現行憲法第22条第2項・国籍離脱の自由
- 2021/01/28
- 22:40
現行憲法第22条第2項・国籍離脱の自由
副題:いったい何が「憲法違反」なのだ? 応古来今の日本人が育んだ日本の為にならない二重国籍の制度化に反対する。
今回の題材は、我が国に二重国籍を容認させる為の裁判に関してである。
数日前のNHKニュース(*1)によると、その裁判は「外国の国籍を取得し、日本国籍を失った人たちが、日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反すると訴えた裁判」だそうだ。
当方の第一印象は「なんだよ、またもや、「なんでもかんでも憲法違反」かよ」である。
この様に感じたのは、現行憲法では「国籍離脱の自由」を第22条第2項(*2)で認めているが、何処にも「他国国籍の取得の自由」なる他国主権に干渉する様な規定はないからである。
原告側は「日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反する」と下位法である国籍法の規定が「憲法違反」だと言っているのだが、現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのかは記事だけではまったく分からないのである。
実際、地裁の判決は、二重国籍を認めない国籍法は 憲法違反に該当しないという判断だ。
当該NHK記事だけでは原告の主張はおかしいとしか考えられなかった。
しかし、メディアの伝えることは毎回一部だけであり、本当のところは良く分からないので、NHK記事には原告の名前があることから、それをキーに原告の主張が分かる資料なり記事があればと検索してみた。
その結果、2つ程の記事が検索結果として出てきた。1つは毎日新聞の有料記事であり参考にならなかったが、もう1つは現代ビジネスの昨年2020年8月29日付記事(*3)で、そちらは、それなりに長い。
その記事の見出しは「◆大坂なおみも注目…「日本国籍を剥奪された人たち」の裁判の行方」であり、「テニスの大阪なおみ」の二重国籍の話を導入部と最後に配置してアイキャッチにしている記事であった。要するに長い割には今回裁判の原告側主張の情報量は多くはない。
現代ビジネスの記事から、「大阪なおみの話部分」を省いた今回裁判の原告側主張を抜粋して以下に紹介しつつ、おかしい所を指摘する。
<抜粋引用開始>
①:日本人が、就職などの理由で、必要に迫られて外国籍を取得するケースは増えている。在外邦人の中には、国籍法11条1項の規定を知らず、日本国籍を捨てる意思がなかったにもかかわらず、日本政府からの意思確認もなしに強制的に日本国籍を取り上げられた人たちも少なくない。
↓
「自分が外国の国籍を取得する」との重要事項を実行する時に、それがどの様な影響を持つのかを事前に調べなかったり、考えないのだったら、それは軽率とのそしりを免れない行為である。
自身の不注意が原因なのに「知らなかった、ゴメン軽率でした。日本国籍に戻りたいんです」と言わずに「憲法違反!二重国籍を認めよ!」とするのは如何なものかと思う。
②:18年3月、欧州在住の8人が、国籍法11条1項は「国籍離脱の自由」などを保障した憲法に違反するとして、同規定の無効確認などを求めて国を提訴した。
↓
「国籍法第11条第1項」(*4)の規定が、現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのかは、現代ビジネスの記事でも書かれていない。
書けないのだと思う。何故なら、憲法違反ではないからである。
③「原告をはじめ、海外に住む多くの日本国民は、生活上の必要性から住んでいる国の国籍を取得する必要がある一方で、日本国民としてのアイデンティティを保持するために日本国籍を持ち続けることを強く希望しています」、「本人の意思によらずに日本国籍を喪失させる、つまり日本国籍をはく奪することは、日本国民から我が国の主権者としての地位を奪うことを意味します」
↓
「生活上の必要性」という状況を選択したのは自分自身である。
「当該国の国籍を取得する」と決めたのも自分自身である。
そういう自身の決断をした際に「日本人としてのアイデンティティの保持」よりも、それらを優先したのも自分自身である。
その時に「日本国籍を失うことを知らなかった」というのなら、上記①に戻るだけである。
④原告団長の野川等氏(スイス在住)は「私は日本人であることを誇りに生きてきたし、日本国籍を捨てたつもりもありません」と前置きして、提訴の経緯を、私にこう話した。「私は神奈川県で生まれ、その後、スイスに渡り、会社を設立しました。スイスの公共入札に参画するために01年にスイス国籍を取得しましたが、そのときはスイス在住のほとんどの邦人と同様に、国籍法11条1項の規定を知りませんでした」
↓
「クレー射撃をする友人に頼み見学をしてきました。面白そうだったので、友人が休息中に黙って何発か撃たせてもらいました。それが銃刀法違反行為だとは知りませんでした。」
言っていることはこれと同じ。知らなかったでは済まされないことが世の中にはあるので、何か大事そうな事を決断する時には、下調べをする事が必要だ。
それをしていなかった事を棚に上げている論法は上記①で指摘済みである。
当方は1960年代前半に商社マンの父の帯同家族として海外で暮らしていた。
当方は横浜市民病院で生まれているので日本国籍だけを保持しているのだが、父の同僚の商社マンの中には赴任中に奥さんがアメリカで子供を出産した方だとかがいて、アメリカの法律によりアメリカ国内で出生した人にはアメリカ国籍が付与され、血統主義の日本の日本国籍との二重国籍者もいた。
我が国国籍法では二重国籍を持つ日本人は22歳になる迄に何れかの国籍を選択する事になっているのだが、ベトナム戦争で抽選徴兵制が18歳以上で実施されるなど22歳以前の時点でアメリカ国籍を保持することのリスクがある時代でもあった。
兵役と言えば、この原告の国籍は現在スイスだと言う。
スイスと言えば国民皆兵であり、2013年には徴兵制の廃止を国民投票で73%が反対する自存自立の国(*5)である。
徴兵後も50歳までは予備役としての義務を負うのであるが、この原告がスイス国籍を取得したのは記事によると2001年で、現在の年齢が78歳なので、既に軍務義務は課されない年齢だったと推定される。つまりスイス国籍取得の際に兵役義務の有無を検討しなくても良い立場だったということだ。
しかし、他国の国籍を取得したら日本国籍がなくなるという我が国法規定を「知らなかった」だけで押し通す論法を見ると、この原告が国籍に関して実に無関心な事に驚いている。
⑤法務省推計(18年)によると、複数の国籍を持つ日本人は世界で92万人もいる。だが、その多くは、野川氏や大坂なおみ、中村修二氏らとは異なり、日本大使館から国籍選択を迫られることも、日本国籍をはく奪されることもなく暮らしている。
↓
