国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(後編)Final
- 2020/09/26
- 21:06
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(後編)Final
副題:発言の軸足が日本人の命、平和・安寧の確保にある安倍首相の安全保障政策に関する談話。安倍政権7年8ヶ月で我が国の安全保障基盤は大きく充実した。
本稿は安倍首相の安全保障に関する談話を題材に、安倍首相が成し遂げた我が国安全保障基盤の充実について述べているものであり、以下の前編&中編の続きである。
↓
<前編>
2020/09/17投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1422.html
<中編>
2020/09/22投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1423.html
国家安全保障という重要施策はシームレスで継続する必要があるのだが、ご自身の持病の悪化で辞任せざるを得なかったことから、第2次安倍政権7年8ヶ月の国家安全保障政策を総括しているのが、談話の最初の段落1.である。
たった数行なのだが、それらを実現してきた業績は素晴らしく、それが凝縮されたものなので、それに注目して論を進めている。
尚、安全保障に関する9月11日の談話の全文は上記「前編」の「文末脚注の(*1)」に引用してあるので、適宜、参照願いたい。
オバマの広島訪問(2016年5月(*1))と安倍首相の真珠湾訪問(2016年12月))はワンセットである。互いに訪問する目的は、先の大戦に関して流布されている風説を乗り越える為の、より高い視点での概念の提示である。
知っての通り、既に始まっていた欧州戦線でのイギリスの苦境を救いたいルーズベルトは、自身の選挙公約である「アメリカ不参戦」を覆したいが為に、ドイツの同盟国である日本を戦争に引き込む誘導策を実行した。この事は、ルーズベルトの前に大統領だったフーバーも指摘している事である。(*2)
約80年前の我が国は、石油の約8割をアメリカからの輸入に頼っており、そういう構造を突かれ、ルーズベルトの石油禁輸による戦争誘込み謀略に陥ってしまったのである。
先の大戦を語る時、そのほとんどが連合艦隊の真珠湾攻撃を出発点にしている。
しかし、その瞬間から騙されているのである。(*3)
真珠湾を話の出発点に設定すると、真珠湾攻撃に至る過程は語られず、既にアメリカは自称「義勇軍」のフライングタイガースとの対日戦航空部隊を組織していた史実も語られない事になるのである。
それら真珠湾前の史実は忘れさられ、残るのは「卑怯なる奇襲」との不名誉なる「日本への悪印象」ばかりとなる。
そんな「日本への悪印象」の象徴地である真珠湾で安倍首相は、人類史上最大かつ広範囲での空海戦の死闘を戦った日米が今や同盟関係にあること、その様な関係に至った70数年間の寛容と和解の力の効用を述べ、視点を70数年前の過去方向ではなく、これから日米が創り上げていく未来へと向けることをアピールした。(*4)
オバマは、その時のアメリカ海軍太平洋軍総司令官のハリー・ハリス海軍大将が、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つことを紹介し、日米の深い絆を示した。(*5)
2016年12月28日の安倍・オバマ真珠湾演説が行われたのだが、オバマはこの時点で任期2期8年の最終段階であった。既に2016年11月時点で次期大統領は共和党・トランプに決まっており、安倍首相は異例の就任前のトランプに会っていたのである。
民主党大統領オバマと新大統領・共和党のトランプ各々から信頼を勝ち取ったのが安倍首相なのである。アメリカ抜きで我が国の安全保障政策が立ちいかないことは既に述べた通りであるが、4~8年で変る大統領を相手に、その都度、その大統領に阿諛追従していては、我が国の安全保障は安定しない。
従い、安倍首相の対米姿勢は、その時々のアメリカの政権の政策ではなく、アメリカと日本の共通の価値観に立脚した正論に基づくものとなっているのである。
2016年で日米関係の修復・強化の地盤固めを実施した安倍首相は、いよいよ大戦略である日米豪印ダイヤモンドセキュリティー構想の実現化に向けて具体的に動き出す。
2017年9月のインド訪問が、それである。
安倍首相は日印間で毎年相互訪問をする取り決めをインドとしているが、2017年9月のインド訪問は、それまでとは違い、日印首脳で「日印共同声明(副題:自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて)」を発表している。(*6)
安倍首相は、2015年4月のアメリカ議会演説で「太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければなりません。」と後のインド太平洋戦略のベーシックプランを述べているのだが、2017年9月の日印共同声明以前のG7などでは、アジア太平洋戦略とか、太平洋戦略と称していたのであるが、この共同声明からは「インド太平洋」との表現となっているのである。
オーストラリアとの関係はアボット首相の時代は順調に見えたが、ターンブルが首相になってからは中国の影がチラつき、日豪関係は後退した。
中国に食い込まれていたターンブルが退陣した2018年8月以降は、現首相モリソンが首相となった。
