本当に危ない「鬼滅の刃・伊之助コスプレ」猪マスクを山でかぶる
- 2020/11/01
- 13:11


副題:猟場では猪マスクを被った人間がひょっこり出てくることを想定していない。想定しているのは、藪のガサガサ音の主が猟仲間、ハイカー、山菜採りなどの人間である可能性だけだ。猪マスクでは人間だと判別する事は難しくなる。
記事見出しが「◆「鬼滅の刃」伊之助コスにマタギがNO! 「猪マスク、山ではやめて。撃ってしまう」とのYahooニュース=弁護士ドットコムニュース(*1)を読んだ。
結論的には、まったくこの通りで、危険な行為への警鐘として有益だと思う。
その一方、当該記事には、マタギ(猟師)の発言が記載されているのだが、ちょっと言葉足らずで誤解を招くのではないかと危惧したので今回の投稿となったものである。「言葉足らず」と書いたが、もう少し詳しく書くと「猟場での「常識」を前提として話しているので猟場を知らない方には誤解される可能性がある」である。
何が「猟場での「常識」」なのかと言うと、猪と鹿では移動の仕方が違い、猪は藪から藪に移動することが多く、視覚での確認が鹿に比べて難しいという点にある。
獲物の気配を感じてから、「何処にいるか」を確信する際に、鹿の場合は視認によるものがかなり多いと感じるが、猪の場合は、視認によるもの以上に音による場合が多い様な気がしている。
勿論、音だけで発砲する事はない。
視認せずに発砲する事は厳に戒められている。ハイカーや山菜採りなどが猟場に紛れ込んでくる場合があり、発砲する際には、必ず狙い先が獲物であることを見て確認してから、と厳命されており、当方もその通りにしている。
「何かがいる」と確信させる音としては、落ち葉を踏む音、枯れ枝を踏みパキっと折れる音、藪や草叢のガサガサ音などがある。
そういう音がしたら音がした方向に注目するのだが、猪が移動する際の藪のガサガサの場合、音はするものの姿が見えない事が多い。
藪が途切れた場所に「何か」が出てきて姿が見えて、それが獲物であることが確認出来たら、発砲することになる。
鉄砲にはスコープを乗せている場合が多々ある。特に老眼が進行した高齢者はスコープを使用する方が、狙いが確実になるからだ。スコープには倍率1.5倍~2倍程度の裸眼で注視した際とほぼ同じ見え方をする倍率のスコープもある。
林が多い猟場では3倍よりも倍率が高いスコープはかえって視野を狭めるなどの弊害もあるが、視野が開けた場所なら3倍以上でも構わないと考えている。
何れにしろ、猟場の環境により道具は変化するので一概には言えないものの、ガサガサ音と視覚で獲物を確認する場合、ガサガサ音がする場所にスコープの中で猪の姿が見えたら、1秒もかからず撃つ事になる。
その際、その猪の姿が「猪マスクを被ったコスプレの人」であるなどとは夢にも思わないのが実情だ。猪の姿を確認した際に、それが猪マスクを被った人間なのか本当の猪なのかを確認している時間のうちに、猪は次の藪の中に消えてしまっているのが実際のところだ。
何を言いたいのかというと、ほとんど総てのハンターは、自分の持つ銃の射程圏内に猪の姿を確認したら、バックストップがある等の発砲可能な状況ならば、かなりの短時間で発砲することになると言う事だ。
そういう場所に、猪マスクを被って入り込むことは自殺行為なのである。
残念な事に、猟銃による誤発砲事件は1~3年に1回程度は発生している。
その殆どが獲物の確認(矢先の確認)が不十分であったというものだ。暴発事故もあるが、何れにせよ、銃砲所持者には厳しく安全操作が求められている。
記事にある様なマタギが語った「気が動転して撃ってしまった」などは、安全講習の際に厳しく諌められており、今や「気が動転しているなら撃つな。獲物がとれなくても気にするな。周りの者も獲物に逃げられた事を批判するな」などの指導がなされている。
