ミズポ編2 Part2 「想定外を想定する」との言葉遊びでは実在の国民は救えない
- 2020/03/22
- 20:46
ミズポ編2 Part2 「想定外を想定する」との言葉遊びでは実在の国民は救えない

副題:下位法では感染症に早期対応出来なかったとの事実。福島瑞穂がツィートで紹介した4年前のブログは現行憲法にない緊急事態条項に悪魔化レッテルを貼るもの。その「論」の中身を検証する。
前回論考「新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)」の続きである。
新型コロナウイルス感染症に対応するには、根拠法が未整備であった為に、実効性を高め様と国会で特措法の審議が開始されることになった時点で、福島瑞穂がわざわざツィートしている4年前の「緊急事態条項に反対する内容のブログ」(*1)の中身についての論考を続ける。
同ブログの表題は「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」であるが、前回はそのうちの最初の1つだけで長くなってしまった。
今回は2つ目からである。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○2まず、いざとなったら政府に全権を委ねれば何とかなるというのは間違いです。
いざというときほど、政府も自治体も、法律の根拠がなければ人々を助けられないのです。
結局のところ、想定外のことをいかに起こさないかが重要であり、大地震にせよ原発事故にせよ、平時から様々な事象を想定したうえで、立法措置を含めた適切な対応方針を決めておくこと、そして何より、政府が存在する法律の規定を迅速に活用し、人々を救うために全力を尽くすことが重要なのです。
<引用終わり>
↓
当方は、この部分の最初の2行を読んで呆れてしまったのである。
1行目は、「いざとなったら」つまり緊急事態になった時に、「政府に全権を委ねれば何とかなるというのは間違いです。」と言っているのだが、いったい緊急時に「誰」に任せるのが最も実効性・信頼性が期待できるのか?との疑問が即時に浮かぶ一文である。
そして、同時に「何故、政府に任せることが間違いなのか」の「理由」を知りたいとの思いが即時に浮かんだのである。
その「理由」が2行目に書かれている。
「法律の根拠がなければ人々を助けられないのです。」とまったくに正しいことを言っているのであるが、それこそが憲法に緊急事態条項が必要な理由だからである。
緊急事態条項に反対するのが目的のブログで、緊急事態条項が必要な理由を明示していることが実に滑稽であり、呆れてしまったのである。
以前の複数の論考で、お役人・公務員は法規定に忠実であることが求められており、平時を基準に法制化された法規定によって目の前の危機に対処出来ない立場にある。お役人・公務員が国民を救うことが出来る様に、障壁となってしまう平時の法規定を一時的に適用除外にしたり、各種の法規定を緊急対応化するキャッチオールの憲法規定が緊急事態条項なのである。(*2)
「法律の根拠がなければ人々を助けられないのです」との一文が正しいのは、「助けることが出来る様に緊急時限定との但し書き付の根拠法を準備しておく」ことで人々を助けられる事になるからである。
つまり、「緊急事態条項があれば助けることが出来る」という事なのである。
我々国民の命、平和・安寧が脅かされた時、それに対処するには皆が一致協力して一丸となって対する事が最も実効性が高いことを我々は経験上知っている。また、各個人が好き勝手に局所合理的に行動してしまうと、その混乱が他の多くの人々に無用な負担をかける事態となることも知っている。
各人が勝手に動くことで発生する混乱を防止し、皆が協力する体制をリードする役割を担うのは、国民が選んだ政府をおいて他にない。
我国は独裁国家ではなく法治主義国家であるのだから、国民が選んだ政府もまた各種法令に則り執行することが大原則である。ところが、現に存在する諸法規が平時基準で法制化されており、緊急時には、その規定が国民の安全を確保する際の足枷に作用することがあるので、そういう本末転倒を防ぎ、緊急時に於いても法治主義を貫徹する為に、緊急時対応の緊急事態条項をあらかじめ法制化しておく必要があるのである。
上記引用の後段部分も最初の2行に負けず劣らず奇妙な論理で書かれている。
「想定外のことをいかに起こさないかが重要」、「平時から様々な事象を想定したうえで」と自家撞着したことが書かれている。
想定しても想定しきれない事象が「想定外」なのであり、現実世界では成り立たない単なる言葉遊びレベルの記述である。
前回Part1で述べた様に、「日本には憲法を変えなくても十分に対応可能な精緻な法制度が既に存在し」てないのである。今回の新型コロナウイルス感染症の対応で、既存の感染症法では、即時の対応ができなかったことからも明らかである。
仮に、ここで言っている「平時から様々な事象を想定したうえで」が、もっと想定を広げて既存の下位法に緊急時想定の規定をもっと盛り込めと言っているのだとしたら、まったくの世間知らずである。
