アメリカ疾病管理予防センターの対策ガイダンスがお手本
- 2020/03/18
- 23:45
アメリカ疾病管理予防センターの対策ガイダンスがお手本
<朝日新聞編の落穂拾い>

副題:「韓国が手本」と書いた朝日だが、全然違う。CDCのガイドラインがお手本である。その中身の概要を紹介するので一読願いたい。
前回論考「新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(朝日新聞編)」は時間切れの為に判断材料の提供レベルとなったことから今回は、その落穂拾いとしてCDCのガイダンス(感染症対策戦略計画書)の中身に関してもう少し述べるものである。
CDCのガイドラインはPDFファイルで108ページあることから文中のリンクとはせずに、文末脚注の(*1)にリンクを貼ってあるので、一次資料としてご覧になるには、そちらを参照いただきたい。
医療や感染症対策は専門外である当方はCDCのガイドラインのうち、専門的記述や「対策の背景・理由に専門知識が必要な部分」などは理解しているとは言えない立場であるのだが、ざっと読んだ上での当方の理解を一言で言えば、CDCのガイドライン感染症拡大の防止を医療分野に留まらず総体で実施し、急激なパンデミック状態の発生によるパニック・医療崩壊を避け、以て、アメリカ人の命・安全を感染症から守る為の指針だと理解した。
専門知識がなくても、書いてある内容が他の分野の事例・対策と論理性に於いて相似形を成していることなどから、対策が合理的だと分かる部分が多々あったことから、このガイドラインを紹介しているものである。
CDCガイトラインの感染症に対応する基本コンセプトは、同書の18ページ目の図表「Figure 1」で示されている概念図にあると理解している。
このガイドランは医療関係機関以外の組織・集団(各コミュニティー=地方自治体・学校・企業・地域社会)が出来ることを示して、そういう動きにより、拡大防止策を実施しなかった場合の感染急拡大と、防止策を実施することで拡大を緩やかなものへとコントロールして医療体制の崩壊を防ぐとのコンセプト図が示されている。
このコンセプトは、例えば豪雨の際の河川の増水が一瞬でも許容量を超すと洪水被害が生じるが、そうならない様に上流のダムで流量の調整を行い、その一瞬を防ぐ動きと同じだと理解した。流れる水の量は変わらなくても、その集中を防ぎ、後ろ倒しにすることで洪水の発生を防ぐものと同様のものだと理解したものである。
「河川の許容量超過防止」&「洪水の発生防止」が、今回の場合は、「感染ピークの平準化・遅滞化」&「医療崩壊による死者の発生の防止」に該当すると理解したものである。
そういうコンセプトを実現化する為に、医療関係機関以外の組織・集団がやるべき事を、このガイダンスは述べている。
同資料冒頭にはExecutive Summary(要約)があるので、それを元に「組織・集団がやるべき事」の紹介を続けるのだが、その「要約」自体が長いので、ポイントだけを抜粋引用する。
同要約の最初に出てくる「Purpose(目的)」には、「・・to help limit the spread of a pandemic, prevent disease and death, lessen the impact on the economy, and keep society functioning.(パンデミック発生の感染源(spread)の連鎖を制限し、発症と病死を防ぎ、経済への影響を減らし、社会が機能し続けるようにすることが求められています(意訳以下同じ))」と書かれている。
これは実に真っ当な目的である。
それに続く「Introduction(前文総則)」には、先ずアメリカ政府の対応目標が書かれている。
↓
The goals of the Federal Government’s response to pandemic influenza are to limit the spread of a pandemic・・・
(連邦政府がパンデミックインフルエンザ(感染症の大規模感染)対策で設定するゴール(対応目標)は、パンデミックの拡大を制限することです。)
その上で、パンデミック(感染症の大規模感染)が発生することでのリスクの内容を以下の様に示している。
↓
・・・even a less severe pandemic would likely result in dramatic increases in the number of hospitalizations and deaths. In addition, an unmitigated severe pandemic would likely overwhelm our nation’s critical healthcare services and impose significant stress on our nation’s critical infrastructure.
