共産党の「民主主義」・立憲民主党の「立憲主義」
- 2021/08/15
- 21:16
共産党の「民主主義」・立憲民主党の「立憲主義」
副題:言葉の定義をすり替えて人々を誤解させる手法は彼等の常套手段。
聞いたことがあると思うが、選挙が近付くと共産党は「共産党は平和と民主主義云々」との謳い文句を言いだすのだが、共産党が目指す共産主義と民主主義は異なるものである。
この種明かしは、共産党が言う「民主主義」とは、我々が認知する民主主義ではなく、中国や北朝鮮の様な人民共和国体制のことである。それを「民主主義」と称しているものである。
我々日本人が民主主義と言う場合、①:選挙により国民が国の行く末を決定できる選挙制度・る政権選択制度があること、②:行政・立法・司法の三権が互いに牽制しあう三権分立の制度があること、③:法治主義が貫徹されていること・貫徹される制度があること、などが存在・確立しており、それらの運用が言論の自由・国民の知る権利(*1)等の補完的諸制度とともになされている事を以て民主主義だと理解するものである。
一方、共産主義では、唯一指導党の共産党が「人民の為」にする政治がもっとも人民の為になるのだから、その体制が確固としたものになるまで、ずっと唯一指導党・共産党が政権を担う必要があるとのプロレタリアート独裁が是とされ、政権交代が可能な選挙制度は反革命だとして否定される。
唯一指導党の共産党が「人民の為」にする政治が「民」が「主」だとして、それを「民主主義」だと称しているものなのである。
日本共産党では、不破・志位体制下の現在、同党綱領から「プロレタリアート独裁」の文字列はおろか、「プロレタリアート執権」とか「民主集中」とかの文字も消えてしまっているが、それらの代わりに書かれている「民主主義革命」とか「民主主義」の意味・中身は共産主義革命・共産主義である。詳しくは以前の論考をご再読いただきたい。(*2)
中華人民共和国とか、朝鮮民主主義人民共和国とかの共産主義独裁国家での各種制度は、上記した我々日本や欧米民主主義国の諸制度とは異なっている。
その一方、北朝鮮などは自国の正式国名に「民主主義」を入れ込んでいる。
これはけして冗談ではなく、唯一指導党(北朝鮮での名称は労働党)による共産主義体制維持の為の独裁政治が「人民の為」のものだから、それが「民」が「主」の政治体制だとして「民主主義」を自称しているものだ。
この様にに「民主主義」との同一の単語を使っていても、その中身・実態・概念は異なるものなのである。
日本共産党の綱領に出てくる「民主主義」との語句の意味を「共産党独裁の共産主義」に置き換えて読むと、実に共産党らしいとても分かり易いものになるので、各位ご検証いただきたい。
共産党が使う「民主主義」が一般的なものとは大きく異なるのと同様、立憲民主党が使う「立憲主義」も、本来的意味とは異なっている。
立憲主義が確立する前史からすれば、立憲主義の基本的考え方は、法の制定と法の総適用と言って良い。王様も貴族も庶民も、法が同じく適用されることを是とするものだと言って良い。
立憲主義は英語で「Constitutionalism」であるが、「Constitute」=構造・構成、即ち、国の形・その国の生活実態の集積を経て確立された正邪判断基準のことである。
従前の絶対王政による統治から、「Constitution=憲法」との基本法に基づく統治へと変え実施するとの考え方のことであり、統治者自身が憲法を守るとの構造である。
これにより、国家の基本理念に反する恣意的な統治を防止するものである
当時の列強諸国で立憲主義が原則であった明治期に我が国も憲法を制定(1889年(明治22年)2月11日)した。その際に明治天皇は上諭にて明治天皇自身がこの憲法(大日本帝国憲法)に従うとの宣言が書かれている。(*3)
↓
<大日本帝国憲法上諭から抜粋引用(当方による現代語訳)>
ここに憲法を制定し、私とともに憲法に従うことを示し、私の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
<引用終わり>
大日本帝国憲法は明治憲法と通称されているが、同憲法は、上諭に書いてある通り、民撰議院設立建白書により帝国議会を制定することが大きな目的の1つである。
「民選議院」とは、まさに選挙により「民」が議会の議員を選ぶという事であり、民選議会の多数党の代表を総理大臣にするとの明治憲法の方式は英国と同様のものだ。(*4)
そして、現行憲法(昭和21年憲法)に於いても、その原則は同じである。
また、立憲主義が機能する、もう1つの前提として、憲法が、その国の形に則ったものであることが必要だ。
伊藤博文が大日本帝国憲法編纂の為に訪欧した際に、ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストは、憲法の法文のみに注目することを諌める言葉を残している。
「憲法とは精神である、国家の能力である。」とし「日本の今日迄の君民の実体や風俗人情や歴史」に基づき日本の憲法は編纂されるべきものだと19世紀プロイセンの学者らしく辛辣ながら的確な言葉を述べている。
文末脚注の「(*5)」に同氏の言葉を紹介しているので、是非ともご一読いただきたい。