2018年11月には、その年のAPECがパプア・ニューギニアのポートモレスビーで開催される予定となっていた。
この地名からは、先の大戦の激戦の1つである珊瑚海海戦・ラバウルからのポートモレスビー攻略、そしてオーストラリアのダーウィン爆撃などが想起されるのだが、安倍首相はAPEC訪問前にオーストラリア・ダーウィンに訪問した。
安倍首相のオーストラリアでの日程は以下の様に、真珠湾訪問と同様の先の大戦の清算と経済に軸足を置いたものだ。
↓
1.戦没者慰霊碑訪問
2.日豪首脳会談
3.イクシス記念式典出席(LNG生産プラント完成式典)
4.海上保安庁巡視船えちご訪問
5.伊号第124潜水艦慰霊碑訪問
上記のうち、「イクシスLNG」は、エネルギーサプライチェーン戦略の一角を示す重要案件で、我が国の資本と技術でもってオーストラリアの海中ガス田を開発し、LNGを生産するものである。
この様な安倍首相のオーストラリア・ダーウィン訪問は、その前のシンガポールでのASEAN会議と次のポートモレスビーAPECの間に実施されたものである。詳しくは、当時の一連の論考(*7)を参照いただきたいのだが、日印、米豪との関係性を日米印豪のダイヤモンドセキュリティー関係に安倍首相は昇華させたのであった。
我が国安倍総理が進めている「ダイヤモンドセキュリティー構想」の一角がインドである点に注目していただきたい。インドは核保有国である。
日米安保に基づく「アメリカの核の傘」が、ワンクッション置いた「相互破壊確証戦略」として機能するのならば、日本・インドの関係を軍事的にもう一歩進めることで、我が国は「インドの核の傘」を得ることになるのである。
相互破壊確証戦略の要諦は「核を持つ側」が「撃ったら撃ち返され自分もヤバイ」と考える点にある。仮に、アメリカの大統領が民主党・クリントン政権の様な「日本の為に核報復するのはちょっとなぁ~」という様な「撃っても撃ち返してこないかも」と思われる様な事になったら機能しなくなるのである。その点で、インドとの関係を深めることで、「アメリカは躊躇するだろうが、インドは撃ってくるかも」と思わせたら、大成功なのである。(*8)
その様な軍事的側面とともに、経済的側面では、環太平洋に於ける経済的なリーダーシップを日米豪は発揮し、「借金のカタに領土を99年租借する」というヤクザまがいの「経済協力」をしている中国に対抗するBlue Dot Networkを構築している(*9)。
国家安全保障という重要施策はシームレスで継続する必要があるのだが、安倍首相はご自身の持病の悪化で辞任せざるを得なかったことから、第2次安倍政権7年8ヶ月の国家安全保障政策を総括している。
それが9月11日談話の最初の段落1.である。たった数行なのだが、それらを実現してきた業績は、ここまで述べてきた様に素晴らしく、それが凝縮されたものなのである。
ここであらためて、談話の第一段落を以下に引用する。
↓
<引用開始>
○1.私が内閣総理大臣の任に就いて7年8ヶ月、我が国の安全保障政策に大きな進展がありました。平和安全法制を成立させ、日米同盟はより強固なものとなりました。我が国自身の防衛力向上と、日米同盟の強化、更には「自由で開かれたインド太平洋」の考え方に基づき諸外国との協力関係を構築することにより、我が国周辺の環境をより平和なものとすべく努力してまいりました。
<引用終わり>
東西冷戦が終わってから約30年、その間、世界は中国の静かなる侵略に気が付かずにきた。
中国の侵略は武力を前面に出すものではなく、情報戦をはじめとした超限戦であり、なかなか気付きにくい。それに気が付いた安倍首相は、現行憲法の成約を踏まえ、果敢にその侵略から我が国を守る戦略を実現化してきた。
素晴らしい成果だと思う。
しかし、素晴らしい成果はこれだけではない。
今回は安全保障問題だけに注目したものである。従い、国内問題・経済問題には触れていない。また、防衛・外交についても、G7でのイニシャチブ発揮、北朝鮮の核・弾頭ミサイル問題の対応、世界のオピニオンの方向付けをした国連総会での演説、ASEANや太平洋諸国との関係強化、トランプとの強固な日米関係などには触れていない。
また、安倍世界戦略構想はこれで終わりではない。
まだまだ発動していない布石があるのだから、これで終わりの訳がない。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):オバマの広島訪問(2016年5月)
↓
2016/06/13投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析1
副題:21世紀の新たなパラダイム、それは2015年4月29日の米議会演説が加速点。でも、新しいパラダイムに気付いていないのは、むしろ日本人。何故なら、当たり前過ぎるから。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-434.html
2016/06/17投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-437.html
2016/06/18投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析3
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-438.html
2016/06/19投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-439.html