国籍法第14条の後段の規定に違反することを前提としたトンデモ論法である。
法規定に反している状態を是として、それを前提にした論に正当性はない。
⑥「二重国籍かどうかは、本人が日本政府や日本大使館に伝えない限り、めったにわかりません。日本大使館に黙っていれば、私のように強引にパスポートを取り上げられることはないし、大坂選手のような有名人以外は、普通、国籍選択を迫られることはありません」(野川氏)○つまり建前はともかく、日本政府も、実際の運用では事実上、二重国籍を認めているという実態があるのだ。なお私個人の意見は、国会議員や国家公務員といった国益を代表して国権を行使する立場の人以外は、二重国籍を認めてもいいのではないかと考えている。
↓
上記⑤と同様に、法規定に違反することを前提としたトンデモ論法である。
日本国の法規定に反することを前提にしている原告が言う「日本人としてのアイデンティティの保持」とは、いったいどの様なものなのであろうか?
正直である事に反して「日本人です」と胸をはることに不協和を感じないのであろうか?
⑦今回の裁判の原告には、日本人の両親との間に日本で生まれた後、国際機関勤務の父親が代理人として手続きを行いスイス国籍を取得した30代の女性も含まれている。父親は、国籍法11条1項に納得していなかったものの、日本の法律に反して、娘が日本のパスポートを持ち続けることを潔しとせず、その旨をジュネーブの日本領事館に伝えた。この手続き当時、女性は未成年だった。この女性は、父親から外国籍を取得すると日本国籍を失うという法律になっていることを知らされ、「親の離婚の際に、両親どちらかを選べと迫られたときに、どちらも選べないような気持ち」になり、父親と大喧嘩になったという。
↓
この話が本当ならば、日本国籍離脱時に未成年だった30代女性は、日本国籍の再取得=特別帰化制度で日本国籍を得られるのだから、そうすべきではないかとの疑念が想起される。しかし、そうであるにも関わらず裁判の原告になっているのは、要するにスイスと日本の両方の国籍が欲しいという事が日本国籍取得よりも優先しているものだと考えられる。
それはそれで各人のご希望なのだが、この原告団が言う「憲法違反」なる主張には納得できない。現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのか?
海外に住む素人が日本で訴訟を起こすのはハードルが高い。
そういう事から類推すると、我が国国内の弁護士なりに訴訟手続きを依頼したものと思われる。弁護士が関与しているのなら、いきなり訴訟ではなく、国籍再取得の道があることを依頼人に伝えるはずだが、伝えたのであろうか?
以前の論考で説明したが、現在の世界の建て付けは主権国家とその国民との構造で成り立っている。(*6)
そういう構造からは祖国とは自分が支え、自分を支えてくれる唯一の存在のはずなのだが、学校では「人権」が前面に押し出され、そういう事を習わない。(*7)
願わくば、今回裁判の原告の方々が、日本人のアイデンティティーを以て日本国籍に復帰して、共に日本を支えていきたいものである。
自己利益の為に日本国籍を取得し、アイデンティティーは別の国にある人達が望む「我が国での二重国籍の制度化」に結果として加担することは、応古来今の日本人が育んだ日本の為にならないのである。
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【文末脚注】
(*1):数日前のNHKニュース
↓
NHKニュース 2021年1月21日 17時28分
見出し:◆東京地裁 二重国籍認めず 憲法に違反しないと判断
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210121/k10012825871000.html
記事:○外国の国籍を取得し、日本国籍を失った人たちが、日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反すると訴えた裁判の判決で、東京地方裁判所は憲法に違反しないと判断し、二重国籍を持つことを認めませんでした。
○日本では国籍法で、外国の国籍をみずからの希望で取得すると日本国籍を失うと規定し、複数の国籍を持ち続けることを認めていません。
○スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った6人は、二重国籍が認められないのは憲法に違反するとして、国に対して日本国籍があることの確認を求め、裁判では二重国籍を認めない規定が憲法に違反するかが初めて争われました。
○判決で東京地方裁判所の森英明裁判長は「憲法は国籍を離脱する自由は定めているものの、国籍を持ち続ける権利については何も定めていない。国籍法の規定は二重国籍の発生をできるだけ防ぎながら、国籍を変更する自由も保障していて、立法目的は合理的だ」と指摘しました。
○そのうえで国籍法の規定は憲法に違反しないと判断し、訴えを退けました。
小見出し:◆原告団長「あまりにも偏っている」
○原告と弁護団は、判決後に東京 霞が関で会見を開き、原告団長の野川等さん(78)は「がっかりしています。裁判所にはもう少し真剣に質問に答えてほしかった。国は私たちが質問したことに真面目に答えておらず、あまりにも偏っていると思う」と述べました。
○弁護団は控訴する方針だということです。
<引用終わり>
(*2):現行憲法では「国籍離脱の自由」を第22条第2項で認めている。
↓
e-gov:昭和二十一年憲法 日本国憲法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
第22条:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
同第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
(*3):現代ビジネスの記事
↓
gendai.ismedia 2020・08・29
見出し:◆大坂なおみも注目…「日本国籍を剥奪された人たち」の裁判の行方
長谷川 学ジャーナリスト
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?imp=0
小見出し:◆二重国籍はなぜ認められないのか
記事:○テニスの大坂なおみが、米国の黒人男性が警官に背後から銃撃された事件に抗議し、全米オープン前哨戦の準決勝を棄権したことが大きな話題になった。大会側の対応により棄権は翻意したが、大坂は「私はアスリートである前に、1人の黒人の女性」であり、相次ぐ警官による黒人への「虐殺」に「腹の底から怒りがわく」とツイッターに書いた。
○ハイチ系米国人の父と日本人の母の間に生まれた大坂は、日米二つ(正確にはハイチを含め三つとみられる)の国籍を持っている。大坂は日本で生まれたが、3歳のときに家族とともに米国に移住。日本語をほとんど話せない。全米オープン優勝後の日本での会見で、大坂は、自らのアイデンティティーについて聞かれ、困惑しつつも「私は私であると思っている」と答えた。
