アメリカ憲法と憲法修正条項・国柄により首脳選出方法は大きく違う
- 2020/11/19
- 06:45
アメリカ憲法と憲法修正条項・国柄により首脳選出方法は大きく違う
副題:アメリカ憲法は「アメリカという国の形」を成文化したもの。民主主義の本家を自称するアメリカで、民主主義制度の根幹を成す選挙が正しく機能していないかもしれない事態が起こっているのに、メディアは、それを無視している様に感じている。
閏年の11月の第1火曜日(ただしそれが1日の場合は翌週第2火曜日)がアメリカ大統領選挙の投票日であり、今年は11月3日がその日であった。現在、投票結果に関しては不正があったとして再集計をしていたり再集計の実行可否を検討していたり誰が次期大統領であるのかは確定していない。
その一方、我が国メディアは、あたかもバイデンが次期大統領であるかの様な「報道」をしている。法的には確定していないにも関わらずにである。
同様、アメリカでも反トランプメディアはあたかもバイデンが勝ったかの如き「報道」を流しているので、トランプ大統領はツイッターで「大統領を選ぶのはメディアではない」と発信しているのである。
首脳の選出方法に関しては、以前から当ブログで幾度も題材として取り上げてきたが、今回の大統領選で、あらためて興味を持たれた方もいると思うので、先ずは、今話題のアメリカ大統領の選出方法の概略を紹介する。
今年の投票日11月3日にアメリカ国民は、大統領名・副大統領名が書かれた投票用紙にチェックを入れて投票するのだが、それで各州で選出されるのは「選挙人」である。
各州での一般投票の結果を以て、各州に割り当てられた「選挙人」は、自身に付与された大統領選挙への投票権を行使するとの建て付けになっているものである。
選挙人数は全米で538人。各州への割り当ては、各州の上院議員・下院議員数の合計値に応じて行われる。アメリカの下院(我が国の衆議院に相当)は定数435議席で、人口比で割り当てられる。(*1)
一方、上院(参議院に相当)は「各州2議席」であり人口比ではない。
従い、各州に割り当てられた選挙人の数も人口比ではない。
我が国の場合は、「なんでもかんでも人口比」との偏狭な考え方で参議院の都道府県別議席数が設定されているので、島根・鳥取及び高知・徳島は2県で1議席との合区制度をとっており「地域の意志」の反映が阻害されている状態にある。(*2)
アメリカの場合は「国の形」が「合「州」国」である。
アメリカは「アメリカ合衆国」と日本語表記されるが、政体としては「合「州」国」である。United States of AmericaのUnited Statesとは「United=連合、States=国・州」であり、各州が統治権(*3)を持ち、その集合体の連邦政府が対外的国家主権を行使するとの建て付けなので、上院の各州2議席は確固たるもので、けして人口比一辺倒にはならないのである。
大統領選挙の一般投票が行われるには上述した通り、今年は11月3日だったのだが、それで選定された選挙人が投票するのは、今年は12月14日になる。
選挙人の投票は「12月の第1水曜日の次の月曜日」との規定があり、選挙人は各州の州都で投票をする。各州での投票結果は来年(2021年)の1月6日に連邦議会で開票され、そこで決定される。
アメリカ大統領の任期は開票が行われたその月の1月20日正午からである。(*4)
この様に、法的に確定するのは未だ先のことなのである。
各州での投票の結果で、その州の選挙人が選定されるのだが、その方式は「総取り方式」である。
各州での一般投票で共和党のトランプ・ペンスの得票数が多かった場合、「トランプに投票する」とする選挙人がその州に割り当てられた人数分だけ選定される。
一般投票の結果が仮にトランプ60%・バイデン40%だとして、その州に割り当てられた選挙人が仮に10人だった場合、トランプに投票する選挙人6人・バイデンに投票する選挙人4人とはならず、トランプに投票する選挙人10人が選定される総取り方式となっている。
我が国の「国の形」とアメリカの「国の形」の相違により、両国の選挙制度も違うのである。我が国の首脳の決め方は、同じ立憲君主国であるイギリスと相似性がある。
我が国行政府の長は内閣総理大臣である。
我が国はイギリスと同じ立憲君主国であり、議会多数派の代表が首相として選出され、元首から統治権行使権の委譲を受ける議院内閣制である。我が国の場合は国会での首班指名にて選定された人物が天皇陛下から任命され首相となる。イギリスでは選挙での第1党代表がエジンバラ宮殿に出向き認められるとの慣習を通じて首相となる。(*5)
この様な我が国の首相選定プロセスを分かり易くまとめたのが以下である。尚、イギリスは不成文憲法の国なので、以下と同様のプロセスは慣習により機能している。
(1)総選挙実施(現行憲法・第43条)
↓
(2)選挙結果に応じ国会で内閣総理大臣を指名(第67条)
↓
(3)天皇陛下が内閣総理大臣を任命する。(第6条)
↓(総理大臣の地位正式化・統治権行使権の委譲)
(4)内閣総理大臣が国務大臣を任命(第68条)
↓