(それほど深刻ではないパンデミックであっても、入院と死亡の数が劇的に増加する可能性があります。更に、緩和策を講じられていない深刻なパンデミックはアメリカの重要な医療サービスを圧迫し機能不全に陥らさせ、アメリカの重要インフラに大きなストレスをかける可能性があります。)
このガイドラインに日付を見ると2007年2月となっていることから、21世紀になってから発生したSARSや、その前年に起きた鳥インフルエンザによる少なくない影響からアメリカ疾病管理予防センター(CDC=Center for Disease Control and Prevention)が取りまとめたものと推測される。
そこで示されているアメリカ政府の対応目標とリスク認識は、これまた極めて真っ当なものだと考えている。
この様な記述に続き、「Introduction(前文総則)」には、ちゃんと科学的視点での前提条件が述べられている。内容はガイドラインにとってマイナス要因となるものであるが、実に正直に事実を述べているもので、CDCガイダンス作成者が誠実であると考えるものである。
↓
It is highly unlikely that the most effective tool for mitigating a pandemic (i.e., a well-matched pandemic strain vaccine) will be available when a pandemic begins.
(感染症拡大を軽減するための最も効果的なツール(ワクチンなど)がパンデミックの開始時に利用可能になることはほとんどありません。)
<中略>
・・it is not known if influenza antiviral medications will be effective against a future pandemic strain.
(インフルエンザ抗ウイルス薬が将来のパンデミック株に対して効果があるかどうかは不明です。)
<中略>
Evidence to determine the best strategies for protecting people during a pandemic is very limited.
Retrospective data from past influenza pandemics and the conclusions drawn from those data need to be examined and analyzed within the context of modern society.
(パンデミックが発生した際に人々を保護するための最良の戦略を決定する証拠は非常に限られています。過去のデータ及びデータから導き出された結論は、現在の社会状況に応じて再度検討・分析る必要があります(過去の成功事例・失敗事例をそのまま当てはめることは相応しくない。検討が必要との意味)。)
この様な「不都合な事実」を踏まえている点に、当方はCDCガイダンス作成者の誠実性を見たのである。「不都合な事実」の存在を無視・否定したり、「不都合な事実」を材料に政府の対策を批判・揚げ足取りをする様な「ワイドショーに出演している感染症専門家」とは明らかに違う。
この様な前文に続き、医療関係組織以外の組織・集団が出来る対策が4点書かれている。
「パンデミックが発生したら医療関係組織は頑張る」でもそれだけではなく「感染拡大防止の為に、それ以外の人々もこういう対策を実行することを推奨する」という位置付けでの「対策」である。
その目的は、上述した様な考え方での同書の18ページ目の図表「Figure 1」で示されている基本コンセプト概念図の実現にある。
↓
1. Isolation and treatment (as appropriate) with influenza antiviral medications of all persons with confirmed or probable pandemic influenza.Isolation may occur in the home or healthcare setting, depending on the severity of an individual’s illness and /or the current capacity of the healthcare infrastructure.
(1.パンデミックの発生が確認された際は、感染の拡大は家庭や医療施設で発生する場合がありますので、各人の病気の重症度や医療インフラストラクチャの現在の能力に応じて、発症者・発症可能性がある人の隔離を行う。また、発症者・発症可能性がある人に総てには(必要に応じ適切に)インフルエンザ抗ウイルス薬による治療を行う。)
2. Voluntary home quarantine of members of households with confirmed or probable influenza case(s) and consideration of combining this intervention with the prophylactic use of antiviral medications, providing sufficient quantities of effective medications exist and that a feasible means of distributing them is in place.
(2.感染が確認された場合、またはその可能性高い人の世帯員(同居家族)の自主的な隔離を推奨する。また十分な量の有効な抗ウイルス薬が存在している場合は、それらを配布する等の予防的使用と組み合わせて対応する。)
3. Dismissal of students from school (including public and private schools as well as colleges and universities) and school-based activities and closure of childcare programs, coupled with protecting children and teenagers through social distancing in the community to achieve reductions of out-of-school social contacts and community mixing.
(3. 公・私立学校及び大学を含む学校から生徒を遠ざける。学校での活動、保育プログラムの閉鎖等で接触距離を離し児童・生徒を感染から守る。)
4. Use of social distancing measures to reduce contact between adults in the community and workplace, including, for example, cancellation of large public gathering and alteration of workplace environments and schedules to decrease social density and preserve a healthy workplace to the greatest extent possible without disrupting essential services. Enable institution of workplace leave policies that align incentives and facilitate adherence with the nonpharmaceutical interventions (NPIs) outlined above.
