ミズポ編2 Part3 実際に比較をすれば強弁が事実とは異なるものだと分かる
- 2020/03/25
- 21:41
ミズポ編2 Part3 実際に比較をすれば強弁が事実とは異なるものだと分かる

副題:福島瑞穂がツィートした4年間のブログは現行憲法にない緊急事態条項に悪魔化レッテルを貼るのが目的。その「論」の中身を検証する。
前回Part2及び前々回Part1の続きである。
検証の対象としているのは、新型コロナウイルス感染症に対応する為の特措法立法化の国会審議が始まろうとしている時点で福島瑞穂がわざわざツィートで紹介した4年前のブログ「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」である。(*1)
「7つ」と言っているのだが、前回論考で指摘した様に、実際のところは2つのことしか言っていない。
1つ目は、同ブログの付番「1.」「2.」「3.」で、「既存法で対処出来るから憲法に緊急事態条項はいらない」というものだ。しかしながら、前回、前々回で指摘した様に、今回の新型コロナウイルスへの対処で、法的未整備状態から「既存法では対処できない」ことが実証されており、当方は4年前の時点で、そういう問題が発生する危険性に備え憲法にこそ緊急事態事が必要である旨を述べている事を紹介した。
「4.」以降の2つ目は、「だから憲法に緊急事態条項なんかいらないんだぁ~」と言っているものである。それが同ブログの主旨であり、それが言いたいが為に「自民党改憲草案の緊急事態条項は危険だぁ~」「独裁を招く欠陥条項だぁ~」との悪魔化レッテル貼りをしているものだ。
それでは今回は「4.」から紹介を開始して、検証を進める。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○4一方、ここからが重要なのですが、自由民主党の改憲草案に盛り込まれている緊急事態条項は、以下のように、十分な限定をかけることなく政府に全権を与えてしまう一種の全権委任制度であり、一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。
①緊急事態の発動要件を法律で定められる(98条1項)
②緊急事態の期間に制限がない(98条3項)
③内閣が制定した法律と同様の効果を有する政令や財産処分について、国会の承認を事後 的に得られない場合に効力を失う旨の規定がない(99条1項2項)
④政令で規定できる対象に制限がない
<抜粋引用終わり>
↓
ウソだらけである。
この文章を書いている人は、多分、読む人が自民党の改憲草案の中身とか諸外国の憲法の緊急事態条項の中身とか、その目的を知らないであろうと高をくくって、こんなウソを書いているのであろうと思われる。
そうでなかったら、ここまで明らかなウソは書けないはずである。
これがウソであることを簡単に理解出来る部分として、最初に①~④の記載と自民党改憲草案を併記しながら説明する。
自民党改憲草案の緊急事態条項は同草案の98条と99条である。(*2)
↓
○上記ブログ:①緊急事態の発動要件を法律で定められる(98条1項)
○自民党改憲草案:第98条第1項:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
<引用終わり>
上記ブログは、あたかも「緊急事態の発動要件を法律で定められる」ことがあたかも危険なことであるかの様なインチキを述べているが、そんな事はなく、法的定めがない事の方がむしろ危険なのである。
自民党改憲草案の第98条の第1項で「法律で定め」とあるのは2か所であるが、その何れもが法治主義に基づくものである。
1つ目は「その他の法律で定める緊急事態において」である。
「その他」以前に例示されているのは「武力攻撃」「内乱」「大規模な自然災害」である。つまり、その様な例示以外の緊急事態としては、今現在の我々は「感染症」があることを知っている。
感染症対策に関する法律としては感染症法がある。感染症法で対象にしている感染症には幾つかの例示があるが、それ以外については「指定感染症への指定がなされた感染症」が対象となっている。
この様に「その他の法律(感染症法)で定める緊急事態(新型コロナウイルス感染症を指定感染症へ指定する)」という内容の条文であり、いったい、これの何処が危険なのであろうか?
