韓国紙・中央日報の見出し詐欺「イージス・アショア」
- 2019/09/21
- 22:07
韓国紙・中央日報の見出し詐欺「イージス・アショア」

副題:アメリカでの技術開発の話と我が国のBMD防衛の話を混同させ、あたかも日本のイージス・アショアが北朝鮮攻撃用装備だとのデマを流す韓国紙記者
先ずは、当該記事(*1)の「見出し」を紹介する。
↓
◆米国防次官「日本配備のイージス・アショアに北朝鮮原点打撃能力」
如何であろう。この見出しからは、現在、我が国全土を防御カバーする為に、2か所に配備を計画しているイージス・アショアから「北朝鮮を攻撃する」と読めてしまうであろう。
しかし、実際は、そんな事はない。
イージス・アショアは、日本列島に向かって飛んでくる弾道ミサイルを迎撃して、日本列島に住んでいる日本人の命を守るための装備であり、「北朝鮮を攻撃する」ものではない。
また、韓国紙・中央日報の記事を読んでも、「北朝鮮を攻撃する」との客観的論拠は何も登場せず、記事を書いた記者の脳内妄想しか書いてないのである。
普通の一般的日本人は、その必要性が薄いので軍事知識に疎く、この様な見出しを読んで誤解することになろうと考えたので、この見出しの記事がフェイクであることを説明することにした。
尚、記事にある「北朝鮮原点打撃能力」とは、日本語では「策源地攻撃能力」のことである。
「策源地攻撃能力」の「策源地」とは、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としている時点でのミサイル発射基地のことである。中央日報ではこれを「北朝鮮原点」と表記しているものである。
我が国の防衛方針は「専守防衛」であるが、これに対する後付が行われており「敵が攻撃してこない段階では防衛活動ができない」なる誤解がある。
「日本人の誰かが死ななければ防衛活動ができない」などというバカな話がそれである。(*2)
実際は、昭和31年(1956年)2月29日の国会答弁で、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としているのなら、その策源地に対してミサイルを発射させない為の攻撃は合憲であると示されているのである。(*3)
これは「自衛的先制攻撃」(*4)であり、現行憲法に於いても合憲である。
これらに関しては、以前の論考を参照いただきたいのだが、法的にOKであっても、それを実行する装備を現状、我が国は保有していない。
これは、言葉を変えれば、我々日本人の命、平和・安寧を確保する手段・装備がないというもので、我々日本人からすれば自身が負うリスクである。
現状、我が国はイージス艦での弾道ミサイル防衛(BMD)をしているのだが、飛んで来る弾道ミサイルを迎え撃つだけである。迎撃率は高いのだが100%ではないとの問題がある。
その様なリスクを低減する為に、小野寺五典議員からは国民を守る為の提言が出されているが、策源地無力化にイージス・アショアを用いるものではない。(*5)
当たり前である。当該中央日報の記事にも書いてある通り「現在アメリカで開発実験中」なのであり、その開発が何時完成するのか未定な状態では、リスク対策の提言にならないからである。
中央日報記事の中身のカラクリは、別々の事項を勝手にマジェマジェしてくっつけて、あたかも日本がイージス・アショで朝鮮半島を攻撃するが如きデマ結論へと誘導するものである。
マジェマジェされた記事から、マジェマジェ前の素材をより分けると以下の通りとなる。
↓
①:米議会での国防次官の発言「イージス・アショアへの策源地攻撃能力付与を開発中」
・「ミサイルの脅威を防御すると同時に、攻撃者を扱うことが非常に重要だ」
・「攻撃と防御を統合する作業を推進している」
・「イージス・アショアの弾道およびクルーズミサイル防衛と攻撃作戦の統合のために性能のアップグレードをしている」
・「脅威によっては攻撃と防御を統合してこそ次の段階に対処するうえで効率的であるため」
②:議会発言「イージス・アショアのミサイル防衛の欧州での事例紹介」
・ルード次官は具体的な事例として2016年に北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアに配備したイージス・アショアを挙げた。
・「ポーランドにも年内にイージス・アショアを追加で配備する予定」
③:日本のBMDはイージス艦で対応中。イージス・アショアを導入予定
・「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」
