地球温暖化防止・地球規模での地道なエネルギー政策編
- 2021/10/13
- 22:59
地球温暖化防止・地球規模での地道なエネルギー政策編
副題:地球温暖化防止に視点を置けば、世界の二酸化炭素排出量の4割を占めている中国とアメリカが対策を取らないと他国が幾ら努力しても焼け石に水。そうは言っても何も努力しなくてよい訳ではない。
前回の「エネルギー政策に対する思考停止「原発ゼロ」編」からの続きである。
今回は、前回の最後で述べた「地球規模での地道なエネルギー政策」に関して話を続ける。
前回は「原発ゼロ」との極めて政治煽動的な、無理に実現したら少なくない悪影響を及ぼすアジテーション(*1)は「太陽光発電で発電する」との非現実的な「代替案」の提示だけで諸問題をスルーする悪質なものである旨を示した。
その上で、「代替案」として提示されている「再生可能エネルギー発電」の1つとして日経新聞が押している地熱発電の問題点についてのべた。地熱発電は技術的・採算性に問題はないのだが、その立地条件で我が国国内での実施はなかなかにハードルが高いことを述べた。
要するに、電力需要に対して、それを供給する各種発電方式から原発を除いた場合、その分の発電の総てを再生可能エネルギー方式での発電で賄うことは「言うの易し、行うに難し」なのである。
地球温暖化との視点に立てば、我が国だけでCO2削減努力をしていても仕方がない。
逆に言えば、「地球温暖化防止の為に全世界の各国が責任を負うべし」との理屈を言っていたのは環境派の人々である。
二酸化炭素の排出量増大と地球温暖化の因果関係は科学的に証明されているとは言い難いのは重々承知しているが、我が国は二酸化炭素排出量の削減を国際的に公約しているので、知らんぷりが出来ないのである。
2009年9月に国連気候変動サミット(ニューヨーク)で、当時の首相の鳩山由紀夫が「温室効果ガス25%削減」を公約してしまっているからだ。安倍政権下で無理な数値に対して訂正をしているのだが、さすがに「削減を止めます」とは言えず、二酸化炭素排出量削減アクションをする責務を我が国は負っているのである。
2009年8月総選挙で「自民党にお灸を据える」と称して、軽薄にも大挙して民主党に投票してしまった「おQ層」(*2)が残した負の置き土産の1つである。
話を戻す。地球規模での二酸化炭素排出量削減が求められていること自体は紛れもない事実である。
それでは、いったいどれだけの二酸化炭素が世界では排出され、いったい何処の国がどれだけ排出しているのかとの事実を確認する必要があるだろう。
ネットで調べた結果、最新資料は2018年の排出量データが見つかった。(*3)
その資料によると、世界の総排出量は335億トンだそうだ。
国別にみると、1位中国28.4%(95億トン)、2位アメリカ14.7%(49億トン)で、この二ヶ国で全体の約半分の43.1%(144億トン)を排出している。
同資料では世界約200ヶ国弱のうち上位15ヶ国とその他の区分となっており、その他の国々約180ヶ国の合計が28.3%(95億トン)とほぼ中国1国と同じ数値になっている。
因みに、我が国はインド6.9%(23億トン)、ロシア4.7%(16億トン)に次ぐ5位で3.2%(11億トン)であった。
それ以降は6位ドイツ2.1%(7億トン)、7位韓国1.8%(6億トン)などが続く。
個別上位15ヶ国は大きくは2つのグループ構成になっており、その1つは日・米・独・英・仏などの先進工業国グループと、もう1つは中・印・インドネシア・ブラジルなどの人口大国である。
そのデータには続きがあり、排出量上位7ヶ国に対して「各国の一人当たりの排出量の比較」のデータが記載されていた。(*4)
それを一人当たりで多い順に並べ替えたのが以下である。
↓
国 名 :一人当たり排出量(トン):国別排出量比(%)
1位:アメリカ :15.1トン:14.7%
2位:韓 国 :11.7トン: 1.8%
3位:ロシア :11.0トン: 4.7%
4位:日 本 : 8.5トン: 3.2%
5位:ドイツ : 8.4トン: 2.1%
6位:中 国 : 6.8トン:28.4%
7位:インド : 1.7トン: 6.9%
「1人当たり排出量」は人口10億人以上の中国とインドを見れば分かる通り、数値上は少なくなる傾向があるので、けして中国に免罪符を与えるものではないと理解している。
注目点としては、先進工業国であり、かつ省エネ技術(結果として二酸化炭素排出量が抑制される)を持つ我が国とドイツの一人当たり数値が近似であることだ。
多分、ここいら辺が先進国としての基準点に成り得るのではないかと考えるものである。
発展途上国が発展に応じてエネルギー消費が増える際に、発展ばかりを重視すると一人当たりの排出量は日独ベレルを超えることになるのではないかと韓国やロシアの数値を見て思うのである。
とは言え、問題の排出量に関しては、世界の二酸化炭素排出量の4割を占めている中国とアメリカが対策を取らないと他国が幾ら努力しても焼け石に水状態であることが分かるであろう。
