公約の中身と実現可能性・空手形を掲げるのは無責任
副題:希望・願望を述べるのは自由なのだが、それが公党の公約の「土台」だと言うのならば、実現可能性が薄いものを掲げることは無責任だと言われても仕方がないことだ。
衆議院選挙は現行憲法第45条の規定により、遅くとも衆議院の任期4年が満了する今年(2021年・令和3年)の10月21日までには総選挙が行われる見込みである。投票日は日曜日になることから、遅くとも10月17日の日曜日または、それ以前となるであろう。それを基点に逆算すると、選挙期日が公示されるのは公職選挙法第31条第4項の規定「少なくとも12日前まで」から10月5日が期限となる。(*1)
代議士達は10月2日、3日の土日に地元の選挙区に帰りたいので、多分、それ以前となるであろう。何れにしろ、あと約1ヶ月で選挙戦となるのは間違いない。
衆議院選挙・公約は有権者との御約束
この様なスケジュール感に則り、各政党では選挙公約づくりが進んでいるはずだ。
選挙公約とは、有権者と立候補者=所属政党との間の約束であり、立候補者の公約内容の実現化を期待して有権者は投票するものだ。
立候補者は当選後に、その公約の実現化努力をする。
そして、公約に反することを実施せざるを得ない状態となった場合は、与党ならば解散総選挙を行い国民に信を問うのが憲政の常道である。
一方、選挙で負けて野党となった場合は、その公約が支持されなかったのだから、党の存在理由である綱領に則り、国民の為の最善策を模索することが必要だ。
そういう国民の為の政治をしたかしないかが、次の選挙の際の有権者の評価対象なのである。
とは言え、我が国で政権交代がほぼ起こらないのは、自民党以外の政党に政権運営能力がないことが民主党政権で露わになった(*2)からであり、また、民主党が下野した後の民進党への党名ロンダリング・その後の民進党瓦解分裂による離合集散した立憲民主党・国民民主党の体たらくぶりから、とてもじゃないが政権運営能力を具備する努力など何もしていない事が明らかな状態が延々と約10年も続いており、民主党の末裔に政権を任せられないとの認識があるからだ。
旧民主党の末裔たる立憲民主党他の公約の内容の低劣さについては前回衆院選の時の以前の論考で指摘済(*3)だが、まだ今回の衆議院選の公約は出ていない。
その一方、福島ミズポ1人の政党・社民党が公約の「土台」だとして今回衆議院選向けに発表した文章がある。(*4)
社民党が政策を実現できた事はないし、今後も出来る見込みはないのだが、現状で手元にあるのが社民党の公約「土台」なので、それを題材にした次第である。
公約を評価する・中身の評価、実現化可能性の評価
有権者との御約束事である選挙公約を見る際のポイントは2つある。
1つは、その妥当性、つまり公約の中身に対する評価である。
そしてもう1つは、公約の実現性である。実現可能性が皆無な公約など絵に描いた餅、絵空事、空手形であり、何等の価値もない。
社民党の公約を評価する
「社民党の公約」を評価すること自体が無駄であることは百も承知である。
公約の実現性がゼロなのだから無駄なのである。
とは言え、それでは社民党の公約の中身が酷いことを紹介できないので、評価することにしたものだ。
社民党の「公約の土台」は、6つの大項目と、その各々に4~6つの小項目があり、小項目の総数は30ある。この「土台」については共同通信が「◆社民党「消費税3年ゼロ」を柱に 最低賃金1500円に、衆院選へ」との見出しで報じている。同記事では以下の「政策」が選定紹介されている。
↓
①「消費税を3年間ゼロにする」
②「生活困窮者に対する10万円給付」
③「最低賃金の全国一律1500円への引き上げ」
④「原発廃止に向けた「原発ゼロ基本法」の制定」
⑤「消費税ゼロで生じる財源の不足分を埋める方策として、大企業の内部留保に3年間課税する」
<以下略>
共同通信記事ではこれら5つをピックアップしているが、①と⑤はワンセットと言ってよいであろうから、実質的には4つが記事の「注目点」だと言える。
約20兆の消費税での税収を3年間ゼロに出来るのか?