何故、明治憲法編纂時の話をしているのかというと、それは現行憲法が日本人の手によって書かれたものではないからだ。(*6)
1946年2月に僅か1週間から10日程度で、マッカーサー3原則に基づき作成されたGHQ草案が現行憲法の原型であることは、国立国会図書館の資料を用いて以前の論考で論証している通りである。
我が国とは異なるアメリカの文化・文明に基づいて書かれた現行憲法は、プロイセンの法学者が厳しく諌めた「国の形と異なる「憲法」」であり、憲法としてまったく相応しくないものである。その様な現行憲法では、立憲主義が成り立たないのである。(*7)
敗戦後の占領時主権喪失していた時期に、見識なきGHQ・マッカーサーにより我が国文明・国柄・習俗を無視して作られた現行憲法が「憲法問題」の元凶である。こういう特殊な経緯がなければ、普通の国の憲法は、その国の普遍的な正義・理念を成文法化しており、その国の絶対的ルールとしても、こんなに長く、延々と問題化することはなかったであろう。ところが、実際はそうではないので、特殊な出自の現行憲法を「さも普遍的な絶対的ルールであるが如きの前提を置いていること」自体が歪んだ発想になっているのである。
現行憲法では立憲主義が成り立たないのである。
そうであるにも関わらず、枝野達は「立憲主義・立憲民主党」を名乗っている。
成り立たない「立憲主義」を言っている真相は、現行憲法の残置=前文+9条の維持との「護憲」そのものである。
要するに、枝野達が言っている立憲主義などは単なる護憲の言い換えでしかない。
枝野達が「立憲民主党・立憲主義」を名乗ったのは、2017年10月総選挙の際の民進党崩壊・分裂時である。(*8)
しかし、枝野が「立憲民主党」との党名を言いだしたのは、この時が初めてではない。
民主党が崩壊し「民進党」へと党名ロンダリングをした2016年3月の時点で「新党の党名候補」として「立憲民主党または民進党」として世に出ていたものだ。(*9)
当方がインチキ定義の「立憲主義」に初遭遇したのは、その前年の2015年の夏である。
早速に、その虚構について指摘したが、今思えば、その頃から偽定義「立憲主義」を以て情宣活動をし始めていたのだと思う。(*10)
あれから既に6年が経過しているが、あまり効果がない様であるものの、言葉の定義を塗り替えるやり方は遅行性なので注意が必要だ。
立憲民主党が言う「立憲主義」とは単なる「護憲」の言い換えに過ぎないということを忘れないでいただきたい。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):言論の自由・国民の知る権利等の補完的諸制度とともになされている事を以て民主主義だと理解する
↓
2016/02/24投稿:
【コラム】「報道の自由」・「国民の知る権利」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-342.html
2017/08/19投稿:
国民の知る権利
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-734.html
2017/08/06投稿:
民主主義の土台を壊している偏向マスコミ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-727.html
(*2):日本共産党では、不破・志位体制下の現在、同党綱領から「プロレタリアート独裁」の文字列はおろか、「プロレタリアート執権」とか「民主集中」とかの文字も消えてしまっているが、それらの代わりに書かれている「民主主義革命」とか「民主主義」の意味・中身は共産主義革命・共産主義である。詳しくは以前の論考をご再読いただきたい。
↓
2017/02/27投稿:
「国民の幸福」に軸足のない政治集団は不要
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-615.html
2017/11/14投稿:
憲法議論で本音を言わない、言えない野党
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-802.html
2018/03/26投稿:
国の形をぶっ壊したい共産党の逆ねじ論法
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-890.html
2018/05/06投稿:
共産党・志位は党綱領に従い、共産主義憲法への改憲を目指す(憲法記念日2018)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-922.html
2021/07/26投稿:
共産党・小池の駄弁は相変わらず(後編)共産党の見解・自衛隊は違憲
副題:特定野党の「連立政権」での共産党は「自衛隊は合憲」だと言い、共産党内部では「自衛隊は違憲」だと言う。状況に応じて都合よく見解を使い分ける二枚舌は共産党綱領の二段階革命論からの必然。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1536.html
etc.
