ミャンマー情勢第一報・アウンサン・スー・チー拘束に関して
- 2021/02/01
- 22:38
ミャンマー情勢第一報・アウンサン・スー・チー拘束に関して
副題:ミャンマーの地政学的特性は中国とインド洋の間に位置していること。
本日朝一番に入ってきたニュースで当方がもっとも注目したのは、ミャンマーでの総選挙後初の議会が開催される2月1日未明のアウンサン・スー・チー拘束のでニュースである。
日本時間8時18分の日経ニュース(*1)がそれである。
ミャンマーと日本の時差は2時間半。日本時間午前8時はミャンマーでは早朝の午前5時半である。
同ニュースには「注目した」のであって、「驚いた」とは形容していない。
何故なら、そういう兆候があったからである。
「そういう兆し」の情報は、何も現地からの直接情報ルートがなくても知ることが可能な話である。日経新聞のミャンマー記事を読んでいれば知ることが出来たからだ。
以下に、日経記事のうち「兆し」が察せられる主な記事を羅列する。
↓
2021/01/26日経記事(*2)
見出し:◆ミャンマー国軍「総選挙に不正」 民主化勢力けん制2月1日に議会招集控え
<抜粋引用>
・総選挙(昨年11月)では民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝し、国軍系野党が議席を減らした。
・2月1日の連邦議会招集を前に不満を表明し、民主化勢力をけん制した。
2021/01/29日経記事(*3)
見出し:ミャンマー駐在外交団「国軍は民主主義規範の順守を」
<抜粋引用>
・ミャンマー駐在の欧米外交団(米、EU、英、豪、加)は29日の共同声明で「国軍は民主主義の規範を順守するよう」求めた。
・総選挙後初の議会が2月1日に招集されるのを前に、選挙で不正があったとの批判を強める国軍に自制を促した。
2021/01/30日経記事(*4)
見出し:ミャンマー国軍「現行憲法を順守する」 声明を発表
<抜粋引用>
・ミャンマー国軍は30日、「国軍は現行憲法を擁護し順守する」との声明を発表した。
・国軍は2020年11月の総選挙で不正があった可能性があると指摘。国軍報道官は記者会見でクーデターを起こす可能性を否定せず、緊張が高まっていた。
先週の火曜、金曜、土曜の記事であるのだから、兆候としては十分だと思うのだが、如何であろう?。
とは言え、多分、「ミャンマー」と言われてもピンとこない人が多いと思う。ミャンマーは以前は「ビルマ」と言われていた国である。「ビルマの竪琴」は知っていても「ミャンマー」は馴染がないのではないかと思う。
ミャンマーの旧首都「ヤンゴン」も、以前は「ラングーン」と呼ばれていたのである。
当方は、ビジネスの関係でヤンゴンや新首都ネピドーに何回も出向いており、その回数は通算で10数回であり、ミャンマーは個人的な注目地域となっていることから、この様な見方となったものであるが、実は、日経記事でもっとも注目したのはミャンマー総選挙の結果を報じた昨年(2020年)11月13日の記事(*5)である。
同記事の最後の部分が実に的確な指摘だったからである。
↓
<引用開始>
○欧米の圧力を受け、スー・チー政権はロヒンギャのミャンマー帰還を認めたが進んでいない。ロヒンギャへの国籍付与にも消極的だ。欧米の人権団体からはスー・チー氏からノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もある。
○近づいてくるのは中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」のもとでインフラ整備などを軸にミャンマーへの投融資を積み上げる。スー・チー氏も「中国は最も大事なパートナーだ」と言明する。
○中国にとっては、陸路でミャンマーを通じインド洋に抜けるルートは安全保障の面でも重要だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想とぶつかりかねないリスクをはらむ。
<引用終わり>
地図をご覧いただければ分かる通り、ミャンマーはちょうど中国とインド洋の間に位置している。
中国の海洋侵出については、南沙諸島や我が国南西諸島の尖閣列島がニュースになっているが、中国はインド洋への進出も模索しており、既に何年も前からインド洋に於ける海洋戦略として「真珠の首飾り」戦略を実行中である。
その拠点の1つがインド洋に面したミャンマーのシットウェーである。
そこに出る為に、中国領からミャンマー第2の都市マンダレーを経由してのルートを開拓中である。
その様な危険な動きに関して、当方は2017年9月に「国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察」(*6)との論考で以下の様に述べている。
↓
<引用開始>
この問題は、ミャンマーの地政学的問題なのではないかと疑っている。
中国の海洋侵出を中国の立場で考えると、中国の唯一の海岸線である国土の東側から海に進出する際には、我が国南西諸島・台湾との「第一列島線」で阻止されており、これを避けると、進出先は、南シナ海となる。南シナ海・東シナ海での中国の傍若無人さを見ると、彼等の苛立ちがわかる。
台湾島の南、海南島辺りから海洋に出るとしても、南シナ海から太平洋へと進出するには、台湾とフィリピンに挟まれたバシー海峡を通過することになり、また、アフリカ方面に行くにはマラッカ海峡を通過することになり、何れも自国勢力圏外の国々に挟まれた狭隘な海峡に阻まれる。国際慣習・国際海洋法を遵守すれば良いのだが、中華思想に汚染された覇権主義の中国は、それが我慢ならないらしい。