2016/06/11投稿:
(資料編)オバマ広島演説・和訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-433.html
2016/06/21投稿:
【コラム】安倍首相広島スピーチ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-441.html
【ご参考】
2016/05/28投稿:
【コラム】2016年5月27日広島演説
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-424.html
(*2):知っての通り、既に始まっていた欧州戦線でのイギリスの苦境を救いたいルーズベルトは、自身の選挙公約である「アメリカ不参戦」を覆したいが為に、ドイツの同盟国である日本を戦争に引き込む誘導策を実行した。この事は、ルーズベルトの前に大統領だったフーバーも指摘している事である。
↓
2016/11/11投稿:
フーバー回顧録Doc.18-4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-540.html
・8番目の過ち ・1941年7月の対日経済制裁(日本への経済戦争)The Economic Sanctions on Japan of July, 1941
2016/11/12投稿:
フーバー回顧録Doc.18-5
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-541.html
・9番目の過ち ・近衛の和平提案を受け入れることを拒否したルーズベルトRefusal to Accept Konoye’s Peace Proposals
・10番目の過ち ・「3ヶ月間の冷却期間を置く」との日本からの提案を拒否するルーズベルト(交渉継続さえも拒否)Refusal to Accept a 3 Months’ Stand-Still Agreement with Japan
(*3):先の大戦を語る時、そのほとんどが連合艦隊の真珠湾攻撃を出発点にしている。しかし、その瞬間から騙されているのである。
↓
2016/12/06投稿:
真珠湾攻撃に関する考察
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-557.html
2016/12/08投稿:
真珠湾攻撃にまつわるデマ話
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-558.html
(*4):そんな「日本への悪印象」の象徴地である真珠湾で安倍首相は、人類史上最大かつ広範囲での空海戦の死闘を戦った日米が今や同盟関係にあること、その様な関係に至った70数年間の寛容と和解の力の効用を述べ、視点を70数年前の過去方向ではなく、これから日米が創り上げていく未来へと向けることをアピールした。
↓
2016/12/30投稿:
真珠湾・安倍演説1「和解の力」2016/12/28
副題:21世紀のパールハーバーは和解の象徴となった。共通の価値の下、寛容の大切さと和解の力を世界訴え続けていく日米同盟は「希望の同盟」。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-574.html
2016/12/31投稿:
真珠湾・安倍演説2「和解の力」2016/12/28
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-575.html
【ご参考】
2016/12/29投稿:
(資料編)真珠湾両首脳ステートメント
副題:国や国民として、われわれは受け継ぐ歴史を選ぶことはできない。だが、歴史から教訓を選び取ることはできる。われわれ自身の未来像を描くのに、その教訓を生かすことができる。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
(*5):オバマは、その時のアメリカ海軍太平洋軍総司令官のハリー・ハリス海軍大将が、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つことを紹介し、日米の深い絆を示した。
↓
2017/01/03投稿:
真珠湾オバマ演説1・2016/12/28
副題:オバマ真珠湾演説は広島演説と1セット。歴史から教訓を選び取り、自身の未来像を描く為に生かすことができる。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-576.html
2017/01/04投稿:
真珠湾オバマ演説2・2016/12/28 Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-577.html
(*6):2017年9月のインド訪問では日印首脳で「日印共同声明(副題:自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて)」を発表している。
↓
2017/09/17投稿:
安倍首相・インド訪問
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-754.html
※日印共同声明(仮訳)-外務省HP
自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000290053.pdf