想定が難しい各種の緊急事態発生要因を総て憲法条文に例示せよと言っているのだったら、それは暴論であり、難癖に該当するものである。
2つ目は「特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」である。
ここで言う「法律の定めるところにより」とは、憲法条文で多々見られる語句であり、その意味するところは、「詳細規定は下位法で定める」という意味でしかなく、何も危険なことなどないものである。
因みに、現行憲法の条文に多々出てくる「「法律の定めるところにより」との語句がある代表的な条文を以下に3つ程、紹介しておく。
これらの何処がどの様に危険なのであろうか? 各人が考えていただきたいが、答は「法文としては、まったく危険などない」である。
↓
<現行憲法から3つ抜粋>
第26条:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
同第2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第30条:国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第40条:何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
<引用終わり>
ご覧の様に「法律の定めるところにより」は憲法で普通に用いられる語句なのであり、何等の問題はないのである。
むしろ憲法条文に手続き規定をも盛り込めという話は暴論である。
続ける。
○上記ブログ:②緊急事態の期間に制限がない(98条3項)
○自民党改憲草案:第98条第3項:内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
<「前項の場合において」の前項とは第98条第2項のことなので、第2項を以下に紹介する>
自民党改憲草案:第98条第2項:緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
<引用終わり>
↓
ご覧の様に、自民党の改憲草案には「制限」が明記されており、「制限がない」との記載が虚偽であることが分かる。
緊急事態の宣言に関しては「国会の承認」が必要だし、承認された後も100日経過毎に国会で継続の可否を検討し、その承認を得るとの規定である。
これを「制限」と言わずして、いったいどの様な「制限」が必要なのであろうか?
「緊急事態宣言は100日まで、それ以上の延長は不可」などは現実ではあり得ない。
何故ならば、こんな規定では、100日経過した時点で対処すべき事態が継続している状態でも平時基準に強制的に戻ることになるからだ。
福島瑞穂が紹介した「ブログ」には、この様な虚偽が並べられているのであるが、その前段の記載も虚偽であることを指摘しておく。
「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」との記載も虚偽である。
我が国と同程度の国家と思われるG7諸国及びその他の国々の憲法の緊急事態条項を幾つか抜粋して紹介する。(*3)
それら他国の事例からは、緊急事態の例示や手続き規定の記載が必ずしも書いておらず、また、期限に対する「制限」の内容が自民党改憲草案と同程度のものや、日数規定がない事例があることが分かるはずだ。
そういう事実からは、「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」との記載は事実とは「全く異なるもの」である事をご確認いただきたい。
自民党改憲草案は、緊急事態の終了権限が行政の長(大統領・首相)以外の国会(立法府)にあり、その制限日数が明示された条文案になっているのである。
それと同等の「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」のは、以下の通りフランス憲法、ドイツ憲法(ドイツ基本法)、イタリア憲法などである。
↓
<仏・独・伊の憲法の緊急事態条項の例示>
○<フランス共和国憲法:2008年7月23日の改正憲法(24回目憲法改正)>
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/240/024003.pdf
第16条
6 非常事態権限の行使から30日後に、国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる。憲法院は、可及的速やかに公的な意見により裁定する。憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い、及び同一の要件により裁定する。
○<ドイツ憲法(ドイツ基本法)の緊急事態条項(1955年改正時追加)>
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
第115l条 [防衛事態における法律および措置の廃止、防衛事態の終了、講和]
(1) 連邦議会は、連邦参議院の同意を得て、いつでも合同委員会の法律を廃止することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。その他、合同委員会または連邦政府が危険防止のためにとった措置は、連邦議会および連邦参議院の議決により廃止される。
(2) 連邦議会は、いつでも、連邦参議院の同意を得て、連邦大統領が公布する議決によって防衛事態の終了を宣言することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。防衛事態は、その確認の前提となった条件が存在しなくなったときは、遅滞なくその終了を宣言しなけれはならない。
(3) 講和については、連邦法で決定する。
○<イタリア憲法の緊急事態条項>
イタリア憲法の緊急事態条項は、フランス憲法やドイツ憲法と違い、1つの章や条にまとまって記載されていない。様々の条文の中に「戦時に於いては」との記載で緊急事態発生時の特例を付記する方式である。残念なことに、イタリア憲法の全条和文訳を発見していないので、資料として提示しているのは、イタリア憲法の英文Wikiを元に当方が「勝手な和訳」をしたものを用いている。
<英文Wiki:イタリア憲法>
https://en.wikisource.org/wiki/Constitution_of_Italy
・第77条
When in extraordinary cases of necessity and urgency the government adopts provisional measures having the force of law it must on the same day present them for conversion into law to the houses which, even if dissolved, shall be especially summoned and shall assemble within five days.
(緊急性を要する必要性ある特別なケースに於いては、政府は効力を有する「暫定措置」をとることが出来る。その場合、大統領は措置設定の当日に議会に対して報告・説明し、法令化の手続きをとる必要がある。その際、議会が解散状態であっても、特別に5日以内に召集される。
The decrees lose effect from their inception if they are not converted into law within sixty days from their publication. The houses can however regulate through laws legal issues arising out of decrees not converted.
(法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る)
・第78条
The houses decide on states of war and confer the necessary powers on government.