中国は、海洋侵出戦略として「真珠の首飾り」戦略を随分前から遂行しており、自国領から直接インド洋に出るルートとして、ミャンマー国内を貫くルートを模索中である。
ミャンマーに隣接する自国部分からミャンマーの古都マンダレーを通り、インド洋沿岸のシットウェーと至るルートである。
ミャンマーの第一の都市はヤンゴンであるが、マンダレーは第二の都市である。マンダレーは「中国人だらけ」である。また、シットウェーは前述した中国の「真珠の首飾り」のポイントの1つでもある。
中国がインド洋に進出する際に通過するミャンマーを政治的に隷属させなければ安心できないのが中華思想である。それ故に、中国は、超限戦戦法でミャンマーに食い込むことを着々と狙っている。そういう文脈で「ロヒンギャ「問題」」は見る必要があるのじゃないかと疑っている次第である。
<引用終わり>
この2017年9月の論考は、2015年11月の論考「ミャンマー情勢1&2」(*7)の続編であるので、興味あればそれらもご一読いただきたい。
これらの以前の論考でも指摘しているが、知っての通り我が国メディアは偏向しており、ロヒンギュア問題は「人種差別問題」一辺倒の視点で述べられており、今回の件は「軍部の非民主的クーデター」一辺倒で述べられている。同様、欧米メディアはポリコレ一色で、同じ「報道」姿勢であるのだが、上記した昨年(2020年)11月13日の日経記事の最後の部分だけは秀逸である。
今回は速報なので以上であるが、大事なことなので繰り返す。
メディアのトーンだけで判断することは危険なことなのである。
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【文末脚注】
(*1):日本時間2月1日18時18分の日経ニュース
↓
日本経済新聞電子版 2021/2/1 8:18 (2021/2/1 8:31更新)
見出し:◆ミャンマー国軍、スー・チー氏や大統領を拘束 与党広報担当が確認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM010DQ0R00C21A2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーの与党、国民民主連盟(NLD)の広報担当は1日、事実上の政府トップのアウン・サン・スー・チー国家顧問とウィン・ミン大統領が首都ネピドーで国軍に拘束されたと述べた。日本経済新聞の取材に確認した。
○ミャンマーでは2015年に政権を奪取したスー・チー氏の与党NLDが20年11月の総選挙で再び圧勝し、民主派政権の継続が決まっていた。だが軍は選挙に不正があったと抗議し、調査を要求していた。
<引用終わり>
(*2):先週火曜日2021/01/26日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/26 21:20
見出し:◆ミャンマー国軍「総選挙に不正」 民主化勢力けん制 2月1日に議会招集控え
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM263IJ0W1A120C2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国軍の報道官は26日、首都ネピドーで開いた記者会見で、2020年11月の総選挙(上下両院選)を巡り、有権者の2割に手続き上の不備があったと指摘した。「期日前投票などで不正があった」とも主張した。総選挙では民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝し、国軍系野党が議席を減らした。2月1日の連邦議会招集を前に不満を表明し、民主化勢力をけん制した。
○ゾー・ミン・…
<無料部分引用終わり>
(*3):先週木曜日2021/01/29日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/29 18:00
見出し:◆ミャンマー駐在外交団「国軍は民主主義規範の順守を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM295SP0Z20C21A1000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー駐在の欧米外交団は29日の共同声明で「国軍は民主主義の規範を順守するよう」求めた。民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝した2020年11月の総選挙後初の議会が2月1日に招集されるのを前に、選挙で不正があったとの批判を強める国軍に自制を促した。
○共同声明には米国、欧州連合(EU)、英国、オーストラリア、カナダなどが参加した。「2月1日に平和的に連邦議会…
<無料部分引用終わり>
(*4):先週木曜日2021/01/30日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/30 19:51