(4.大規模な集会のキャンセル、職場環境およびスケジュールの変更など、社会的距離を縮め(接触機会の最小化)、可能な限り健康な職場を可能な限り維持するなど、社会と職場の成人間の接触を減らす。そのために社会的距離測定の使用不可欠なサービスの中断(営業停止・業務停止)をします。(収入補償等の)インセンティブを調整し、非医薬関係組織による計画に基づく予防実施を促進する「職場休暇ポリシーの制定」を可能にする。)
これら4点のうち、1.及び2.は両方とも「隔離」を以て感染拡大を防止するものである。
そして「隔離」を行う前提が「感染が確認された人」及び「その可能性が高い人」の確定にある。
従い、CDCガイダンスは後段(45ページ)で「早期の検査が必要だ」と述べているのである。
↓
Policies and plans are required to ensure the availability of rapid diagnostic testing to distinguish influenza-like illness due to seasonal influenza strains and other respiratory pathogens from illnesses due to pandemic influenza strains. Accurate ascertainment of pandemic influenza cases is needed early during the course of a pandemic to minimize unnecessary application of mitigation interventions and in later stages of the pandemic to ascertain persisting community transmission.
(季節性インフルエンザやその他呼吸器病原体によるインフルエンザ様疾患とパンデミックインフルエンザ株による疾患を区別するための迅速な診断検査が出来る体制を確立する為の政策と計画が必要。パンデミックインフルエンザ症例の正確な確認はパンデミック発生進行中の早期に必要であり、緩和策の実施を必要最小限に抑え、パンデミックの後期段階での持続的な感染地域監察を可能にする。)
ここの部分だけを基本コンセプトから分離して大騒ぎしているのが韓国での検査実施数だと理解している。
早期の検査実施が必要な理由は、対策を講じる為の「感染者特定」にあり、各個人の安心の為に検査を実施するものではない。
金が産出される可能性があるからと言って、むやみやたらに土を掘り返せばいいというものではなく、金の含有量が多いと目される金鉱脈を掘らないと金は出てこず、たとえ出てきても経費倒れで何等の経済的効果がないのと同様に、むやみやたらに検査をしても、感染拡大防止効果が期待できないことを意味する。
感染拡大リスクがある感染可能性が高い「金鉱脈人物」に対して確認を行い「隔離」で対応するということが上記、1.及び2.では書かれており、その際には「各人の病気の重症度や医療インフラストラクチャの現在の能力に応じて」とか「また十分な量の有効な抗ウイルス薬が存在している場合は」とかの現実に立脚した実現性を踏まえて実行しなさいとの但し書きがついているものである。
「むやみやたらの検査」が望ましくないことが書かれているのである。
だからこそ、ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員は、自身のツイッターで「検査は拡大した方がいい」でも「それは誰もが検査を受ける必要があるという意味ではありません」と述べているのである。(*2)
そうであるにもかかわらず、朝日新聞は「韓国が手本」と書いたのである。
「CDCのガイドラインがお手本」であると当方は考えるが、ここで紹介した事を読んだ上で、各自はそれぞれがご判断いただきたい。
4点のうち、後段の3.及び4.は、我国で既に実施している対策なので多言を要しないだろう。
むしろ、これら対策に対して、何等の根拠なく否定的な特定野党議員の「国会質疑」での発言を思い出していただきたい。(*3)
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):CDCが発表しているガイドライン
Interim Pre-pandemic Planning Guidance:
Community Strategy for Pandemic Influenza
Mitigation in the United States—
Early, Targeted, Layered Use of Nonpharmaceutical Interventions
February2007
<当方による意訳>
パンデミック発生防止計画ガイダンス(暫定版)
地域社会の為のインフルエンザパンデミック防止戦略
-アメリカでの感染拡大の緩和に向けて
早期に、対象を定め、区分階層化して、医療関係機関以外の組織・集団が出来ること
2007年2月
↓
<リンク先>
cdc_11425_DS1.pdf
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwiyj7_jhp_oAhXRZt4KHVTXC5sQFjAAegQIBBAB&url=https%3A%2F%2Fstacks.cdc.gov%2Fview%2Fcdc%2F11425%2Fcdc_11425_DS1.pdf%3F&usg=AOvVaw0PAIJ8PltVUXFoAughHbKs
※スマホの方は注意:PDFファイル108ページ
(*2):ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員のツィート
Jennifer Nuzzo, DrPH @JenniferNuzzo
https://twitter.com/JenniferNuzzo/status/1239007147180068864
Yes, we must increase COVID19 testing capacity. But that doesn't mean everyone needs to be tested. Even if there were enough tests, there aren't enough clinicians to test everyone. If you are sick and don't need to be hospitalized, stay home.