これらをどの様にマジェマジェしているのかと言うと、①「攻撃能力付与開発」の話を、②「欧州でのイージス・アショア事例」の中に入れ込んでいることが1つ。
そして、②「欧州でのイージス・アショア事例」の話の中に我が国のイージス艦でのBMD
運用を入れ込んでいることが2つ目だ。
同じ段落中の記載で、ルーマニアとポーランドの話では「イージス・アショア」と明示されているのだが、③の我が国の話には「イージス・アショア」とも文言は登場しない。
そういう別の話をマジェマジェしているのである。
別の話なのだが、「同じ話」にしたいが為に、記事では以下の様に発言引用ではない記載をしている。
↓
<抜粋引用開始>
「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」と述べた。日本が2023年までに秋田県と山口県にイージス・アショア体系を配備する計画を持っていると説明しながらだ。
<引用終わり>
↓
国防次官が本当に発言しているのなら素直に発言引用の形で記事にすればよいのに、この様な書き方をしているのは、実際は「そんなことは言っていない」からであろう。
韓国紙の記事では、よくあることなので、その様に推察する次第である。
この記事は「日本が朝鮮半島を攻撃するぅ~」との記者の妄想を記事の結論として、その結論に合わせて切り貼りマジェマジェをしているものである。
その事は、米国での「攻撃能力付与開発」と日本のイージス・アショアとを結び付けている部分の記載を見れば明らかである。
何等の客観的根拠は書かれておらず、記者の感想・妄想しか書いてないのである。
↓
冒頭の言い切り部分
<抜粋引用開始>
特に日本が2023年に導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を攻撃性能を加えるために改良しているとも公開した。
<引用終わり>
↓
事実無根の単なる言い切りである。
何かあるのかと、それ以降の記事を注意深く読んでも、何等の客観的根拠は書かれておらず、雰囲気・イメージだけであった。
ミサイル防衛の話を「イージス・アショアで朝鮮半島を攻撃する話」へと誘導する印象付けしかしていないのである。
仮に、我が国が導入を予定しているイージス・アショアが「朝鮮半島を攻撃する話」となる場合、いったい、どの様なミサイルを用いるのであろう?
一般の日本人は、その必要性が薄いので軍事知識がないので、ちょっと説明すると、現在、我が国が運用しているイージス艦が搭載しているミサイルは、弾道ミサイルを宇宙空間で迎撃するSM-3と、大気中を飛行する敵対的航空機や巡航ミサイルを迎撃するSM-2である。
アメリカではSM-2の後継としてSM-6の導入が進んでおり、やがては我が国自衛隊もSM-6を導入するであろうが、SM-2は射程約160km、SM-6は約240kmだと言われており、秋田から北朝鮮の日本海側の弾道ミサイル発射基地の舞水端里までの距離約1,000kmを攻撃出来ないのである。
また、弾道ミサイルを宇宙空間で迎撃するSM-3は高高度迎撃に特化したミサイルであり、地上目標を攻撃するものではない。宇宙空間で超高速移動をしている弾道ミサイルを迎撃する為に高度な技術が用いられており、とても高価である。
地上攻撃に用いても地上の目標を探知するのは宇宙空間用のセンサーでは難しく、また、地上目標を破壊する弾頭にはなっておらず、まったく実効性がない。
叩いたゴキブリを捨てる時に1万円札を用いてゴミ箱に捨てる様なもので、包みにくいし、「紙としての使用目的がまったく違う」ので、実にもったいなく、あり得ない話なのである。
仮に、我が国が弾道ミシルを発射しようとしている北朝鮮のミサイル基地に自衛的先制攻撃を行う事態になった場合は、小野寺五典議員の提言通り、航空機に射程数百キロの長距離対地ミサイルを搭載して行うころになろう。それが最も合理的な選択だからである。
地上に固定されたイージス・アショアから射程1,000km以上のミサイルを発射するとの選択肢はない。
もし仮に、我が国が地上発射型の射程1,000km超のミサイルを新たに装備したとしたら、それを、わざわざイージス・アショアにVLSに装備するのではなく、トラック等に積載して運用することになろう。イージス・アショア導入の目的は、弾道ミサイル防衛にあり、宇宙空間を飛行して我が国領土に向かうミサイルへの対処の為の高価な装備に、別目的のいミサイルを装備する合理性はない。
米議会での話は、アメリカ軍がルーマニア・ポーランドという外国に於いて運用する際に一か所に集中することの合理性からの判断であり、我が国が自国領土内で運用する場合とは前提条件が違う話である。