○日米どちらの代表として東京オリンピックに出場するかが注目された昨年10月、大阪は日本代表としてオリンピックに出場することを表明。また自らが持つ日米二つの国籍のうち、日本国籍を選択することを明らかにした。国籍選択をしたのは、日本政府が二重国籍を認めていないためだ。
○日本の国籍選択届の用紙には「国籍選択宣言」という項目があり、そこには「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」と記されている。つまり日本国籍の選択は、外国の国籍を放棄する意思表示でもある。ただし後述するが、大坂はいまも米国籍を放棄していないとみられる。
○世界では、米英仏伊のように二重国籍を認める国が主流だ。15年時点で132カ国が二重国籍を容認。18年のオランダのマースリヒト大の調査によると、外国籍取得時に自動的に自国籍を奪わない制度の国が、国連加盟国の75パーセントに上った。日本は世界の少数派なのだ。
○外国籍取得により日本政府が日本国籍を剥奪する根拠になっているのは「国籍法11条1項」。作られたのは明治時代だ。そこには次のように書かれている。「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」
○ノーベル賞を受賞した中村修二氏と南部陽一郎氏(米国籍)、英国籍のカズオ・イシグロ氏は、この規定のせいで日本国籍を失った。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=2
小見出し:◆注目の裁判の行方
○だが国際化が急速に進む中、日本人が、就職などの理由で、必要に迫られて外国籍を取得するケースは増えている。在外邦人の中には、国籍法11条1項の規定を知らず、日本国籍を捨てる意思がなかったにもかかわらず、日本政府からの意思確認もなしに強制的に日本国籍を取り上げられた人たちも少なくない。
○18年3月、欧州在住の8人が、国籍法11条1項は「国籍離脱の自由」などを保障した憲法に違反するとして、同規定の無効確認などを求めて国を提訴した。中村修二氏や大坂なおみも、この裁判の行方に大きな関心を持っているとみられる。
○今年8月20日、その裁判がようやく結審した。結審とは、原告、被告双方が主張を尽くし、後は判決を待つだけということ。私は20日の裁判を傍聴したが、コロナ禍にもかかわらず、多くの人が傍聴を希望し、法廷に入れない人が、かなりいた。
○この裁判の過程で、原告側弁護団は、都合18回、膨大な準備書面(自らの主張や相手側への反論等を陳述した書面)と証拠資料を提出した。20日の法廷では、18回目の準備書面の内容について、原告側弁護士が、その要旨を朗読した。
○「原告をはじめ、海外に住む多くの日本国民は、生活上の必要性から住んでいる国の国籍を取得する必要がある一方で、日本国民としてのアイデンティティを保持するために日本国籍を持ち続けることを強く希望しています」
○「本人の意思によらずに日本国籍を喪失させる、つまり日本国籍をはく奪することは、日本国民から我が国の主権者としての地位を奪うことを意味します」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=3
小見出し:◆「あなたは日本人ではありません」
○朗読を聞き終わった森英明裁判長は「事案が事案なので(判決まで)時間を下さい」と発言して閉廷。来年1月21日に判決を出すことを決めた。
○原告団長の野川等氏(スイス在住)は「私は日本人であることを誇りに生きてきたし、日本国籍を捨てたつもりもありません」と前置きして、提訴の経緯を、私にこう話した。
○「私は神奈川県で生まれ、その後、スイスに渡り、会社を設立しました。スイスの公共入札に参画するために01年にスイス国籍を取得しましたが、そのときはスイス在住のほとんどの邦人と同様に、国籍法11条1項の規定を知りませんでした」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=4
小見出し:◆92万人の複数国籍を持つ日本人
○「大使館側の態度の急変は、防衛省から来た書記官による、そのときの意趣返しのためにしたのではないかと思っています。私は長年、バーゼル日本人会の会長を務め、日本とスイスの交流に尽くしてきました。それなのにこの仕打ちです。運用があまりに恣意的で、公正さを欠いており、到底納得できません」(野川氏)
○法務省推計(18年)によると、複数の国籍を持つ日本人は世界で92万人もいる。だが、その多くは、野川氏や大坂なおみ、中村修二氏らとは異なり、日本大使館から国籍選択を迫られることも、日本国籍をはく奪されることもなく暮らしている。
○「二重国籍かどうかは、本人が日本政府や日本大使館に伝えない限り、めったにわかりません。日本大使館に黙っていれば、私のように強引にパスポートを取り上げられることはないし、大坂選手のような有名人以外は、普通、国籍選択を迫られることはありません」(野川氏)
○つまり建前はともかく、日本政府も、実際の運用では事実上、二重国籍を認めているという実態があるのだ。なお私個人の意見は、国会議員や国家公務員といった国益を代表して国権を行使する立場の人以外は、二重国籍を認めてもいいのではないかと考えている。
○今回の裁判の原告には、日本人の両親との間に日本で生まれた後、国際機関勤務の父親が代理人として手続きを行いスイス国籍を取得した30代の女性も含まれている。父親は、国籍法11条1項に納得していなかったものの、日本の法律に反して、娘が日本のパスポートを持ち続けることを潔しとせず、その旨をジュネーブの日本領事館に伝えた。
○この手続き当時、女性は未成年だった。この女性は、父親から外国籍を取得すると日本国籍を失うという法律になっていることを知らされ、「親の離婚の際に、両親どちらかを選べと迫られたときに、どちらも選べないような気持ち」になり、父親と大喧嘩になったという。
○野川氏が言う。
○「海外で暮らす日本人ほど、日本人であることへの誇りや、日本のために尽くしたいという気持ちが強くなります。今回の訴訟に対し、国側は、二重国籍には二重課税、重婚、兵役重複などの点で弊害があると主張します。
○しかし、二重課税や重婚は、これまで通り国同士の条約締結で解決すればよく、国籍はく奪の必要はありません。日本には徴兵制がないので兵役重複になりません。明治憲法下で作られた国籍法11条1項の規定は、国際化が進んだ今の時代に馴染みません。違憲判決が出ることを確信しています」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=5
小見出し:◆米国籍を捨てると発生する「罰金」