(*7):当時の一連の論考
↓
※2018年11月のダイヤモンドセキュリティー構想の一角を占める豪州=オーストラリアとの連携強化とASEAN諸国及び太平洋諸国の経済的取り込みを実施したことである。具体的には2018年11月13日のペンス副大統領が来日しての日米共同声明。その翌日からのASEAN諸会議出席とその後のオーストラリア・ダーウィン訪問。そしてパプア・ニューギニアのポートモレスビーへのAPEC出席である。
2018/11/24投稿:
真珠湾攻撃が石油禁輸の結果である事の教訓から
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part1>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1060.html
2018/11/27投稿:
ASEAN10ヶ国の団結は中国の個別撃破戦術を防止する
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part2a>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1061.html
2018/11/28投稿:
RCEPは中国の悪い所を指摘できる枠組みへ
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part2b>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1062.html
2018/11/29投稿:
日豪首脳会談・ダーウィン(前編)
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part3(前編)>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1063.html
2018/12/01投稿:
日豪首脳会談・ダーウィン(後編)
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part3(後編)>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1064.html
2018/12/04投稿:
APEC・首脳宣言がなかった事は良かった
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part4-Final>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1066.html
【ご参考】
2018/11/21投稿:
(資料編)ASEAN/日豪首脳会談/APEC
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1058.html
(*8):相互破壊確証戦略の要諦は「核を持つ側」が「撃ったら撃ち返され自分もヤバイ」と考える点にある。仮に、アメリカの大統領が民主党・クリントン政権の様な「日本の為に核報復するのはちょっとなぁ~」という様な「撃っても撃ち返してこないかも」と思われる様な事になったら機能しなくなるのである。その点で、インドとの関係を深めることで、「アメリカは躊躇するだろうが、インドは撃ってくるかも」と思わせたら、大成功なのである。
↓
2020/08/21投稿:
「中国の核」との朝日記事・さて何が目的か?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1412.html
(*9):Blue Dot Network
↓
2019/12/15投稿:
「報道しない自由」で知らされていない重要施策・Blue Dot Network
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1294.html
2020/07/28投稿:
「パクス・シニカ」との暗黒未来を阻止する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1401.html
【ご参考】
2019/05/29投稿:
先の大戦後の現在の世界情勢は第三段階にある
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1190.html
<抜粋引用>
先の大戦後の現在の世界体制を巡る情勢は、そこに至る3つの段階を経て、今や、勃興した鬼っ子・中国共産党支配下中国が「中華新世界秩序」を確立せんとし、「戦後世界秩序」の破棄・変換を試みている第3段階にある。
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副題:発言の軸足が日本人の命、平和・安寧の確保にある安倍首相の安全保障政策に関する談話。安倍政権7年8ヶ月で我が国の安全保障基盤は大きく充実した。
本稿は安倍首相の安全保障に関する談話を題材に、安倍首相が成し遂げた我が国安全保障基盤の充実について述べているものであり、以下の前編&中編の続きである。
↓
<前編>
2020/09/17投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1422.html
<中編>
2020/09/22投稿:
国家安全保障政策に関する安倍首相談話・果敢な戦略家安倍普三(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1423.html
国家安全保障という重要施策はシームレスで継続する必要があるのだが、ご自身の持病の悪化で辞任せざるを得なかったことから、第2次安倍政権7年8ヶ月の国家安全保障政策を総括しているのが、談話の最初の段落1.である。
たった数行なのだが、それらを実現してきた業績は素晴らしく、それが凝縮されたものなので、それに注目して論を進めている。
尚、安全保障に関する9月11日の談話の全文は上記「前編」の「文末脚注の(*1)」に引用してあるので、適宜、参照願いたい。
「真珠湾プロパガンダ」の上書きをした安倍首相の真珠湾訪問・2016年12月
オバマの広島訪問(2016年5月(*1))と安倍首相の真珠湾訪問(2016年12月))はワンセットである。互いに訪問する目的は、先の大戦に関して流布されている風説を乗り越える為の、より高い視点での概念の提示である。
知っての通り、既に始まっていた欧州戦線でのイギリスの苦境を救いたいルーズベルトは、自身の選挙公約である「アメリカ不参戦」を覆したいが為に、ドイツの同盟国である日本を戦争に引き込む誘導策を実行した。この事は、ルーズベルトの前に大統領だったフーバーも指摘している事である。(*2)
約80年前の我が国は、石油の約8割をアメリカからの輸入に頼っており、そういう構造を突かれ、ルーズベルトの石油禁輸による戦争誘込み謀略に陥ってしまったのである。
先の大戦を語る時、そのほとんどが連合艦隊の真珠湾攻撃を出発点にしている。
しかし、その瞬間から騙されているのである。(*3)
真珠湾を話の出発点に設定すると、真珠湾攻撃に至る過程は語られず、既にアメリカは自称「義勇軍」のフライングタイガースとの対日戦航空部隊を組織していた史実も語られない事になるのである。
それら真珠湾前の史実は忘れさられ、残るのは「卑怯なる奇襲」との不名誉なる「日本への悪印象」ばかりとなる。
そんな「日本への悪印象」の象徴地である真珠湾で安倍首相は、人類史上最大かつ広範囲での空海戦の死闘を戦った日米が今や同盟関係にあること、その様な関係に至った70数年間の寛容と和解の力の効用を述べ、視点を70数年前の過去方向ではなく、これから日米が創り上げていく未来へと向けることをアピールした。(*4)
オバマは、その時のアメリカ海軍太平洋軍総司令官のハリー・ハリス海軍大将が、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つことを紹介し、日米の深い絆を示した。(*5)
2016年12月28日の安倍・オバマ真珠湾演説が行われたのだが、オバマはこの時点で任期2期8年の最終段階であった。既に2016年11月時点で次期大統領は共和党・トランプに決まっており、安倍首相は異例の就任前のトランプに会っていたのである。
民主党大統領オバマと新大統領・共和党のトランプ各々から信頼を勝ち取ったのが安倍首相なのである。アメリカ抜きで我が国の安全保障政策が立ちいかないことは既に述べた通りであるが、4~8年で変る大統領を相手に、その都度、その大統領に阿諛追従していては、我が国の安全保障は安定しない。
従い、安倍首相の対米姿勢は、その時々のアメリカの政権の政策ではなく、アメリカと日本の共通の価値観に立脚した正論に基づくものとなっているのである。
地球儀を俯瞰する戦略・日米豪印ダイヤモンドセキュリティー構想の実現に向けて
安倍首相のインド訪問・2017年9月
2016年で日米関係の修復・強化の地盤固めを実施した安倍首相は、いよいよ大戦略である日米豪印ダイヤモンドセキュリティー構想の実現化に向けて具体的に動き出す。
2017年9月のインド訪問が、それである。
安倍首相は日印間で毎年相互訪問をする取り決めをインドとしているが、2017年9月のインド訪問は、それまでとは違い、日印首脳で「日印共同声明(副題:自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて)」を発表している。(*6)
安倍首相は、2015年4月のアメリカ議会演説で「太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にしなければなりません。」と後のインド太平洋戦略のベーシックプランを述べているのだが、2017年9月の日印共同声明以前のG7などでは、アジア太平洋戦略とか、太平洋戦略と称していたのであるが、この共同声明からは「インド太平洋」との表現となっているのである。
安倍首相豪州ダーウィン訪問・2018年11月
オーストラリアとの関係はアボット首相の時代は順調に見えたが、ターンブルが首相になってからは中国の影がチラつき、日豪関係は後退した。
中国に食い込まれていたターンブルが退陣した2018年8月以降は、現首相モリソンが首相となった。
2018年11月には、その年のAPECがパプア・ニューギニアのポートモレスビーで開催される予定となっていた。
この地名からは、先の大戦の激戦の1つである珊瑚海海戦・ラバウルからのポートモレスビー攻略、そしてオーストラリアのダーウィン爆撃などが想起されるのだが、安倍首相はAPEC訪問前にオーストラリア・ダーウィンに訪問した。
安倍首相のオーストラリアでの日程は以下の様に、真珠湾訪問と同様の先の大戦の清算と経済に軸足を置いたものだ。
↓
1.戦没者慰霊碑訪問
2.日豪首脳会談
3.イクシス記念式典出席(LNG生産プラント完成式典)
4.海上保安庁巡視船えちご訪問