そういう軍事的前提条件の一切を無視してマジェマジェしての印象操作をしているのが韓国紙の記事なのである。今回は、こんな虚偽記事に惑わされることがない様にと解説したものである。
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【文末脚注】
(*1):韓国紙・中央日報の見出し詐欺
Yahooニュース・中央日報日本語版 9/18(水) 17:09配信
見出し:◆米国防次官「日本配備のイージス・アショアに北朝鮮原点打撃能力」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190918-00000051-cnippou-kr&pos=5
記事:○米国のジョン・ルード政策担当国防次官が17日(現地時間)、北朝鮮の新型ミサイル開発に関連し、「ミサイル防衛と同時に発射原点を打撃できるよう攻撃・防御作戦の統合を進めている」と明らかにした。特に日本が2023年に導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を攻撃性能を加えるために改良しているとも公開した。防御用という従来の説明とは異なる発言であり、北朝鮮のほか中国などの反発が予想される。先月、米国の新型中距離クルーズミサイル試験発射当時、イージス・アショアと同じ発射台を使用し、攻撃用互換の可能性が提起されたりもした。
○ルード次官はこの日、米議会で開かれたミサイル防衛擁護連盟(MDAA)主催の行事で、「北朝鮮、中国、ロシア、イランのミサイルの脅威を防御すると同時に、攻撃者(attacker)を扱うことが非常に重要だ」とし「攻撃と防御を統合する作業を推進している」と述べた。また「攻撃・防御性能の統合は、敵がミサイルを発射する前に原点を把握して脅威を解消する選択肢も提供する」と説明した。ルード次官は「潜在的敵国がより速く、射程距離が長く、より正確な攻撃ミサイルを開発し、海外の米軍と同盟国に対するミサイル脅威の種類と規模が拡大している」とし「進化する挑戦に対抗し、我々も包括的な接近をする必要がある」とし、攻撃・防御体系の統合を強調した。
○ルード次官は具体的な事例として2016年に北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアに配備したイージス・アショアを挙げた。ルード次官は「イージス・アショアの弾道およびクルーズミサイル防衛と攻撃作戦の統合のために性能のアップグレードをしている」とし「脅威によっては攻撃と防御を統合してこそ次の段階に対処するうえで効率的であるため」と説明した。また「ポーランドにも年内にイージス・アショアを追加で配備する予定」とし「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」と述べた。日本が2023年までに秋田県と山口県にイージス・アショア体系を配備する計画を持っていると説明しながらだ。
○米国防総省は先月18日、カリフォルニア州サン・ニコラス島で実施した新型地対地クルーズミサイルの試験発射にSM3、SM6などイージス・アショア迎撃ミサイルに使う移動式発射台MK41を使用した。当時、国防総省の報道官は「発射台は同じだが、ルーマニアとポーランドに建設中のイージス・アショアは純粋な防御用であり、トマホークミサイルを発射できるよう攻撃用として設定されていない」と釈明した。しかし1カ月ぶりにルード次官が攻撃互換が可能になるよう改良作業を進めていると確認したのだ。
○またルード次官は、「北朝鮮の固体燃料ミサイルは事前探知が難しく、攻撃の側面でこれをどう解決できるのか」という質問に対し、「固体燃料推進ミサイルも我々の探知能力範囲内にある」とし「例えば米国のイージス艦38隻はミサイル防衛と同時に搭載された多くの攻撃武器も再設定なく使えるよう統合されている」と紹介した。また「(イージス艦の)探知能力は飛んでくるミサイルがどこで発射されたかという原点を知らせ、ミサイルを迎撃すると同時に原点を打撃する能力も提供する」と述べた。さらに「航空および地上探知レーダーと情報を共有できるネットワークは攻撃・防御統合状況で理想的」とも話した。陸・海・空ミサイル探知体系の統合も推進するということだ。
○ルード次官は韓国に配備されたTHADD(高高度防衛ミサイル)とパトリオット(PAC)体系についても「作戦互換性と範囲拡大など戦力強化のためにシステム統合作業を進めている」とも語った。
<引用終わり>
(*2):「日本人の誰かが死ななければ防衛活動ができない」などというバカな話
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