(*3):我が国も憲法を制定(1889年(明治22年)2月11日)した。その際の明治天皇の上諭には、明治天皇自身がこの憲法(大日本帝国憲法)に従うとの宣言が書かれている。
↓
<大日本帝国憲法 上諭>
-朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ卽チ朕カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進シ其ノ懿德良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ俱ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
↓
<当方による現代語訳>
私(明治天皇)は神武天皇から始まる我が国歴代天皇の功績を受けて、万世一系の帝位を受け継ぎ、我が親愛なる臣民(国民)は、我が皇統が恵み、愛し、慈しみ、養ったところの臣民(国民)であることを思い、その幸福を増進し、その徳と才能を育成させることを願い、またその補佐により、ともに国家運営を補助してくれることを希望します。
そこで明治十四年十月十二日の勅命(国会開設の勅諭)を実践し、ここに憲法を制定し、私とともに憲法に従うことを示し、私の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
【ご参考】
2015/01/23投稿:
3-2憲法発布勅語
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
2016/04/26投稿:
(資料編)大日本帝国憲法・現代語訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-395.html
(*4):「民選議院」とは、まさに選挙により「民」が議会の議員を選ぶという事であり、民選議会の多数党の代表を総理大臣にするとの明治憲法の方式は英国と同様のものだそして、現行憲法(昭和21年憲法)に於いても、その原則は同じである。
↓
2016/03/07投稿:
自己検証34 主権・人権概念での検証
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-353.html
(*5):伊藤博文が大日本帝国憲法編纂の為に訪欧した際に、ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストは、憲法の法文のみに注目することを諌める言葉を残している。
↓
<憲法の法文のみに注目することを諌める言葉>
伊藤博文は憲法編纂の為に明治15年(1882年)3月4日横浜から欧州に向けて出発し、翌年8月4日に戻るまでの約1年半の間、ドイツやイギリス等を訪問した。
ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストを訪問した伊藤博文が憲法編纂のために「参考になる材料」を要請したところ、ルドルフ・フォン・グナイストは以下の様に答えたと記録されている。
【それは遠方から独逸を目標にお出でくださったのは感謝の至りだが、憲法は法文ではない。精神である、国家の能力である。
余は独逸人であり、かつ欧州人である。欧州各国の事は一通り知って居る、独逸の事は最も能く知って居る、が遺憾ながら日本国の事は知って居ない。
それも研究したら解るだろうが、先ず余から日本の事をお尋ね致そう、日本国の今日迄の君民の実体且は風俗人情、其の他過去の歴史を明瞭に説明して貰いたい。それに就て考えて、御参考になる事は申し述べても宜い。
それを申し上げるけれども、確か夫が貴君の御参考になるか如何か、憲法編纂の根拠になるか如何かは余に於て自信はない。】
(*6):何故、明治憲法編纂時の話をしているのかというと、それは現行憲法が日本人の手によって書かれたものではないからだ。1946年2月に僅か1週間から10日程度で、マッカーサー3原則に基づき作成されたGHQ草案が現行憲法の原型であることは、国立国会図書館の資料を用いて以前の論考で論証している通りである。
↓
<現行憲法に至る過程>
2017/05/20投稿:
(資料編)憲法前文の登場・9条の登場と変遷
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-674.html
↓
<マッカーサー三原則>
2016/07/29投稿:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
◆第1原則:天皇条項
2016/07/30投稿:
(解説編1)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-468.html
◆第2原則:非武装規定・前文+9条
2016/07/31投稿:
(解説編2)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-469.html
◆第3原則:マッカーサーの誤解・日本は中世封建社会?