(議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える
<紹介引用終わり>
仏・独・伊は、この様に「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」事例である。
それらを自民党の改憲草案の緊急事態条項と比較してみれば分かる通り、まったく問題ないものである事が分かるであろう。
米英の憲法には、この様な記載はない。
そもそも英国には憲法典がない。憲法機能を持つ諸法規と慣例が憲法の役割を担う不成文憲法の国が英国なのである。
また、以前紹介したG7以外の国々の幾つかの憲法には、必ずしも「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」という要件が当てはまらないのである。
例えばスイス憲法では以下の様に「具体的日数」の明示は憲法条文にはない・
↓
スイス憲法:第185条 対外的及び国内的安全
③ 連邦参事会は、公共秩序又は国内的若しくは対外的安全に対する現存する又は急迫した重大な脅威に対処するため、直接、本条の規定に基づき、命令を制定し、処分を下すことができる。かかる命令には、期限を付さなければならない。
<引用終わり>
スイスの「国の形」は我国とは大きく違うので分かりにくいと思うが、スイスの政体での「連邦参事会」とは連邦議会から選出された行政を担う組織で、我国でいえば内閣に該当するものである。
スイス憲法では各国と同様に、緊急事態の宣言は内閣に相当する組織の権限としているが、その緊急事態の終了権限についての明示的記載はなく、連邦参事会が設定した「期限」がその機能を有するものと解される。そして、上記の引用の通り具体的日数の明示はない。
スウェーデン憲法の場合は、第15 章・戦争及び戦争の危険が緊急事態条項である。
その条文の多くには冒頭に「国が戦争状態又は戦争の危険に陥った場合には」との但し書きがある一方で、終了権限が行政の長以外にあるとの明示も、緊急事態の終了または延長可否のチェックポイントとしての具体的日数の明示もない。
スウェーデン憲法の緊急事態条項の特徴の1つとしては、「国が戦争状態又は戦争の危険に陥った場合に」議会を招集する義務が「政府又は議長」となっている点がある。
その一方で、上記した様に終了権限の明示、日数明示はない。
これは要するに「「国が戦争状態又は戦争の危険に陥っ」ていない」ならば、終息です、という意味で、実際の状況にディペンドする建て付けだと言える。
実際のエビデンスの紹介でちょっと長くなったが、それは、福島瑞穂が紹介しているブログに書いてある「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」が本当か虚偽は、これらエビデンスをお読みいただいた各人が判断できる様にする為である。
○上記ブログ:③内閣が制定した法律と同様の効果を有する政令や財産処分について、国会の承認を事後的に得られない場合に効力を失う旨の規定がない(99条1項2項)
○自民党改憲草案:第99条第1項
緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
同第2項 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
<引用終わり>
これをお読みになって、「確かに書いてない」→「問題だぁ~!」と考えた方は、見事に「素人騙し」に引っかかった方である。
書いてないのは事実だが、書いてない事は全然問題にはならないのである。
自民党改憲草案の第99条第1項に書かれているのは「政令」であり法律ではないという重要ポイントに気がつかないと、この騙し論法に引っかかってしまう。
政令は法律ではなく、法律の下位に置かれるものである。
緊急事態に於いては、平時基準の法律ではなく、緊急時対応の政令が優先されなければ、国民の命、平和・安寧は確保できないので、「法律と同一の効力を有する」との但し書きがあるのだが、政令は政令であり、法律の下位にあることは動かしようがない。
法律を新たに作る、廃棄する、改定する権限は立法府国会にあり、行政府・内閣は、その法律に基づき執行する。
緊急事態対応で出された政令は、当該緊急事態が終息した際には、その役目を終えるのだが、ましてや、その事後の時点で国会の承認を得られない場合には、当然の様にその政令は効力を失うのである。
それが法令の建て付けであり、その様な仕組みが既に存在しているのに、わざわざ憲法条文に書く必然性がないというのが本当のところである。
ところが、そういう建て付け・仕組みをすっ飛ばして「効力を失う旨の規定がない」などと書いているのである。こんな記述は悪質なる「素人騙し」論法に該当する。
○上記ブログ:④政令で規定できる対象に制限がない
○自民党改憲草案:第98条:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
第99条第3項:緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
↓
※条文中の他の条数は自民党改憲草案の条数
第14条:(法の下の平等)全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(以下略)
第18条:(身体の拘束及び苦役からの自由)何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。同第2項:何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第19条:(思想及び良心の自由)思想及び良心の自由は、保障する。
第21条:(表現の自由)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。同第2項:前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。同第3項:検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
<引用終わり>
「④政令で規定できる対象に制限がない」との指摘は、あたかも何等かの制限が必要だとするものだが、そもそも、緊急事態が起こっている状態に於いて国民の命・安全を確保する為に、必要に応じて出される政令を「制限」する必要性があると考えること自体がおかしいのである。
国民の命・安全の確保を低く考えていることからの発想だと言わざる得ない。