4年前の2016年の時点で、国会で何が審議されていたのかというと、既存法では想定された事態に対処できないとの法的未整備状態の解消を審議していたのである。
安保法制である。
ところが、知っての通り、この4年前のブログを紹介している福島瑞穂は、その安保法制に対して真逆の悪魔化レッテル貼りの「戦争法案」なる造語を用いて大騒ぎをしていた。
この様に、数多ある各種法令の総てに「もっと想定を広め、その各々に緊急時想定の規定を盛り込む法制化審議をしろ」と言っても、キャパの関係から国会で出来る訳がないのである。
安保法制の審議は、衆議院と参議院で各々100時間以上の審議を要したことを考えれば、現実世界での実現性がない事が書かれていることが分かるであろう。
この様な空理空論を書いてしまう理由は、最初に「緊急事態条項を憲法に入れさせない」との結論があり、その結論に合わせて後から無理矢理作り上げた話なので、屁理屈にしかならないのである。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○3実際には、大災害などで本当に緊急の対応が必要であれば、災害対策基本法という既に存在する法律に基づいて、政府は相当大胆な緊急対応を行うことができます。
もちろん、戒厳令のようにならないための規定も定められています。
内閣は、どうしても国会を開けない場合には、「緊急政令」を制定できます。
さらに、同法では、内閣総理大臣に行政上の権限を一時的に集中させ、効率的な行政執行を行うための仕組みも整備されています。
このように、自然災害等を理由とする緊急事態条項の導入は不要ですし、それ以外に緊急事態条項を定めなければならない特段の事情もありません。
<引用終わり>
↓
付番としては「3.」なのだが、「1.」「2.」「3.」の3つは、実は同じ内容である。
「既存法で対処出来るから憲法に緊急事態条項はいらない」との虚偽を言っているものである。
引用した「3.」では災害対策基本法を例にしている。
確かに同法の第2章には、緊急時対応関係の条文が多々ならんでいる。
ところが、同法が対象としている「災害」とは、同法第2条に掲げられている「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発・・・」と災害の種類が沢山例示されているのだが、そこには「感染症」はない。
感染症を対象にしているのは感染症法である。
これは何を意味するのかと言うと、「対処の対象が異なる個別の既存法の総てに「想定外」をなくして、それぞれに緊急時対応の条文を入れる」との空理空論をごまかす為に、緊急時対応の条文が充実している災害対策基本法を示し、「ほら、あるでしょ」と言いたいからである。
地震国日本では、誰もが想定する「災害」に関する法律に、緊急時対応があるのは当たり前である。
しかし、4年前の段階では、SARSもMARSもH5N1型鳥インフルエンザも経験していたのだが、それと同様以上の危機を想定し、ましてや、それらを対象に立法化することは難しかったのが現実だ。「想定出来ない想定外をなくせ、想定外に対処せよ」などの言葉遊びは現実施世界では何等の実効性がないものなのである。
だからこそ、2020年1月に発生した新型コロナウイルスによる感染症に対しての法的未整備状態を我々は目の当たりにしたのである。
2020年現在の多くの日本人は、「日本には憲法を変えなくても十分に対応可能な精緻な法制度が既に存在し」ていない事を知っているのである。
「想定外」の事態は、常に発生する可能性があるのが現実世界である。
そして、たとえ想定外であっても国民の命・安全の為に政府が法治主義のもとに対処できる様に準備しておくのが緊急事態条項であり、それが、その必要性の根拠なのである。
緊急事態条項は、下位法にではなく、憲法にこそ必要なのである。(*3)
世界の多くの国々が憲法に書いてある緊急事態条項(*4)を日本だけには認めないとする異常な態度が、本稿で紹介した様な支離滅裂・自家撞着した話になっている原因なのである。
次回は、「7つ」のうちの後段の「4.」からの紹介とする予定である。
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【文末脚注】
(*1):国会で特措法の審議が開始されることになった時点で福島瑞穂がわざわざツィートしている4年前の「緊急事態条項に反対する内容のブログ」
↓
前回論考の文末脚注の(*3)にて紹介しているので、興味あれば参照願いたい。
<前回論考>
2020/03/20投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1339.html
(*2):以前の複数の論考で、お役人・公務員は法規定に忠実であることが求められている事を何度も指摘しており、平時を基準に法制化された法規定により、目の前の危機に対処出来ない立場にあるお役人・公務員が、国民を救うことが出来る様に、一時的に平時基準の法規定を緊急対応化する法規定が緊急事態条項なのである。
↓
2020/02/17投稿:
続・リストマネジメント・感染症法・法務省の反対意見