少なくとも、当方が居住する神奈川ではそういう指導がなされている。
その一方、狩猟の安全講習では、けして「猪マスクを被った人間であるかどうかを確認せよ」とか「その鹿はぬいぐるみの可能性があるので確認せよ」などという事は指導されない。
そんな事は想定外の事態である。
「獲物」だと確信するに足る姿の確認を以て発砲しているのが実情だが、勿論、クマモンと本物のツキノワグマを見間違えることはない(冗談)
しかし、冗談ではなく、いくら「鬼滅の刃」が流行っているからと言って、猟場に猪マスクは本当に危険なのでやめていただきたい。
猟場では猪マスクを被った人間がひょっこり出てくることを想定していないのである。
神奈川県の場合はほとんどの地域が銃猟禁止地域になっており、横浜・鎌倉の市境にある「市民の森」などは誰でも自由に散策でき、かつ、かなり広大なのでコスプレ撮影が出来る場所が充分にあるので心配はしていないが、その一方、銃猟が可能な丹沢などの県西山間部の猟場の林道には、部外者侵入禁止のフェンスの脇をすり抜けたロードレーサーなどが入り込むこともあるので猟師側は気が抜けないのが実態だ。
逆に言えば、獲物だと分かれば発砲する。
そして「猪マスクを被った人間」は、猟場で獲物だと誤認される確率がかなり高いと想定される。猪を撃つ場合、正面であれば眉間を、横向きであれば耳の辺りを撃つ。それが「猪マスクの人間」だった場合、当たれば確実に脳が吹っ飛ぶことになる。
いくら「鬼滅の刃」が流行っているからと言って、猟場に猪マスクは本当に危険なのでやめていただきたい。
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【文末脚注】
(*1):Yahooニュース=弁護士ドットコムニュース
↓
Yahooニュース(弁護士ドットコムニュース)10/31(土) 10:30配信
見出し:◆「鬼滅の刃」伊之助コスにマタギがNO! 「猪マスク、山ではやめて。撃ってしまう」
https://news.yahoo.co.jp/articles/de94a9ed63fe669b36af251619e5f625f21d19ea
記事:○山の立ち入り禁止区域に無許可で「猪のお面」をつけたコスプレイヤーが現れたとされるツイッターの投稿が10月27日現在、合計約2万8000件の「いいね」「リツイート」がされているほどネットで話題になっている。
○その特徴から、日本映画史に残るヒットを記録している「鬼滅の刃」のキャラクター「嘴平伊之助(はしびらいのすけ)」のコスプレではないかとみられている。
○だが、投稿者は狩猟期間中の山では「流れ弾に当たる可能性も0ではない」と危険性を指摘する。
○11月にも猪猟が解禁される秋田のマタギの頭領も「猪の格好をするだなんて危険きわまりない。やめてほしい」と訴えた。(編集部・塚田賢慎)
小見出し:●「無許可で山に入ってイノシシのお面?つけて撮影を」
○話題になっているのは、「狩猟クラスタで話題になってけど、コスプレイヤーが猟期の山に無許可で入って立入禁止区域で猪のお面?つけて撮影したりしてるとのこと」という10月23日の投稿だ。
○投稿者は「誤射されたり、狙ってなくても流れ弾に当たる可能性が0じゃないので止めて…許可取ってくれれば、その日は狩猟禁止とかできるから…入林許可取って…」とコスプレイヤーに呼びかけている。
○そのうえで、「基本的に山は私有地か公有地で勝手にはいったら不法侵入」と警鐘を鳴らした。
○コスプレイヤーが山に入って撮影する際の注意点を、山の問題に詳しい溝手康史弁護士に聞いた。
小見出し:●コスプレイヤーが山で注意すべきは
○Q:山に入って撮影をしたいと考えるコスプレイヤーが法的に注意すべきことはなんでしょうか?