見出し:◆ミャンマー国軍「現行憲法を順守する」 声明を発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM302CD0Q1A130C2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国軍は30日、「国軍は現行憲法を擁護し順守する」との声明を発表した。国軍は2020年11月の総選挙(上下院選)で不正があった可能性があると指摘。国軍報道官は記者会見でクーデターを起こす可能性を否定せず、緊張が高まっていた。
○声明はミン・アウン・フライン国軍最高司令官が27日に士官学校で行った演説に関するもの。その演説で国軍司令官は現行憲法の重要性を強調した上で「法…
<無料部分引用終わり>
(*5):日経記事でもっとも注目したのはミャンマー総選挙の結果を報じた昨年(2020年)11月13日の記事である。
↓
日本経済新聞 2020/11/13 23:00
見出し:◆ミャンマー、民主化進展見通せず 与党大勝
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66223970T11C20A1EA2000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】8日投票のミャンマー総選挙(上下両院選)で13日、民主化指導者アウン・サン・スー・チー国家顧問(75)が率いる与党、国民民主連盟(NLD)の大勝が確実になった。国民の支持は底堅いが、民主化の進展は停滞している。
○ミャンマーの選挙管理委員会によると、日本時間午後6時30分現在の確定議席はNLDが計384(上院135、下院249)で、過半数322を大きく超えた。全体の84%を占める。軍政の流れをくむ国軍系の最大野党、連邦団結発展党(USDP)は計28だった。
○開票は続いているが、計390議席を得た2015年の前回総選挙に続く圧勝は間違いない。NLDの報道担当者は独自集計で「議席数は前回の総選挙を上回る見通しだ」と主張した。
○ただスー・チー氏は事実上の政府トップとして、5年前の公約を実現できないままだ。武力衝突を続ける国軍と少数民族の和平と、国軍の政治参加を弱めるための憲法改正を掲げたが進展はみられない。
○国軍は憲法の規定で上下両院のそれぞれ25%を非改選の軍人枠として確保し、国政に影響力を及ぼす。憲法改正には上下両院の全議員の75%を超える賛成が必要で、この仕組みを変えるのは難しい。NLDは軍の政治関与を低下させる憲法改正案を提出したが、3月に否決された。
○有権者は軍事政権がいつでも復活できると考える。軍政への回帰を防ぐにはNLDへ投票するほかにないという有権者側の事情もあった。
○軍政下で計15年間の自宅軟禁に耐えたスー・チー氏の人気は高いが、欧米諸国の視線は厳しい。17年8月に起きたミャンマー国軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害で、70万人以上が隣国バングラデシュに逃れ難民となった。
○欧米の圧力を受け、スー・チー政権はロヒンギャのミャンマー帰還を認めたが進んでいない。ロヒンギャへの国籍付与にも消極的だ。欧米の人権団体からはスー・チー氏からノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もある。
○近づいてくるのは中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」のもとでインフラ整備などを軸にミャンマーへの投融資を積み上げる。スー・チー氏も「中国は最も大事なパートナーだ」と言明する。
○中国にとっては、陸路でミャンマーを通じインド洋に抜けるルートは安全保障の面でも重要だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想とぶつかりかねないリスクをはらむ。
<引用終わり>
(*6):その拠点の1つがインド洋に面したミャンマーのシットウェーである。そこに出る為に、中国領からミャンマー第2の都市マンダレーを経由してのルートを開拓中である。その様な危険な動きに関して、当方は2017年9月に「国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察」との論考で述べている。
↓
2017/09/08投稿:
国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-748.html
(*7):2017年9月の論考は、2015年11月の論考「ミャンマー情勢1&2」の続編であるので、興味あればそれらもご一読いただきたい。
↓
2015/11/25投稿:
【コラム】ミャンマー情勢1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-273.html
2015/11/26投稿:
【コラム】ミャンマー情勢2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-274.html
【ご参考】
2017/10/14投稿
ヤンゴンにて・ロヒンギャ「問題」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-779.html
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副題:ミャンマーの地政学的特性は中国とインド洋の間に位置していること。