※「侵攻してきた敵を自国の領域において」などと「日本人が住む領域または日本人がいる可能性が高い領域」にまで敵軍事力が侵攻してきて、初めて「自衛」出来るとする歪んだ「専守防衛」などは「先ずは日本人の誰かが生贄となれ」と言うバカな話になっているのである。
(*3):昭和31年(1956年)2月29日の国会答弁で、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としているのなら、その策源地に対してミサイルを発射させない為の攻撃は合憲であると示されているのである。
↓
2016/02/29投稿:
【コラム】1956年2月29日国会答弁
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-347.html
昭和31年2月29日・第24回国会内閣委員会・鳩山一郎総理大臣答弁(代読)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/024/0388/02402290388015a.html
<引用開始>
わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。(後略)
<引用終わり>
(*4):「自衛的先制攻撃」
2017/03/21投稿:
先制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
【ご参考】
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
(*5):小野寺五典議員からは国民を守る為の提言が出されているが、策源地無力化にイージス・アショアを用いるものではない。
2017/07/01投稿:
「敵基地攻撃能力」の提言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-706.html
<その後>
2017/12/06投稿:
敵基地攻撃能力・長射程ミサイル導入
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-819.html
【ご参考】
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
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副題:アメリカでの技術開発の話と我が国のBMD防衛の話を混同させ、あたかも日本のイージス・アショアが北朝鮮攻撃用装備だとのデマを流す韓国紙記者
先ずは、当該記事(*1)の「見出し」を紹介する。
↓
◆米国防次官「日本配備のイージス・アショアに北朝鮮原点打撃能力」
如何であろう。この見出しからは、現在、我が国全土を防御カバーする為に、2か所に配備を計画しているイージス・アショアから「北朝鮮を攻撃する」と読めてしまうであろう。
しかし、実際は、そんな事はない。
イージス・アショアは、日本列島に向かって飛んでくる弾道ミサイルを迎撃して、日本列島に住んでいる日本人の命を守るための装備であり、「北朝鮮を攻撃する」ものではない。
また、韓国紙・中央日報の記事を読んでも、「北朝鮮を攻撃する」との客観的論拠は何も登場せず、記事を書いた記者の脳内妄想しか書いてないのである。
普通の一般的日本人は、その必要性が薄いので軍事知識に疎く、この様な見出しを読んで誤解することになろうと考えたので、この見出しの記事がフェイクであることを説明することにした。
尚、記事にある「北朝鮮原点打撃能力」とは、日本語では「策源地攻撃能力」のことである。
「策源地攻撃能力」の「策源地」とは、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としている時点でのミサイル発射基地のことである。中央日報ではこれを「北朝鮮原点」と表記しているものである。
我が国の防衛方針は「専守防衛」であるが、これに対する後付が行われており「敵が攻撃してこない段階では防衛活動ができない」なる誤解がある。
「日本人の誰かが死ななければ防衛活動ができない」などというバカな話がそれである。(*2)
実際は、昭和31年(1956年)2月29日の国会答弁で、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としているのなら、その策源地に対してミサイルを発射させない為の攻撃は合憲であると示されているのである。(*3)
これは「自衛的先制攻撃」(*4)であり、現行憲法に於いても合憲である。