副題:「正しい事をやる」のか「正しいやり方でやる」のか?答えは「正しい事を正しいやり方でやる為の法的未整備状態の解消が必要」である。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1325.html
【ご参考】
2016/07/22投稿:
緊急事態条項の必要性1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-462.html
○断水した町へ到着した自衛隊の給水車に対して「県は災害派遣を自衛隊に要請していない」として給水車を帰してしまった神奈川県職員
2019/10/17投稿:
改憲議論と憲法規定の実現化議論を混同させる記事(後編Final・緊急事態条項)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1271.html
○阪神大震災の時の日銀神戸支店長の神戸市民からの預金引き出し要求に答えた行為が「規定違反」だとして、神戸支店長の行動を批判した東京の官僚達の話
2015/10/21投稿:
【コラム】「人権」の制限は「人権」を守る為の手段
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-237.html
2018/03/23投稿:
官僚さんの職業病
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-888.html
(*3):緊急事態条項は、下位法にではなく、憲法にこそ必要なのである。(*Z)
↓
2016/07/23投稿:
緊急事態条項の必要性2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-463.html
(*4):世界の多くの国々が憲法に書いてある緊急事態条項
↓
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
副題:我が国と比肩し得るG7主要国の「緊急事態条項」のご紹介。緊急事態条項に悪者レッテルを貼る偏向マスコミ等に騙されることなかれ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
2017/07/29投稿:
(資料編)G7主要国以外の緊急事態条項
副題:スイス連邦、スウェーデン王国、韓国、ワイマール共和国、各国憲法の緊急事態条項を資料提示する。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-723.html
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副題:下位法では感染症に早期対応出来なかったとの事実。福島瑞穂がツィートで紹介した4年前のブログは現行憲法にない緊急事態条項に悪魔化レッテルを貼るもの。その「論」の中身を検証する。
前回論考「新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)」の続きである。
新型コロナウイルス感染症に対応するには、根拠法が未整備であった為に、実効性を高め様と国会で特措法の審議が開始されることになった時点で、福島瑞穂がわざわざツィートしている4年前の「緊急事態条項に反対する内容のブログ」(*1)の中身についての論考を続ける。
同ブログの表題は「◆災害対応には緊急事態条項が必要らしいと思っているあなたに知ってほしい7つのこと」であるが、前回はそのうちの最初の1つだけで長くなってしまった。
今回は2つ目からである。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○2まず、いざとなったら政府に全権を委ねれば何とかなるというのは間違いです。
いざというときほど、政府も自治体も、法律の根拠がなければ人々を助けられないのです。
結局のところ、想定外のことをいかに起こさないかが重要であり、大地震にせよ原発事故にせよ、平時から様々な事象を想定したうえで、立法措置を含めた適切な対応方針を決めておくこと、そして何より、政府が存在する法律の規定を迅速に活用し、人々を救うために全力を尽くすことが重要なのです。
<引用終わり>
↓
当方は、この部分の最初の2行を読んで呆れてしまったのである。
1行目は、「いざとなったら」つまり緊急事態になった時に、「政府に全権を委ねれば何とかなるというのは間違いです。」と言っているのだが、いったい緊急時に「誰」に任せるのが最も実効性・信頼性が期待できるのか?との疑問が即時に浮かぶ一文である。
そして、同時に「何故、政府に任せることが間違いなのか」の「理由」を知りたいとの思いが即時に浮かんだのである。
その「理由」が2行目に書かれている。
「法律の根拠がなければ人々を助けられないのです。」とまったくに正しいことを言っているのであるが、それこそが憲法に緊急事態条項が必要な理由だからである。
緊急事態条項に反対するのが目的のブログで、緊急事態条項が必要な理由を明示していることが実に滑稽であり、呆れてしまったのである。