5.伊号第124潜水艦慰霊碑訪問
上記のうち、「イクシスLNG」は、エネルギーサプライチェーン戦略の一角を示す重要案件で、我が国の資本と技術でもってオーストラリアの海中ガス田を開発し、LNGを生産するものである。
この様な安倍首相のオーストラリア・ダーウィン訪問は、その前のシンガポールでのASEAN会議と次のポートモレスビーAPECの間に実施されたものである。詳しくは、当時の一連の論考(*7)を参照いただきたいのだが、日印、米豪との関係性を日米印豪のダイヤモンドセキュリティー関係に安倍首相は昇華させたのであった。
日米豪印ダイヤモンドセキュリティー構想は我が国安全保障の充実に資する
我が国安倍総理が進めている「ダイヤモンドセキュリティー構想」の一角がインドである点に注目していただきたい。インドは核保有国である。
日米安保に基づく「アメリカの核の傘」が、ワンクッション置いた「相互破壊確証戦略」として機能するのならば、日本・インドの関係を軍事的にもう一歩進めることで、我が国は「インドの核の傘」を得ることになるのである。
相互破壊確証戦略の要諦は「核を持つ側」が「撃ったら撃ち返され自分もヤバイ」と考える点にある。仮に、アメリカの大統領が民主党・クリントン政権の様な「日本の為に核報復するのはちょっとなぁ~」という様な「撃っても撃ち返してこないかも」と思われる様な事になったら機能しなくなるのである。その点で、インドとの関係を深めることで、「アメリカは躊躇するだろうが、インドは撃ってくるかも」と思わせたら、大成功なのである。(*8)
その様な軍事的側面とともに、経済的側面では、環太平洋に於ける経済的なリーダーシップを日米豪は発揮し、「借金のカタに領土を99年租借する」というヤクザまがいの「経済協力」をしている中国に対抗するBlue Dot Networkを構築している(*9)。
国家安全保障会議・安倍首相談話・自身の安全保障政策の総括・第1段落
国家安全保障という重要施策はシームレスで継続する必要があるのだが、安倍首相はご自身の持病の悪化で辞任せざるを得なかったことから、第2次安倍政権7年8ヶ月の国家安全保障政策を総括している。
それが9月11日談話の最初の段落1.である。たった数行なのだが、それらを実現してきた業績は、ここまで述べてきた様に素晴らしく、それが凝縮されたものなのである。
ここであらためて、談話の第一段落を以下に引用する。
↓
<引用開始>
○1.私が内閣総理大臣の任に就いて7年8ヶ月、我が国の安全保障政策に大きな進展がありました。平和安全法制を成立させ、日米同盟はより強固なものとなりました。我が国自身の防衛力向上と、日米同盟の強化、更には「自由で開かれたインド太平洋」の考え方に基づき諸外国との協力関係を構築することにより、我が国周辺の環境をより平和なものとすべく努力してまいりました。
<引用終わり>
東西冷戦が終わってから約30年、その間、世界は中国の静かなる侵略に気が付かずにきた。
中国の侵略は武力を前面に出すものではなく、情報戦をはじめとした超限戦であり、なかなか気付きにくい。それに気が付いた安倍首相は、現行憲法の成約を踏まえ、果敢にその侵略から我が国を守る戦略を実現化してきた。
素晴らしい成果だと思う。
しかし、素晴らしい成果はこれだけではない。
今回は安全保障問題だけに注目したものである。従い、国内問題・経済問題には触れていない。また、防衛・外交についても、G7でのイニシャチブ発揮、北朝鮮の核・弾頭ミサイル問題の対応、世界のオピニオンの方向付けをした国連総会での演説、ASEANや太平洋諸国との関係強化、トランプとの強固な日米関係などには触れていない。
また、安倍世界戦略構想はこれで終わりではない。
まだまだ発動していない布石があるのだから、これで終わりの訳がない。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):オバマの広島訪問(2016年5月)
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2016/06/13投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析1
副題:21世紀の新たなパラダイム、それは2015年4月29日の米議会演説が加速点。でも、新しいパラダイムに気付いていないのは、むしろ日本人。何故なら、当たり前過ぎるから。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-434.html
2016/06/17投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-437.html
2016/06/18投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析3
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-438.html
2016/06/19投稿:
【コラム】オバマ広島演説の分析4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-439.html
2016/06/11投稿:
(資料編)オバマ広島演説・和訳
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-433.html
2016/06/21投稿:
【コラム】安倍首相広島スピーチ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-441.html
【ご参考】
2016/05/28投稿:
【コラム】2016年5月27日広島演説
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-424.html
(*2):知っての通り、既に始まっていた欧州戦線でのイギリスの苦境を救いたいルーズベルトは、自身の選挙公約である「アメリカ不参戦」を覆したいが為に、ドイツの同盟国である日本を戦争に引き込む誘導策を実行した。この事は、ルーズベルトの前に大統領だったフーバーも指摘している事である。
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2016/11/11投稿:
フーバー回顧録Doc.18-4
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-540.html
・8番目の過ち ・1941年7月の対日経済制裁(日本への経済戦争)The Economic Sanctions on Japan of July, 1941
2016/11/12投稿:
フーバー回顧録Doc.18-5
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-541.html
・9番目の過ち ・近衛の和平提案を受け入れることを拒否したルーズベルトRefusal to Accept Konoye’s Peace Proposals
・10番目の過ち ・「3ヶ月間の冷却期間を置く」との日本からの提案を拒否するルーズベルト(交渉継続さえも拒否)Refusal to Accept a 3 Months’ Stand-Still Agreement with Japan
(*3):先の大戦を語る時、そのほとんどが連合艦隊の真珠湾攻撃を出発点にしている。しかし、その瞬間から騙されているのである。
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2016/12/06投稿:
真珠湾攻撃に関する考察
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-557.html
2016/12/08投稿:
真珠湾攻撃にまつわるデマ話
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-558.html
(*4):そんな「日本への悪印象」の象徴地である真珠湾で安倍首相は、人類史上最大かつ広範囲での空海戦の死闘を戦った日米が今や同盟関係にあること、その様な関係に至った70数年間の寛容と和解の力の効用を述べ、視点を70数年前の過去方向ではなく、これから日米が創り上げていく未来へと向けることをアピールした。
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2016/12/30投稿:
真珠湾・安倍演説1「和解の力」2016/12/28
副題:21世紀のパールハーバーは和解の象徴となった。共通の価値の下、寛容の大切さと和解の力を世界訴え続けていく日米同盟は「希望の同盟」。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-574.html
2016/12/31投稿:
真珠湾・安倍演説2「和解の力」2016/12/28
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-575.html
【ご参考】
2016/12/29投稿:
(資料編)真珠湾両首脳ステートメント
副題:国や国民として、われわれは受け継ぐ歴史を選ぶことはできない。だが、歴史から教訓を選び取ることはできる。われわれ自身の未来像を描くのに、その教訓を生かすことができる。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-573.html
(*5):オバマは、その時のアメリカ海軍太平洋軍総司令官のハリー・ハリス海軍大将が、アメリカ人の父親と日本人の母親を持つことを紹介し、日米の深い絆を示した。
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2017/01/03投稿:
真珠湾オバマ演説1・2016/12/28
副題:オバマ真珠湾演説は広島演説と1セット。歴史から教訓を選び取り、自身の未来像を描く為に生かすことができる。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-576.html
2017/01/04投稿:
真珠湾オバマ演説2・2016/12/28 Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-577.html
(*6):2017年9月のインド訪問では日印首脳で「日印共同声明(副題:自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて)」を発表している。
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2017/09/17投稿:
安倍首相・インド訪問