○なお、大坂なおみのように、生まれながらの二重国籍者の場合は、法律上、22歳の誕生日までに、日本国籍か外国籍かを選択し、外国籍を放棄しなければならないことになっている。大坂が二重国籍であることは広く知られていたため、22歳の誕生日の直前に大坂は日本国籍を選択した。
○だが外国籍の放棄は努力目標であり、罰則がなく、日本国籍の選択届を日本政府に出しただけでは、米国籍を失わない。国籍は、それぞれの国の主権にかかわるので、米国籍離脱には、別途、米政府に離脱手続きを行う必要がある。
○だが米国は二重国籍を認めている上、資産家の海外脱出を防ぐために国籍離脱税という制度を設けている。これは、米国籍離脱者に対し、純資産の最大23・8パーセントを税金として納めさせるもの。いわば罰金であり、大坂の場合、国籍離脱税は10億円程度に上るとみられている。
○全米オープンの舞台であり、日本に比べて活躍の機会が格段に多いアメリカの国籍を、なぜ10億円もの巨額の罰金を払ってまで、捨てねばならないのか。国籍法の規定自体が、いまの時代にそぐわないのではなかろうか。
○昨年9月、まだ大坂が国籍選択を発表する前、私は、アメリカにある大坂のマネジメント会社IMG社に国籍選択をどうするかを電話とメールで質問した。
○そのときIMG社は「大坂は日本国籍を選択するが、米国籍を離脱しなければ東京五輪に日本代表として出場できないという認識はない」と回答した。このことから、恐らく現在も、大坂は米国籍の離脱手続きをしていないとみられる。
○裁判所には、政府や国会への影響力の大きさから、違憲判決を尻込みする傾向が強いとされるが、今回の違憲訴訟を担当する森英明裁判長は、昨年5月に、最高裁裁判官の国民審査に在外邦人が投票できないのは違憲だとする判決を出したことで知られている。判決が注目される。
<引用終わり>
(*4):「国籍法」
↓
国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000147
<抜粋引用>
(国籍の喪失)
第11条:日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
同第2項 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
第12条:出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
第13条:外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる。
同第2項 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。
(国籍の選択)
第14条:外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
同第2項 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
<抜粋引用終わり>
(*5):スイスと言えば国民皆兵であり、2013年には徴兵制の廃止を国民投票で73%が反対する自存自立の国である。
↓
2015/11/01投稿:
【コラム】スイス・直接民主制
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-250.html
【ご参考】
2017/09/20投稿:
核兵器対処の基礎知識
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-757.html
(*6):以前の論考で説明したが、現在の世界の建て付けは主権国家とその国民との構造で成り立っている。
↓
2015/05/28投稿:
【コラム】人権を認め保護しているのは国家主権 -
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-119.html
【ご参考】
2015/05/27投稿:
【コラム】パスポート記載文に見る日本と米英の差
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-118.html
(*7):学校では「人権」が前面に押し出され、そういう事を習わない。
↓
2015/10/14投稿:
憲法改正私案の検証12「人権」の整理1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-231.html
2015/10/28投稿:
【コラム】我々日本人の「人権」を認めているのは誰なのか?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-246.html
2016/12/03投稿:
「権力vs民衆」との設定
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-555.html
【ご参考】
2020/10/10投稿:
「税金を払っても参政権がありません」とのいつもの詐欺話・主権概念の喪失
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1429.html
2020/10/12投稿:
朝日の外国人参政権キャンペーン記事・大阪住民投票
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1430.html
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副題:いったい何が「憲法違反」なのだ? 応古来今の日本人が育んだ日本の為にならない二重国籍の制度化に反対する。
今回の題材は、我が国に二重国籍を容認させる為の裁判に関してである。
数日前のNHKニュース(*1)によると、その裁判は「外国の国籍を取得し、日本国籍を失った人たちが、日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反すると訴えた裁判」だそうだ。
当方の第一印象は「なんだよ、またもや、「なんでもかんでも憲法違反」かよ」である。
この様に感じたのは、現行憲法では「国籍離脱の自由」を第22条第2項(*2)で認めているが、何処にも「他国国籍の取得の自由」なる他国主権に干渉する様な規定はないからである。
原告側は「日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反する」と下位法である国籍法の規定が「憲法違反」だと言っているのだが、現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのかは記事だけではまったく分からないのである。
実際、地裁の判決は、二重国籍を認めない国籍法は 憲法違反に該当しないという判断だ。
