している。(*1)
↓
<抜粋引用開始>
○【米国、北大西洋条約機構(NATO)との安保協議】NATOの東方拡大停止など基本的な問題に関する我々の提案には回答がなかった。我が国にとっての脅威の水準は大きく高まる。ロシアは自らの安全保障を確立するための対抗策を講じる完全な権利を持つ。
○【ウクライナのNATO加盟】ウクライナのNATO加盟とそれに続くNATOの施設の展開はすでに決まったことだと考えるあらゆる根拠がある。NATOの文書で我々は公式に、直接的に欧州大西洋の安保の主要な脅威だと宣告された。ウクライナがロシアを攻撃するためのNATOの前線基地になる。
<抜粋引用終わり>
この様に、ロシアは自国の安全保障の地政学的観点からウクライナのNATO化=西欧米国軍事同盟へのウクライナ組み込みを阻止したい、というのが目的だ。
現状でもっとも信頼性が高いと思われるウクライナ侵攻の着地点予想としては、アメリカのシンクタンクCSIS(Center for Strategic and International Studies:戦略国際問題研究所)の1月27日付レポートがある。(*2)
ロシアのウクライナ侵攻が2月24日なので、その約4週間前には侵攻を予測しているものであり、そういう意味では予測が当たっているレポートである。
同レポートには「ロシアの軍事的オプション」、即ち「何処まで占領するのか」との6つのシナリオが想定されている。同部分を以下に引用する。
尚、和訳は当方による直訳である。馴染のない地名が多々出てくいるので詳しい説明は後段にて行う。
↓
<引用開始>、
○1.Redeploy Russian ground forces away from the Ukrainian border but continue to aid pro-Russian rebels in Ukraine, conduct offensive cyber operations, and engage in other irregular activity in Ukraine and the region.
(1.ロシア陸軍をウクライナ国境から離れた場所に再配置するものの、ウクライナで親ロシア反ウクライナ政府勢力を支援し続け、攻撃的なサイバー作戦を実施し、違法活動をウクライナ国内及びその地域で実施する。)
○2.Send Russian troops into the breakaway regions of Donetsk and Luhansk.
(2.ロシア軍をドネツクとルハンシクの親ロシア派が実効支配している地域に派遣)
○3.Seize Ukraine as far west as the Dnepr River.
(3.ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領。)
○4.Seize Ukraine up to the Dnepr River and an additional belt of land to connect Russia with Transdniestria along the Black Sea.
(4.ウクライナのドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそったロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)を結ぶ地域を占領。)
○5.Seize just a belt of land between Russia and Transdniestria along the Black Sea.
(5.黒海沿岸にそってロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)の間の地域を帯状に占領。)
○6.Seize all of Ukraine.
(6.ウクライナ全土の占領。)
上記のうち○1.の「ウクライナ国内に侵攻しないで、ロシア領内から様々な工作を行う」というシナリオは既にない。侵攻済だからである。
一方、今後、ロシア軍がウクライナ領土から撤退するのかというと、その可能性は低いとみている。その理由としては、ロシアが目的を達成しないで引き下がる可能性が低いからだ。核兵器を持つロシアが自国の安全保障の観点から地政学的限界線を確保する為に起こした行動を目的未達成な状態で撤退するには、相当に不利な状態になっている必要があり、核兵器保有国ロシアが、そういう状態になる可能性が低いからである。
同様、上記○6.の「ウクライナ全土の占領」の可能性も低い。
何故ならば、わざわざNATOに加盟済みのポーランドと国境で対峙する必要性がないからである。
そうなると○2.から○5.までの4つのケースが残るのだが、ロシアのウクライナ侵攻目的である「モスクワから見た地政学的限界線」を確保するという視点からは、クリミア半島の付け根部分にも満たない○2.の 「ドネツクとルハンシク」だけを確保しても限界線に至っておらず、それで終わる可能性は少ない。
同様、○5.の「黒海沿岸にそってロシアからモルドバの間の地域を帯状に占領」も、NATOの一員であるポーランドへの縦深を確保出来ておらず、意味的には本線ではなく「従」となるものであり、これで終わる可能性は少ない。
尚、和訳では「モルドバとウクライナの国境地帯」としているが英文・原文では「Transdniestria」(トランスニストリア)である。馴染のない地名なので、この様な表記とした。モルドバとウクライナの間には未承認国家「沿ドニエストル・モルドバ共和国」があり、ロシア軍が駐留しているという。
要するに、○5.の「黒海沿岸にそってロシアからモルドバの間の地域を帯状に占領」とは、飛び地とロシア本国を結ぶもので、ウクライナの黒海へのアクセスを塞ぐとの効果はあるものの、モスクワから見た地政学的限界線とは違う話である。
そうなると、本命は、○3.の「ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領」である。
ドニエプル川はロシアに源流があり、ベラルーシを経てウクライナに流れ、チェルノブイリからキエフに南下し、キエフの東側を通り、蛇行しながらクリミア半島の西側で黒海に注ぐ川である。
蛇行が東側に偏っているが、チェリノブイリ・キエフの東・クリミア半島西側の河口とのラインは「モスクワから見た地政学的限界線」とほぼ同じだと考えているので、このラインを確保できたらロシアは戦闘を停止するであろう。