前回述べた様に、再生可能エネルギーを発電の根幹に据えることは、中々に非現実的である。
1年365日24時間安定して電力が供給されることを前提に我が国の社会インフラは整備されており、同様、我々一般的国民も、それが「当り前」の生活をしている。
エネルギー政策について論じる場合、安定的な電力供給が筆頭の必須条件であることを我々は肌感覚で分かっているのだが、それでは都合の悪い連中は、その前提を否定したいので「電気はいらない」とか「たかが電気」などと言う。
大江健三郎や坂本隆一が、あれほどのおバカちゃんとはがっかりしたものだ。
何を言いたいのかというと、いくら地球温暖化・脱炭素・カーボンゼロと言っても、なかなか再生可能エネルギーへの転換は簡単ではない。「再生可能エネルギー発電だけでは電力需要はまかなえない」のが現状だということだ。
各国は、各国の特性に応じた発電方式を選択し、電力を供給している。
そんな各国では石油・石炭・天然ガスを燃料とする化石燃料発電が主流の国々もある。
化石燃料の中で比較的二酸化炭素排出量が少ない液化天然ガス(LNG)発電は、天然ガスの精製・液化技術が高度なこともあり、LNGの価格は石油・石炭に比して高い為、現状、発展途上国での消費は少ない。
一方、化石エネルギーで、もっとも低いコストなのは石炭であり、石炭火力がなくならない理由もそこにある。
化石燃料発電では、石炭火力がもっとも多く二酸化炭素を排出するので、目の仇にされており、「環境意識高い系」は石炭火力の全廃方向での議論をしているである。
「石炭火力を廃止し再生可能エネルギーでの発電で代替」との話になっているのだが、天功に左右される太陽光や風力では24時間365日発電する石炭火力の代替にはならないのが実情だし、エネルギー密度が石炭よりはるかに少ないバイオマス発電でも代替できないのが実際だ。
「全廃せよ」と「無理だよ」と平行線のままでは石炭火力は稼働し続けるしかない。
我が国の場合は、1970年代初期の石油ショックでの経験を活かした省エネ技術という技術的基盤があり、石炭火力の環境問題に関しては「石炭火力のCO2排出量が多いならば、CO2排出量がすくない石炭火力装置を作れば良い」という発想になり、例えば横浜・磯子の石炭化火力発電所の様な超々臨界圧発電方式などと実用化している。
我が国の高度石炭火力技術により、少しでも二酸化炭素排出量の削減が実施できれば、それは地球環境にプラスになるはずなのだが、あたかも「石炭火力」は総て旧来のものと同じであるかの様に反対する勢力がいる。(*5)
この事は以前の論考「上面を舐めるだけ記事「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所案件」」で指摘済である。
小泉前環境大臣は、どうやら難しいことが分からないらしく、環境大臣を退任した後も、また訳の分からないことを言っている様で、実に無様である。(*6)
小泉の理屈は「相手が納得しないから、相手の言う事を認める」という理屈である。
この理屈を実行してしまった為に我が国が多大な損失を負ったのが「「従軍」慰安婦」との虚偽である。
地球温暖化防止・二酸化炭素排出量削減の話になると、その話の中心は、もっぱら発電方式の話になる。
しかし、二酸化炭素排出量削減策はそれだけではない。
同じ量の二酸化炭素を排出する火力発電所があった場合、そこからの電気を消費地にまで運ぶ送電の性能によって消費地まで届く電力に差がでるのである。
我が国では既に実行されているが、他の国では改善の余地がある技術の話である。
例えば、当方が以前は四半期毎に出張していたミャンマーなどは、その地形から水力発電がほとんどなのだが、送電の電圧が低く、送電ロスが高く効率的な電力供給が出来ていない状態であった。
水力発電なので二酸化炭素排出量の問題は基本的にないと思ったら大間違いである。
送電能力が脆弱なので、ミャンマー(旧ビルマ)最大の都市・ヤンゴン(旧ラングーン)では停電が日常茶飯事である。従い、店舗やオフィスビルには必ず自家発電施設がある。
古い小規模な商業施設などが沢山ある街中では、歩道上に四角いディーゼル発電施設が設置されている。それがここかしこにあるのである。
停電時には、それらが機能するのである。ディーゼル燃料は化石燃料である。
大型オフィスビルの自家発電設備は、それなりに大きく、これが日常的に稼働するのである。日系企業が入居する様なオフィスビルの場合、停電対応は当たり前であるが、それなりに家賃は高い。
高い理由の1つがディーゼル発電機の燃料代が、それなりにかさむとのことであった。
発展途上国の社会インフラのレベルは高くはない。我が国のレベルを基準にして見てはいけないのである。
送電設備の効率化は、一見、二酸化炭素排出量の削減に関係がない様に見えるが、発電所が火力発電である場合、送電設備の効率化によって火力発電所を増加させなくてもよくなるなど、実効性ある結果を得られるのである。
この様な視点は当方の様な普通のオッサンが持っているであるから、我が国の資源エネルギー庁などのプロ集団は先刻ご承知の話である。
派手な議論ではなく、地道で実効性ある二酸化炭素排出量削減策の実施が大事。
