雑木林艦隊ならず・順当に河川名が命名基準となるFFM2「くまの」
- 2020/11/20
- 21:11
雑木林艦隊ならず・順当に河川名が命名基準となるFFM2「くまの」
副題:新型護衛艦FFMの艦名は「くまの」。命名基準は順当に従前DEに用いられていた河川名。
新型護衛艦FFMの2番艦の進水式が行われ「くまの」と命名された。(*1)
海自護衛艦名はひらがな表記なので「くまの」との記載になるのだが、これは熊野川の「熊野」が由来の艦名である。
海上自衛隊艦艇の命名基準は以下の通りなのだが、FFMは今まで存在しなかった艦種・フリゲイトなので、どの様な命名基準になるのか興味があったのだが、従前DEに用いられていた河川名となったものである。
↓
<海自命名基準概要>
旧国名:全通甲板型DDH(加賀、伊勢、日向等)
山岳名:イージスシステム搭載DDG(妙高、鳥海、愛宕、足柄、麻耶等)
天候・気象・自然現象:汎用護衛艦DD(初雪、朝霧、村雨、高波、秋月、朝日等)
河川名:従前はDE、今回からFFM(熊野、最上、利根、筑摩、石狩、阿武隈等)
(以下略・輸送艦:半島名、補給艦:湖沼名、等々)
11月19日に岡山県にある三井E&S造船玉野艦船工場で進水した「くまの」の艦番号は1桁表記の「2」である。
新型護衛艦FFM初の進水・命名なので、普通は「1」が付されるのだが、実は、2番艦の方が先に進水したので、こうなったものである。
また、艦番号が1桁というのも珍しい。従前上記した護衛艦は総て3桁表示だった。
全通甲板型DDHは「181」から現在の最新鋭「かが」の「184」が艦番号である。
イージスシステム搭載護衛艦DDGは「173」から現在の最新鋭「はぐろ」の「180」までの8隻体制となっている。「171」から始まっていないのは同じDDGでも比イージスDDGの「はたかぜ(DDG-171)」、「しまかぜ(DDG-172)」に割り当てられていたからである。
非イージスDDGの命名基準は汎用DDと同じ天候・気象・自然現象となっているものである。
従前、河川名が付されていたDEの艦番号は2から始まる3桁であった。
現在、現役にあるDEは「あぶくま型」だけだが、あぶくま型は全部で6隻あり、1番艦「あぶくま」の艦番号は「229」、最終6番艦の「とね」の艦番号は「234」である。
しかし、FFMは1桁表示となっているのである。
実に目新しい艦番号の付し方である。
新艦種FFMの命名基準については以下の論考で、本命はDEの河川名を継ぐであろうと予想した。
↓
2020/08/11投稿:
30FFMの命名基準を予想する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1407.html
そして同時に、希望として「本命・河川名」に対して「大穴・樹木名」になったら御洒落・優雅なのに、と述べた。
樹木名を命名基準にしていた艦種にPF(パトロール・フリゲイト)がある。
戦後、我が国が停止状態であった主権を回復したのはサンフランシスコ講和条約(*2)が発効した1952年(昭和27年)4月28日である。その翌年の1953年(昭和28年)1月14日に米軍から引き渡されたタコマ級PF6隻が海上警備隊(海上自衛隊の前身)の「くす型パトロール・フリゲイト」である。
その後、追加引き渡しがあり、最終的には合計で18隻となり、我が国戦後最初期の海上防衛力であった。
因みに、我が国が主権を回復した1952年(昭和27年)4月28日時点では、朝鮮戦争は膠着状態とは言え継続中で、朝鮮戦争が停戦に至ったのはその翌年の1953年7月27日である。
くす型PFの要目(*3)は基準排水量1,450ton・全長93.3mと大きさは帝国海軍の駆逐艦と近似であったが、速力は最大18ノットと遅く、35ノットを誇った帝国海軍駆逐艦とは
雲泥の差があるものであった。同様、主砲も76.2cm単装砲3基であり、12.7cm連装砲3基の帝国海軍駆逐艦とは比較にならないものであった。
そうであっても、「現行憲法9条の「陸海空その他の戦力」に該当するので配備ハンタ~イ」の声が出たのである。例の奴等からである。
話を戻す。
「くす型PF」の「くす」を漢字で書くと「楠」である。
「くす型PF」の命名基準は樹木名で、全18隻の艦名は、楠(くす)、楢(なら)、樫(かし)、樅(もみ)、杉(すぎ)、松(まつ)、楡(にれ)、萱(かや)、梅(うめ)、桜(さくら)、桐(きり)、柘(つげ)、楓(かえで)、椈(ぶな)、欅(けやき)、栃(とち)、椎(しい)、槇(まき)である。
なんとも日本的で良い命名だと思ったので、樹木名を採用してくれないかな、と思った次第である。表題にある「雑木林艦隊」とは、これら「くす型PF」の艦名からきたものである。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):新型護衛艦FFMの2番艦の進水式が行われ「くまの」と命名された。
↓
乗りものニュース 2020.11.19
見出し:◆海自の最新鋭護衛艦「くまの」進水 日の丸護衛艦の革命児! 多用途性と省力化を追求
https://trafficnews.jp/post/102022
小見出し:◆新型護衛艦の名称は「くまの」! 艦番号は「2」