本日朝一番に入ってきたニュースで当方がもっとも注目したのは、ミャンマーでの総選挙後初の議会が開催される2月1日未明のアウンサン・スー・チー拘束のでニュースである。
日本時間8時18分の日経ニュース(*1)がそれである。
ミャンマーと日本の時差は2時間半。日本時間午前8時はミャンマーでは早朝の午前5時半である。
同ニュースには「注目した」のであって、「驚いた」とは形容していない。
何故なら、そういう兆候があったからである。
「そういう兆し」の情報は、何も現地からの直接情報ルートがなくても知ることが可能な話である。日経新聞のミャンマー記事を読んでいれば知ることが出来たからだ。
以下に、日経記事のうち「兆し」が察せられる主な記事を羅列する。
↓
2021/01/26日経記事(*2)
見出し:◆ミャンマー国軍「総選挙に不正」 民主化勢力けん制2月1日に議会招集控え
<抜粋引用>
・総選挙(昨年11月)では民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝し、国軍系野党が議席を減らした。
・2月1日の連邦議会招集を前に不満を表明し、民主化勢力をけん制した。
2021/01/29日経記事(*3)
見出し:ミャンマー駐在外交団「国軍は民主主義規範の順守を」
<抜粋引用>
・ミャンマー駐在の欧米外交団(米、EU、英、豪、加)は29日の共同声明で「国軍は民主主義の規範を順守するよう」求めた。
・総選挙後初の議会が2月1日に招集されるのを前に、選挙で不正があったとの批判を強める国軍に自制を促した。
2021/01/30日経記事(*4)
見出し:ミャンマー国軍「現行憲法を順守する」 声明を発表
<抜粋引用>
・ミャンマー国軍は30日、「国軍は現行憲法を擁護し順守する」との声明を発表した。
・国軍は2020年11月の総選挙で不正があった可能性があると指摘。国軍報道官は記者会見でクーデターを起こす可能性を否定せず、緊張が高まっていた。
先週の火曜、金曜、土曜の記事であるのだから、兆候としては十分だと思うのだが、如何であろう?。
とは言え、多分、「ミャンマー」と言われてもピンとこない人が多いと思う。ミャンマーは以前は「ビルマ」と言われていた国である。「ビルマの竪琴」は知っていても「ミャンマー」は馴染がないのではないかと思う。
ミャンマーの旧首都「ヤンゴン」も、以前は「ラングーン」と呼ばれていたのである。
当方は、ビジネスの関係でヤンゴンや新首都ネピドーに何回も出向いており、その回数は通算で10数回であり、ミャンマーは個人的な注目地域となっていることから、この様な見方となったものであるが、実は、日経記事でもっとも注目したのはミャンマー総選挙の結果を報じた昨年(2020年)11月13日の記事(*5)である。
同記事の最後の部分が実に的確な指摘だったからである。
↓
<引用開始>
○欧米の圧力を受け、スー・チー政権はロヒンギャのミャンマー帰還を認めたが進んでいない。ロヒンギャへの国籍付与にも消極的だ。欧米の人権団体からはスー・チー氏からノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もある。
○近づいてくるのは中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」のもとでインフラ整備などを軸にミャンマーへの投融資を積み上げる。スー・チー氏も「中国は最も大事なパートナーだ」と言明する。
○中国にとっては、陸路でミャンマーを通じインド洋に抜けるルートは安全保障の面でも重要だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想とぶつかりかねないリスクをはらむ。
<引用終わり>
地図をご覧いただければ分かる通り、ミャンマーはちょうど中国とインド洋の間に位置している。
中国の海洋侵出については、南沙諸島や我が国南西諸島の尖閣列島がニュースになっているが、中国はインド洋への進出も模索しており、既に何年も前からインド洋に於ける海洋戦略として「真珠の首飾り」戦略を実行中である。
その拠点の1つがインド洋に面したミャンマーのシットウェーである。
そこに出る為に、中国領からミャンマー第2の都市マンダレーを経由してのルートを開拓中である。
その様な危険な動きに関して、当方は2017年9月に「国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察」(*6)との論考で以下の様に述べている。
↓
<引用開始>
この問題は、ミャンマーの地政学的問題なのではないかと疑っている。
中国の海洋侵出を中国の立場で考えると、中国の唯一の海岸線である国土の東側から海に進出する際には、我が国南西諸島・台湾との「第一列島線」で阻止されており、これを避けると、進出先は、南シナ海となる。南シナ海・東シナ海での中国の傍若無人さを見ると、彼等の苛立ちがわかる。
台湾島の南、海南島辺りから海洋に出るとしても、南シナ海から太平洋へと進出するには、台湾とフィリピンに挟まれたバシー海峡を通過することになり、また、アフリカ方面に行くにはマラッカ海峡を通過することになり、何れも自国勢力圏外の国々に挟まれた狭隘な海峡に阻まれる。国際慣習・国際海洋法を遵守すれば良いのだが、中華思想に汚染された覇権主義の中国は、それが我慢ならないらしい。