これが結論である。
意識高い系環境派の方々の御話を聞くと、なにかが一挙に変わって問題が解決する様な話が多い様に感じるのだが、現実世界では、その様な事が平和裏に実現出来るものではない。
実現性・実効性なる策は、ドラマとは無縁の現場での地味な努力の積み重ねでしか実現しない。一挙に変革を成し遂げる様とする時、そこに血と涙が流れてきたのが歴史の事実であることを我々は忘れてはならない。
何かを悪者にして、その悪者がいなくなればすべてうまくいくかの様な話は、まるで三流少年漫画の筋建てであり、害悪しかもたらさないことを分かっていただきたい。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):「原発ゼロ」との極めて政治煽動的な、無理に実現したら少なくない悪影響を及ぼすアジテーション
↓
2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html
2018/07/19投稿:
手段が目的化した不見識・小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-981.html
(*2):2009年8月総選挙で「自民党にお灸を据える」と称して、軽薄にも大挙して民主党に投票してしまった「おQ層」
↓
2019/06/24投稿:
「おQ層」に向けて「柳の下」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1204.html
2016/10/15投稿:
雰囲気で「判断」することの危険性
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-520.html
2021/08/03投稿:
2009年8月総選挙で我々日本人は鳩山を総理に選んだ(後編)亡国のルーピー編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1540.html
(*3):ネットで調べた結果、最新資料は2018年の排出量データが見つかった。その資料によると、世界の総排出量は335億トンだそうだ。
↓
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA: Japan Center for Climate Change Actions)HP
世界の二酸化炭素排出量(2018年)
https://www.jccca.org/download/13327
順位:国 名 :排出量(百万トン):割合
01 :中 国 :9,528:28.4%
02 :アメリカ:4,921:14.7%
03 :インド :2,308: 6.9%
04 :ロシア :1,587: 4.7%
05 :日 本 :1,081: 3.2%
06 :ドイツ : 696: 2.1%
07 :韓 国 : 606: 1.8%
08 :カナダ : 565: 1.7%
09 :ネシア : 543: 1.6%
10 :メキシコ: 448: 1.3%
11 :ブラジル: 406: 1.2%
12 :豪 州 : 383: 1.1%
13 :イギリス: 352: 1.1%
14 :イタリア: 317: 0.9%
15 :フランス: 298: 0.9%
--:その他 :9,474:28.3%
世界の排出量 :33,513百万トン → 335億トン
(出典)EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版
<引用終わり>
(*4):排出量上位7ヶ国に対して「各国の一人当たりの排出量の比較」のデータ
↓
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA: Japan Center for Climate Change Actions)HP
世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2018年)
https://www.jccca.org/download/13330
国 名 :国別排出量比(%):一人当たり排出量(トン)
中 国 :28.4%: 6.8トン
アメリカ:14.7%:15.1トン
インド : 6.9%: 1.7トン
ロシア : 4.7%:11.0トン
日 本 : 3.2%: 8.5トン
ドイツ : 2.1%: 8.4トン
韓 国 : 1.8%:11.7トン
アフリカ合計:3.7%:0.98トン
(出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版
・国別排出量比は世界全体の排出量に対する比で単位は[%]
・排出量の単位は[トン/人-エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)]
<引用終わり>
(*5):あたかも「石炭火力」は総て旧来のものと同じであるかの様に反対する勢力がいる。