原告の主張を探してみた。「何じゃそれ」だった。
当該NHK記事だけでは原告の主張はおかしいとしか考えられなかった。
しかし、メディアの伝えることは毎回一部だけであり、本当のところは良く分からないので、NHK記事には原告の名前があることから、それをキーに原告の主張が分かる資料なり記事があればと検索してみた。
その結果、2つ程の記事が検索結果として出てきた。1つは毎日新聞の有料記事であり参考にならなかったが、もう1つは現代ビジネスの昨年2020年8月29日付記事(*3)で、そちらは、それなりに長い。
その記事の見出しは「◆大坂なおみも注目…「日本国籍を剥奪された人たち」の裁判の行方」であり、「テニスの大阪なおみ」の二重国籍の話を導入部と最後に配置してアイキャッチにしている記事であった。要するに長い割には今回裁判の原告側主張の情報量は多くはない。
現代ビジネスの記事から、「大阪なおみの話部分」を省いた今回裁判の原告側主張を抜粋して以下に紹介しつつ、おかしい所を指摘する。
<抜粋引用開始>
①:日本人が、就職などの理由で、必要に迫られて外国籍を取得するケースは増えている。在外邦人の中には、国籍法11条1項の規定を知らず、日本国籍を捨てる意思がなかったにもかかわらず、日本政府からの意思確認もなしに強制的に日本国籍を取り上げられた人たちも少なくない。
↓
「自分が外国の国籍を取得する」との重要事項を実行する時に、それがどの様な影響を持つのかを事前に調べなかったり、考えないのだったら、それは軽率とのそしりを免れない行為である。
自身の不注意が原因なのに「知らなかった、ゴメン軽率でした。日本国籍に戻りたいんです」と言わずに「憲法違反!二重国籍を認めよ!」とするのは如何なものかと思う。
②:18年3月、欧州在住の8人が、国籍法11条1項は「国籍離脱の自由」などを保障した憲法に違反するとして、同規定の無効確認などを求めて国を提訴した。
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「国籍法第11条第1項」(*4)の規定が、現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのかは、現代ビジネスの記事でも書かれていない。
書けないのだと思う。何故なら、憲法違反ではないからである。
③「原告をはじめ、海外に住む多くの日本国民は、生活上の必要性から住んでいる国の国籍を取得する必要がある一方で、日本国民としてのアイデンティティを保持するために日本国籍を持ち続けることを強く希望しています」、「本人の意思によらずに日本国籍を喪失させる、つまり日本国籍をはく奪することは、日本国民から我が国の主権者としての地位を奪うことを意味します」
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「当該国の国籍を取得する」と決めたのも自分自身である。
そういう自身の決断をした際に「日本人としてのアイデンティティの保持」よりも、それらを優先したのも自分自身である。
その時に「日本国籍を失うことを知らなかった」というのなら、上記①に戻るだけである。
④原告団長の野川等氏(スイス在住)は「私は日本人であることを誇りに生きてきたし、日本国籍を捨てたつもりもありません」と前置きして、提訴の経緯を、私にこう話した。「私は神奈川県で生まれ、その後、スイスに渡り、会社を設立しました。スイスの公共入札に参画するために01年にスイス国籍を取得しましたが、そのときはスイス在住のほとんどの邦人と同様に、国籍法11条1項の規定を知りませんでした」
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「クレー射撃をする友人に頼み見学をしてきました。面白そうだったので、友人が休息中に黙って何発か撃たせてもらいました。それが銃刀法違反行為だとは知りませんでした。」
言っていることはこれと同じ。知らなかったでは済まされないことが世の中にはあるので、何か大事そうな事を決断する時には、下調べをする事が必要だ。
それをしていなかった事を棚に上げている論法は上記①で指摘済みである。
当方は1960年代前半に商社マンの父の帯同家族として海外で暮らしていた。
当方は横浜市民病院で生まれているので日本国籍だけを保持しているのだが、父の同僚の商社マンの中には赴任中に奥さんがアメリカで子供を出産した方だとかがいて、アメリカの法律によりアメリカ国内で出生した人にはアメリカ国籍が付与され、血統主義の日本の日本国籍との二重国籍者もいた。
我が国国籍法では二重国籍を持つ日本人は22歳になる迄に何れかの国籍を選択する事になっているのだが、ベトナム戦争で抽選徴兵制が18歳以上で実施されるなど22歳以前の時点でアメリカ国籍を保持することのリスクがある時代でもあった。
兵役と言えば、この原告の国籍は現在スイスだと言う。
スイスと言えば国民皆兵であり、2013年には徴兵制の廃止を国民投票で73%が反対する自存自立の国(*5)である。
徴兵後も50歳までは予備役としての義務を負うのであるが、この原告がスイス国籍を取得したのは記事によると2001年で、現在の年齢が78歳なので、既に軍務義務は課されない年齢だったと推定される。つまりスイス国籍取得の際に兵役義務の有無を検討しなくても良い立場だったということだ。
しかし、他国の国籍を取得したら日本国籍がなくなるという我が国法規定を「知らなかった」だけで押し通す論法を見ると、この原告が国籍に関して実に無関心な事に驚いている。
⑤法務省推計(18年)によると、複数の国籍を持つ日本人は世界で92万人もいる。だが、その多くは、野川氏や大坂なおみ、中村修二氏らとは異なり、日本大使館から国籍選択を迫られることも、日本国籍をはく奪されることもなく暮らしている。
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国籍法第14条の後段の規定に違反することを前提としたトンデモ論法である。
法規定に反している状態を是として、それを前提にした論に正当性はない。
⑥「二重国籍かどうかは、本人が日本政府や日本大使館に伝えない限り、めったにわかりません。日本大使館に黙っていれば、私のように強引にパスポートを取り上げられることはないし、大坂選手のような有名人以外は、普通、国籍選択を迫られることはありません」(野川氏)○つまり建前はともかく、日本政府も、実際の運用では事実上、二重国籍を認めているという実態があるのだ。なお私個人の意見は、国会議員や国家公務員といった国益を代表して国権を行使する立場の人以外は、二重国籍を認めてもいいのではないかと考えている。
↓
上記⑤と同様に、法規定に違反することを前提としたトンデモ論法である。
日本国の法規定に反することを前提にしている原告が言う「日本人としてのアイデンティティの保持」とは、いったいどの様なものなのであろうか?