尚、○4.の「ウクライナのドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそったロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)を結ぶ地域を占領」とは、主たる「ドニエプル川までの地域」と従たる「黒海沿岸地域」の2つを制圧するもので、「主」が達成された場合、無理をしないのではないかと見ている。
「予想」のは必ずしも当たるものではない。
そうであるから、世の中には根拠不明の「予想」が氾濫する。
当方は基本的に「当て物予想」はしないのだが、今回はコメント欄に「ロシアのウクライナ侵攻 この先どうなってゆくのか」とのコメント投稿があったので、予想の根拠として「ロシアの武力進攻目的が自国の地政学的安全保障ならば、ウクライナのどのまでが非NATO化されれば良いのか」「「モスクワから見た地政学的限界線は何処なのか」の2点に基づき少々述べたものである。
参考になれば幸である。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):プーチンはウクライナ侵攻の際の2月22日未明(日本時間)の演説で、NATOの東方拡大問題について言及している。
↓
日本経済新聞 2022年2月22日 6:05
見出し:◆プーチン・ロシア大統領のテレビ演説要旨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21DCN0R20C22A2000000/
記事:○ロシアのプーチン大統領が現地時間21日夜(日本時間22日未明)、約55分間に及ぶテレビ演説で、親ロシア派武装勢力の占領地域の独立承認を表明した。主な内容は以下の通り。
○【ウクライナ】ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ。現代のウクライナは完全にロシア、正確には共産主義のロシアによってつくられた。レーニンや同志たちがロシアの歴史的領土を切り離すという方法でつくった。
○【米欧との関係】(米国は)なぜ我々を敵にしようとするのか。答えはただ1つ、問題は我々の政治体制にあるのではなく、他のことにあるのでもない。単にロシアのような大きな独立した国家が必要ないからだ。
○【米国、北大西洋条約機構(NATO)との安保協議】NATOの東方拡大停止など基本的な問題に関する我々の提案には回答がなかった。我が国にとっての脅威の水準は大きく高まる。ロシアは自らの安全保障を確立するための対抗策を講じる完全な権利を持つ。
○【ウクライナのNATO加盟】ウクライナのNATO加盟とそれに続くNATOの施設の展開はすでに決まったことだと考えるあらゆる根拠がある。NATOの文書で我々は公式に、直接的に欧州大西洋の安保の主要な脅威だと宣告された。ウクライナがロシアを攻撃するためのNATOの前線基地になる。
○【親ロシア派占領地域の独立承認】きょうの決定(独立承認)を宣言し、ロシアの国民、すべての愛国的勢力が支持してくれると確信している。(ウクライナに)直ちに軍事行動をやめるよう要求する。そうでなければ、これから続く可能性がある流血のすべての責任は完全に、ウクライナ領を統治する政治体制の良心が負うことになる。
<引用終わり>
(*2):アメリカのシンクタンクCSIS(Center for Strategic and International Studies:戦略国際問題研究所)の1月27日付レポートは、ロシアのウクライナ侵攻の2月24日の約4週間前には侵攻を予測している。
↓
Center for Strategic and International StudiesHP January 27, 2022
Title:Russia's Gamble in Ukraine
https://www.csis.org/analysis/russias-gamble-ukraine
<抜粋引用>
Russia’s goals include ending NATO expansion further eastward, rolling back NATO’s previous expansion, removing U.S. nuclear weapons from Europe, and expanding Russia’s sphere of influence. Ukraine plays a particularly important role in Moscow’s strategic calculations because Ukrainian leaders have increasingly shifted their economic, political, and military allegiances to the West. In addition, President Vladimir Putin argued in his July 2021 article titled “On the Historical Unity of Russians and Ukrainians,” which was compulsory reading for Russian forces, that Russia and Ukraine are one. “Together we have always been and will be many times stronger and more successful,” Putin wrote. “For we are one people.”1
Based on these political goals, Russia has at least six military options that it could execute:
1.Redeploy Russian ground forces away from the Ukrainian border but continue to aid pro-Russian rebels in Ukraine, conduct offensive cyber operations, and engage in other irregular activity in Ukraine and the region.