(5)天皇陛下が国務大臣を認証する。(第7条)
↓
組閣完了・政権確定
アメリカ憲法には、アメリカ大統領の選定の規定がある。
7章あるアメリカ憲法のうち、第2章が行政に関する規定であり、同章の第1条が大統領と副大統領の選出に関する規定である。(*6)
我が国憲法は大日本帝国憲法も現行憲法も条数の付し方は連続なのだが、アメリカ憲法では章が変ると、その章の最初の条文は第1条となる方式である。
因みに、アメリカ憲法の第1章は議会、第3章は司法である。
また、第2章の第2条は大統領の権限規定、第3条は大統領の義務規定、第4条は大統領の弾劾に関する規定である。
アメリカ憲法が成立したのは1788年(署名は1787年)のことである。本日現在は2020年なので約230年前に出来た憲法という訳だ。
憲法は国の形を成文化したものであるのだが、時代の変遷、外部環境の変化に応じ、改憲する必要が生じるものである。約230年前の規定がそのまま現在に通用しないケースも出てくるのは当然で、必要に応じて改憲をするものである。
ドイツの改憲回数などは、その典型例であるがフランスなども戦後に憲法改正を幾度かしている。(*7)
アメリカも同様で、アメリカ憲法も何回も改憲している。
アメリカ憲法の改憲規定は第5章にあり「この憲法の一部として効力を有する」との文言がある。アメリカ憲法は、改憲の際に元の条文を書き換えるのではなく「修正条項」を新たに加える方式との、かなり特殊な方式を採用している。
アメリカ憲法の憲法修正条項(*8)は全部で27条ある。
これを「27回改憲された」と誤解してはいけない。27ヶ所が改定されたものである。
修正1条から修正10条は総て1791年に改定されたものであるから、回数としては1回目である。
憲法修正条項のうち、大統領関係規定で一番有名なのは1951年成立の修正第22条「大統領の3選禁止条項」であろう。
この規定があることから、アメリカ大統領は2期8年が最長就任期間となっているのである。この3選禁止条項がなかった1951年以前は、最悪の失政をしたアメリカ民主党・Fルーズベルト大統領が4選もの長期政権となった記録がある。
4選なのだが任期途中で死亡(*9)した為、在任期間は16年ではなく12年と数ヶ月である。
尚、ここで「最悪の失政をしたアメリカ大統領」と書いたのは、「フーバー回顧録」に関する一連の論考(*10)で示した通りの理由があるからだ。興味ある方はご一読いただきたい。
以下にアメリカ憲法修正条項に於ける大統領関係規定を紹介する。
詳細を書いていると相当長くなるので、今回は該当条項だけの紹介にとどめる。
↓
・修正第12条 [正副大統領の選出方法の改正] [1804 年成立]
・修正第20条[正副大統領と連邦議員の任期] [1933 年成立]
・修正第22条[大統領の三選禁止] [1951 年成立]
・修正第23条[コロンビア地区の大統領選挙人] [1961 年成立]
(注:コロンビア特別区とはワシントンDCのこと)
・修正第25条[大統領の地位の継承] [1967 年成立]
本ブログは「憲法研究ブログ」を名乗っている様に、憲法を軸に論を述べているものである。他国の憲法を参考にするのは自国憲法との比較をすることで様々な問題点・注目点が浮かんでくるからである。
今回は、アメリカ大統領選の混迷を同国憲法の規定から概観したが、それは民主主義の本家を自称するアメリカで、民主主義制度の根幹を成す選挙が正しく機能していないかもしれない事態が起こっているのに、メディアは、それを無視して、あたかも「バイデンで決まり」であるかの様な「報道」をしているからである。
トランプ大統領はツイッターで盛んに不正投票があった事を発信しているが、日米両国の大手メディアは、それを無視して報じていない。
アメリカ憲法の規定からすれば、選挙人が投票する12月14日までは、選挙人を確定する一般投票の不正有無についてはトッププライオリティーを以て報道すべきニュースだと思うのだが、それをしていない事に民主主義の危機を感じるのである。
今回は以上である。
1日1回ポチっとな ↓
FC2 Blog Ranking 
【文末脚注】
(*1):アメリカの下院(我が国の衆議院に相当)は人口比で割り当てられる。
↓
2016/01/08投稿:
第4章・国会 衆議院・参議院について4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-309.html
(*2):我が国の場合は、「なんでもかんでも人口比」との偏狭な考え方で参議院の都道府県別議席数が設定されているので、島根・鳥取及び高知・徳島は2県で1議席との合区制度をとっており「地域の意志」の反映が阻害されている状態にある。
↓
2018/07/20投稿:
参議院選挙制度問題とは人口比一辺倒の単一基準問題
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-982.html
【ご参考】
2017/07/24投稿:
憲法議論8・一票の格差・合区解消