以前の複数の論考で、お役人・公務員は法規定に忠実であることが求められており、平時を基準に法制化された法規定によって目の前の危機に対処出来ない立場にある。お役人・公務員が国民を救うことが出来る様に、障壁となってしまう平時の法規定を一時的に適用除外にしたり、各種の法規定を緊急対応化するキャッチオールの憲法規定が緊急事態条項なのである。(*2)
「法律の根拠がなければ人々を助けられないのです」との一文が正しいのは、「助けることが出来る様に緊急時限定との但し書き付の根拠法を準備しておく」ことで人々を助けられる事になるからである。
つまり、「緊急事態条項があれば助けることが出来る」という事なのである。
我々国民の命、平和・安寧が脅かされた時、それに対処するには皆が一致協力して一丸となって対する事が最も実効性が高いことを我々は経験上知っている。また、各個人が好き勝手に局所合理的に行動してしまうと、その混乱が他の多くの人々に無用な負担をかける事態となることも知っている。
各人が勝手に動くことで発生する混乱を防止し、皆が協力する体制をリードする役割を担うのは、国民が選んだ政府をおいて他にない。
我国は独裁国家ではなく法治主義国家であるのだから、国民が選んだ政府もまた各種法令に則り執行することが大原則である。ところが、現に存在する諸法規が平時基準で法制化されており、緊急時には、その規定が国民の安全を確保する際の足枷に作用することがあるので、そういう本末転倒を防ぎ、緊急時に於いても法治主義を貫徹する為に、緊急時対応の緊急事態条項をあらかじめ法制化しておく必要があるのである。
上記引用の後段部分も最初の2行に負けず劣らず奇妙な論理で書かれている。
「想定外のことをいかに起こさないかが重要」、「平時から様々な事象を想定したうえで」と自家撞着したことが書かれている。
想定しても想定しきれない事象が「想定外」なのであり、現実世界では成り立たない単なる言葉遊びレベルの記述である。
前回Part1で述べた様に、「日本には憲法を変えなくても十分に対応可能な精緻な法制度が既に存在し」てないのである。今回の新型コロナウイルス感染症の対応で、既存の感染症法では、即時の対応ができなかったことからも明らかである。
仮に、ここで言っている「平時から様々な事象を想定したうえで」が、もっと想定を広げて既存の下位法に緊急時想定の規定をもっと盛り込めと言っているのだとしたら、まったくの世間知らずである。
4年前の2016年の時点で、国会で何が審議されていたのかというと、既存法では想定された事態に対処できないとの法的未整備状態の解消を審議していたのである。
安保法制である。
ところが、知っての通り、この4年前のブログを紹介している福島瑞穂は、その安保法制に対して真逆の悪魔化レッテル貼りの「戦争法案」なる造語を用いて大騒ぎをしていた。
この様に、数多ある各種法令の総てに「もっと想定を広め、その各々に緊急時想定の規定を盛り込む法制化審議をしろ」と言っても、キャパの関係から国会で出来る訳がないのである。
安保法制の審議は、衆議院と参議院で各々100時間以上の審議を要したことを考えれば、現実世界での実現性がない事が書かれていることが分かるであろう。
この様な空理空論を書いてしまう理由は、最初に「緊急事態条項を憲法に入れさせない」との結論があり、その結論に合わせて後から無理矢理作り上げた話なので、屁理屈にしかならないのである。
<抜粋引用開始>(改行位置変更は引用者)
○3実際には、大災害などで本当に緊急の対応が必要であれば、災害対策基本法という既に存在する法律に基づいて、政府は相当大胆な緊急対応を行うことができます。
もちろん、戒厳令のようにならないための規定も定められています。
内閣は、どうしても国会を開けない場合には、「緊急政令」を制定できます。
さらに、同法では、内閣総理大臣に行政上の権限を一時的に集中させ、効率的な行政執行を行うための仕組みも整備されています。
このように、自然災害等を理由とする緊急事態条項の導入は不要ですし、それ以外に緊急事態条項を定めなければならない特段の事情もありません。
<引用終わり>
↓
付番としては「3.」なのだが、「1.」「2.」「3.」の3つは、実は同じ内容である。
「既存法で対処出来るから憲法に緊急事態条項はいらない」との虚偽を言っているものである。
引用した「3.」では災害対策基本法を例にしている。
確かに同法の第2章には、緊急時対応関係の条文が多々ならんでいる。
ところが、同法が対象としている「災害」とは、同法第2条に掲げられている「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発・・・」と災害の種類が沢山例示されているのだが、そこには「感染症」はない。
感染症を対象にしているのは感染症法である。
これは何を意味するのかと言うと、「対処の対象が異なる個別の既存法の総てに「想定外」をなくして、それぞれに緊急時対応の条文を入れる」との空理空論をごまかす為に、緊急時対応の条文が充実している災害対策基本法を示し、「ほら、あるでしょ」と言いたいからである。
地震国日本では、誰もが想定する「災害」に関する法律に、緊急時対応があるのは当たり前である。