とは言え、映画や小説に出てくる「何がなんでも強制」の様なことはしませんよ、という事で、緊急事態に於いても配慮・尊重すべき基本的人権に関する規定を第第99条第3項に明示しているものである。
これ以上の「制限」は逆に、国民を守る為に必要な処置に手枷足枷をはめるもので、本末転倒である。
前回紹介した様に、「想定外を想定する」との現実では不可能な話をしており、それを土台に「想定できているのだから無用な政令は制限できる」などと、勝手な話を膨らましているものだ。
こういう最初の設定がインチキなことを「偽りの土俵」と言う。
今回も長くなった。
福島瑞穂が紹介しているブログは、結局は2つの事しか書いていないのだが、その2つ目の導入部である「5.」の部分は「偽り土俵」の提示部分であることから、事実を以て、それが「偽り」であることを証明する為に長くなったものである。
「偽りの土俵」の上では正論が「禁じ手」扱いになってしまうので、その土俵自体が偽りであるとの認識を持っていただきたいというのが今回の主旨であり、その為に長くなってしまったものである。次回でおしまいにしたい。
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【文末脚注】
(*1):新型コロナウイルス感染症に対応する為の特措法立法化の国会審議が始まろうとしている時点で福島瑞穂がわざわざツィートで紹介した4年前のブログ「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」である。
↓
Part1の文末脚注の(*3)にて紹介しているので、興味あれば参照願いたい。
<前回論考>
2020/03/20投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1339.html
(*2):自民党改憲草案の緊急事態条項は同草案の98条と99条である。
↓
自民党案の第98条(緊急事態の宣言)及び第99条(緊急事態の宣言の効果)に関する2016年当時の当方の論考
2016/08/09投稿:
自民党改憲草案の紹介6【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-479.html
自民党改憲草案 第98条 (緊急事態の宣言)
第98条:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
同第2項 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
同第4項 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
第99条 (緊急事態の宣言の効果)
第99条:緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
同第2項 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
同第4項 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及び
その選挙期日の特例を設けることができる。
※注:条文中の他の条数は自民党改憲草案の条数であり、現行憲法の条数とは異なる場合があるので注意いただきたい。
【ご参考】
2018/02/03投稿:
緊急事態条項・自民党改憲推進本部報告
<憲法改正に関する論点取りまとめ2>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-858.html
2018/02/05投稿:
緊急事態条項・2012年自民党改憲草案の良い所悪い所
<憲法改正に関する論点取りまとめ2に付随して>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-859.html
(*3):我が国と同程度の国家と思われるG7諸国及びその他の国々の憲法の緊急事態条項
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
副題:我が国と比肩し得るG7主要国の「緊急事態条項」のご紹介。緊急事態条項に悪者レッテルを貼る偏向マスコミ等に騙されることなかれ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
2017/07/29投稿:
(資料編)G7主要国以外の緊急事態条項
副題:スイス連邦、スウェーデン王国、韓国、ワイマール共和国、各国憲法の緊急事態条項を資料提示する。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-723.html
【ご参考】
2017/07/28投稿:
緊急事態条項・要件に基づく考察1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-722.html
↓
<緊急事態条項の要件>
1):憲法で規定すべき
2):緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
3):緊急事態体対応体制の終了権限も議会(国会)が持つべき
4):議会の、終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
5):国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
これら5点の要件を以て、G7主要国の日本、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカの憲法を見ると、以下の様な結果(要約)となる。憲法とは、各国の「国の形」でもあるのだから、こういう個性的結果になるのも納得性がある。
※イギリスには憲法典がないので除外してある。
<各国憲法の緊急事態条項の要件有無>
要件\国名:日・仏・独・伊・米 改憲草案
1)憲法 :×・◎・◎・○・△ ◎98条及び99条
2)議会1:-・○・◎・◎・△ ◎98条第1項及び第2項
3)議会2:-・○・◎・○・△ ◎98条第3項
4)期限 :-・◎・◎・◎・△ ◎98条第3項
5)継続 :-・◎・◎・◎・△ ◎99条第4項
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副題:福島瑞穂がツィートした4年間のブログは現行憲法にない緊急事態条項に悪魔化レッテルを貼るのが目的。その「論」の中身を検証する。