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-718.html
2018/02/07投稿:
一票の格差・合区・2012年自民党改憲草案の良い所悪い所
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-861.html
(*3):アメリカの各州が統治権を持ち
↓
<3つの主権概念>
・主権1):国民及び領土を統治する主権。統治権
・主権2):国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行うことが出来る主権。対外的国家主権
・主権3):国家の政治を最終的に決定する権利。我が国では国民が投票権他で行使。国民主権
※我が国やイギリスの様な自由民主主義の立憲君主国での建て付けでは、国民が主権3)を、選挙を通じて行使し、選挙で選任された議員の数に応じて選任された首班に対して主権1)統治権の行使権が、統治権者から国民によってえら選ばれた首班に委譲され、首班が首相として行政が行われるとの建て付けになっているのである。
一方、アメリカは連邦制・共和国である。主権3)は同じだが、主権1)は各州での選挙で選定された各州政府が持ち、主権2)は連邦政府が行使する建て付けである。
2015/09/16投稿:
自己検証3 主権概念の整理
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-211.html
(*4):アメリカ大統領の任期は開票が行われたその月の1月20日正午からである。
↓
修正第20条:アメリカ憲法修正条項・修正第20条[正副大統領と連邦議員の任期] [1933 年成立]
第1項 大統領および副大統領の任期は、この修正条項が承認されていなければその任期が終了してい たはずの年の1 月20 日の正午に終了し、上院議員および下院議員の任期は、同じ年の1 月3 日の正午に 終了する。後任者の任期はその時に始まる。
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
(*5):我が国の場合は国会での首班指名にて選定された人物が天皇陛下から任命され首相となる。イギリスでは選挙での第1党代表がエジンバラ宮殿に出向き認められるとの慣習を通じて首相となる。
↓
2017/11/04投稿:
「皇居での首相任命式と閣僚認証式」憲法第6条・第7条
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-795.html
2015/10/10投稿:
【コラム】「皇居での認証式」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-229.html
【ご参考】
2015/09/05投稿:
【コラム】国家元首と政治権力者(統治権行使権者)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-202.html
(*6):7章あるアメリカ憲法のうち、第2章が行政に関する規定であり、同章の第1条が大統領と副大統領の選出に関する規定である。
↓
※アメリカ合衆国憲法
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2566/
(*7):ドイツの改憲回数などは、その典型例であるがフランスなども戦後に憲法改正を幾度かしている。
↓
2018/02/10投稿:
「ドイツ憲法の改正回数は「59回」」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-864.html
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
※フランス憲法の現行緊急事態条項は24回目の改憲の際に改定されたものである。
(*8):アメリカ憲法の憲法修正条項
↓
※アメリカ合衆国憲法本文第5章にもとづき、合衆国議会が 発議し諸州の立法部が承認した、合衆国憲法に追加され またはこれを修正する条項*
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
(*9):任期途中で死亡したルーズベルト
↓
2017/03/10投稿:
「ルーズベルトに与うる書」を読む
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-624.html
2016/11/17投稿:
フーバー回顧録Doc.18-7
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-544.html
(*10):「フーバー回顧録」に関する一連の論考
↓
タグ【フーバー回顧録】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-category-11.html
1日1回ポチっとな ↓