(当方による和訳:そうです。COVID19の検査数実施可能容量を増大させる必要はあります。しかし、それは誰もが検査を受ける必要があるという意味ではありません。仮に充分な検査機材があったとしても、全員を検査するのに必要な医療従事者(臨床検査技師や臨床医)はいません。もし貴方に熱があったとしても、病院に入院するほどではないのなら、家にいてください。)
↓
<ワシントンポスト紙の記事を引用>
見出し:◆If you feel sick and are worried about the coronavirus, call your doctor. Don’t rush to the ER.
(当方による和訳:病気かな?と感じてコロナウイルスが心配な場合は、掛かり付けのお医者さん(ホームドクター)に連絡してください。ER(コロナ対応の救急病院)に押し掛けることをしないでください。)
記事冒頭○Testing is still limited, and most cases are relatively mild.
((当方による和訳:検査容量は未だ限定的(全員は無理)であり、ほとんどの場合は比較的軽度なのです。)WP記事は以下略
18:54 - 2020年3月14日(アメリカ西時間)
10:54 - 2020年3月15日(日本時間)当方のタイムラインで表示される時間
<引用終わり>
【ご参考】
2020/03/16投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(朝日新聞編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1337.html
(*3):CDCガイドラインの対策4点のうちの後段の3.及び4.に対して、何等の根拠なく批判する特定野党議員の「国会質疑」での発言を思い出していただきたい。
2020/03/08投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(政治家・政党編)
副題:政権批判だけが目的。国民の命などそっちのけな特定野党。その論法のチェックポイントを書いてみた。
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1333.html
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<朝日新聞編の落穂拾い>


副題:「韓国が手本」と書いた朝日だが、全然違う。CDCのガイドラインがお手本である。その中身の概要を紹介するので一読願いたい。
前回論考「新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(朝日新聞編)」は時間切れの為に判断材料の提供レベルとなったことから今回は、その落穂拾いとしてCDCのガイダンス(感染症対策戦略計画書)の中身に関してもう少し述べるものである。
CDCのガイドラインはPDFファイルで108ページあることから文中のリンクとはせずに、文末脚注の(*1)にリンクを貼ってあるので、一次資料としてご覧になるには、そちらを参照いただきたい。
医療や感染症対策は専門外である当方はCDCのガイドラインのうち、専門的記述や「対策の背景・理由に専門知識が必要な部分」などは理解しているとは言えない立場であるのだが、ざっと読んだ上での当方の理解を一言で言えば、CDCのガイドライン感染症拡大の防止を医療分野に留まらず総体で実施し、急激なパンデミック状態の発生によるパニック・医療崩壊を避け、以て、アメリカ人の命・安全を感染症から守る為の指針だと理解した。
専門知識がなくても、書いてある内容が他の分野の事例・対策と論理性に於いて相似形を成していることなどから、対策が合理的だと分かる部分が多々あったことから、このガイドラインを紹介しているものである。
CDCガイトラインの感染症に対応する基本コンセプトは、同書の18ページ目の図表「Figure 1」で示されている概念図にあると理解している。
このガイドランは医療関係機関以外の組織・集団(各コミュニティー=地方自治体・学校・企業・地域社会)が出来ることを示して、そういう動きにより、拡大防止策を実施しなかった場合の感染急拡大と、防止策を実施することで拡大を緩やかなものへとコントロールして医療体制の崩壊を防ぐとのコンセプト図が示されている。
このコンセプトは、例えば豪雨の際の河川の増水が一瞬でも許容量を超すと洪水被害が生じるが、そうならない様に上流のダムで流量の調整を行い、その一瞬を防ぐ動きと同じだと理解した。流れる水の量は変わらなくても、その集中を防ぎ、後ろ倒しにすることで洪水の発生を防ぐものと同様のものだと理解したものである。
「河川の許容量超過防止」&「洪水の発生防止」が、今回の場合は、「感染ピークの平準化・遅滞化」&「医療崩壊による死者の発生の防止」に該当すると理解したものである。
そういうコンセプトを実現化する為に、医療関係機関以外の組織・集団がやるべき事を、このガイダンスは述べている。
同資料冒頭にはExecutive Summary(要約)があるので、それを元に「組織・集団がやるべき事」の紹介を続けるのだが、その「要約」自体が長いので、ポイントだけを抜粋引用する。
同要約の最初に出てくる「Purpose(目的)」には、「・・to help limit the spread of a pandemic, prevent disease and death, lessen the impact on the economy, and keep society functioning.(パンデミック発生の感染源(spread)の連鎖を制限し、発症と病死を防ぎ、経済への影響を減らし、社会が機能し続けるようにすることが求められています(意訳以下同じ))」と書かれている。
