ウクライナ情勢雑感1:地政学的視点
副題:ロシアのウクライナ侵攻への評価でもっとも的確かつ全地球的視点で語っているのは安倍元首相。
2022年2月24日、ロシアはウクライナに軍事侵攻をした。
2014年3月のクリミア半島併合から8年経っているが、やはりモスクワから見た地政学的限界線からは、今般の様な事態に至るのはある程度予想されるものであったと思う。
この様な事を書いても、「モスクワから見た地政学的限界線」との概念がないと、何を言っているのか分からないと思う。
従い、論考は相当な長文となることから、投稿を躊躇っていたのだが、安倍元首相がテレビ番組で簡素に説明しているので、それを紹介したい。
そのテレビ番組とは、フジテレビの日曜報道 THE PRIMEである。
同番組の動画は有料らしくYouTube他で発見できていないが
ツイッターで肝心な部分の動画を発見した(*1)ので、その動画の文字起こしを以下に紹介する。
↓
<ツイッター埋め込み動画の文字起こし開始>
○司会者:過去、そのまぁ、安倍さんがプーチン大統領と会談した中で、NATOの東方拡大への不満みたいなものを洩らしたことは・・・
○安倍元首相:米露関係を語る時にですね、基本的な不信感を米国に対して持っているんですね。
それはやはり、NATOを拡大しないはずだったのにどんどん拡大をし、ポーランドにはTHAADミサイルまで配備をしているではないか、ということなんですね。
まぁそういう基本的不信感の中でですね、プーチンとしては領土的野心ではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保、という観点から行動を起こしているということだろうと思います。
勿論、それを私は正当化しているわけではありませんし、彼がどう考えているかということを正確に把握する必要があると思います。
○司会者:過去の発言の中に、そういうニュアンスの発言、やっぱりNATOが約束を守ってないじゃないかというニュアンスの発言があった?
○安倍元首相:それは何度か、二人だけの時には、そういう発言がありました。ですからそういう思いは、何回かありましたので、そういう思いは強いんだろうとおもいます。
<文字起こし終わり>
安倍元首相が言っている事のポイントは【プーチンとしては領土的野心ではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保、という観点から行動を起こしているということだろうと思います。】の部分である。
この事は、このテレビ番組での安倍元首相の発言を記事にした読売新聞ニュース(*2)でも、以下の様に報じられている。
↓
<抜粋引用開始>
ロシアのプーチン大統領が安倍氏にNATOの東方拡大への不満を伝えていたことも明らかにした。
<引用終わり>
また、このテレビ番組での安倍元首相の別の場面での発言を記事にしたニュースでは、安倍元首相は以下の様な発言もしている。(*3)
↓
<抜粋引用開始>
「・・なぜプーチンがウクライナに侵略、侵攻したかをきちんと分析しながら彼の意図をつかみながら、その上で説得していくことを求められているんだろうなと思います」
<引用終わり>
ロシア西方の地図を見ていただければ分かると思うが、モスクワから見れば、その西方にはフランスやドイツがある。モスクワは、ナポレオンには蹂躙され、ヒットラーには直前まで迫られた歴史を持つ。
先の大戦時、スターリンはルーズベルト・チャーチルの失政に乗じてバルト三国を併呑むし、東欧諸国を戦力圏内に収めた。(*4)
冷戦時、ソ連は東欧を衛星国にしたことで、西側諸国と対峙する縦深地を手に入れたのである。一方、大戦以前からソ連邦の一部であったのがベレルーシ・ウクライナである。
冷戦終結後、東欧諸国はソ連圏を脱し、ソ連邦の一部であったバルト三国は独立した。
モスクワから見れば、ポーランド以西の縦深陣地を失った訳だ。
東欧諸国は、冷戦時はワルシャワ機構軍に属していたのだが、ソ連崩壊後は独立し、西側のEU・NATOに参加した。
モスクワから見れば、ベラルーシ・ウクライナとポーランド国境が対峙点となったものであるが、それは先の大戦前1920年代のソ連邦の状態に戻ったものである。
この状態ならば、「モスクワから見た地政学的限界線」はまだ越えていない。
ところがウクライナがNATO加盟を希望しだしたのである。もしもウクライナがEU・NATOに加盟すると、緩衝地帯だったウクライナを失う。
「モスクワから見た地政学的限界線」は何処かというと、キエフよりも東側が反ロシア勢力圏に入ることは「限界線を越えている」という認識になるものである。
取り分け、黒海に面したクリミア半島が反ロシア勢力圏になることはロシア黒海艦隊の喉元に突き付けられたナイフと同じ意味となる要衝である。
これは、北京から見た朝鮮半島の地政学的限界線が39度線にあるのと同じ、地理的・歴史的・政治的な経験則である。
朝鮮半島の「東京から見た地政学的限界線」は、だいたい朝鮮半島の南四分の一辺りの照葉樹林帯と針葉樹林帯の境辺りである。それよりも南が北朝鮮や中国の勢力圏に入ることは我が国の危機である。(*5)
その様な地政学的視点からは、【プーチンとしては領土的野心ではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保、という観点から行動を起こしているということだろう】との理解は極めて的確だと考えるものである。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):「モスクワから見た地政学的限界線」との概念を安倍元首相がテレビ番組で簡素に説明している。そのテレビ番組とはフジテレビの日曜報道 THE PRIMEである。
同番組の動画は有料らしくYouTube他で発見できていないがツイッターで肝心な部分の動画を発見したので、それを紹介したい。
↓
ピーチ太郎2nd @PeachTjapan2