2016/08/01投稿:
(解説編3)資料・マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-470.html
(*7):我が国とは異なるアメリカの文化・文明に基づいて書かれた現行憲法は、プロイセンの法学者が厳しく諌めた「国の形と異なる「憲法」」であり、憲法としてまったく相応しくないものである。その様な現行憲法では、立憲主義が成り立たないのである。
↓
2016/11/29投稿:
「立憲主義」は現行憲法では成り立たない
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-553.html
2017/07/19投稿:
続・「立憲主義」は現行憲法では成り立たない
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-715.html
【ご参考】
2018/03/08投稿:
立憲民主党のいう「立憲主義」など単なる「護憲」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-876.html
(*8):枝野達が「立憲民主党・立憲主義」を名乗ったのは、2017年10月総選挙の際の民進党崩壊・分裂時である。
↓
2017/10/12投稿:
選挙の度に繰り返される愚行
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-777.html
2017/10/13投稿:
続・選挙の度に繰り返される愚行
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-778.html
(*9):しかし、枝野が「立憲民主党」との党名を言いだしたのは、この時が初めてではない。民主党が崩壊し「民進党」へと党名ロンダリングをした2016年3月の時点で「新党の党名候補」として「立憲民主党または民進党」として世に出ていたものだ。
↓
2016/03/06投稿:
【コラム】党名公募
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-352.html
2016/03/12投稿:
【コラム】党名公募2「立憲民主党?」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-358.html
【ご参考】
2016/07/12投稿:
【コラム】正論・「立憲主義」というネジ曲がった妖怪
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-454.html
2016/10/12投稿:
定義ネジ曲げ「立憲主義」(民進党の憲法観2)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-518.html
2016/11/27投稿:
定義捻じ曲げ「立憲主義」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-551.html
(*10):当方がインチキ定義の「立憲主義」に初遭遇したのは2015年の夏である。早速に、その虚構について指摘したが、今思えば、その頃から偽定義「立憲主義」を以て情宣活動をし始めていたのだと思う。
↓
2015/08/04投稿:
【コラム】国会前での新表現「立憲主義」の虚構
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-174.html
【ご参考】
2015/08/02投稿:
【コラム】「憲法とは何か」の論理展開に異議あり
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-172.html
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副題:言葉の定義をすり替えて人々を誤解させる手法は彼等の常套手段。
共産党が言う「民主主義」とは共産主義・人民共和国化のこと
聞いたことがあると思うが、選挙が近付くと共産党は「共産党は平和と民主主義云々」との謳い文句を言いだすのだが、共産党が目指す共産主義と民主主義は異なるものである。
この種明かしは、共産党が言う「民主主義」とは、我々が認知する民主主義ではなく、中国や北朝鮮の様な人民共和国体制のことである。それを「民主主義」と称しているものである。
我々日本人が民主主義と言う場合、①:選挙により国民が国の行く末を決定できる選挙制度・る政権選択制度があること、②:行政・立法・司法の三権が互いに牽制しあう三権分立の制度があること、③:法治主義が貫徹されていること・貫徹される制度があること、などが存在・確立しており、それらの運用が言論の自由・国民の知る権利(*1)等の補完的諸制度とともになされている事を以て民主主義だと理解するものである。
一方、共産主義では、唯一指導党の共産党が「人民の為」にする政治がもっとも人民の為になるのだから、その体制が確固としたものになるまで、ずっと唯一指導党・共産党が政権を担う必要があるとのプロレタリアート独裁が是とされ、政権交代が可能な選挙制度は反革命だとして否定される。
唯一指導党の共産党が「人民の為」にする政治が「民」が「主」だとして、それを「民主主義」だと称しているものなのである。
日本共産党では、不破・志位体制下の現在、同党綱領から「プロレタリアート独裁」の文字列はおろか、「プロレタリアート執権」とか「民主集中」とかの文字も消えてしまっているが、それらの代わりに書かれている「民主主義革命」とか「民主主義」の意味・中身は共産主義革命・共産主義である。詳しくは以前の論考をご再読いただきたい。(*2)
中華人民共和国とか、朝鮮民主主義人民共和国とかの共産主義独裁国家での各種制度は、上記した我々日本や欧米民主主義国の諸制度とは異なっている。
その一方、北朝鮮などは自国の正式国名に「民主主義」を入れ込んでいる。