「消費税3年間ゼロ」「財源は大企業の内部留保に3年間課税」と社民党は言っているのだが、それが現実的に可能なのか否かについて述べる。
先ず、消費税ゼロであるが、2020年度の税収実績では消費税による税収は20~21兆円程度であったことから、その分の税収が3年間なくすと社民党は言っているものだ。
話を簡単にする為に1年間の税収を20兆とすると、その3年分60兆の税収をなくすと言う物だ。
その一方、支出側の国家予算を20兆も減少させることは不可能なので代替財源が必要なのは言うまでもない。
その点について社民党は「大企業内部留保への3年間の課税」で60兆を確保すると言っているのである。
以前から指摘しているが「内部留保」は、けして「企業の金庫にある現金や企業の預金残高」という資産なのではない。内部留保は、会計上の企業の過去からの利益の集積値でしかなく、貸借対照表の資産が左側に記載されるのに対して内部留保は、右側の負債及び資本側に記載されるものである。社民党が勘違いしているのは共産党が以前から流布している詭弁を、そのまま使用しているものである。(*5)
要するに「ないもの」を財源にすると言っているのであって、まるで2009年8月選挙で民主党が言っていた「埋蔵金」を財源に子供手当の大盤振る舞いをするとの話と一緒である。
「埋蔵金」などなく、蓮舫がやった事業仕訳で必要な事業をも中止させても財源は捻出できなかったのである。
社民党が言っていることは、あれと同じである。
バランスを欠いた「最低賃金の引き上げ」は国民経済にとってマイナス
「最低賃金の全国一律1500円への引き上げ」は社民党特有の政策ではない。
2019年7月の参議院選挙の際に、特定野党は一斉に「最低賃金の引き上げ」を公約にしている。(*6)
立憲民主党が1300円、国民民主党が1000円以上、共産党が「1000円に引き上げ1500円を目指す」、社民党も共産党と同じく「1000円に引き上げ1500円を目指す」としていた.
この様に社民党は2019年に「1500円を目指す」と言っていたので、2021年の現在は1500円となっているものと類推される。
2019年7月時点で既に、韓国・文在寅が政治的に最低賃金を上昇させて、上昇した人件費が払えず事業継続が出来なくなった中小企業の事業撤退や雇用がなくなり失業率が上がり、国民経済を悪くした実例が存在しており、この様な「バナナの叩き売り」的に最低賃金アップはけして労働者にとってプラスにはならない政策である。
最低賃金は、経済全体・経済実態とのバランスを保持した上で上げなければ「最低賃金を上げることで助かる労働者側」にとって、返ってマイナスになりかねないものであり、票欲しさに「バナナの叩き売り」的に金額を提示するのはまったくに不見識である。
現実的エネルギー政策とは異なる「原発ゼロ」ありきのアジテーション
社民党は「原発廃止に向けた「原発ゼロ基本法」の制定」なる公約土台を掲げているが、これは立憲民主党や小沢一郎の「票になる政策」への単純なる相乗りである。(*7)
24時間365日安定的に電力を供給する基盤発電は太陽光発電、風力発電では実現不可能である。水力発電は「ダムがぁ~環境を破壊するぅ~」として新規大規模発電施設の増設を難しくしている勢力は原発ゼロ派とダブっている。
原子力・水力がダメなら、残りは火力発電しかないのだが、火力発電のうち「石炭火力は二酸化炭素排出量が多いからダメぇ~」と騒いでいる。
我が国の石炭火力は「超々臨界圧発電方式」であり、中国などの石炭火力がPM2.5などの粉塵や二酸化炭素やSOX,NOXをバンバン排出しているのと大きく異なっているのだが、あたかも同列であるかの様に反対している。(*8)
基本的情報が欠落している状態で「原発ゼロ」を安易に主張すると、大きな悪い副作用が発生する。
原子力ダメ、水力ダメ、石炭火力ダメとの主張からは、発電方式は石油火力かLNG火力にならざるを得ない。当然の様に、火力発電では二酸化炭素が排出される。CO2排出との問題とは相反するのである。
そして、我が国は石油・天然ガスの供給をほぼ100%に輸入に頼っている。我が国は、産油国・産ガス国にお金を払って輸入しているのだが、その代金は、我々が価格転嫁された商品を購入することで賄っているものだ。「太陽光パネルをもっと多く設置すれば良い」などと言っていた方々は、貴重な山野が削られた姿を、土砂流出をどの様に考えているのであろう?