これは実に真っ当な目的である。
それに続く「Introduction(前文総則)」には、先ずアメリカ政府の対応目標が書かれている。
↓
The goals of the Federal Government’s response to pandemic influenza are to limit the spread of a pandemic・・・
(連邦政府がパンデミックインフルエンザ(感染症の大規模感染)対策で設定するゴール(対応目標)は、パンデミックの拡大を制限することです。)
その上で、パンデミック(感染症の大規模感染)が発生することでのリスクの内容を以下の様に示している。
↓
・・・even a less severe pandemic would likely result in dramatic increases in the number of hospitalizations and deaths. In addition, an unmitigated severe pandemic would likely overwhelm our nation’s critical healthcare services and impose significant stress on our nation’s critical infrastructure.
(それほど深刻ではないパンデミックであっても、入院と死亡の数が劇的に増加する可能性があります。更に、緩和策を講じられていない深刻なパンデミックはアメリカの重要な医療サービスを圧迫し機能不全に陥らさせ、アメリカの重要インフラに大きなストレスをかける可能性があります。)
このガイドラインに日付を見ると2007年2月となっていることから、21世紀になってから発生したSARSや、その前年に起きた鳥インフルエンザによる少なくない影響からアメリカ疾病管理予防センター(CDC=Center for Disease Control and Prevention)が取りまとめたものと推測される。
そこで示されているアメリカ政府の対応目標とリスク認識は、これまた極めて真っ当なものだと考えている。
この様な記述に続き、「Introduction(前文総則)」には、ちゃんと科学的視点での前提条件が述べられている。内容はガイドラインにとってマイナス要因となるものであるが、実に正直に事実を述べているもので、CDCガイダンス作成者が誠実であると考えるものである。
↓
It is highly unlikely that the most effective tool for mitigating a pandemic (i.e., a well-matched pandemic strain vaccine) will be available when a pandemic begins.
(感染症拡大を軽減するための最も効果的なツール(ワクチンなど)がパンデミックの開始時に利用可能になることはほとんどありません。)
<中略>
・・it is not known if influenza antiviral medications will be effective against a future pandemic strain.
(インフルエンザ抗ウイルス薬が将来のパンデミック株に対して効果があるかどうかは不明です。)
<中略>
Evidence to determine the best strategies for protecting people during a pandemic is very limited.
Retrospective data from past influenza pandemics and the conclusions drawn from those data need to be examined and analyzed within the context of modern society.
(パンデミックが発生した際に人々を保護するための最良の戦略を決定する証拠は非常に限られています。過去のデータ及びデータから導き出された結論は、現在の社会状況に応じて再度検討・分析る必要があります(過去の成功事例・失敗事例をそのまま当てはめることは相応しくない。検討が必要との意味)。)
この様な「不都合な事実」を踏まえている点に、当方はCDCガイダンス作成者の誠実性を見たのである。「不都合な事実」の存在を無視・否定したり、「不都合な事実」を材料に政府の対策を批判・揚げ足取りをする様な「ワイドショーに出演している感染症専門家」とは明らかに違う。
この様な前文に続き、医療関係組織以外の組織・集団が出来る対策が4点書かれている。
「パンデミックが発生したら医療関係組織は頑張る」でもそれだけではなく「感染拡大防止の為に、それ以外の人々もこういう対策を実行することを推奨する」という位置付けでの「対策」である。
その目的は、上述した様な考え方での同書の18ページ目の図表「Figure 1」で示されている基本コンセプト概念図の実現にある。
↓
1. Isolation and treatment (as appropriate) with influenza antiviral medications of all persons with confirmed or probable pandemic influenza.Isolation may occur in the home or healthcare setting, depending on the severity of an individual’s illness and /or the current capacity of the healthcare infrastructure.