前回Part2及び前々回Part1の続きである。
検証の対象としているのは、新型コロナウイルス感染症に対応する為の特措法立法化の国会審議が始まろうとしている時点で福島瑞穂がわざわざツィートで紹介した4年前のブログ「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」である。(*1)
「7つ」と言っているのだが、前回論考で指摘した様に、実際のところは2つのことしか言っていない。
1つ目は、同ブログの付番「1.」「2.」「3.」で、「既存法で対処出来るから憲法に緊急事態条項はいらない」というものだ。しかしながら、前回、前々回で指摘した様に、今回の新型コロナウイルスへの対処で、法的未整備状態から「既存法では対処できない」ことが実証されており、当方は4年前の時点で、そういう問題が発生する危険性に備え憲法にこそ緊急事態事が必要である旨を述べている事を紹介した。
「4.」以降の2つ目は、「だから憲法に緊急事態条項なんかいらないんだぁ~」と言っているものである。それが同ブログの主旨であり、それが言いたいが為に「自民党改憲草案の緊急事態条項は危険だぁ~」「独裁を招く欠陥条項だぁ~」との悪魔化レッテル貼りをしているものだ。
それでは今回は「4.」から紹介を開始して、検証を進める。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○4一方、ここからが重要なのですが、自由民主党の改憲草案に盛り込まれている緊急事態条項は、以下のように、十分な限定をかけることなく政府に全権を与えてしまう一種の全権委任制度であり、一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。
①緊急事態の発動要件を法律で定められる(98条1項)
②緊急事態の期間に制限がない(98条3項)
③内閣が制定した法律と同様の効果を有する政令や財産処分について、国会の承認を事後 的に得られない場合に効力を失う旨の規定がない(99条1項2項)
④政令で規定できる対象に制限がない
<抜粋引用終わり>
↓
ウソだらけである。
この文章を書いている人は、多分、読む人が自民党の改憲草案の中身とか諸外国の憲法の緊急事態条項の中身とか、その目的を知らないであろうと高をくくって、こんなウソを書いているのであろうと思われる。
そうでなかったら、ここまで明らかなウソは書けないはずである。
これがウソであることを簡単に理解出来る部分として、最初に①~④の記載と自民党改憲草案を併記しながら説明する。
自民党改憲草案の緊急事態条項は同草案の98条と99条である。(*2)
↓
○上記ブログ:①緊急事態の発動要件を法律で定められる(98条1項)
○自民党改憲草案:第98条第1項:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
<引用終わり>
上記ブログは、あたかも「緊急事態の発動要件を法律で定められる」ことがあたかも危険なことであるかの様なインチキを述べているが、そんな事はなく、法的定めがない事の方がむしろ危険なのである。
自民党改憲草案の第98条の第1項で「法律で定め」とあるのは2か所であるが、その何れもが法治主義に基づくものである。
1つ目は「その他の法律で定める緊急事態において」である。
「その他」以前に例示されているのは「武力攻撃」「内乱」「大規模な自然災害」である。つまり、その様な例示以外の緊急事態としては、今現在の我々は「感染症」があることを知っている。
感染症対策に関する法律としては感染症法がある。感染症法で対象にしている感染症には幾つかの例示があるが、それ以外については「指定感染症への指定がなされた感染症」が対象となっている。
この様に「その他の法律(感染症法)で定める緊急事態(新型コロナウイルス感染症を指定感染症へ指定する)」という内容の条文であり、いったい、これの何処が危険なのであろうか?
想定が難しい各種の緊急事態発生要因を総て憲法条文に例示せよと言っているのだったら、それは暴論であり、難癖に該当するものである。
2つ目は「特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」である。
ここで言う「法律の定めるところにより」とは、憲法条文で多々見られる語句であり、その意味するところは、「詳細規定は下位法で定める」という意味でしかなく、何も危険なことなどないものである。
因みに、現行憲法の条文に多々出てくる「「法律の定めるところにより」との語句がある代表的な条文を以下に3つ程、紹介しておく。
これらの何処がどの様に危険なのであろうか? 各人が考えていただきたいが、答は「法文としては、まったく危険などない」である。
↓
<現行憲法から3つ抜粋>
第26条:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
同第2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第30条:国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。
第40条:何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
<引用終わり>
ご覧の様に「法律の定めるところにより」は憲法で普通に用いられる語句なのであり、何等の問題はないのである。
むしろ憲法条文に手続き規定をも盛り込めという話は暴論である。
続ける。
○上記ブログ:②緊急事態の期間に制限がない(98条3項)
○自民党改憲草案:第98条第3項:内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
<「前項の場合において」の前項とは第98条第2項のことなので、第2項を以下に紹介する>
自民党改憲草案:第98条第2項:緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
<引用終わり>
↓
ご覧の様に、自民党の改憲草案には「制限」が明記されており、「制限がない」との記載が虚偽であることが分かる。
緊急事態の宣言に関しては「国会の承認」が必要だし、承認された後も100日経過毎に国会で継続の可否を検討し、その承認を得るとの規定である。
これを「制限」と言わずして、いったいどの様な「制限」が必要なのであろうか?