社民党は「原発廃止に向けた「原発ゼロ基本法」の制定」なる公約土台を掲げているのだが、これなどは我が国のエネルギー政策など何等も考えておらず、「原発ゼロありき」の子供の主張そのものなのである。
「10万円給付」は社民党でなくても状況に応じて実施される政策
社民党は「生活困窮者に対する10万円給付」を掲げている。
社民党HPの「2021年 重点政策」には「生活困窮者に緊急に特別給付金10万円を支給」とあることから、以前支給された「一律支給」とは異なり、生活困窮者か否かを選別してから支給するものだと想定される。
社民党は同時に「速やかに」と称しているのだが、「一律支給」とは異なり「選別アクション」が入ることになるのだから、前回の一律支給よりは確実にスピード感は落ちる。
何故、前回と同様の一律支給にしないのか?
その理由は分からないが、「バラマキ公約」と言われることを避ける為ではないかと邪推している。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):衆議院選挙は現行憲法第45条の規定により、遅くとも衆議院の任期4年が満了する今年(2021年・令和3年)の10月21日までには総選挙が行われる見込みである。投票日は日曜日になることから、遅くとも10月17日の日曜日または、それ以前となるであろう。それを基点に逆算すると、選挙期日が公示されるのは公職選挙法第31条第4項の規定「少なくとも12日前まで」から10月5日が期限となる。(*1)
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2021/08/26投稿:
2021年6月~8月の政党支持率・選挙を鬱憤晴らしの手段に使う事なかれ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1550.html(*2):自民党以外の政党に政権運営能力がないことが民主党政権で露わになった。
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2016/02/05投稿:
【コラム】民主党政権の暴政を振り返る1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-334.html2016/02/07投稿:
【コラム】民主党政権の暴政を振り返る2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-335.html2018/01/21投稿:
「お詫びの手紙」の長い物語
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-848.html(*3):旧民主党の末裔たる立憲民主党他の公約の内容の低劣さについては以前の論考で指摘済。
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2019/06/27投稿:
日本人を不幸にする立憲民主党の公約1(経済政策編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1206.html2019/06/28投稿:
日本人を不幸にする立憲民主党の公約2(原発ゼロ編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1207.html2019/07/07投稿:
日本人を不幸にする立憲民主党の公約3(憲法・外交安保編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1213.html2017/10/19投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む1 ※経済問題
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-783.html2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2 ※「原発ゼロ」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html2017/10/21:投稿
立憲民主党の選挙公約を読む3 ※「地域主権」との国体破壊
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-785.html(*4):福島ミズポ1人の政党・社民党が公約の「土台」だとして今回衆議院選向けに発表した文章がある。
↓
Yahooニュース(共同通信) 8/25(水) 16:03配信
見出し:◆社民党「消費税3年ゼロ」を柱に 最低賃金1500円に、衆院選へ
https://news.yahoo.co.jp/articles/096a7714ae4f3c0e2a694643b9d9b43a24cfca01記事:○社民党は25日、次期衆院選公約の土台となる重点政策を発表した。新型コロナウイルス禍の経済対策として、消費税を3年間ゼロにすることが柱。生活困窮者に対する10万円給付や最低賃金の全国一律1500円への引き上げ、原発廃止に向けた「原発ゼロ基本法」の制定を盛り込んだ。