(1.パンデミックの発生が確認された際は、感染の拡大は家庭や医療施設で発生する場合がありますので、各人の病気の重症度や医療インフラストラクチャの現在の能力に応じて、発症者・発症可能性がある人の隔離を行う。また、発症者・発症可能性がある人に総てには(必要に応じ適切に)インフルエンザ抗ウイルス薬による治療を行う。)
2. Voluntary home quarantine of members of households with confirmed or probable influenza case(s) and consideration of combining this intervention with the prophylactic use of antiviral medications, providing sufficient quantities of effective medications exist and that a feasible means of distributing them is in place.
(2.感染が確認された場合、またはその可能性高い人の世帯員(同居家族)の自主的な隔離を推奨する。また十分な量の有効な抗ウイルス薬が存在している場合は、それらを配布する等の予防的使用と組み合わせて対応する。)
3. Dismissal of students from school (including public and private schools as well as colleges and universities) and school-based activities and closure of childcare programs, coupled with protecting children and teenagers through social distancing in the community to achieve reductions of out-of-school social contacts and community mixing.
(3. 公・私立学校及び大学を含む学校から生徒を遠ざける。学校での活動、保育プログラムの閉鎖等で接触距離を離し児童・生徒を感染から守る。)
4. Use of social distancing measures to reduce contact between adults in the community and workplace, including, for example, cancellation of large public gathering and alteration of workplace environments and schedules to decrease social density and preserve a healthy workplace to the greatest extent possible without disrupting essential services. Enable institution of workplace leave policies that align incentives and facilitate adherence with the nonpharmaceutical interventions (NPIs) outlined above.
(4.大規模な集会のキャンセル、職場環境およびスケジュールの変更など、社会的距離を縮め(接触機会の最小化)、可能な限り健康な職場を可能な限り維持するなど、社会と職場の成人間の接触を減らす。そのために社会的距離測定の使用不可欠なサービスの中断(営業停止・業務停止)をします。(収入補償等の)インセンティブを調整し、非医薬関係組織による計画に基づく予防実施を促進する「職場休暇ポリシーの制定」を可能にする。)
これら4点のうち、1.及び2.は両方とも「隔離」を以て感染拡大を防止するものである。
そして「隔離」を行う前提が「感染が確認された人」及び「その可能性が高い人」の確定にある。
従い、CDCガイダンスは後段(45ページ)で「早期の検査が必要だ」と述べているのである。
↓
Policies and plans are required to ensure the availability of rapid diagnostic testing to distinguish influenza-like illness due to seasonal influenza strains and other respiratory pathogens from illnesses due to pandemic influenza strains. Accurate ascertainment of pandemic influenza cases is needed early during the course of a pandemic to minimize unnecessary application of mitigation interventions and in later stages of the pandemic to ascertain persisting community transmission.