「緊急事態宣言は100日まで、それ以上の延長は不可」などは現実ではあり得ない。
何故ならば、こんな規定では、100日経過した時点で対処すべき事態が継続している状態でも平時基準に強制的に戻ることになるからだ。
福島瑞穂が紹介した「ブログ」には、この様な虚偽が並べられているのであるが、その前段の記載も虚偽であることを指摘しておく。
「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」との記載も虚偽である。
我が国と同程度の国家と思われるG7諸国及びその他の国々の憲法の緊急事態条項を幾つか抜粋して紹介する。(*3)
それら他国の事例からは、緊急事態の例示や手続き規定の記載が必ずしも書いておらず、また、期限に対する「制限」の内容が自民党改憲草案と同程度のものや、日数規定がない事例があることが分かるはずだ。
そういう事実からは、「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」との記載は事実とは「全く異なるもの」である事をご確認いただきたい。
自民党改憲草案は、緊急事態の終了権限が行政の長(大統領・首相)以外の国会(立法府)にあり、その制限日数が明示された条文案になっているのである。
それと同等の「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」のは、以下の通りフランス憲法、ドイツ憲法(ドイツ基本法)、イタリア憲法などである。
↓
<仏・独・伊の憲法の緊急事態条項の例示>
○<フランス共和国憲法:2008年7月23日の改正憲法(24回目憲法改正)>
http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/240/024003.pdf
第16条
6 非常事態権限の行使から30日後に、国民議会議長、元老院議長、60人の国民議会議員又は60人の元老院議員は、第1項に定める要件が依然として備わっているか否かの審査のために、憲法院に付託することができる。憲法院は、可及的速やかに公的な意見により裁定する。憲法院は、非常事態権限の行使から60日後はいつでも、当然にこの審査を行い、及び同一の要件により裁定する。
○<ドイツ憲法(ドイツ基本法)の緊急事態条項(1955年改正時追加)>
http://www.fitweb.or.jp/~nkgw/dgg/
第115l条 [防衛事態における法律および措置の廃止、防衛事態の終了、講和]
(1) 連邦議会は、連邦参議院の同意を得て、いつでも合同委員会の法律を廃止することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。その他、合同委員会または連邦政府が危険防止のためにとった措置は、連邦議会および連邦参議院の議決により廃止される。
(2) 連邦議会は、いつでも、連邦参議院の同意を得て、連邦大統領が公布する議決によって防衛事態の終了を宣言することができる。連邦参議院は、連邦議会がこの議決を行うように要求することができる。防衛事態は、その確認の前提となった条件が存在しなくなったときは、遅滞なくその終了を宣言しなけれはならない。
(3) 講和については、連邦法で決定する。
○<イタリア憲法の緊急事態条項>
イタリア憲法の緊急事態条項は、フランス憲法やドイツ憲法と違い、1つの章や条にまとまって記載されていない。様々の条文の中に「戦時に於いては」との記載で緊急事態発生時の特例を付記する方式である。残念なことに、イタリア憲法の全条和文訳を発見していないので、資料として提示しているのは、イタリア憲法の英文Wikiを元に当方が「勝手な和訳」をしたものを用いている。
<英文Wiki:イタリア憲法>
https://en.wikisource.org/wiki/Constitution_of_Italy
・第77条
When in extraordinary cases of necessity and urgency the government adopts provisional measures having the force of law it must on the same day present them for conversion into law to the houses which, even if dissolved, shall be especially summoned and shall assemble within five days.
(緊急性を要する必要性ある特別なケースに於いては、政府は効力を有する「暫定措置」をとることが出来る。その場合、大統領は措置設定の当日に議会に対して報告・説明し、法令化の手続きをとる必要がある。その際、議会が解散状態であっても、特別に5日以内に召集される。
The decrees lose effect from their inception if they are not converted into law within sixty days from their publication. The houses can however regulate through laws legal issues arising out of decrees not converted.
(法令化には、公布後60日以内に議会による法改正がなされない場合は失効する。議会は法改正をしないことが出来る)
・第78条
The houses decide on states of war and confer the necessary powers on government.