2.Send Russian troops into the breakaway regions of Donetsk and Luhansk.
3.Seize Ukraine as far west as the Dnepr River.
4.Seize Ukraine up to the Dnepr River and an additional belt of land to connect Russia with Transdniestria along the Black Sea.
5.Seize just a belt of land between Russia and Transdniestria along the Black Sea.
6.Seize all of Ukraine.
<引用終わり>
【ご参考】
2020/09/17投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1422.html
2020/09/22投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1423.html
2020/09/26投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1424.html
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副題:武力事態が発生する時、そこには目的がある。その目的が達成されるか頓挫する時に武力事態は終結する。
先の論考「ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点」のコメント欄に「ロシアのウクライナ侵攻 この先どうなってゆくのか」とのコメント投稿があったので、現状での予測を少々述べることにする。
ロシアの侵攻目的
ロシアによるウクライナ侵攻との現象面ばかりがクローズアップされているが、「今後、どうなっていくのか」を考える時に注目すべきは、その目的である。
現在に於いて、武力進攻をした場合、国際社会から大きな批判が巻き起こることは誰もが知っていることである。
そうであるにも関わらず、ロシア大統領プーチンはウクライナに武力進攻をした。
それは、国際社会からの大きな批判やそれに伴う経済制裁などの不利益があるにも関わらず、武力進攻をしてまでも達成したい目的があるからだ。
その目的とは、先の論考「ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点」で述べた通り、ロシアにとっての安全保障の確保、「モスクワから見た地政学的限界線」の確保である。
先の論考では紹介できなかったが、プーチンはウクライナ東部(ウクライナ・ロシア国共近辺)の「国家承認」の際の2月22日未明(日本時間)の演説で、NATOの東方拡大問題について以下の様に言及している。(*1)
↓
<抜粋引用開始>
○【米国、北大西洋条約機構(NATO)との安保協議】NATOの東方拡大停止など基本的な問題に関する我々の提案には回答がなかった。我が国にとっての脅威の水準は大きく高まる。ロシアは自らの安全保障を確立するための対抗策を講じる完全な権利を持つ。
○【ウクライナのNATO加盟】ウクライナのNATO加盟とそれに続くNATOの施設の展開はすでに決まったことだと考えるあらゆる根拠がある。NATOの文書で我々は公式に、直接的に欧州大西洋の安保の主要な脅威だと宣告された。ウクライナがロシアを攻撃するためのNATOの前線基地になる。
<抜粋引用終わり>
この様に、ロシアは自国の安全保障の地政学的観点からウクライナのNATO化=西欧米国軍事同盟へのウクライナ組み込みを阻止したい、というのが目的だ。
ウクライナ侵攻の着地点予想
現状でもっとも信頼性が高いと思われるウクライナ侵攻の着地点予想としては、アメリカのシンクタンクCSIS(Center for Strategic and International Studies:戦略国際問題研究所)の1月27日付レポートがある。(*2)
ロシアのウクライナ侵攻が2月24日なので、その約4週間前には侵攻を予測しているものであり、そういう意味では予測が当たっているレポートである。
同レポートには「ロシアの軍事的オプション」、即ち「何処まで占領するのか」との6つのシナリオが想定されている。同部分を以下に引用する。
尚、和訳は当方による直訳である。馴染のない地名が多々出てくいるので詳しい説明は後段にて行う。
↓
<引用開始>、
○1.Redeploy Russian ground forces away from the Ukrainian border but continue to aid pro-Russian rebels in Ukraine, conduct offensive cyber operations, and engage in other irregular activity in Ukraine and the region.