しかし、4年前の段階では、SARSもMARSもH5N1型鳥インフルエンザも経験していたのだが、それと同様以上の危機を想定し、ましてや、それらを対象に立法化することは難しかったのが現実だ。「想定出来ない想定外をなくせ、想定外に対処せよ」などの言葉遊びは現実施世界では何等の実効性がないものなのである。
だからこそ、2020年1月に発生した新型コロナウイルスによる感染症に対しての法的未整備状態を我々は目の当たりにしたのである。
2020年現在の多くの日本人は、「日本には憲法を変えなくても十分に対応可能な精緻な法制度が既に存在し」ていない事を知っているのである。
「想定外」の事態は、常に発生する可能性があるのが現実世界である。
そして、たとえ想定外であっても国民の命・安全の為に政府が法治主義のもとに対処できる様に準備しておくのが緊急事態条項であり、それが、その必要性の根拠なのである。
緊急事態条項は、下位法にではなく、憲法にこそ必要なのである。(*3)
世界の多くの国々が憲法に書いてある緊急事態条項(*4)を日本だけには認めないとする異常な態度が、本稿で紹介した様な支離滅裂・自家撞着した話になっている原因なのである。
次回は、「7つ」のうちの後段の「4.」からの紹介とする予定である。
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【文末脚注】
(*1):国会で特措法の審議が開始されることになった時点で福島瑞穂がわざわざツィートしている4年前の「緊急事態条項に反対する内容のブログ」
↓
前回論考の文末脚注の(*3)にて紹介しているので、興味あれば参照願いたい。
<前回論考>
2020/03/20投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(ミズポ編2 Part1)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1339.html
(*2):以前の複数の論考で、お役人・公務員は法規定に忠実であることが求められている事を何度も指摘しており、平時を基準に法制化された法規定により、目の前の危機に対処出来ない立場にあるお役人・公務員が、国民を救うことが出来る様に、一時的に平時基準の法規定を緊急対応化する法規定が緊急事態条項なのである。
↓
2020/02/17投稿:
続・リストマネジメント・感染症法・法務省の反対意見
副題:「正しい事をやる」のか「正しいやり方でやる」のか?答えは「正しい事を正しいやり方でやる為の法的未整備状態の解消が必要」である。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1325.html
【ご参考】
2016/07/22投稿:
緊急事態条項の必要性1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-462.html
○断水した町へ到着した自衛隊の給水車に対して「県は災害派遣を自衛隊に要請していない」として給水車を帰してしまった神奈川県職員
2019/10/17投稿:
改憲議論と憲法規定の実現化議論を混同させる記事(後編Final・緊急事態条項)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1271.html
○阪神大震災の時の日銀神戸支店長の神戸市民からの預金引き出し要求に答えた行為が「規定違反」だとして、神戸支店長の行動を批判した東京の官僚達の話
2015/10/21投稿:
【コラム】「人権」の制限は「人権」を守る為の手段
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-237.html
2018/03/23投稿:
官僚さんの職業病
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-888.html
(*3):緊急事態条項は、下位法にではなく、憲法にこそ必要なのである。(*Z)
↓
2016/07/23投稿:
緊急事態条項の必要性2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-463.html
(*4):世界の多くの国々が憲法に書いてある緊急事態条項
↓
2017/06/16投稿:
(資料編)各国の緊急事態条項
副題:我が国と比肩し得るG7主要国の「緊急事態条項」のご紹介。緊急事態条項に悪者レッテルを貼る偏向マスコミ等に騙されることなかれ。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-695.html
2017/07/29投稿:
(資料編)G7主要国以外の緊急事態条項
副題:スイス連邦、スウェーデン王国、韓国、ワイマール共和国、各国憲法の緊急事態条項を資料提示する。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-723.html
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