↓
2021/01/08投稿:
上面を舐めるだけ記事「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所案件」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1456.html
【ご参考】
2020/01/25投稿:
新聞記事の軸足の置き方・日本の高効率石炭火力発電技術
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1314.html
(*6):小泉前環境大臣は、どうやら難しいことが分からないらしく、環境大臣を退任した後も、また訳の分からないことを言っている様で、実に無様である。
↓
Yahooニュース 10/11(月) 7:32
見出し:◆岸田首相に警告、小泉前環境相「日本での議論は国際社会では通じない」
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20211011-00262654
記事:○小泉進次郎氏は、今月1日、環境大臣として最後の会見の中で、地球温暖化対策に関する日本での議論やキャッチフレーズは「国際社会では通用しない」と断言。温暖化やその対策への認識が危ぶまれている岸田文雄新首相に国際会議等での発信で気をつけるよう促した。
小見出し:◆危ぶまれる岸田首相の認識
○「日本の中では通用する議論が、そのまま国際社会で通用するわけではない」―小泉氏の実感のこもった言葉を引き出したのは、NHKの岡本基良記者。先の総裁選討論会で、岸田首相が温暖化対策として「省エネ電球」「シャワーではなくお風呂」といったものを例示したことについて、岡本記者は、脱炭素に向けた社会変革や国際社会での発信という面でどのように受け取っているかを小泉氏に質問したのだった(会見動画)。
○温暖化の脅威は異常気象として今まさに世界中の人々を襲っており、「気候危機」とも言われるようになっている。その破局的な影響を防ぐためには、少なくとも2030年までに世界の温室効果ガス排出を半減する必要があり、省エネ電球や節水が無駄とは言わないが、ささやかな個人の取り組みではなく、社会そのものの変革が必要とされるのだ。このような背景から、岸田首相の発言は、気候危機対策を求める人々から「唖然とした」「ヤバイ」等と呆れられていたのだ。
○前述の岡本記者の質問に対し、小泉氏は岸田首相の発言について直接批判することは避けたものの、「(気候危機対策を協議する国際的な場は)まさにプロが集まったコミュニティーですから、その場で発信をするときに、日本の議論や言葉をそのまま持っていってしまうと、的確に日本の前向きなメッセージが伝わらない可能性がある」と語った。
小見出し:◆「クリーンな石炭」という詭弁は通じない
○国際社会で通じない日本の言葉の具体例として、小泉氏が指摘したのが「クリーンコール」だ。「日本の中では通用する『クリーンな石炭』ということかもしれませんが、国際社会では全く通用しないですね」(小泉氏)。大量のCO2を排出する火力発電の中でも、石炭火力は特にその割合が高く、国連のグテーレス事務総長も日本を含めた各国に最優先で廃止することを求めている。
○ところが、日本の政府や企業は「日本の石炭火力発電は高効率でCO2排出が少ない」と主張し、「クリーン・コール・テクノロジー(CCT)」と称して高効率型の石炭火力発電の普及を推進しているのだ。だが、最も高効率な石炭火力であっても、天然ガス(LNG)火力発電の2倍程度のCO2を排出する。「クリーンな石炭」など幻想なのだ。また、石炭火力発電所から排出されるCO2を回収し、地下や海底に貯留するCCS(二酸化炭素回収・貯留)も技術が確立しておらず、しかも莫大なコストがかかる。石炭とアンモニアを混焼させる方法も、コスト及び環境影響で得策とは言い難い。
○日本は石炭火力発電に依存する国として、これまでも、国際社会から厳しい批判にさらされてきた。バイデン政権の下、米国も脱炭素へと舵を切り、中国もこれに同調している中、いつまでも「クリーンな石炭」という誤魔化しは通じない。石炭依存から脱却し、再生可能エネルギー最優先で脱炭素社会を実現すべきだとの、小泉氏の環境大臣としてのラストメッセージの意味を、岸田首相もしっかりと受け止めるべきであろう。
<引用終わり>
【ご参考】
2018/08/02投稿:
再生可能エネルギー(持続可能性・経済性)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-991.html
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副題:地球温暖化防止に視点を置けば、世界の二酸化炭素排出量の4割を占めている中国とアメリカが対策を取らないと他国が幾ら努力しても焼け石に水。そうは言っても何も努力しなくてよい訳ではない。
前回の「エネルギー政策に対する思考停止「原発ゼロ」編」からの続きである。