これはけして冗談ではなく、唯一指導党(北朝鮮での名称は労働党)による共産主義体制維持の為の独裁政治が「人民の為」のものだから、それが「民」が「主」の政治体制だとして「民主主義」を自称しているものだ。
この様にに「民主主義」との同一の単語を使っていても、その中身・実態・概念は異なるものなのである。
日本共産党の綱領に出てくる「民主主義」との語句の意味を「共産党独裁の共産主義」に置き換えて読むと、実に共産党らしいとても分かり易いものになるので、各位ご検証いただきたい。
立憲民主党が言う「立憲主義」とは単なる「護憲」=前文+9条残置が目的
共産党が使う「民主主義」が一般的なものとは大きく異なるのと同様、立憲民主党が使う「立憲主義」も、本来的意味とは異なっている。
立憲主義が確立する前史からすれば、立憲主義の基本的考え方は、法の制定と法の総適用と言って良い。王様も貴族も庶民も、法が同じく適用されることを是とするものだと言って良い。
立憲主義は英語で「Constitutionalism」であるが、「Constitute」=構造・構成、即ち、国の形・その国の生活実態の集積を経て確立された正邪判断基準のことである。
従前の絶対王政による統治から、「Constitution=憲法」との基本法に基づく統治へと変え実施するとの考え方のことであり、統治者自身が憲法を守るとの構造である。
これにより、国家の基本理念に反する恣意的な統治を防止するものである
当時の列強諸国で立憲主義が原則であった明治期に我が国も憲法を制定(1889年(明治22年)2月11日)した。その際に明治天皇は上諭にて明治天皇自身がこの憲法(大日本帝国憲法)に従うとの宣言が書かれている。(*3)
↓
<大日本帝国憲法上諭から抜粋引用(当方による現代語訳)>
ここに憲法を制定し、私とともに憲法に従うことを示し、私の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
<引用終わり>
大日本帝国憲法は明治憲法と通称されているが、同憲法は、上諭に書いてある通り、民撰議院設立建白書により帝国議会を制定することが大きな目的の1つである。
「民選議院」とは、まさに選挙により「民」が議会の議員を選ぶという事であり、民選議会の多数党の代表を総理大臣にするとの明治憲法の方式は英国と同様のものだ。(*4)
そして、現行憲法(昭和21年憲法)に於いても、その原則は同じである。
また、立憲主義が機能する、もう1つの前提として、憲法が、その国の形に則ったものであることが必要だ。
伊藤博文が大日本帝国憲法編纂の為に訪欧した際に、ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストは、憲法の法文のみに注目することを諌める言葉を残している。
「憲法とは精神である、国家の能力である。」とし「日本の今日迄の君民の実体や風俗人情や歴史」に基づき日本の憲法は編纂されるべきものだと19世紀プロイセンの学者らしく辛辣ながら的確な言葉を述べている。
文末脚注の「(*5)」に同氏の言葉を紹介しているので、是非ともご一読いただきたい。
何故、明治憲法編纂時の話をしているのかというと、それは現行憲法が日本人の手によって書かれたものではないからだ。(*6)
1946年2月に僅か1週間から10日程度で、マッカーサー3原則に基づき作成されたGHQ草案が現行憲法の原型であることは、国立国会図書館の資料を用いて以前の論考で論証している通りである。
我が国とは異なるアメリカの文化・文明に基づいて書かれた現行憲法は、プロイセンの法学者が厳しく諌めた「国の形と異なる「憲法」」であり、憲法としてまったく相応しくないものである。その様な現行憲法では、立憲主義が成り立たないのである。(*7)
敗戦後の占領時主権喪失していた時期に、見識なきGHQ・マッカーサーにより我が国文明・国柄・習俗を無視して作られた現行憲法が「憲法問題」の元凶である。こういう特殊な経緯がなければ、普通の国の憲法は、その国の普遍的な正義・理念を成文法化しており、その国の絶対的ルールとしても、こんなに長く、延々と問題化することはなかったであろう。ところが、実際はそうではないので、特殊な出自の現行憲法を「さも普遍的な絶対的ルールであるが如きの前提を置いていること」自体が歪んだ発想になっているのである。
現行憲法では立憲主義が成り立たないのである。
そうであるにも関わらず、枝野達は「立憲主義・立憲民主党」を名乗っている。
成り立たない「立憲主義」を言っている真相は、現行憲法の残置=前文+9条の維持との「護憲」そのものである。
要するに、枝野達が言っている立憲主義などは単なる護憲の言い換えでしかない。
枝野達が「立憲民主党・立憲主義」を名乗ったのは、2017年10月総選挙の際の民進党崩壊・分裂時である。(*8)
しかし、枝野が「立憲民主党」との党名を言いだしたのは、この時が初めてではない。
民主党が崩壊し「民進党」へと党名ロンダリングをした2016年3月の時点で「新党の党名候補」として「立憲民主党または民進党」として世に出ていたものだ。(*9)
当方がインチキ定義の「立憲主義」に初遭遇したのは、その前年の2015年の夏である。
早速に、その虚構について指摘したが、今思えば、その頃から偽定義「立憲主義」を以て情宣活動をし始めていたのだと思う。(*10)
あれから既に6年が経過しているが、あまり効果がない様であるものの、言葉の定義を塗り替えるやり方は遅行性なので注意が必要だ。
立憲民主党が言う「立憲主義」とは単なる「護憲」の言い換えに過ぎないということを忘れないでいただきたい。
今回は以上である。
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(*1):言論の自由・国民の知る権利等の補完的諸制度とともになされている事を以て民主主義だと理解する
↓
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2017/08/19投稿:
国民の知る権利