(議会は、戦争状態であるとの決定し、政府に必要な権限を与える
<紹介引用終わり>
仏・独・伊は、この様に「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」事例である。
それらを自民党の改憲草案の緊急事態条項と比較してみれば分かる通り、まったく問題ないものである事が分かるであろう。
米英の憲法には、この様な記載はない。
そもそも英国には憲法典がない。憲法機能を持つ諸法規と慣例が憲法の役割を担う不成文憲法の国が英国なのである。
また、以前紹介したG7以外の国々の幾つかの憲法には、必ずしも「憲法規定で終了権限が行政の長以外にあり・具体的日数の明示がある」という要件が当てはまらないのである。
例えばスイス憲法では以下の様に「具体的日数」の明示は憲法条文にはない・
↓
スイス憲法:第185条 対外的及び国内的安全
③ 連邦参事会は、公共秩序又は国内的若しくは対外的安全に対する現存する又は急迫した重大な脅威に対処するため、直接、本条の規定に基づき、命令を制定し、処分を下すことができる。かかる命令には、期限を付さなければならない。
<引用終わり>
スイスの「国の形」は我国とは大きく違うので分かりにくいと思うが、スイスの政体での「連邦参事会」とは連邦議会から選出された行政を担う組織で、我国でいえば内閣に該当するものである。
スイス憲法では各国と同様に、緊急事態の宣言は内閣に相当する組織の権限としているが、その緊急事態の終了権限についての明示的記載はなく、連邦参事会が設定した「期限」がその機能を有するものと解される。そして、上記の引用の通り具体的日数の明示はない。
スウェーデン憲法の場合は、第15 章・戦争及び戦争の危険が緊急事態条項である。
その条文の多くには冒頭に「国が戦争状態又は戦争の危険に陥った場合には」との但し書きがある一方で、終了権限が行政の長以外にあるとの明示も、緊急事態の終了または延長可否のチェックポイントとしての具体的日数の明示もない。
スウェーデン憲法の緊急事態条項の特徴の1つとしては、「国が戦争状態又は戦争の危険に陥った場合に」議会を招集する義務が「政府又は議長」となっている点がある。
その一方で、上記した様に終了権限の明示、日数明示はない。
これは要するに「「国が戦争状態又は戦争の危険に陥っ」ていない」ならば、終息です、という意味で、実際の状況にディペンドする建て付けだと言える。
実際のエビデンスの紹介でちょっと長くなったが、それは、福島瑞穂が紹介しているブログに書いてある「一部の国が極めて厳しい限定の下で認めている緊急事態条項とは、その内容自体が全く異なるものです。」が本当か虚偽は、これらエビデンスをお読みいただいた各人が判断できる様にする為である。
○上記ブログ:③内閣が制定した法律と同様の効果を有する政令や財産処分について、国会の承認を事後的に得られない場合に効力を失う旨の規定がない(99条1項2項)
○自民党改憲草案:第99条第1項
緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
同第2項 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
<引用終わり>
これをお読みになって、「確かに書いてない」→「問題だぁ~!」と考えた方は、見事に「素人騙し」に引っかかった方である。
書いてないのは事実だが、書いてない事は全然問題にはならないのである。
自民党改憲草案の第99条第1項に書かれているのは「政令」であり法律ではないという重要ポイントに気がつかないと、この騙し論法に引っかかってしまう。
政令は法律ではなく、法律の下位に置かれるものである。
緊急事態に於いては、平時基準の法律ではなく、緊急時対応の政令が優先されなければ、国民の命、平和・安寧は確保できないので、「法律と同一の効力を有する」との但し書きがあるのだが、政令は政令であり、法律の下位にあることは動かしようがない。
法律を新たに作る、廃棄する、改定する権限は立法府国会にあり、行政府・内閣は、その法律に基づき執行する。
緊急事態対応で出された政令は、当該緊急事態が終息した際には、その役目を終えるのだが、ましてや、その事後の時点で国会の承認を得られない場合には、当然の様にその政令は効力を失うのである。
それが法令の建て付けであり、その様な仕組みが既に存在しているのに、わざわざ憲法条文に書く必然性がないというのが本当のところである。
ところが、そういう建て付け・仕組みをすっ飛ばして「効力を失う旨の規定がない」などと書いているのである。こんな記述は悪質なる「素人騙し」論法に該当する。
○上記ブログ:④政令で規定できる対象に制限がない
○自民党改憲草案:第98条:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
第99条第3項:緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
↓
※条文中の他の条数は自民党改憲草案の条数
第14条:(法の下の平等)全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。(以下略)
第18条:(身体の拘束及び苦役からの自由)何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。同第2項:何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第19条:(思想及び良心の自由)思想及び良心の自由は、保障する。
第21条:(表現の自由)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。同第2項:前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。同第3項:検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
<引用終わり>
「④政令で規定できる対象に制限がない」との指摘は、あたかも何等かの制限が必要だとするものだが、そもそも、緊急事態が起こっている状態に於いて国民の命・安全を確保する為に、必要に応じて出される政令を「制限」する必要性があると考えること自体がおかしいのである。
国民の命・安全の確保を低く考えていることからの発想だと言わざる得ない。