正直である事に反して「日本人です」と胸をはることに不協和を感じないのであろうか?
⑦今回の裁判の原告には、日本人の両親との間に日本で生まれた後、国際機関勤務の父親が代理人として手続きを行いスイス国籍を取得した30代の女性も含まれている。父親は、国籍法11条1項に納得していなかったものの、日本の法律に反して、娘が日本のパスポートを持ち続けることを潔しとせず、その旨をジュネーブの日本領事館に伝えた。この手続き当時、女性は未成年だった。この女性は、父親から外国籍を取得すると日本国籍を失うという法律になっていることを知らされ、「親の離婚の際に、両親どちらかを選べと迫られたときに、どちらも選べないような気持ち」になり、父親と大喧嘩になったという。
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この話が本当ならば、日本国籍離脱時に未成年だった30代女性は、日本国籍の再取得=特別帰化制度で日本国籍を得られるのだから、そうすべきではないかとの疑念が想起される。しかし、そうであるにも関わらず裁判の原告になっているのは、要するにスイスと日本の両方の国籍が欲しいという事が日本国籍取得よりも優先しているものだと考えられる。
それはそれで各人のご希望なのだが、この原告団が言う「憲法違反」なる主張には納得できない。現行憲法の第何条のどの規定に違反しているのか?
海外に住む素人が日本で訴訟を起こすのはハードルが高い。
そういう事から類推すると、我が国国内の弁護士なりに訴訟手続きを依頼したものと思われる。弁護士が関与しているのなら、いきなり訴訟ではなく、国籍再取得の道があることを依頼人に伝えるはずだが、伝えたのであろうか?
祖国とは自分が支え、自分を支えてくれる唯一の存在
以前の論考で説明したが、現在の世界の建て付けは主権国家とその国民との構造で成り立っている。(*6)
そういう構造からは祖国とは自分が支え、自分を支えてくれる唯一の存在のはずなのだが、学校では「人権」が前面に押し出され、そういう事を習わない。(*7)
願わくば、今回裁判の原告の方々が、日本人のアイデンティティーを以て日本国籍に復帰して、共に日本を支えていきたいものである。
自己利益の為に日本国籍を取得し、アイデンティティーは別の国にある人達が望む「我が国での二重国籍の制度化」に結果として加担することは、応古来今の日本人が育んだ日本の為にならないのである。
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【文末脚注】
(*1):数日前のNHKニュース
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NHKニュース 2021年1月21日 17時28分
見出し:◆東京地裁 二重国籍認めず 憲法に違反しないと判断
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210121/k10012825871000.html
記事:○外国の国籍を取得し、日本国籍を失った人たちが、日本の国籍法の規定によって二重国籍が認められないのは憲法に違反すると訴えた裁判の判決で、東京地方裁判所は憲法に違反しないと判断し、二重国籍を持つことを認めませんでした。
○日本では国籍法で、外国の国籍をみずからの希望で取得すると日本国籍を失うと規定し、複数の国籍を持ち続けることを認めていません。
○スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った6人は、二重国籍が認められないのは憲法に違反するとして、国に対して日本国籍があることの確認を求め、裁判では二重国籍を認めない規定が憲法に違反するかが初めて争われました。
○判決で東京地方裁判所の森英明裁判長は「憲法は国籍を離脱する自由は定めているものの、国籍を持ち続ける権利については何も定めていない。国籍法の規定は二重国籍の発生をできるだけ防ぎながら、国籍を変更する自由も保障していて、立法目的は合理的だ」と指摘しました。
○そのうえで国籍法の規定は憲法に違反しないと判断し、訴えを退けました。
小見出し:◆原告団長「あまりにも偏っている」
○原告と弁護団は、判決後に東京 霞が関で会見を開き、原告団長の野川等さん(78)は「がっかりしています。裁判所にはもう少し真剣に質問に答えてほしかった。国は私たちが質問したことに真面目に答えておらず、あまりにも偏っていると思う」と述べました。
○弁護団は控訴する方針だということです。
<引用終わり>
(*2):現行憲法では「国籍離脱の自由」を第22条第2項で認めている。
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e-gov:昭和二十一年憲法 日本国憲法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
第22条:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
同第2項 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
(*3):現代ビジネスの記事
↓
gendai.ismedia 2020・08・29
見出し:◆大坂なおみも注目…「日本国籍を剥奪された人たち」の裁判の行方
長谷川 学ジャーナリスト
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?imp=0
小見出し:◆二重国籍はなぜ認められないのか
記事:○テニスの大坂なおみが、米国の黒人男性が警官に背後から銃撃された事件に抗議し、全米オープン前哨戦の準決勝を棄権したことが大きな話題になった。大会側の対応により棄権は翻意したが、大坂は「私はアスリートである前に、1人の黒人の女性」であり、相次ぐ警官による黒人への「虐殺」に「腹の底から怒りがわく」とツイッターに書いた。
○ハイチ系米国人の父と日本人の母の間に生まれた大坂は、日米二つ(正確にはハイチを含め三つとみられる)の国籍を持っている。大坂は日本で生まれたが、3歳のときに家族とともに米国に移住。日本語をほとんど話せない。全米オープン優勝後の日本での会見で、大坂は、自らのアイデンティティーについて聞かれ、困惑しつつも「私は私であると思っている」と答えた。