今回は、前回の最後で述べた「地球規模での地道なエネルギー政策」に関して話を続ける。
原発代替の再生可能エネルギー発電についての前回のおさらい
前回は「原発ゼロ」との極めて政治煽動的な、無理に実現したら少なくない悪影響を及ぼすアジテーション(*1)は「太陽光発電で発電する」との非現実的な「代替案」の提示だけで諸問題をスルーする悪質なものである旨を示した。
その上で、「代替案」として提示されている「再生可能エネルギー発電」の1つとして日経新聞が押している地熱発電の問題点についてのべた。地熱発電は技術的・採算性に問題はないのだが、その立地条件で我が国国内での実施はなかなかにハードルが高いことを述べた。
要するに、電力需要に対して、それを供給する各種発電方式から原発を除いた場合、その分の発電の総てを再生可能エネルギー方式での発電で賄うことは「言うの易し、行うに難し」なのである。
地球規模での地道なエネルギー政策
地球温暖化との視点に立てば、我が国だけでCO2削減努力をしていても仕方がない。
逆に言えば、「地球温暖化防止の為に全世界の各国が責任を負うべし」との理屈を言っていたのは環境派の人々である。
二酸化炭素の排出量増大と地球温暖化の因果関係は科学的に証明されているとは言い難いのは重々承知しているが、我が国は二酸化炭素排出量の削減を国際的に公約しているので、知らんぷりが出来ないのである。
2009年9月に国連気候変動サミット(ニューヨーク)で、当時の首相の鳩山由紀夫が「温室効果ガス25%削減」を公約してしまっているからだ。安倍政権下で無理な数値に対して訂正をしているのだが、さすがに「削減を止めます」とは言えず、二酸化炭素排出量削減アクションをする責務を我が国は負っているのである。
2009年8月総選挙で「自民党にお灸を据える」と称して、軽薄にも大挙して民主党に投票してしまった「おQ層」(*2)が残した負の置き土産の1つである。
話を戻す。地球規模での二酸化炭素排出量削減が求められていること自体は紛れもない事実である。
それでは、いったいどれだけの二酸化炭素が世界では排出され、いったい何処の国がどれだけ排出しているのかとの事実を確認する必要があるだろう。
地球規模での二酸化炭素排出量の現状
ネットで調べた結果、最新資料は2018年の排出量データが見つかった。(*3)
その資料によると、世界の総排出量は335億トンだそうだ。
国別にみると、1位中国28.4%(95億トン)、2位アメリカ14.7%(49億トン)で、この二ヶ国で全体の約半分の43.1%(144億トン)を排出している。
同資料では世界約200ヶ国弱のうち上位15ヶ国とその他の区分となっており、その他の国々約180ヶ国の合計が28.3%(95億トン)とほぼ中国1国と同じ数値になっている。
因みに、我が国はインド6.9%(23億トン)、ロシア4.7%(16億トン)に次ぐ5位で3.2%(11億トン)であった。
それ以降は6位ドイツ2.1%(7億トン)、7位韓国1.8%(6億トン)などが続く。
個別上位15ヶ国は大きくは2つのグループ構成になっており、その1つは日・米・独・英・仏などの先進工業国グループと、もう1つは中・印・インドネシア・ブラジルなどの人口大国である。
そのデータには続きがあり、排出量上位7ヶ国に対して「各国の一人当たりの排出量の比較」のデータが記載されていた。(*4)
それを一人当たりで多い順に並べ替えたのが以下である。
↓
国 名 :一人当たり排出量(トン):国別排出量比(%)
1位:アメリカ :15.1トン:14.7%
2位:韓 国 :11.7トン: 1.8%
3位:ロシア :11.0トン: 4.7%
4位:日 本 : 8.5トン: 3.2%
5位:ドイツ : 8.4トン: 2.1%
6位:中 国 : 6.8トン:28.4%
7位:インド : 1.7トン: 6.9%
「1人当たり排出量」は人口10億人以上の中国とインドを見れば分かる通り、数値上は少なくなる傾向があるので、けして中国に免罪符を与えるものではないと理解している。
注目点としては、先進工業国であり、かつ省エネ技術(結果として二酸化炭素排出量が抑制される)を持つ我が国とドイツの一人当たり数値が近似であることだ。
多分、ここいら辺が先進国としての基準点に成り得るのではないかと考えるものである。
発展途上国が発展に応じてエネルギー消費が増える際に、発展ばかりを重視すると一人当たりの排出量は日独ベレルを超えることになるのではないかと韓国やロシアの数値を見て思うのである。
とは言え、問題の排出量に関しては、世界の二酸化炭素排出量の4割を占めている中国とアメリカが対策を取らないと他国が幾ら努力しても焼け石に水状態であることが分かるであろう。
地球規模での地道なエネルギー政策・その1.石炭火力
前回述べた様に、再生可能エネルギーを発電の根幹に据えることは、中々に非現実的である。
1年365日24時間安定して電力が供給されることを前提に我が国の社会インフラは整備されており、同様、我々一般的国民も、それが「当り前」の生活をしている。