とは言え、映画や小説に出てくる「何がなんでも強制」の様なことはしませんよ、という事で、緊急事態に於いても配慮・尊重すべき基本的人権に関する規定を第第99条第3項に明示しているものである。
これ以上の「制限」は逆に、国民を守る為に必要な処置に手枷足枷をはめるもので、本末転倒である。
前回紹介した様に、「想定外を想定する」との現実では不可能な話をしており、それを土台に「想定できているのだから無用な政令は制限できる」などと、勝手な話を膨らましているものだ。
こういう最初の設定がインチキなことを「偽りの土俵」と言う。
今回も長くなった。
福島瑞穂が紹介しているブログは、結局は2つの事しか書いていないのだが、その2つ目の導入部である「5.」の部分は「偽り土俵」の提示部分であることから、事実を以て、それが「偽り」であることを証明する為に長くなったものである。
「偽りの土俵」の上では正論が「禁じ手」扱いになってしまうので、その土俵自体が偽りであるとの認識を持っていただきたいというのが今回の主旨であり、その為に長くなってしまったものである。次回でおしまいにしたい。
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【文末脚注】
(*1):新型コロナウイルス感染症に対応する為の特措法立法化の国会審議が始まろうとしている時点で福島瑞穂がわざわざツィートで紹介した4年前のブログ「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」である。
↓
Part1の文末脚注の(*3)にて紹介しているので、興味あれば参照願いたい。
<前回論考>
2020/03/20投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1339.html
(*2):自民党改憲草案の緊急事態条項は同草案の98条と99条である。
↓
自民党案の第98条(緊急事態の宣言)及び第99条(緊急事態の宣言の効果)に関する2016年当時の当方の論考
2016/08/09投稿:
自民党改憲草案の紹介6【コラム】
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-479.html
自民党改憲草案 第98条 (緊急事態の宣言)
第98条:内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
同第2項 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。
また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
同第4項 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。
第99条 (緊急事態の宣言の効果)
第99条:緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
同第2項 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
同第3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
同第4項 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及び
その選挙期日の特例を設けることができる。
※注:条文中の他の条数は自民党改憲草案の条数であり、現行憲法の条数とは異なる場合があるので注意いただきたい。
【ご参考】
2018/02/03投稿:
緊急事態条項・自民党改憲推進本部報告
<憲法改正に関する論点取りまとめ2>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-858.html
2018/02/05投稿:
緊急事態条項・2012年自民党改憲草案の良い所悪い所
<憲法改正に関する論点取りまとめ2に付随して>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-859.html
(*3):我が国と同程度の国家と思われるG7諸国及びその他の国々の憲法の緊急事態条項
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
副題:我が国と比肩し得るG7主要国の「緊急事態条項」のご紹介。緊急事態条項に悪者レッテルを貼る偏向マスコミ等に騙されることなかれ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
2017/07/29投稿:
(資料編)G7主要国以外の緊急事態条項
副題:スイス連邦、スウェーデン王国、韓国、ワイマール共和国、各国憲法の緊急事態条項を資料提示する。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-723.html
【ご参考】
2017/07/28投稿:
緊急事態条項・要件に基づく考察1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-722.html
↓
<緊急事態条項の要件>
1):憲法で規定すべき
2):緊急事態である旨の宣言をする決定権は議会(国会)が持つべき
3):緊急事態体対応体制の終了権限も議会(国会)が持つべき
4):議会の、終了権限を行使する時期を予め規定で明示すべき
5):国会議員任期の特例規定として緊急時の議会(国会)継続規定が必要
これら5点の要件を以て、G7主要国の日本、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカの憲法を見ると、以下の様な結果(要約)となる。憲法とは、各国の「国の形」でもあるのだから、こういう個性的結果になるのも納得性がある。
※イギリスには憲法典がないので除外してある。
<各国憲法の緊急事態条項の要件有無>
要件\国名:日・仏・独・伊・米 改憲草案
1)憲法 :×・◎・◎・○・△ ◎98条及び99条
2)議会1:-・○・◎・◎・△ ◎98条第1項及び第2項
3)議会2:-・○・◎・○・△ ◎98条第3項
4)期限 :-・◎・◎・◎・△ ◎98条第3項
5)継続 :-・◎・◎・◎・△ ◎99条第4項
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