中国は、海洋侵出戦略として「真珠の首飾り」戦略を随分前から遂行しており、自国領から直接インド洋に出るルートとして、ミャンマー国内を貫くルートを模索中である。
ミャンマーに隣接する自国部分からミャンマーの古都マンダレーを通り、インド洋沿岸のシットウェーと至るルートである。
ミャンマーの第一の都市はヤンゴンであるが、マンダレーは第二の都市である。マンダレーは「中国人だらけ」である。また、シットウェーは前述した中国の「真珠の首飾り」のポイントの1つでもある。
中国がインド洋に進出する際に通過するミャンマーを政治的に隷属させなければ安心できないのが中華思想である。それ故に、中国は、超限戦戦法でミャンマーに食い込むことを着々と狙っている。そういう文脈で「ロヒンギャ「問題」」は見る必要があるのじゃないかと疑っている次第である。
<引用終わり>
この2017年9月の論考は、2015年11月の論考「ミャンマー情勢1&2」(*7)の続編であるので、興味あればそれらもご一読いただきたい。
これらの以前の論考でも指摘しているが、知っての通り我が国メディアは偏向しており、ロヒンギュア問題は「人種差別問題」一辺倒の視点で述べられており、今回の件は「軍部の非民主的クーデター」一辺倒で述べられている。同様、欧米メディアはポリコレ一色で、同じ「報道」姿勢であるのだが、上記した昨年(2020年)11月13日の日経記事の最後の部分だけは秀逸である。
今回は速報なので以上であるが、大事なことなので繰り返す。
メディアのトーンだけで判断することは危険なことなのである。
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【文末脚注】
(*1):日本時間2月1日18時18分の日経ニュース
↓
日本経済新聞電子版 2021/2/1 8:18 (2021/2/1 8:31更新)
見出し:◆ミャンマー国軍、スー・チー氏や大統領を拘束 与党広報担当が確認
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM010DQ0R00C21A2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーの与党、国民民主連盟(NLD)の広報担当は1日、事実上の政府トップのアウン・サン・スー・チー国家顧問とウィン・ミン大統領が首都ネピドーで国軍に拘束されたと述べた。日本経済新聞の取材に確認した。
○ミャンマーでは2015年に政権を奪取したスー・チー氏の与党NLDが20年11月の総選挙で再び圧勝し、民主派政権の継続が決まっていた。だが軍は選挙に不正があったと抗議し、調査を要求していた。
<引用終わり>
(*2):先週火曜日2021/01/26日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/26 21:20
見出し:◆ミャンマー国軍「総選挙に不正」 民主化勢力けん制 2月1日に議会招集控え
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM263IJ0W1A120C2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国軍の報道官は26日、首都ネピドーで開いた記者会見で、2020年11月の総選挙(上下両院選)を巡り、有権者の2割に手続き上の不備があったと指摘した。「期日前投票などで不正があった」とも主張した。総選挙では民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝し、国軍系野党が議席を減らした。2月1日の連邦議会招集を前に不満を表明し、民主化勢力をけん制した。
○ゾー・ミン・…
<無料部分引用終わり>
(*3):先週木曜日2021/01/29日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/29 18:00
見出し:◆ミャンマー駐在外交団「国軍は民主主義規範の順守を」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM295SP0Z20C21A1000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー駐在の欧米外交団は29日の共同声明で「国軍は民主主義の規範を順守するよう」求めた。民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の与党が大勝した2020年11月の総選挙後初の議会が2月1日に招集されるのを前に、選挙で不正があったとの批判を強める国軍に自制を促した。
○共同声明には米国、欧州連合(EU)、英国、オーストラリア、カナダなどが参加した。「2月1日に平和的に連邦議会…
<無料部分引用終わり>
(*4):先週木曜日2021/01/30日経記事
↓
日本経済新聞電子版 2021/1/30 19:51
見出し:◆ミャンマー国軍「現行憲法を順守する」 声明を発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM302CD0Q1A130C2000000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国軍は30日、「国軍は現行憲法を擁護し順守する」との声明を発表した。国軍は2020年11月の総選挙(上下院選)で不正があった可能性があると指摘。国軍報道官は記者会見でクーデターを起こす可能性を否定せず、緊張が高まっていた。