記事:○防衛省は2020年11月19日(木)、三井E&S造船 玉野艦船工場(岡山県玉野市)にて、新規建造された護衛艦の命名式および進水式を実施しました。「くまの」と命名された同艦は、これまで「30FFM」と呼ばれていた新型護衛艦のなかで初の進水となります。
○なお海上幕僚監部広報室の話によると、現在、長崎県の三菱重工長崎造船所で建造中の1番艦よりも先行して進水したため、型名は1番艦の命名まで「3900トン型護衛艦」と呼称するといいます。
○「くまの」は全長133.0m、幅16.3m、深さ9.0m、喫水4.7m、基準排水量は3900トンで、乗員数は約90名。主機関はガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの組み合わせで、軸出力は7万馬力、速力は約30ノットです。
○今回、進水した「くまの」を始めとする3900トン護衛艦は、増大する平時の警戒監視に対応するほか、有事においても対潜水艦戦闘や対空戦闘、対水上戦闘などに加えて、これまで掃海艦艇が担ってきた対機雷戦に関しても、能力が付与されているのが特徴です。
○また従来の護衛艦と比べて、船体のコンパクト化や調達コストの抑制、省人化にも配慮した設計になっているのもポイントといいます。
○なお、「くまの」は「熊野川」に由来し、海上自衛隊で用いるのは、ちくご型護衛艦の10番艦「くまの」(2001年除籍)に続いて2回目です。旧日本海軍では、最上型軽巡洋艦の4番艦「熊野」が存在しました。
○「くまの」は今後、艤装や各種試験を実施したのち、2022年3月に就役の予定です。
<引用終わり>
(*2):サンフランシスコ講和条約
↓
2015/07/10投稿:
【コラム】国民をバカにする煽り文句はやめなさい
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-148.html
2017/05/31投稿:
言葉の言い換え・印象操作
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-682.html
2017/12/21投稿:
情勢認識が冷戦時代のままではダメでしょ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-829.html
(*3):くす型PFの要目
↓
基準排水量:1,450トン
満載排水量:2,250トン
全 長 :93.3m
最大速度 :18 ノット
<兵装>
Mk.22 50口径3インチ単装緩射砲×3基
Mk.1 40mm連装機銃×2基
Mk.10 20mm単装機銃×9基
Mk.10 ヘッジホッグ対潜迫撃砲×1基
Mk.6 片舷用爆雷投射機(K砲)×8基
Mk.9 爆雷投下軌条×2条
他
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副題:新型護衛艦FFMの艦名は「くまの」。命名基準は順当に従前DEに用いられていた河川名。
FFMの命名基準は河川名
新型護衛艦FFMの2番艦の進水式が行われ「くまの」と命名された。(*1)
海自護衛艦名はひらがな表記なので「くまの」との記載になるのだが、これは熊野川の「熊野」が由来の艦名である。
海上自衛隊艦艇の命名基準は以下の通りなのだが、FFMは今まで存在しなかった艦種・フリゲイトなので、どの様な命名基準になるのか興味があったのだが、従前DEに用いられていた河川名となったものである。
↓
<海自命名基準概要>
旧国名:全通甲板型DDH(加賀、伊勢、日向等)
山岳名:イージスシステム搭載DDG(妙高、鳥海、愛宕、足柄、麻耶等)
天候・気象・自然現象:汎用護衛艦DD(初雪、朝霧、村雨、高波、秋月、朝日等)
河川名:従前はDE、今回からFFM(熊野、最上、利根、筑摩、石狩、阿武隈等)
(以下略・輸送艦:半島名、補給艦:湖沼名、等々)
「くまの」の艦番号は「2」
11月19日に岡山県にある三井E&S造船玉野艦船工場で進水した「くまの」の艦番号は1桁表記の「2」である。
新型護衛艦FFM初の進水・命名なので、普通は「1」が付されるのだが、実は、2番艦の方が先に進水したので、こうなったものである。
また、艦番号が1桁というのも珍しい。従前上記した護衛艦は総て3桁表示だった。
全通甲板型DDHは「181」から現在の最新鋭「かが」の「184」が艦番号である。
イージスシステム搭載護衛艦DDGは「173」から現在の最新鋭「はぐろ」の「180」までの8隻体制となっている。「171」から始まっていないのは同じDDGでも比イージスDDGの「はたかぜ(DDG-171)」、「しまかぜ(DDG-172)」に割り当てられていたからである。
非イージスDDGの命名基準は汎用DDと同じ天候・気象・自然現象となっているものである。
従前、河川名が付されていたDEの艦番号は2から始まる3桁であった。
現在、現役にあるDEは「あぶくま型」だけだが、あぶくま型は全部で6隻あり、1番艦「あぶくま」の艦番号は「229」、最終6番艦の「とね」の艦番号は「234」である。
しかし、FFMは1桁表示となっているのである。
実に目新しい艦番号の付し方である。
雑木林艦隊ならず
新艦種FFMの命名基準については以下の論考で、本命はDEの河川名を継ぐであろうと予想した。
↓
2020/08/11投稿:
30FFMの命名基準を予想する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1407.html
そして同時に、希望として「本命・河川名」に対して「大穴・樹木名」になったら御洒落・優雅なのに、と述べた。
樹木名を命名基準にしていた艦種にPF(パトロール・フリゲイト)がある。
戦後、我が国が停止状態であった主権を回復したのはサンフランシスコ講和条約(*2)が発効した1952年(昭和27年)4月28日である。その翌年の1953年(昭和28年)1月14日に米軍から引き渡されたタコマ級PF6隻が海上警備隊(海上自衛隊の前身)の「くす型パトロール・フリゲイト」である。
その後、追加引き渡しがあり、最終的には合計で18隻となり、我が国戦後最初期の海上防衛力であった。
因みに、我が国が主権を回復した1952年(昭和27年)4月28日時点では、朝鮮戦争は膠着状態とは言え継続中で、朝鮮戦争が停戦に至ったのはその翌年の1953年7月27日である。
くす型PFの要目(*3)は基準排水量1,450ton・全長93.3mと大きさは帝国海軍の駆逐艦と近似であったが、速力は最大18ノットと遅く、35ノットを誇った帝国海軍駆逐艦とは
雲泥の差があるものであった。同様、主砲も76.2cm単装砲3基であり、12.7cm連装砲3基の帝国海軍駆逐艦とは比較にならないものであった。
そうであっても、「現行憲法9条の「陸海空その他の戦力」に該当するので配備ハンタ~イ」の声が出たのである。例の奴等からである。
話を戻す。
「くす型PF」の「くす」を漢字で書くと「楠」である。
「くす型PF」の命名基準は樹木名で、全18隻の艦名は、楠(くす)、楢(なら)、樫(かし)、樅(もみ)、杉(すぎ)、松(まつ)、楡(にれ)、萱(かや)、梅(うめ)、桜(さくら)、桐(きり)、柘(つげ)、楓(かえで)、椈(ぶな)、欅(けやき)、栃(とち)、椎(しい)、槇(まき)である。
なんとも日本的で良い命名だと思ったので、樹木名を採用してくれないかな、と思った次第である。表題にある「雑木林艦隊」とは、これら「くす型PF」の艦名からきたものである。
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(*1):新型護衛艦FFMの2番艦の進水式が行われ「くまの」と命名された。
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https://trafficnews.jp/post/102022
小見出し:◆新型護衛艦の名称は「くまの」! 艦番号は「2」
記事:○防衛省は2020年11月19日(木)、三井E&S造船 玉野艦船工場(岡山県玉野市)にて、新規建造された護衛艦の命名式および進水式を実施しました。「くまの」と命名された同艦は、これまで「30FFM」と呼ばれていた新型護衛艦のなかで初の進水となります。
○なお海上幕僚監部広報室の話によると、現在、長崎県の三菱重工長崎造船所で建造中の1番艦よりも先行して進水したため、型名は1番艦の命名まで「3900トン型護衛艦」と呼称するといいます。
○「くまの」は全長133.0m、幅16.3m、深さ9.0m、喫水4.7m、基準排水量は3900トンで、乗員数は約90名。主機関はガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの組み合わせで、軸出力は7万馬力、速力は約30ノットです。
○今回、進水した「くまの」を始めとする3900トン護衛艦は、増大する平時の警戒監視に対応するほか、有事においても対潜水艦戦闘や対空戦闘、対水上戦闘などに加えて、これまで掃海艦艇が担ってきた対機雷戦に関しても、能力が付与されているのが特徴です。
○また従来の護衛艦と比べて、船体のコンパクト化や調達コストの抑制、省人化にも配慮した設計になっているのもポイントといいます。
○なお、「くまの」は「熊野川」に由来し、海上自衛隊で用いるのは、ちくご型護衛艦の10番艦「くまの」(2001年除籍)に続いて2回目です。旧日本海軍では、最上型軽巡洋艦の4番艦「熊野」が存在しました。
○「くまの」は今後、艤装や各種試験を実施したのち、2022年3月に就役の予定です。
<引用終わり>
(*2):サンフランシスコ講和条約
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2017/05/31投稿:
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情勢認識が冷戦時代のままではダメでしょ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-829.html
(*3):くす型PFの要目
↓
基準排水量:1,450トン
満載排水量:2,250トン
全 長 :93.3m
最大速度 :18 ノット
<兵装>
Mk.22 50口径3インチ単装緩射砲×3基
Mk.1 40mm連装機銃×2基
Mk.10 20mm単装機銃×9基
Mk.10 ヘッジホッグ対潜迫撃砲×1基
Mk.6 片舷用爆雷投射機(K砲)×8基
Mk.9 爆雷投下軌条×2条
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