(1.ロシア陸軍をウクライナ国境から離れた場所に再配置するものの、ウクライナで親ロシア反ウクライナ政府勢力を支援し続け、攻撃的なサイバー作戦を実施し、違法活動をウクライナ国内及びその地域で実施する。)
○2.Send Russian troops into the breakaway regions of Donetsk and Luhansk.
(2.ロシア軍をドネツクとルハンシクの親ロシア派が実効支配している地域に派遣)
○3.Seize Ukraine as far west as the Dnepr River.
(3.ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領。)
○4.Seize Ukraine up to the Dnepr River and an additional belt of land to connect Russia with Transdniestria along the Black Sea.
(4.ウクライナのドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそったロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)を結ぶ地域を占領。)
○5.Seize just a belt of land between Russia and Transdniestria along the Black Sea.
(5.黒海沿岸にそってロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)の間の地域を帯状に占領。)
○6.Seize all of Ukraine.
(6.ウクライナ全土の占領。)
上記のうち○1.の「ウクライナ国内に侵攻しないで、ロシア領内から様々な工作を行う」というシナリオは既にない。侵攻済だからである。
一方、今後、ロシア軍がウクライナ領土から撤退するのかというと、その可能性は低いとみている。その理由としては、ロシアが目的を達成しないで引き下がる可能性が低いからだ。核兵器を持つロシアが自国の安全保障の観点から地政学的限界線を確保する為に起こした行動を目的未達成な状態で撤退するには、相当に不利な状態になっている必要があり、核兵器保有国ロシアが、そういう状態になる可能性が低いからである。
同様、上記○6.の「ウクライナ全土の占領」の可能性も低い。
何故ならば、わざわざNATOに加盟済みのポーランドと国境で対峙する必要性がないからである。
そうなると○2.から○5.までの4つのケースが残るのだが、ロシアのウクライナ侵攻目的である「モスクワから見た地政学的限界線」を確保するという視点からは、クリミア半島の付け根部分にも満たない○2.の 「ドネツクとルハンシク」だけを確保しても限界線に至っておらず、それで終わる可能性は少ない。
同様、○5.の「黒海沿岸にそってロシアからモルドバの間の地域を帯状に占領」も、NATOの一員であるポーランドへの縦深を確保出来ておらず、意味的には本線ではなく「従」となるものであり、これで終わる可能性は少ない。
尚、和訳では「モルドバとウクライナの国境地帯」としているが英文・原文では「Transdniestria」(トランスニストリア)である。馴染のない地名なので、この様な表記とした。モルドバとウクライナの間には未承認国家「沿ドニエストル・モルドバ共和国」があり、ロシア軍が駐留しているという。
要するに、○5.の「黒海沿岸にそってロシアからモルドバの間の地域を帯状に占領」とは、飛び地とロシア本国を結ぶもので、ウクライナの黒海へのアクセスを塞ぐとの効果はあるものの、モスクワから見た地政学的限界線とは違う話である。
そうなると、本命は、○3.の「ウクライナ西側のドニエプル川までの地域を占領」である。
ドニエプル川はロシアに源流があり、ベラルーシを経てウクライナに流れ、チェルノブイリからキエフに南下し、キエフの東側を通り、蛇行しながらクリミア半島の西側で黒海に注ぐ川である。
蛇行が東側に偏っているが、チェリノブイリ・キエフの東・クリミア半島西側の河口とのラインは「モスクワから見た地政学的限界線」とほぼ同じだと考えているので、このラインを確保できたらロシアは戦闘を停止するであろう。
尚、○4.の「ウクライナのドニエプル川までの地域を占領し、かつ、黒海沿岸にそったロシアとトランスニストリア(モルドバとウクライナの国境地帯)を結ぶ地域を占領」とは、主たる「ドニエプル川までの地域」と従たる「黒海沿岸地域」の2つを制圧するもので、「主」が達成された場合、無理をしないのではないかと見ている。
着地点予想の根拠は「モスクワから見た地政学的限界線」
「予想」のは必ずしも当たるものではない。
そうであるから、世の中には根拠不明の「予想」が氾濫する。
当方は基本的に「当て物予想」はしないのだが、今回はコメント欄に「ロシアのウクライナ侵攻 この先どうなってゆくのか」とのコメント投稿があったので、予想の根拠として「ロシアの武力進攻目的が自国の地政学的安全保障ならば、ウクライナのどのまでが非NATO化されれば良いのか」「「モスクワから見た地政学的限界線は何処なのか」の2点に基づき少々述べたものである。
参考になれば幸である。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):プーチンはウクライナ侵攻の際の2月22日未明(日本時間)の演説で、NATOの東方拡大問題について言及している。
↓
日本経済新聞 2022年2月22日 6:05
見出し:◆プーチン・ロシア大統領のテレビ演説要旨
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR21DCN0R20C22A2000000/
記事:○ロシアのプーチン大統領が現地時間21日夜(日本時間22日未明)、約55分間に及ぶテレビ演説で、親ロシア派武装勢力の占領地域の独立承認を表明した。主な内容は以下の通り。