FC2 Blog Ranking


副題:アメリカ憲法は「アメリカという国の形」を成文化したもの。民主主義の本家を自称するアメリカで、民主主義制度の根幹を成す選挙が正しく機能していないかもしれない事態が起こっているのに、メディアは、それを無視している様に感じている。
閏年の11月の第1火曜日(ただしそれが1日の場合は翌週第2火曜日)がアメリカ大統領選挙の投票日であり、今年は11月3日がその日であった。現在、投票結果に関しては不正があったとして再集計をしていたり再集計の実行可否を検討していたり誰が次期大統領であるのかは確定していない。
その一方、我が国メディアは、あたかもバイデンが次期大統領であるかの様な「報道」をしている。法的には確定していないにも関わらずにである。
同様、アメリカでも反トランプメディアはあたかもバイデンが勝ったかの如き「報道」を流しているので、トランプ大統領はツイッターで「大統領を選ぶのはメディアではない」と発信しているのである。
国柄により違う首脳の選出方法
首脳の選出方法に関しては、以前から当ブログで幾度も題材として取り上げてきたが、今回の大統領選で、あらためて興味を持たれた方もいると思うので、先ずは、今話題のアメリカ大統領の選出方法の概略を紹介する。
投票は州毎に選挙人を選出する総取り方式
今年の投票日11月3日にアメリカ国民は、大統領名・副大統領名が書かれた投票用紙にチェックを入れて投票するのだが、それで各州で選出されるのは「選挙人」である。
各州での一般投票の結果を以て、各州に割り当てられた「選挙人」は、自身に付与された大統領選挙への投票権を行使するとの建て付けになっているものである。
選挙人数は全米で538人。各州への割り当ては、各州の上院議員・下院議員数の合計値に応じて行われる。アメリカの下院(我が国の衆議院に相当)は定数435議席で、人口比で割り当てられる。(*1)
一方、上院(参議院に相当)は「各州2議席」であり人口比ではない。
従い、各州に割り当てられた選挙人の数も人口比ではない。
我が国の場合は、「なんでもかんでも人口比」との偏狭な考え方で参議院の都道府県別議席数が設定されているので、島根・鳥取及び高知・徳島は2県で1議席との合区制度をとっており「地域の意志」の反映が阻害されている状態にある。(*2)
アメリカの場合は「国の形」が「合「州」国」である。
アメリカは「アメリカ合衆国」と日本語表記されるが、政体としては「合「州」国」である。United States of AmericaのUnited Statesとは「United=連合、States=国・州」であり、各州が統治権(*3)を持ち、その集合体の連邦政府が対外的国家主権を行使するとの建て付けなので、上院の各州2議席は確固たるもので、けして人口比一辺倒にはならないのである。
大統領選挙の一般投票が行われるには上述した通り、今年は11月3日だったのだが、それで選定された選挙人が投票するのは、今年は12月14日になる。
選挙人の投票は「12月の第1水曜日の次の月曜日」との規定があり、選挙人は各州の州都で投票をする。各州での投票結果は来年(2021年)の1月6日に連邦議会で開票され、そこで決定される。
アメリカ大統領の任期は開票が行われたその月の1月20日正午からである。(*4)
この様に、法的に確定するのは未だ先のことなのである。
各州での投票の結果で、その州の選挙人が選定されるのだが、その方式は「総取り方式」である。
各州での一般投票で共和党のトランプ・ペンスの得票数が多かった場合、「トランプに投票する」とする選挙人がその州に割り当てられた人数分だけ選定される。
一般投票の結果が仮にトランプ60%・バイデン40%だとして、その州に割り当てられた選挙人が仮に10人だった場合、トランプに投票する選挙人6人・バイデンに投票する選挙人4人とはならず、トランプに投票する選挙人10人が選定される総取り方式となっている。
我が国の首脳選定方式の憲法規定
我が国の「国の形」とアメリカの「国の形」の相違により、両国の選挙制度も違うのである。我が国の首脳の決め方は、同じ立憲君主国であるイギリスと相似性がある。
我が国行政府の長は内閣総理大臣である。
我が国はイギリスと同じ立憲君主国であり、議会多数派の代表が首相として選出され、元首から統治権行使権の委譲を受ける議院内閣制である。我が国の場合は国会での首班指名にて選定された人物が天皇陛下から任命され首相となる。イギリスでは選挙での第1党代表がエジンバラ宮殿に出向き認められるとの慣習を通じて首相となる。(*5)
この様な我が国の首相選定プロセスを分かり易くまとめたのが以下である。尚、イギリスは不成文憲法の国なので、以下と同様のプロセスは慣習により機能している。
(1)総選挙実施(現行憲法・第43条)
↓
(2)選挙結果に応じ国会で内閣総理大臣を指名(第67条)
↓
(3)天皇陛下が内閣総理大臣を任命する。(第6条)
↓(総理大臣の地位正式化・統治権行使権の委譲)
(4)内閣総理大臣が国務大臣を任命(第68条)
↓
(5)天皇陛下が国務大臣を認証する。(第7条)