これらに関しては、以前の論考を参照いただきたいのだが、法的にOKであっても、それを実行する装備を現状、我が国は保有していない。
これは、言葉を変えれば、我々日本人の命、平和・安寧を確保する手段・装備がないというもので、我々日本人からすれば自身が負うリスクである。
現状、我が国はイージス艦での弾道ミサイル防衛(BMD)をしているのだが、飛んで来る弾道ミサイルを迎え撃つだけである。迎撃率は高いのだが100%ではないとの問題がある。
その様なリスクを低減する為に、小野寺五典議員からは国民を守る為の提言が出されているが、策源地無力化にイージス・アショアを用いるものではない。(*5)
当たり前である。当該中央日報の記事にも書いてある通り「現在アメリカで開発実験中」なのであり、その開発が何時完成するのか未定な状態では、リスク対策の提言にならないからである。
中央日報記事の中身のカラクリは、別々の事項を勝手にマジェマジェしてくっつけて、あたかも日本がイージス・アショで朝鮮半島を攻撃するが如きデマ結論へと誘導するものである。
マジェマジェされた記事から、マジェマジェ前の素材をより分けると以下の通りとなる。
↓
①:米議会での国防次官の発言「イージス・アショアへの策源地攻撃能力付与を開発中」
・「ミサイルの脅威を防御すると同時に、攻撃者を扱うことが非常に重要だ」
・「攻撃と防御を統合する作業を推進している」
・「イージス・アショアの弾道およびクルーズミサイル防衛と攻撃作戦の統合のために性能のアップグレードをしている」
・「脅威によっては攻撃と防御を統合してこそ次の段階に対処するうえで効率的であるため」
②:議会発言「イージス・アショアのミサイル防衛の欧州での事例紹介」
・ルード次官は具体的な事例として2016年に北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアに配備したイージス・アショアを挙げた。
・「ポーランドにも年内にイージス・アショアを追加で配備する予定」
③:日本のBMDはイージス艦で対応中。イージス・アショアを導入予定
・「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」
これらをどの様にマジェマジェしているのかと言うと、①「攻撃能力付与開発」の話を、②「欧州でのイージス・アショア事例」の中に入れ込んでいることが1つ。
そして、②「欧州でのイージス・アショア事例」の話の中に我が国のイージス艦でのBMD
運用を入れ込んでいることが2つ目だ。
同じ段落中の記載で、ルーマニアとポーランドの話では「イージス・アショア」と明示されているのだが、③の我が国の話には「イージス・アショア」とも文言は登場しない。
そういう別の話をマジェマジェしているのである。
別の話なのだが、「同じ話」にしたいが為に、記事では以下の様に発言引用ではない記載をしている。
↓
<抜粋引用開始>
「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」と述べた。日本が2023年までに秋田県と山口県にイージス・アショア体系を配備する計画を持っていると説明しながらだ。
<引用終わり>
↓
国防次官が本当に発言しているのなら素直に発言引用の形で記事にすればよいのに、この様な書き方をしているのは、実際は「そんなことは言っていない」からであろう。
韓国紙の記事では、よくあることなので、その様に推察する次第である。
この記事は「日本が朝鮮半島を攻撃するぅ~」との記者の妄想を記事の結論として、その結論に合わせて切り貼りマジェマジェをしているものである。
その事は、米国での「攻撃能力付与開発」と日本のイージス・アショアとを結び付けている部分の記載を見れば明らかである。
何等の客観的根拠は書かれておらず、記者の感想・妄想しか書いてないのである。
↓
冒頭の言い切り部分
<抜粋引用開始>
特に日本が2023年に導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を攻撃性能を加えるために改良しているとも公開した。
<引用終わり>
↓
事実無根の単なる言い切りである。
何かあるのかと、それ以降の記事を注意深く読んでも、何等の客観的根拠は書かれておらず、雰囲気・イメージだけであった。
ミサイル防衛の話を「イージス・アショアで朝鮮半島を攻撃する話」へと誘導する印象付けしかしていないのである。
仮に、我が国が導入を予定しているイージス・アショアが「朝鮮半島を攻撃する話」となる場合、いったい、どの様なミサイルを用いるのであろう?