エネルギー政策について論じる場合、安定的な電力供給が筆頭の必須条件であることを我々は肌感覚で分かっているのだが、それでは都合の悪い連中は、その前提を否定したいので「電気はいらない」とか「たかが電気」などと言う。
大江健三郎や坂本隆一が、あれほどのおバカちゃんとはがっかりしたものだ。
何を言いたいのかというと、いくら地球温暖化・脱炭素・カーボンゼロと言っても、なかなか再生可能エネルギーへの転換は簡単ではない。「再生可能エネルギー発電だけでは電力需要はまかなえない」のが現状だということだ。
各国は、各国の特性に応じた発電方式を選択し、電力を供給している。
そんな各国では石油・石炭・天然ガスを燃料とする化石燃料発電が主流の国々もある。
化石燃料の中で比較的二酸化炭素排出量が少ない液化天然ガス(LNG)発電は、天然ガスの精製・液化技術が高度なこともあり、LNGの価格は石油・石炭に比して高い為、現状、発展途上国での消費は少ない。
一方、化石エネルギーで、もっとも低いコストなのは石炭であり、石炭火力がなくならない理由もそこにある。
化石燃料発電では、石炭火力がもっとも多く二酸化炭素を排出するので、目の仇にされており、「環境意識高い系」は石炭火力の全廃方向での議論をしているである。
「石炭火力を廃止し再生可能エネルギーでの発電で代替」との話になっているのだが、天功に左右される太陽光や風力では24時間365日発電する石炭火力の代替にはならないのが実情だし、エネルギー密度が石炭よりはるかに少ないバイオマス発電でも代替できないのが実際だ。
「全廃せよ」と「無理だよ」と平行線のままでは石炭火力は稼働し続けるしかない。
我が国の場合は、1970年代初期の石油ショックでの経験を活かした省エネ技術という技術的基盤があり、石炭火力の環境問題に関しては「石炭火力のCO2排出量が多いならば、CO2排出量がすくない石炭火力装置を作れば良い」という発想になり、例えば横浜・磯子の石炭化火力発電所の様な超々臨界圧発電方式などと実用化している。
我が国の高度石炭火力技術により、少しでも二酸化炭素排出量の削減が実施できれば、それは地球環境にプラスになるはずなのだが、あたかも「石炭火力」は総て旧来のものと同じであるかの様に反対する勢力がいる。(*5)
この事は以前の論考「上面を舐めるだけ記事「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所案件」」で指摘済である。
小泉前環境大臣は、どうやら難しいことが分からないらしく、環境大臣を退任した後も、また訳の分からないことを言っている様で、実に無様である。(*6)
小泉の理屈は「相手が納得しないから、相手の言う事を認める」という理屈である。
この理屈を実行してしまった為に我が国が多大な損失を負ったのが「「従軍」慰安婦」との虚偽である。
地球規模での地道なエネルギー政策・その2.送電ロスの軽減
地球温暖化防止・二酸化炭素排出量削減の話になると、その話の中心は、もっぱら発電方式の話になる。
しかし、二酸化炭素排出量削減策はそれだけではない。
同じ量の二酸化炭素を排出する火力発電所があった場合、そこからの電気を消費地にまで運ぶ送電の性能によって消費地まで届く電力に差がでるのである。
我が国では既に実行されているが、他の国では改善の余地がある技術の話である。
例えば、当方が以前は四半期毎に出張していたミャンマーなどは、その地形から水力発電がほとんどなのだが、送電の電圧が低く、送電ロスが高く効率的な電力供給が出来ていない状態であった。
水力発電なので二酸化炭素排出量の問題は基本的にないと思ったら大間違いである。
送電能力が脆弱なので、ミャンマー(旧ビルマ)最大の都市・ヤンゴン(旧ラングーン)では停電が日常茶飯事である。従い、店舗やオフィスビルには必ず自家発電施設がある。
古い小規模な商業施設などが沢山ある街中では、歩道上に四角いディーゼル発電施設が設置されている。それがここかしこにあるのである。
停電時には、それらが機能するのである。ディーゼル燃料は化石燃料である。
大型オフィスビルの自家発電設備は、それなりに大きく、これが日常的に稼働するのである。日系企業が入居する様なオフィスビルの場合、停電対応は当たり前であるが、それなりに家賃は高い。
高い理由の1つがディーゼル発電機の燃料代が、それなりにかさむとのことであった。
発展途上国の社会インフラのレベルは高くはない。我が国のレベルを基準にして見てはいけないのである。
送電設備の効率化は、一見、二酸化炭素排出量の削減に関係がない様に見えるが、発電所が火力発電である場合、送電設備の効率化によって火力発電所を増加させなくてもよくなるなど、実効性ある結果を得られるのである。
この様な視点は当方の様な普通のオッサンが持っているであるから、我が国の資源エネルギー庁などのプロ集団は先刻ご承知の話である。
最後に
派手な議論ではなく、地道で実効性ある二酸化炭素排出量削減策の実施が大事。
これが結論である。
意識高い系環境派の方々の御話を聞くと、なにかが一挙に変わって問題が解決する様な話が多い様に感じるのだが、現実世界では、その様な事が平和裏に実現出来るものではない。