↓
組閣完了・政権確定
アメリカ憲法に於ける大統領関係規定
アメリカ憲法には、アメリカ大統領の選定の規定がある。
7章あるアメリカ憲法のうち、第2章が行政に関する規定であり、同章の第1条が大統領と副大統領の選出に関する規定である。(*6)
我が国憲法は大日本帝国憲法も現行憲法も条数の付し方は連続なのだが、アメリカ憲法では章が変ると、その章の最初の条文は第1条となる方式である。
因みに、アメリカ憲法の第1章は議会、第3章は司法である。
また、第2章の第2条は大統領の権限規定、第3条は大統領の義務規定、第4条は大統領の弾劾に関する規定である。
アメリカ憲法が成立したのは1788年(署名は1787年)のことである。本日現在は2020年なので約230年前に出来た憲法という訳だ。
憲法は国の形を成文化したものであるのだが、時代の変遷、外部環境の変化に応じ、改憲する必要が生じるものである。約230年前の規定がそのまま現在に通用しないケースも出てくるのは当然で、必要に応じて改憲をするものである。
ドイツの改憲回数などは、その典型例であるがフランスなども戦後に憲法改正を幾度かしている。(*7)
アメリカも同様で、アメリカ憲法も何回も改憲している。
アメリカ憲法の改憲規定は第5章にあり「この憲法の一部として効力を有する」との文言がある。アメリカ憲法は、改憲の際に元の条文を書き換えるのではなく「修正条項」を新たに加える方式との、かなり特殊な方式を採用している。
アメリカ憲法修正条項に於ける大統領関係規定
アメリカ憲法の憲法修正条項(*8)は全部で27条ある。
これを「27回改憲された」と誤解してはいけない。27ヶ所が改定されたものである。
修正1条から修正10条は総て1791年に改定されたものであるから、回数としては1回目である。
憲法修正条項のうち、大統領関係規定で一番有名なのは1951年成立の修正第22条「大統領の3選禁止条項」であろう。
この規定があることから、アメリカ大統領は2期8年が最長就任期間となっているのである。この3選禁止条項がなかった1951年以前は、最悪の失政をしたアメリカ民主党・Fルーズベルト大統領が4選もの長期政権となった記録がある。
4選なのだが任期途中で死亡(*9)した為、在任期間は16年ではなく12年と数ヶ月である。
尚、ここで「最悪の失政をしたアメリカ大統領」と書いたのは、「フーバー回顧録」に関する一連の論考(*10)で示した通りの理由があるからだ。興味ある方はご一読いただきたい。
以下にアメリカ憲法修正条項に於ける大統領関係規定を紹介する。
詳細を書いていると相当長くなるので、今回は該当条項だけの紹介にとどめる。
↓
・修正第12条 [正副大統領の選出方法の改正] [1804 年成立]
・修正第20条[正副大統領と連邦議員の任期] [1933 年成立]
・修正第22条[大統領の三選禁止] [1951 年成立]
・修正第23条[コロンビア地区の大統領選挙人] [1961 年成立]
(注:コロンビア特別区とはワシントンDCのこと)
・修正第25条[大統領の地位の継承] [1967 年成立]
最後に・現状に関して
本ブログは「憲法研究ブログ」を名乗っている様に、憲法を軸に論を述べているものである。他国の憲法を参考にするのは自国憲法との比較をすることで様々な問題点・注目点が浮かんでくるからである。
今回は、アメリカ大統領選の混迷を同国憲法の規定から概観したが、それは民主主義の本家を自称するアメリカで、民主主義制度の根幹を成す選挙が正しく機能していないかもしれない事態が起こっているのに、メディアは、それを無視して、あたかも「バイデンで決まり」であるかの様な「報道」をしているからである。
トランプ大統領はツイッターで盛んに不正投票があった事を発信しているが、日米両国の大手メディアは、それを無視して報じていない。
アメリカ憲法の規定からすれば、選挙人が投票する12月14日までは、選挙人を確定する一般投票の不正有無についてはトッププライオリティーを以て報道すべきニュースだと思うのだが、それをしていない事に民主主義の危機を感じるのである。
今回は以上である。
1日1回ポチっとな ↓



【文末脚注】
(*1):アメリカの下院(我が国の衆議院に相当)は人口比で割り当てられる。
↓
2016/01/08投稿:
第4章・国会 衆議院・参議院について4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-309.html
(*2):我が国の場合は、「なんでもかんでも人口比」との偏狭な考え方で参議院の都道府県別議席数が設定されているので、島根・鳥取及び高知・徳島は2県で1議席との合区制度をとっており「地域の意志」の反映が阻害されている状態にある。
↓
2018/07/20投稿:
参議院選挙制度問題とは人口比一辺倒の単一基準問題
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-982.html
【ご参考】
2017/07/24投稿:
憲法議論8・一票の格差・合区解消
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-718.html
2018/02/07投稿:
一票の格差・合区・2012年自民党改憲草案の良い所悪い所
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-861.html
(*3):アメリカの各州が統治権を持ち
↓
<3つの主権概念>
・主権1):国民及び領土を統治する主権。統治権
・主権2):国家が他国からの干渉を受けずに独自の意思決定を行うことが出来る主権。対外的国家主権
・主権3):国家の政治を最終的に決定する権利。我が国では国民が投票権他で行使。国民主権
※我が国やイギリスの様な自由民主主義の立憲君主国での建て付けでは、国民が主権3)を、選挙を通じて行使し、選挙で選任された議員の数に応じて選任された首班に対して主権1)統治権の行使権が、統治権者から国民によってえら選ばれた首班に委譲され、首班が首相として行政が行われるとの建て付けになっているのである。
一方、アメリカは連邦制・共和国である。主権3)は同じだが、主権1)は各州での選挙で選定された各州政府が持ち、主権2)は連邦政府が行使する建て付けである。
2015/09/16投稿:
自己検証3 主権概念の整理
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-211.html
(*4):アメリカ大統領の任期は開票が行われたその月の1月20日正午からである。
↓
修正第20条:アメリカ憲法修正条項・修正第20条[正副大統領と連邦議員の任期] [1933 年成立]
第1項 大統領および副大統領の任期は、この修正条項が承認されていなければその任期が終了してい たはずの年の1 月20 日の正午に終了し、上院議員および下院議員の任期は、同じ年の1 月3 日の正午に 終了する。後任者の任期はその時に始まる。
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
(*5):我が国の場合は国会での首班指名にて選定された人物が天皇陛下から任命され首相となる。イギリスでは選挙での第1党代表がエジンバラ宮殿に出向き認められるとの慣習を通じて首相となる。
↓
2017/11/04投稿:
「皇居での首相任命式と閣僚認証式」憲法第6条・第7条
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-795.html
2015/10/10投稿:
【コラム】「皇居での認証式」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-229.html
【ご参考】
2015/09/05投稿:
【コラム】国家元首と政治権力者(統治権行使権者)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-202.html
(*6):7章あるアメリカ憲法のうち、第2章が行政に関する規定であり、同章の第1条が大統領と副大統領の選出に関する規定である。
↓
※アメリカ合衆国憲法
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2566/
(*7):ドイツの改憲回数などは、その典型例であるがフランスなども戦後に憲法改正を幾度かしている。
↓
2018/02/10投稿:
「ドイツ憲法の改正回数は「59回」」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-864.html
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
※フランス憲法の現行緊急事態条項は24回目の改憲の際に改定されたものである。
(*8):アメリカ憲法の憲法修正条項
↓
※アメリカ合衆国憲法本文第5章にもとづき、合衆国議会が 発議し諸州の立法部が承認した、合衆国憲法に追加され またはこれを修正する条項*
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
(*9):任期途中で死亡したルーズベルト
↓
2017/03/10投稿:
「ルーズベルトに与うる書」を読む
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-624.html
2016/11/17投稿:
フーバー回顧録Doc.18-7
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-544.html
(*10):「フーバー回顧録」に関する一連の論考
↓
タグ【フーバー回顧録】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-category-11.html
1日1回ポチっとな ↓



スポンサーサイト