一般の日本人は、その必要性が薄いので軍事知識がないので、ちょっと説明すると、現在、我が国が運用しているイージス艦が搭載しているミサイルは、弾道ミサイルを宇宙空間で迎撃するSM-3と、大気中を飛行する敵対的航空機や巡航ミサイルを迎撃するSM-2である。
アメリカではSM-2の後継としてSM-6の導入が進んでおり、やがては我が国自衛隊もSM-6を導入するであろうが、SM-2は射程約160km、SM-6は約240kmだと言われており、秋田から北朝鮮の日本海側の弾道ミサイル発射基地の舞水端里までの距離約1,000kmを攻撃出来ないのである。
また、弾道ミサイルを宇宙空間で迎撃するSM-3は高高度迎撃に特化したミサイルであり、地上目標を攻撃するものではない。宇宙空間で超高速移動をしている弾道ミサイルを迎撃する為に高度な技術が用いられており、とても高価である。
地上攻撃に用いても地上の目標を探知するのは宇宙空間用のセンサーでは難しく、また、地上目標を破壊する弾頭にはなっておらず、まったく実効性がない。
叩いたゴキブリを捨てる時に1万円札を用いてゴミ箱に捨てる様なもので、包みにくいし、「紙としての使用目的がまったく違う」ので、実にもったいなく、あり得ない話なのである。
仮に、我が国が弾道ミシルを発射しようとしている北朝鮮のミサイル基地に自衛的先制攻撃を行う事態になった場合は、小野寺五典議員の提言通り、航空機に射程数百キロの長距離対地ミサイルを搭載して行うころになろう。それが最も合理的な選択だからである。
地上に固定されたイージス・アショアから射程1,000km以上のミサイルを発射するとの選択肢はない。
もし仮に、我が国が地上発射型の射程1,000km超のミサイルを新たに装備したとしたら、それを、わざわざイージス・アショアにVLSに装備するのではなく、トラック等に積載して運用することになろう。イージス・アショア導入の目的は、弾道ミサイル防衛にあり、宇宙空間を飛行して我が国領土に向かうミサイルへの対処の為の高価な装備に、別目的のいミサイルを装備する合理性はない。
米議会での話は、アメリカ軍がルーマニア・ポーランドという外国に於いて運用する際に一か所に集中することの合理性からの判断であり、我が国が自国領土内で運用する場合とは前提条件が違う話である。
そういう軍事的前提条件の一切を無視してマジェマジェしての印象操作をしているのが韓国紙の記事なのである。今回は、こんな虚偽記事に惑わされることがない様にと解説したものである。
お役に立てれば幸である。
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【文末脚注】
(*1):韓国紙・中央日報の見出し詐欺
Yahooニュース・中央日報日本語版 9/18(水) 17:09配信
見出し:◆米国防次官「日本配備のイージス・アショアに北朝鮮原点打撃能力」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190918-00000051-cnippou-kr&pos=5
記事:○米国のジョン・ルード政策担当国防次官が17日(現地時間)、北朝鮮の新型ミサイル開発に関連し、「ミサイル防衛と同時に発射原点を打撃できるよう攻撃・防御作戦の統合を進めている」と明らかにした。特に日本が2023年に導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を攻撃性能を加えるために改良しているとも公開した。防御用という従来の説明とは異なる発言であり、北朝鮮のほか中国などの反発が予想される。先月、米国の新型中距離クルーズミサイル試験発射当時、イージス・アショアと同じ発射台を使用し、攻撃用互換の可能性が提起されたりもした。
○ルード次官はこの日、米議会で開かれたミサイル防衛擁護連盟(MDAA)主催の行事で、「北朝鮮、中国、ロシア、イランのミサイルの脅威を防御すると同時に、攻撃者(attacker)を扱うことが非常に重要だ」とし「攻撃と防御を統合する作業を推進している」と述べた。また「攻撃・防御性能の統合は、敵がミサイルを発射する前に原点を把握して脅威を解消する選択肢も提供する」と説明した。ルード次官は「潜在的敵国がより速く、射程距離が長く、より正確な攻撃ミサイルを開発し、海外の米軍と同盟国に対するミサイル脅威の種類と規模が拡大している」とし「進化する挑戦に対抗し、我々も包括的な接近をする必要がある」とし、攻撃・防御体系の統合を強調した。
○ルード次官は具体的な事例として2016年に北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛の一環としてルーマニアに配備したイージス・アショアを挙げた。ルード次官は「イージス・アショアの弾道およびクルーズミサイル防衛と攻撃作戦の統合のために性能のアップグレードをしている」とし「脅威によっては攻撃と防御を統合してこそ次の段階に対処するうえで効率的であるため」と説明した。また「ポーランドにも年内にイージス・アショアを追加で配備する予定」とし「インド太平洋地域では日本がミサイル防衛協力の最高事例」と述べた。日本が2023年までに秋田県と山口県にイージス・アショア体系を配備する計画を持っていると説明しながらだ。