○A:山に入るには、私有地、公有地を問わず、土地の所有者、管理者の承諾が必要だというのが建前ですが、黙認されていることが多く、通常は登山やレジャーのために山に入っても法的な問題は生じません。コスプレイヤーも同じです。
○ただし、土地所有者がロープなどを張って立入禁止の範囲を明示すれば、そこに進入すれば軽犯罪法違反になります。
○一方、猟をする人は、猟を行うことを明示して人が近づかないようにする必要があります。しかし、猟をする人が猟のために立入禁止の表示をしても、土地所有者でなければ、その表示に法的な効力はありません。
○Q:ただ、登山をするだけで狩猟者に撃たれるおそれはあるでしょうか
○A:狩猟の場所は、人が通行する可能性のない場所を選ぶので、登山者が間違って撃たれることは滅多にありません。狩猟者は人の存在にかなり神経を使います。登山者が猟の場所に遭遇することは滅多にありません。
○また、猟をしていれば銃声や猟犬の吠える声が聞こえるので、何となく雰囲気で猟が行われていることがわかります。しかし、過去に、ハイカーがまちがって猟銃で撃たれた事故がないわけではありません。
○滅多に人が入らないような山に進入する人は、万一の場合に備えて音を出すとか(熊よけにもなります)、目立つ色の服を着るなどして人がいることを知らせる必要があります。
小見出し:●秋田県のマタギは「イノシシの格好するのは大変危険」
○一方、猟をする側からは「動物の格好で山に入るのはやめてほしい」という意見が出た。
○中学生でマタギになった「打当マタギ」のシカリ(=頭領)で、北秋田市猟友会の阿仁地区猟友会副会長を務める鈴木英雄さん(73)は「この地区でも、11月からツキノワグマやイノシシの猟が始まります。猟をする側からすると、大変に危険なのです」と話す。
○「昔は、黒でも地味な色でも、好きな色の服装で山に入っていました。しかし、そんな格好で柴の中を歩けば、動物か人間かわからず、誤って撃って死亡する事故も起きていたんです。そのため、熊の駆除をするときなどは、蛍光色の帽子とベストを着用することが全国的に広がりました。それなのに、猪の面をつけるだなんて危険きわまりない」
○中学生の頃から銃をかついで地元の森吉山で猟をしてきた超ベテランの鈴木さんだが、「銃の引き金を引く前は、矢先(銃の先)を確認します。しかし、動転していると、誤まって撃ってしまうこともあるでしょう」と語る。
○また、山奥であれば、登山道であっても「猟場」に含まれていることがあるという。「狩猟が禁じられている公園などであればよいが、そういう格好で山に入るのはやめてほしい」
○狩猟免許を取得し、猟師のなりてが減っていると鈴木さんは言う。
○「間違って撃ったら、間違いなく免許は取り上げられてしまう。猪の格好をして撃たれる人も、撃ってしまう猟師にも、どちらにも良いことはない」
小見出し:●コスプレイヤーは生殺与奪の権を他人に握らせないで
○読売新聞オンライン(10月26日)によると、山梨県南アルプス市の山林で、鹿の駆除をしていた猟友会の男性が、別の会員が撃った弾にあたって、怪我をする事案が起きた。「鹿だと思って撃ったら人だった」と話しており、誤射の可能性がある。
○人間のままでも動物と間違われてしまうのであれば、わざわざ猪の格好をしていれば、危険性は高いに違いないだろう。
○鉄砲の前では「攻撃されてる!」と気づいたときにはもう遅い。生殺与奪の権を他人に握らせることなく、コスプレは安全な場所で楽しんでほしい。
○【取材協力弁護士】
溝手 康史(みぞて・やすふみ)弁護士
弁護士。日本山岳サーチ・アンド・レスキュー研究機構、国立登山研修所専門調査委員会、日本山岳文化学会、日本ヒマラヤ協会等に所属。著書に「山岳事故の法的責任(ブイツーソリューション)」等。アクタシ峰(7016m)等に登頂。
事務所名:みぞて法律事務所
事務所URL:http://www5a.biglobe.ne.jp/~mizote/※リンク省略
○弁護士ドットコムニュース編集部
<引用終わり>
【ご参考】
※「矢先の確認」に関して
2018/05/01投稿:
猟銃所持許可の話
副題:ミソもクソも同じだとする暴論。良く知られていない事柄を、良く知らないままに勝手なイメージだけで奇妙な結論を述べる無責任記事。百害あって一利なし。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-919.html
※有害駆除に関して、麻酔銃の実際
2018/08/08投稿:
超強靱な肉体を持つ毛利小五郎
<麻酔銃幻想は危険>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-995.html
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