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-754.html
※日印共同声明(仮訳)-外務省HP
自由で開かれ,繁栄したインド太平洋に向けて
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000290053.pdf
(*7):当時の一連の論考
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※2018年11月のダイヤモンドセキュリティー構想の一角を占める豪州=オーストラリアとの連携強化とASEAN諸国及び太平洋諸国の経済的取り込みを実施したことである。具体的には2018年11月13日のペンス副大統領が来日しての日米共同声明。その翌日からのASEAN諸会議出席とその後のオーストラリア・ダーウィン訪問。そしてパプア・ニューギニアのポートモレスビーへのAPEC出席である。
2018/11/24投稿:
真珠湾攻撃が石油禁輸の結果である事の教訓から
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part1>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1060.html
2018/11/27投稿:
ASEAN10ヶ国の団結は中国の個別撃破戦術を防止する
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part2a>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1061.html
2018/11/28投稿:
RCEPは中国の悪い所を指摘できる枠組みへ
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part2b>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1062.html
2018/11/29投稿:
日豪首脳会談・ダーウィン(前編)
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part3(前編)>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1063.html
2018/12/01投稿:
日豪首脳会談・ダーウィン(後編)
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part3(後編)>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1064.html
2018/12/04投稿:
APEC・首脳宣言がなかった事は良かった
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part4-Final>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1066.html
【ご参考】
2018/11/21投稿:
(資料編)ASEAN/日豪首脳会談/APEC
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1058.html
(*8):相互破壊確証戦略の要諦は「核を持つ側」が「撃ったら撃ち返され自分もヤバイ」と考える点にある。仮に、アメリカの大統領が民主党・クリントン政権の様な「日本の為に核報復するのはちょっとなぁ~」という様な「撃っても撃ち返してこないかも」と思われる様な事になったら機能しなくなるのである。その点で、インドとの関係を深めることで、「アメリカは躊躇するだろうが、インドは撃ってくるかも」と思わせたら、大成功なのである。
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2020/08/21投稿:
「中国の核」との朝日記事・さて何が目的か?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1412.html
(*9):Blue Dot Network
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2019/12/15投稿:
「報道しない自由」で知らされていない重要施策・Blue Dot Network
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1294.html
2020/07/28投稿:
「パクス・シニカ」との暗黒未来を阻止する
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1401.html
【ご参考】
2019/05/29投稿:
先の大戦後の現在の世界情勢は第三段階にある
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1190.html
<抜粋引用>
先の大戦後の現在の世界体制を巡る情勢は、そこに至る3つの段階を経て、今や、勃興した鬼っ子・中国共産党支配下中国が「中華新世界秩序」を確立せんとし、「戦後世界秩序」の破棄・変換を試みている第3段階にある。
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