実現性・実効性なる策は、ドラマとは無縁の現場での地味な努力の積み重ねでしか実現しない。一挙に変革を成し遂げる様とする時、そこに血と涙が流れてきたのが歴史の事実であることを我々は忘れてはならない。
何かを悪者にして、その悪者がいなくなればすべてうまくいくかの様な話は、まるで三流少年漫画の筋建てであり、害悪しかもたらさないことを分かっていただきたい。
今回は以上である。
1日1回ポチっとな ↓



【文末脚注】
(*1):「原発ゼロ」との極めて政治煽動的な、無理に実現したら少なくない悪影響を及ぼすアジテーション
↓
2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html
2018/07/19投稿:
手段が目的化した不見識・小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-981.html
(*2):2009年8月総選挙で「自民党にお灸を据える」と称して、軽薄にも大挙して民主党に投票してしまった「おQ層」
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2019/06/24投稿:
「おQ層」に向けて「柳の下」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1204.html
2016/10/15投稿:
雰囲気で「判断」することの危険性
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-520.html
2021/08/03投稿:
2009年8月総選挙で我々日本人は鳩山を総理に選んだ(後編)亡国のルーピー編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1540.html
(*3):ネットで調べた結果、最新資料は2018年の排出量データが見つかった。その資料によると、世界の総排出量は335億トンだそうだ。
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全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA: Japan Center for Climate Change Actions)HP
世界の二酸化炭素排出量(2018年)
https://www.jccca.org/download/13327
順位:国 名 :排出量(百万トン):割合
01 :中 国 :9,528:28.4%
02 :アメリカ:4,921:14.7%
03 :インド :2,308: 6.9%
04 :ロシア :1,587: 4.7%
05 :日 本 :1,081: 3.2%
06 :ドイツ : 696: 2.1%
07 :韓 国 : 606: 1.8%
08 :カナダ : 565: 1.7%
09 :ネシア : 543: 1.6%
10 :メキシコ: 448: 1.3%
11 :ブラジル: 406: 1.2%
12 :豪 州 : 383: 1.1%
13 :イギリス: 352: 1.1%
14 :イタリア: 317: 0.9%
15 :フランス: 298: 0.9%
--:その他 :9,474:28.3%
世界の排出量 :33,513百万トン → 335億トン
(出典)EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版
<引用終わり>
(*4):排出量上位7ヶ国に対して「各国の一人当たりの排出量の比較」のデータ
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全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA: Japan Center for Climate Change Actions)HP
世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2018年)
https://www.jccca.org/download/13330
国 名 :国別排出量比(%):一人当たり排出量(トン)
中 国 :28.4%: 6.8トン
アメリカ:14.7%:15.1トン
インド : 6.9%: 1.7トン
ロシア : 4.7%:11.0トン
日 本 : 3.2%: 8.5トン
ドイツ : 2.1%: 8.4トン
韓 国 : 1.8%:11.7トン
アフリカ合計:3.7%:0.98トン
(出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版
・国別排出量比は世界全体の排出量に対する比で単位は[%]
・排出量の単位は[トン/人-エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)]