○日米どちらの代表として東京オリンピックに出場するかが注目された昨年10月、大阪は日本代表としてオリンピックに出場することを表明。また自らが持つ日米二つの国籍のうち、日本国籍を選択することを明らかにした。国籍選択をしたのは、日本政府が二重国籍を認めていないためだ。
○日本の国籍選択届の用紙には「国籍選択宣言」という項目があり、そこには「日本の国籍を選択し、外国の国籍を放棄します」と記されている。つまり日本国籍の選択は、外国の国籍を放棄する意思表示でもある。ただし後述するが、大坂はいまも米国籍を放棄していないとみられる。
○世界では、米英仏伊のように二重国籍を認める国が主流だ。15年時点で132カ国が二重国籍を容認。18年のオランダのマースリヒト大の調査によると、外国籍取得時に自動的に自国籍を奪わない制度の国が、国連加盟国の75パーセントに上った。日本は世界の少数派なのだ。
○外国籍取得により日本政府が日本国籍を剥奪する根拠になっているのは「国籍法11条1項」。作られたのは明治時代だ。そこには次のように書かれている。「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」
○ノーベル賞を受賞した中村修二氏と南部陽一郎氏(米国籍)、英国籍のカズオ・イシグロ氏は、この規定のせいで日本国籍を失った。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=2
小見出し:◆注目の裁判の行方
○だが国際化が急速に進む中、日本人が、就職などの理由で、必要に迫られて外国籍を取得するケースは増えている。在外邦人の中には、国籍法11条1項の規定を知らず、日本国籍を捨てる意思がなかったにもかかわらず、日本政府からの意思確認もなしに強制的に日本国籍を取り上げられた人たちも少なくない。
○18年3月、欧州在住の8人が、国籍法11条1項は「国籍離脱の自由」などを保障した憲法に違反するとして、同規定の無効確認などを求めて国を提訴した。中村修二氏や大坂なおみも、この裁判の行方に大きな関心を持っているとみられる。
○今年8月20日、その裁判がようやく結審した。結審とは、原告、被告双方が主張を尽くし、後は判決を待つだけということ。私は20日の裁判を傍聴したが、コロナ禍にもかかわらず、多くの人が傍聴を希望し、法廷に入れない人が、かなりいた。
○この裁判の過程で、原告側弁護団は、都合18回、膨大な準備書面(自らの主張や相手側への反論等を陳述した書面)と証拠資料を提出した。20日の法廷では、18回目の準備書面の内容について、原告側弁護士が、その要旨を朗読した。
○「原告をはじめ、海外に住む多くの日本国民は、生活上の必要性から住んでいる国の国籍を取得する必要がある一方で、日本国民としてのアイデンティティを保持するために日本国籍を持ち続けることを強く希望しています」
○「本人の意思によらずに日本国籍を喪失させる、つまり日本国籍をはく奪することは、日本国民から我が国の主権者としての地位を奪うことを意味します」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=3
小見出し:◆「あなたは日本人ではありません」
○朗読を聞き終わった森英明裁判長は「事案が事案なので(判決まで)時間を下さい」と発言して閉廷。来年1月21日に判決を出すことを決めた。
○原告団長の野川等氏(スイス在住)は「私は日本人であることを誇りに生きてきたし、日本国籍を捨てたつもりもありません」と前置きして、提訴の経緯を、私にこう話した。
○「私は神奈川県で生まれ、その後、スイスに渡り、会社を設立しました。スイスの公共入札に参画するために01年にスイス国籍を取得しましたが、そのときはスイス在住のほとんどの邦人と同様に、国籍法11条1項の規定を知りませんでした」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=4
小見出し:◆92万人の複数国籍を持つ日本人
○「大使館側の態度の急変は、防衛省から来た書記官による、そのときの意趣返しのためにしたのではないかと思っています。私は長年、バーゼル日本人会の会長を務め、日本とスイスの交流に尽くしてきました。それなのにこの仕打ちです。運用があまりに恣意的で、公正さを欠いており、到底納得できません」(野川氏)
○法務省推計(18年)によると、複数の国籍を持つ日本人は世界で92万人もいる。だが、その多くは、野川氏や大坂なおみ、中村修二氏らとは異なり、日本大使館から国籍選択を迫られることも、日本国籍をはく奪されることもなく暮らしている。
○「二重国籍かどうかは、本人が日本政府や日本大使館に伝えない限り、めったにわかりません。日本大使館に黙っていれば、私のように強引にパスポートを取り上げられることはないし、大坂選手のような有名人以外は、普通、国籍選択を迫られることはありません」(野川氏)
○つまり建前はともかく、日本政府も、実際の運用では事実上、二重国籍を認めているという実態があるのだ。なお私個人の意見は、国会議員や国家公務員といった国益を代表して国権を行使する立場の人以外は、二重国籍を認めてもいいのではないかと考えている。
○今回の裁判の原告には、日本人の両親との間に日本で生まれた後、国際機関勤務の父親が代理人として手続きを行いスイス国籍を取得した30代の女性も含まれている。父親は、国籍法11条1項に納得していなかったものの、日本の法律に反して、娘が日本のパスポートを持ち続けることを潔しとせず、その旨をジュネーブの日本領事館に伝えた。
○この手続き当時、女性は未成年だった。この女性は、父親から外国籍を取得すると日本国籍を失うという法律になっていることを知らされ、「親の離婚の際に、両親どちらかを選べと迫られたときに、どちらも選べないような気持ち」になり、父親と大喧嘩になったという。
○野川氏が言う。
○「海外で暮らす日本人ほど、日本人であることへの誇りや、日本のために尽くしたいという気持ちが強くなります。今回の訴訟に対し、国側は、二重国籍には二重課税、重婚、兵役重複などの点で弊害があると主張します。