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民主主義の土台を壊している偏向マスコミ
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↓
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「国民の幸福」に軸足のない政治集団は不要
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2017/11/14投稿:
憲法議論で本音を言わない、言えない野党
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2018/03/26投稿:
国の形をぶっ壊したい共産党の逆ねじ論法
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共産党・志位は党綱領に従い、共産主義憲法への改憲を目指す(憲法記念日2018)
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2021/07/26投稿:
共産党・小池の駄弁は相変わらず(後編)共産党の見解・自衛隊は違憲
副題:特定野党の「連立政権」での共産党は「自衛隊は合憲」だと言い、共産党内部では「自衛隊は違憲」だと言う。状況に応じて都合よく見解を使い分ける二枚舌は共産党綱領の二段階革命論からの必然。
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(*3):我が国も憲法を制定(1889年(明治22年)2月11日)した。その際の明治天皇の上諭には、明治天皇自身がこの憲法(大日本帝国憲法)に従うとの宣言が書かれている。
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<大日本帝国憲法 上諭>
-朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ卽チ朕カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進シ其ノ懿德良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ俱ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ玆ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
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<当方による現代語訳>
私(明治天皇)は神武天皇から始まる我が国歴代天皇の功績を受けて、万世一系の帝位を受け継ぎ、我が親愛なる臣民(国民)は、我が皇統が恵み、愛し、慈しみ、養ったところの臣民(国民)であることを思い、その幸福を増進し、その徳と才能を育成させることを願い、またその補佐により、ともに国家運営を補助してくれることを希望します。
そこで明治十四年十月十二日の勅命(国会開設の勅諭)を実践し、ここに憲法を制定し、私とともに憲法に従うことを示し、私の子孫および臣民とまたその子孫によって永遠に命令に従い実行してくれることを知らしめる。
【ご参考】
2015/01/23投稿:
3-2憲法発布勅語
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-8.html
2016/04/26投稿:
(資料編)大日本帝国憲法・現代語訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-395.html
(*4):「民選議院」とは、まさに選挙により「民」が議会の議員を選ぶという事であり、民選議会の多数党の代表を総理大臣にするとの明治憲法の方式は英国と同様のものだそして、現行憲法(昭和21年憲法)に於いても、その原則は同じである。
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2016/03/07投稿:
自己検証34 主権・人権概念での検証
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-353.html
(*5):伊藤博文が大日本帝国憲法編纂の為に訪欧した際に、ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストは、憲法の法文のみに注目することを諌める言葉を残している。
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<憲法の法文のみに注目することを諌める言葉>
伊藤博文は憲法編纂の為に明治15年(1882年)3月4日横浜から欧州に向けて出発し、翌年8月4日に戻るまでの約1年半の間、ドイツやイギリス等を訪問した。
ドイツ(当時はプロイセン)の法学者ルドルフ・フォン・グナイストを訪問した伊藤博文が憲法編纂のために「参考になる材料」を要請したところ、ルドルフ・フォン・グナイストは以下の様に答えたと記録されている。
【それは遠方から独逸を目標にお出でくださったのは感謝の至りだが、憲法は法文ではない。精神である、国家の能力である。
余は独逸人であり、かつ欧州人である。欧州各国の事は一通り知って居る、独逸の事は最も能く知って居る、が遺憾ながら日本国の事は知って居ない。
それも研究したら解るだろうが、先ず余から日本の事をお尋ね致そう、日本国の今日迄の君民の実体且は風俗人情、其の他過去の歴史を明瞭に説明して貰いたい。それに就て考えて、御参考になる事は申し述べても宜い。
それを申し上げるけれども、確か夫が貴君の御参考になるか如何か、憲法編纂の根拠になるか如何かは余に於て自信はない。】