○【ウクライナ】ウクライナは単なる隣国ではない。我々自身の歴史、文化、精神的空間の切り離しがたい一部なのだ。現代のウクライナは完全にロシア、正確には共産主義のロシアによってつくられた。レーニンや同志たちがロシアの歴史的領土を切り離すという方法でつくった。
○【米欧との関係】(米国は)なぜ我々を敵にしようとするのか。答えはただ1つ、問題は我々の政治体制にあるのではなく、他のことにあるのでもない。単にロシアのような大きな独立した国家が必要ないからだ。
○【米国、北大西洋条約機構(NATO)との安保協議】NATOの東方拡大停止など基本的な問題に関する我々の提案には回答がなかった。我が国にとっての脅威の水準は大きく高まる。ロシアは自らの安全保障を確立するための対抗策を講じる完全な権利を持つ。
○【ウクライナのNATO加盟】ウクライナのNATO加盟とそれに続くNATOの施設の展開はすでに決まったことだと考えるあらゆる根拠がある。NATOの文書で我々は公式に、直接的に欧州大西洋の安保の主要な脅威だと宣告された。ウクライナがロシアを攻撃するためのNATOの前線基地になる。
○【親ロシア派占領地域の独立承認】きょうの決定(独立承認)を宣言し、ロシアの国民、すべての愛国的勢力が支持してくれると確信している。(ウクライナに)直ちに軍事行動をやめるよう要求する。そうでなければ、これから続く可能性がある流血のすべての責任は完全に、ウクライナ領を統治する政治体制の良心が負うことになる。
<引用終わり>
(*2):アメリカのシンクタンクCSIS(Center for Strategic and International Studies:戦略国際問題研究所)の1月27日付レポートは、ロシアのウクライナ侵攻の2月24日の約4週間前には侵攻を予測している。
↓
Center for Strategic and International StudiesHP January 27, 2022
Title:Russia's Gamble in Ukraine
https://www.csis.org/analysis/russias-gamble-ukraine
<抜粋引用>
Russia’s goals include ending NATO expansion further eastward, rolling back NATO’s previous expansion, removing U.S. nuclear weapons from Europe, and expanding Russia’s sphere of influence. Ukraine plays a particularly important role in Moscow’s strategic calculations because Ukrainian leaders have increasingly shifted their economic, political, and military allegiances to the West. In addition, President Vladimir Putin argued in his July 2021 article titled “On the Historical Unity of Russians and Ukrainians,” which was compulsory reading for Russian forces, that Russia and Ukraine are one. “Together we have always been and will be many times stronger and more successful,” Putin wrote. “For we are one people.”1
Based on these political goals, Russia has at least six military options that it could execute:
1.Redeploy Russian ground forces away from the Ukrainian border but continue to aid pro-Russian rebels in Ukraine, conduct offensive cyber operations, and engage in other irregular activity in Ukraine and the region.
2.Send Russian troops into the breakaway regions of Donetsk and Luhansk.
3.Seize Ukraine as far west as the Dnepr River.
4.Seize Ukraine up to the Dnepr River and an additional belt of land to connect Russia with Transdniestria along the Black Sea.
5.Seize just a belt of land between Russia and Transdniestria along the Black Sea.
6.Seize all of Ukraine.
<引用終わり>
【ご参考】
2020/09/17投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1422.html
2020/09/22投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1423.html
2020/09/26投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1424.html
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