○しかし、二重課税や重婚は、これまで通り国同士の条約締結で解決すればよく、国籍はく奪の必要はありません。日本には徴兵制がないので兵役重複になりません。明治憲法下で作られた国籍法11条1項の規定は、国際化が進んだ今の時代に馴染みません。違憲判決が出ることを確信しています」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75225?page=5
小見出し:◆米国籍を捨てると発生する「罰金」
○なお、大坂なおみのように、生まれながらの二重国籍者の場合は、法律上、22歳の誕生日までに、日本国籍か外国籍かを選択し、外国籍を放棄しなければならないことになっている。大坂が二重国籍であることは広く知られていたため、22歳の誕生日の直前に大坂は日本国籍を選択した。
○だが外国籍の放棄は努力目標であり、罰則がなく、日本国籍の選択届を日本政府に出しただけでは、米国籍を失わない。国籍は、それぞれの国の主権にかかわるので、米国籍離脱には、別途、米政府に離脱手続きを行う必要がある。
○だが米国は二重国籍を認めている上、資産家の海外脱出を防ぐために国籍離脱税という制度を設けている。これは、米国籍離脱者に対し、純資産の最大23・8パーセントを税金として納めさせるもの。いわば罰金であり、大坂の場合、国籍離脱税は10億円程度に上るとみられている。
○全米オープンの舞台であり、日本に比べて活躍の機会が格段に多いアメリカの国籍を、なぜ10億円もの巨額の罰金を払ってまで、捨てねばならないのか。国籍法の規定自体が、いまの時代にそぐわないのではなかろうか。
○昨年9月、まだ大坂が国籍選択を発表する前、私は、アメリカにある大坂のマネジメント会社IMG社に国籍選択をどうするかを電話とメールで質問した。
○そのときIMG社は「大坂は日本国籍を選択するが、米国籍を離脱しなければ東京五輪に日本代表として出場できないという認識はない」と回答した。このことから、恐らく現在も、大坂は米国籍の離脱手続きをしていないとみられる。
○裁判所には、政府や国会への影響力の大きさから、違憲判決を尻込みする傾向が強いとされるが、今回の違憲訴訟を担当する森英明裁判長は、昨年5月に、最高裁裁判官の国民審査に在外邦人が投票できないのは違憲だとする判決を出したことで知られている。判決が注目される。
<引用終わり>
(*4):「国籍法」
↓
国籍法(昭和二十五年法律第百四十七号)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000147
<抜粋引用>
(国籍の喪失)
第11条:日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。
同第2項 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う。
第12条:出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたものは、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本の国籍を失う。
第13条:外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、日本の国籍を離脱することができる。
同第2項 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。
(国籍の選択)
第14条:外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
同第2項 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
<抜粋引用終わり>
(*5):スイスと言えば国民皆兵であり、2013年には徴兵制の廃止を国民投票で73%が反対する自存自立の国である。
↓
2015/11/01投稿:
【コラム】スイス・直接民主制
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-250.html
【ご参考】
2017/09/20投稿:
核兵器対処の基礎知識
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-757.html
(*6):以前の論考で説明したが、現在の世界の建て付けは主権国家とその国民との構造で成り立っている。
↓
2015/05/28投稿:
【コラム】人権を認め保護しているのは国家主権 -
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-119.html
【ご参考】
2015/05/27投稿:
【コラム】パスポート記載文に見る日本と米英の差
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-118.html
(*7):学校では「人権」が前面に押し出され、そういう事を習わない。
↓
2015/10/14投稿:
憲法改正私案の検証12「人権」の整理1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-231.html
2015/10/28投稿:
【コラム】我々日本人の「人権」を認めているのは誰なのか?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-246.html
2016/12/03投稿:
「権力vs民衆」との設定
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-555.html
【ご参考】
2020/10/10投稿:
「税金を払っても参政権がありません」とのいつもの詐欺話・主権概念の喪失
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1429.html
2020/10/12投稿:
朝日の外国人参政権キャンペーン記事・大阪住民投票
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1430.html
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