○声明はミン・アウン・フライン国軍最高司令官が27日に士官学校で行った演説に関するもの。その演説で国軍司令官は現行憲法の重要性を強調した上で「法…
<無料部分引用終わり>
(*5):日経記事でもっとも注目したのはミャンマー総選挙の結果を報じた昨年(2020年)11月13日の記事である。
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日本経済新聞 2020/11/13 23:00
見出し:◆ミャンマー、民主化進展見通せず 与党大勝
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66223970T11C20A1EA2000/
記事:○【ヤンゴン=新田裕一】8日投票のミャンマー総選挙(上下両院選)で13日、民主化指導者アウン・サン・スー・チー国家顧問(75)が率いる与党、国民民主連盟(NLD)の大勝が確実になった。国民の支持は底堅いが、民主化の進展は停滞している。
○ミャンマーの選挙管理委員会によると、日本時間午後6時30分現在の確定議席はNLDが計384(上院135、下院249)で、過半数322を大きく超えた。全体の84%を占める。軍政の流れをくむ国軍系の最大野党、連邦団結発展党(USDP)は計28だった。
○開票は続いているが、計390議席を得た2015年の前回総選挙に続く圧勝は間違いない。NLDの報道担当者は独自集計で「議席数は前回の総選挙を上回る見通しだ」と主張した。
○ただスー・チー氏は事実上の政府トップとして、5年前の公約を実現できないままだ。武力衝突を続ける国軍と少数民族の和平と、国軍の政治参加を弱めるための憲法改正を掲げたが進展はみられない。
○国軍は憲法の規定で上下両院のそれぞれ25%を非改選の軍人枠として確保し、国政に影響力を及ぼす。憲法改正には上下両院の全議員の75%を超える賛成が必要で、この仕組みを変えるのは難しい。NLDは軍の政治関与を低下させる憲法改正案を提出したが、3月に否決された。
○有権者は軍事政権がいつでも復活できると考える。軍政への回帰を防ぐにはNLDへ投票するほかにないという有権者側の事情もあった。
○軍政下で計15年間の自宅軟禁に耐えたスー・チー氏の人気は高いが、欧米諸国の視線は厳しい。17年8月に起きたミャンマー国軍によるイスラム系少数民族ロヒンギャへの迫害で、70万人以上が隣国バングラデシュに逃れ難民となった。
○欧米の圧力を受け、スー・チー政権はロヒンギャのミャンマー帰還を認めたが進んでいない。ロヒンギャへの国籍付与にも消極的だ。欧米の人権団体からはスー・チー氏からノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もある。
○近づいてくるのは中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」のもとでインフラ整備などを軸にミャンマーへの投融資を積み上げる。スー・チー氏も「中国は最も大事なパートナーだ」と言明する。
○中国にとっては、陸路でミャンマーを通じインド洋に抜けるルートは安全保障の面でも重要だ。日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想とぶつかりかねないリスクをはらむ。
<引用終わり>
(*6):その拠点の1つがインド洋に面したミャンマーのシットウェーである。そこに出る為に、中国領からミャンマー第2の都市マンダレーを経由してのルートを開拓中である。その様な危険な動きに関して、当方は2017年9月に「国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察」との論考で述べている。
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2017/09/08投稿:
国連総会開幕とロヒンギャ「問題」の一考察
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-748.html
(*7):2017年9月の論考は、2015年11月の論考「ミャンマー情勢1&2」の続編であるので、興味あればそれらもご一読いただきたい。
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2015/11/25投稿:
【コラム】ミャンマー情勢1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-273.html
2015/11/26投稿:
【コラム】ミャンマー情勢2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-274.html
【ご参考】
2017/10/14投稿
ヤンゴンにて・ロヒンギャ「問題」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-779.html
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