<引用終わり>
(*5):あたかも「石炭火力」は総て旧来のものと同じであるかの様に反対する勢力がいる。
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2021/01/08投稿:
上面を舐めるだけ記事「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所案件」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1456.html
【ご参考】
2020/01/25投稿:
新聞記事の軸足の置き方・日本の高効率石炭火力発電技術
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1314.html
(*6):小泉前環境大臣は、どうやら難しいことが分からないらしく、環境大臣を退任した後も、また訳の分からないことを言っている様で、実に無様である。
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Yahooニュース 10/11(月) 7:32
見出し:◆岸田首相に警告、小泉前環境相「日本での議論は国際社会では通じない」
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20211011-00262654
記事:○小泉進次郎氏は、今月1日、環境大臣として最後の会見の中で、地球温暖化対策に関する日本での議論やキャッチフレーズは「国際社会では通用しない」と断言。温暖化やその対策への認識が危ぶまれている岸田文雄新首相に国際会議等での発信で気をつけるよう促した。
小見出し:◆危ぶまれる岸田首相の認識
○「日本の中では通用する議論が、そのまま国際社会で通用するわけではない」―小泉氏の実感のこもった言葉を引き出したのは、NHKの岡本基良記者。先の総裁選討論会で、岸田首相が温暖化対策として「省エネ電球」「シャワーではなくお風呂」といったものを例示したことについて、岡本記者は、脱炭素に向けた社会変革や国際社会での発信という面でどのように受け取っているかを小泉氏に質問したのだった(会見動画)。
○温暖化の脅威は異常気象として今まさに世界中の人々を襲っており、「気候危機」とも言われるようになっている。その破局的な影響を防ぐためには、少なくとも2030年までに世界の温室効果ガス排出を半減する必要があり、省エネ電球や節水が無駄とは言わないが、ささやかな個人の取り組みではなく、社会そのものの変革が必要とされるのだ。このような背景から、岸田首相の発言は、気候危機対策を求める人々から「唖然とした」「ヤバイ」等と呆れられていたのだ。
○前述の岡本記者の質問に対し、小泉氏は岸田首相の発言について直接批判することは避けたものの、「(気候危機対策を協議する国際的な場は)まさにプロが集まったコミュニティーですから、その場で発信をするときに、日本の議論や言葉をそのまま持っていってしまうと、的確に日本の前向きなメッセージが伝わらない可能性がある」と語った。
小見出し:◆「クリーンな石炭」という詭弁は通じない
○国際社会で通じない日本の言葉の具体例として、小泉氏が指摘したのが「クリーンコール」だ。「日本の中では通用する『クリーンな石炭』ということかもしれませんが、国際社会では全く通用しないですね」(小泉氏)。大量のCO2を排出する火力発電の中でも、石炭火力は特にその割合が高く、国連のグテーレス事務総長も日本を含めた各国に最優先で廃止することを求めている。
○ところが、日本の政府や企業は「日本の石炭火力発電は高効率でCO2排出が少ない」と主張し、「クリーン・コール・テクノロジー(CCT)」と称して高効率型の石炭火力発電の普及を推進しているのだ。だが、最も高効率な石炭火力であっても、天然ガス(LNG)火力発電の2倍程度のCO2を排出する。「クリーンな石炭」など幻想なのだ。また、石炭火力発電所から排出されるCO2を回収し、地下や海底に貯留するCCS(二酸化炭素回収・貯留)も技術が確立しておらず、しかも莫大なコストがかかる。石炭とアンモニアを混焼させる方法も、コスト及び環境影響で得策とは言い難い。
○日本は石炭火力発電に依存する国として、これまでも、国際社会から厳しい批判にさらされてきた。バイデン政権の下、米国も脱炭素へと舵を切り、中国もこれに同調している中、いつまでも「クリーンな石炭」という誤魔化しは通じない。石炭依存から脱却し、再生可能エネルギー最優先で脱炭素社会を実現すべきだとの、小泉氏の環境大臣としてのラストメッセージの意味を、岸田首相もしっかりと受け止めるべきであろう。
<引用終わり>
【ご参考】
2018/08/02投稿:
再生可能エネルギー(持続可能性・経済性)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-991.html
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