(*6):何故、明治憲法編纂時の話をしているのかというと、それは現行憲法が日本人の手によって書かれたものではないからだ。1946年2月に僅か1週間から10日程度で、マッカーサー3原則に基づき作成されたGHQ草案が現行憲法の原型であることは、国立国会図書館の資料を用いて以前の論考で論証している通りである。
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<現行憲法に至る過程>
2017/05/20投稿:
(資料編)憲法前文の登場・9条の登場と変遷
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-674.html
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<マッカーサー三原則>
2016/07/29投稿:
(資料編)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-467.html
◆第1原則:天皇条項
2016/07/30投稿:
(解説編1)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-468.html
◆第2原則:非武装規定・前文+9条
2016/07/31投稿:
(解説編2)マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-469.html
◆第3原則:マッカーサーの誤解・日本は中世封建社会?
2016/08/01投稿:
(解説編3)資料・マッカーサー3原則
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-470.html
(*7):我が国とは異なるアメリカの文化・文明に基づいて書かれた現行憲法は、プロイセンの法学者が厳しく諌めた「国の形と異なる「憲法」」であり、憲法としてまったく相応しくないものである。その様な現行憲法では、立憲主義が成り立たないのである。
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2016/11/29投稿:
「立憲主義」は現行憲法では成り立たない
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-553.html
2017/07/19投稿:
続・「立憲主義」は現行憲法では成り立たない
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-715.html
【ご参考】
2018/03/08投稿:
立憲民主党のいう「立憲主義」など単なる「護憲」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-876.html
(*8):枝野達が「立憲民主党・立憲主義」を名乗ったのは、2017年10月総選挙の際の民進党崩壊・分裂時である。
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2017/10/12投稿:
選挙の度に繰り返される愚行
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-777.html
2017/10/13投稿:
続・選挙の度に繰り返される愚行
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-778.html
(*9):しかし、枝野が「立憲民主党」との党名を言いだしたのは、この時が初めてではない。民主党が崩壊し「民進党」へと党名ロンダリングをした2016年3月の時点で「新党の党名候補」として「立憲民主党または民進党」として世に出ていたものだ。
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2016/03/06投稿:
【コラム】党名公募
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-352.html
2016/03/12投稿:
【コラム】党名公募2「立憲民主党?」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-358.html
【ご参考】
2016/07/12投稿:
【コラム】正論・「立憲主義」というネジ曲がった妖怪
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-454.html
2016/10/12投稿:
定義ネジ曲げ「立憲主義」(民進党の憲法観2)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-518.html
2016/11/27投稿:
定義捻じ曲げ「立憲主義」の笑止千万
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-551.html
(*10):当方がインチキ定義の「立憲主義」に初遭遇したのは2015年の夏である。早速に、その虚構について指摘したが、今思えば、その頃から偽定義「立憲主義」を以て情宣活動をし始めていたのだと思う。
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2015/08/04投稿:
【コラム】国会前での新表現「立憲主義」の虚構
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-174.html
【ご参考】
2015/08/02投稿:
【コラム】「憲法とは何か」の論理展開に異議あり
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-172.html
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