(季節性インフルエンザやその他呼吸器病原体によるインフルエンザ様疾患とパンデミックインフルエンザ株による疾患を区別するための迅速な診断検査が出来る体制を確立する為の政策と計画が必要。パンデミックインフルエンザ症例の正確な確認はパンデミック発生進行中の早期に必要であり、緩和策の実施を必要最小限に抑え、パンデミックの後期段階での持続的な感染地域監察を可能にする。)
ここの部分だけを基本コンセプトから分離して大騒ぎしているのが韓国での検査実施数だと理解している。
早期の検査実施が必要な理由は、対策を講じる為の「感染者特定」にあり、各個人の安心の為に検査を実施するものではない。
金が産出される可能性があるからと言って、むやみやたらに土を掘り返せばいいというものではなく、金の含有量が多いと目される金鉱脈を掘らないと金は出てこず、たとえ出てきても経費倒れで何等の経済的効果がないのと同様に、むやみやたらに検査をしても、感染拡大防止効果が期待できないことを意味する。
感染拡大リスクがある感染可能性が高い「金鉱脈人物」に対して確認を行い「隔離」で対応するということが上記、1.及び2.では書かれており、その際には「各人の病気の重症度や医療インフラストラクチャの現在の能力に応じて」とか「また十分な量の有効な抗ウイルス薬が存在している場合は」とかの現実に立脚した実現性を踏まえて実行しなさいとの但し書きがついているものである。
「むやみやたらの検査」が望ましくないことが書かれているのである。
だからこそ、ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員は、自身のツイッターで「検査は拡大した方がいい」でも「それは誰もが検査を受ける必要があるという意味ではありません」と述べているのである。(*2)
そうであるにもかかわらず、朝日新聞は「韓国が手本」と書いたのである。
「CDCのガイドラインがお手本」であると当方は考えるが、ここで紹介した事を読んだ上で、各自はそれぞれがご判断いただきたい。
4点のうち、後段の3.及び4.は、我国で既に実施している対策なので多言を要しないだろう。
むしろ、これら対策に対して、何等の根拠なく否定的な特定野党議員の「国会質疑」での発言を思い出していただきたい。(*3)
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):CDCが発表しているガイドライン
Interim Pre-pandemic Planning Guidance:
Community Strategy for Pandemic Influenza
Mitigation in the United States—
Early, Targeted, Layered Use of Nonpharmaceutical Interventions
February2007
<当方による意訳>
パンデミック発生防止計画ガイダンス(暫定版)
地域社会の為のインフルエンザパンデミック防止戦略
-アメリカでの感染拡大の緩和に向けて
早期に、対象を定め、区分階層化して、医療関係機関以外の組織・集団が出来ること
2007年2月
↓
<リンク先>
cdc_11425_DS1.pdf
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwiyj7_jhp_oAhXRZt4KHVTXC5sQFjAAegQIBBAB&url=https%3A%2F%2Fstacks.cdc.gov%2Fview%2Fcdc%2F11425%2Fcdc_11425_DS1.pdf%3F&usg=AOvVaw0PAIJ8PltVUXFoAughHbKs
※スマホの方は注意:PDFファイル108ページ
(*2):ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員のツィート
Jennifer Nuzzo, DrPH @JenniferNuzzo
https://twitter.com/JenniferNuzzo/status/1239007147180068864
Yes, we must increase COVID19 testing capacity. But that doesn't mean everyone needs to be tested. Even if there were enough tests, there aren't enough clinicians to test everyone. If you are sick and don't need to be hospitalized, stay home.
(当方による和訳:そうです。COVID19の検査数実施可能容量を増大させる必要はあります。しかし、それは誰もが検査を受ける必要があるという意味ではありません。仮に充分な検査機材があったとしても、全員を検査するのに必要な医療従事者(臨床検査技師や臨床医)はいません。もし貴方に熱があったとしても、病院に入院するほどではないのなら、家にいてください。)
↓
<ワシントンポスト紙の記事を引用>
見出し:◆If you feel sick and are worried about the coronavirus, call your doctor. Don’t rush to the ER.
(当方による和訳:病気かな?と感じてコロナウイルスが心配な場合は、掛かり付けのお医者さん(ホームドクター)に連絡してください。ER(コロナ対応の救急病院)に押し掛けることをしないでください。)
記事冒頭○Testing is still limited, and most cases are relatively mild.
((当方による和訳:検査容量は未だ限定的(全員は無理)であり、ほとんどの場合は比較的軽度なのです。)WP記事は以下略
18:54 - 2020年3月14日(アメリカ西時間)
10:54 - 2020年3月15日(日本時間)当方のタイムラインで表示される時間
<引用終わり>
【ご参考】
2020/03/16投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(朝日新聞編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1337.html
(*3):CDCガイドラインの対策4点のうちの後段の3.及び4.に対して、何等の根拠なく批判する特定野党議員の「国会質疑」での発言を思い出していただきたい。
2020/03/08投稿:
新型コロナウイルス感染症・国民の安全を脇に置く人々(政治家・政党編)
副題:政権批判だけが目的。国民の命などそっちのけな特定野党。その論法のチェックポイントを書いてみた。
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