○消費税ゼロで生じる財源の不足分を埋める方策として、大企業の内部留保に3年間課税するとした。消費税について立憲民主党や共産党は5%への引き下げを訴えており、野党の衆院選共通政策として調整する場合は受け入れる方針だ。
○重点政策には、ほかに選択的夫婦別姓の実現と同性婚の法制化などを掲げた。
<引用終わり>
※記事中にある「社民党・重点政策」
社民党HP 2021年 重点政策
https://sdp.or.jp/priority-policy-2021/1.新型コロナ感染症災害からの生活再建
1)消費税3年間ゼロ、財源は内部留保への課税
2)大企業・富裕層への課税強化と社会保険料の軽減
3)公的責任を強化。休業要請は保障とセットで
4)利用しやすい生活保護制度に変える
5)医療機関、介護・医療従事者を支援。地域医療を守る
2.格差・貧困の解消
6)非正規雇用に歯止め。雇用の安定を実現
7)最低賃金を全国一律1500円/時に引き上げ
8)高等教育までの教育費の無償化。奨学金は原則給付型
9)75歳以上の高齢者医療費負担2倍化反対
3.地球環境と人間の共生
10)「原発ゼロ基本法案」成立を。老朽原発再稼働反対
11)福島第一原発汚染水海洋放出反対。生活保障と被曝管理
12)2050年までに温暖化ガスゼロ、グリーンリカバリー
13)漁業法、種苗法改悪に反対。食糧自給率50%に
14)防災・減災に向けたインフラ整備
4.ジェンダー平等社会の実現
15)男女平等、選択的夫婦別姓導入、世帯主義から個人主義へ
16)女性の貧困問題、自殺対策。「生理の貧困」問題解決
17)意思決定機関における女性の比率を引き上げ
18)女性への暴力を根絶。性暴力禁止法制定
5.多様性に富む福祉社会の実現と差別の根絶
19)実効性のある包括的差別禁止法をつくる
20)同性婚を法制化、LGBT差別解消法
21)子どもの権利基本法制定
22)共生社会の日本に、定住外国人に地方参政権
23)移動の権利の保障
24)公権力の管理・監視強化から個人情報と権利をまもる
6.平和外交で日本とアジアの平和を目指す
25)憲法改悪反対。憲法をくらしに活かす政治を実現
26)安保法制、秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法廃止
27)普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設断念を
28)日米地位協定改定。対等・平等な日米平和友好条約に転換
29)南西諸島や馬毛島の軍事基地化に反対
30)平和外交で北東アジア非核平和地帯を。核兵器禁止条約に加入
資料編
(*5):以前から指摘しているが「内部留保」は、けして「企業の金庫にある現金や企業の預金残高」という資産なのではない。内部留保は、会計上の企業の過去からの利益の集積値でしかなく、貸借対照表の資産が左側に記載されるのに対して内部留保は、右側の負債及び資本側に記載されるものである。社民党が勘違いしているのは共産党が以前から流布している詭弁を、そのまま使用しているものである。
↓
2018/07/03投稿:
共産党の詭弁「内部留保」が続いている
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-970.html(*6):2019年7月の参議院選挙の際に、特定野党は一斉に「最低賃金の引き上げ」を公約にしている。
↓
2019/07/14投稿:
選挙公約・読み方のポイント(総論+最低賃金)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1218.html(*7):社民党は「原発廃止に向けた「原発ゼロ基本法」の制定」なる公約土台を掲げているが、これは立憲民主党や小沢一郎の「票になる政策」への単純なる相乗りである。
↓
2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2 ※「原発ゼロ」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html2018/07/19投稿:
手段が目的化した不見識・小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-981.html【ご参考】
2019/09/26投稿:
3度目の烏合の衆の数合わせを画策している小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1262.html(*8):我が国の石炭火力は「超々臨界圧発電方式」であり、中国などの石炭火力がPM2.5などの粉塵や二酸化炭素やSOX,NOXをバンバン排出しているのと大きく異なっているのだが、あたかも同列であるかの様に反対している。
↓
2020/01/25投稿:
新聞記事の軸足の置き方・日本の高効率石炭火力発電技術
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1314.html2021/01/08投稿:
上面を舐めるだけ記事「ベトナム・ブンアン2石炭火力発電所案件」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1456.html1日1回ポチっとな ↓
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