○米国防総省は先月18日、カリフォルニア州サン・ニコラス島で実施した新型地対地クルーズミサイルの試験発射にSM3、SM6などイージス・アショア迎撃ミサイルに使う移動式発射台MK41を使用した。当時、国防総省の報道官は「発射台は同じだが、ルーマニアとポーランドに建設中のイージス・アショアは純粋な防御用であり、トマホークミサイルを発射できるよう攻撃用として設定されていない」と釈明した。しかし1カ月ぶりにルード次官が攻撃互換が可能になるよう改良作業を進めていると確認したのだ。
○またルード次官は、「北朝鮮の固体燃料ミサイルは事前探知が難しく、攻撃の側面でこれをどう解決できるのか」という質問に対し、「固体燃料推進ミサイルも我々の探知能力範囲内にある」とし「例えば米国のイージス艦38隻はミサイル防衛と同時に搭載された多くの攻撃武器も再設定なく使えるよう統合されている」と紹介した。また「(イージス艦の)探知能力は飛んでくるミサイルがどこで発射されたかという原点を知らせ、ミサイルを迎撃すると同時に原点を打撃する能力も提供する」と述べた。さらに「航空および地上探知レーダーと情報を共有できるネットワークは攻撃・防御統合状況で理想的」とも話した。陸・海・空ミサイル探知体系の統合も推進するということだ。
○ルード次官は韓国に配備されたTHADD(高高度防衛ミサイル)とパトリオット(PAC)体系についても「作戦互換性と範囲拡大など戦力強化のためにシステム統合作業を進めている」とも語った。
<引用終わり>
(*2):「日本人の誰かが死ななければ防衛活動ができない」などというバカな話
2015/04/05投稿:
【コラム】「専守防衛」は生贄欲する悪魔教の呪文
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-71.html
※「侵攻してきた敵を自国の領域において」などと「日本人が住む領域または日本人がいる可能性が高い領域」にまで敵軍事力が侵攻してきて、初めて「自衛」出来るとする歪んだ「専守防衛」などは「先ずは日本人の誰かが生贄となれ」と言うバカな話になっているのである。
(*3):昭和31年(1956年)2月29日の国会答弁で、日本列島に向かって弾道ミサイルが発射され様としているのなら、その策源地に対してミサイルを発射させない為の攻撃は合憲であると示されているのである。
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2016/02/29投稿:
【コラム】1956年2月29日国会答弁
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-347.html
昭和31年2月29日・第24回国会内閣委員会・鳩山一郎総理大臣答弁(代読)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/024/0388/02402290388015a.html
<引用開始>
わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。昨年私が答弁したのは、普通の場合、つまり他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らないだろうという趣旨で申したのであります。(後略)
<引用終わり>
(*4):「自衛的先制攻撃」
2017/03/21投稿:
先制的自衛権・自衛的先制攻撃
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-632.html
【ご参考】
2017/03/22投稿:
Power Projection能力
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-633.html
(*5):小野寺五典議員からは国民を守る為の提言が出されているが、策源地無力化にイージス・アショアを用いるものではない。
2017/07/01投稿:
「敵基地攻撃能力」の提言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-706.html
<その後>
2017/12/06投稿:
敵基地攻撃能力・長射程ミサイル導入
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-819.html
【ご参考】
2017/04/04投稿:
BMD・弾道ミサイル防衛
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-639.html
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