https://twitter.com/PeachTjapan2/status/1497752016356974602?cxt=HHwWlICpicDhiskpAAAA安倍元総理「プーチンは米国に基本的な不信感がある。NATOを拡大しないはずだったのに拡大したという不信感の中で、領土的野心ではなく露の権益の防衛・安全の確保という観点から行動を起こしている。もちろんそれを私は正当化するわけではないが、彼がどう考えているかを正確に把握する必要はある」
<動画埋め込み:フジテレビ 日曜報道 THE PRIME 2022/02/27からの抜粋動画>
午前10:54 • 2022年2月27日
(*2):このテレビ番組での安倍元首相の発言を記事にした読売新聞ニュース(*2)
↓
読売新聞 2022/02/27 22:05
見出し:◆プーチン氏、かつて安倍元首相に「NATOの東方拡大への不満」伝えていた
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220227-OYT1T50081/記事:○自民党の安倍元首相は27日のフジテレビ番組で、ウクライナ情勢に関連して北大西洋条約機構(NATO)の「核戦力共有(ニュークリア・シェアリング)」に言及し、「世界はどのように安全が守られているかという現実について議論をしていくことをタブー視してはならない」と述べた。
○安倍氏は、ドイツやオランダは米国の核兵器を共同運用しているとして、「様々な選択肢を視野に入れて議論すべきだ」と指摘。一方で「被爆国として核を廃絶するという目標は掲げなければいけない」とも語った。
○ロシアのプーチン大統領が安倍氏にNATOの東方拡大への不満を伝えていたことも明らかにした。
<引用終わり>
(*3):このテレビ番組での安倍元首相の別の場面での発言を記事にしたニュースでは、安倍元首相は以下の様な発言もしている。
↓
読売新聞HP(報知新聞社)2/27(日) 7:50配信
見出し:◆安倍晋三氏、生放送でプーチン大統領への説得を期待する声に「もちろん説得できたら私も説得したいんですが」
https://news.yahoo.co.jp/articles/0bed847f9ab9b2d5858264b2a0d3e1d00ae512c2記事:○安倍晋三元首相が27日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜・午前7時半)にスタジオ生出演した。
○番組では安倍氏が自身のツイッターで25日にロシアのウクライナ侵攻について「ロシアによるウクライナへの侵攻は、戦後私たちがつくってきた国際秩序に対する深刻な挑戦であり、断じて許すわけにはいきません。G7と連携し直ちに対抗処置を取らなければなりません」とつづったことを紹介した。このツイートに対し1700件を超えるコメントが寄せられ、そのなかには「プーチンを説得してください」「ウクライナへの支援策と方法をつくって」などの要望が書き込まれたことをスタジオで伝えた。
○安倍氏は、総理大臣就任当時、過去27回、プーチン大統領と会談。こうした背景を受け、国民の「説得して欲しい」との声への対応を聞かれ「もちろん説得できたら私も説得したいんですが」とした上で「まずは今、G7の首脳たちも結束を固め、その上でプーチンに対する説得を行っている。あるいは外交的な要求、要請、交渉を行っていくんだろうと思います」と述べた。
○この発言に出演者から「説得をすればそれを聞く人物でもあるんですか?プーチンさんは」と聞かれ「それはこの事態ですから、そう簡単ではないんですが、なぜプーチンがウクライナに侵略、侵攻したかをきちんと分析しながら彼の意図をつかみながら、その上で説得していくことを求められているんだろうなと思います」と述べた。
(*4):先の大戦時、スターリンはルーズベルト・チャーチルの失政に乗じて東欧を戦力圏内に収めた。
↓
2016/11/15投稿:
フーバー回顧録Doc.18-6
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-543.html2016/11/19投稿:
フーバー回顧録Doc.18-8・ヤルタ密約
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-546.html【ご参考】
2016/09/26投稿:
フーバー回顧録・目次9Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-509.html2020/02/12投稿:
序・各国の建国記念日・建国年について
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1323.html(*5):朝鮮半島の「東京から見た地政学的限界線」は、だいたい朝鮮半島の南四分の一辺りの照葉樹林帯と針葉樹林帯の境辺りである。それよりも南が北朝鮮や中国の勢力圏に入ることは我が国の危機である。
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2017/02/01投稿:
風吹き桶屋の地政学2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-595.html<昭和17年時点の近代朝鮮半島の地政学的意味の概括>
【
朝鮮半島はその地形上、日本列島に対して短刀を擬したような恰好をしている。もし、この地が支那やロシアに占領されたとしたら、その時の日本はどうであろう。脇腹に匕首を当てられたようなもので、たえずその生存を脅威されるであろう。
朝鮮問題が明治史のほとんど全部を通じて、終始重大問題を孕んだのは、実にこの日本国家の生存という根本に触れたためであって、日清戦争も日露戦争も、全く朝鮮問題を中心として惹起されたのである。】
上記の【括弧】内に記したこの一文は菊池寛の筆によるものである。占領軍GHQによって発禁図書とされた「大衆明治史 国民版」に収録されている。
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