ヘゲモニーチャレンジ宣言をした中国Part2
- 2019/05/19
- 21:11
ヘゲモニーチャレンジ宣言をした中国Part2

副題:「アジア文明対話」なるイベントでの習近平・基調演説を読み解く。案の定、華夷秩序価値観の拡散が目的だった。
本項は、論考が長くなっているので、人民日報の習近平・基調演説記事(*1)の分析・解説をPart2としたものである。
経緯・概要等は前回論考(*2)Part1を参照されたい。
人民日報記事の位置付けは「中国政府の広報紙」であることはご存じの通りである。
人民日報は、自由民主主義国の民間企業新聞と違い、中国政府の意向通りの紙面・記事となる。
逆に言えば、自由人主主義国の新聞紙面・記事に見られる「記者の勝手な感想・憶測」とか「発表内容とは大きく異なる偏向報道」は存在しないものと看做される。
何しろ中国政府の意向に基づき発行されているのだから、「記者の勝手な感想・憶測」等を記事にした場合、その記者は職を失う。
従い、人民日報の記事は、中国政府の発表と同等・一次資料扱いが可能であると看做している。
1.全体構成
人民日報記事は習近平の基調演説を「数字で読み解いた」と題して、その内容を「出来るだけ分かり易い記事にした」ものだと見受けられる。サマライズとしては、一応は成功していると思われる。
記事には項目毎に各々小見出しを設けるなどの工夫が凝らされている。
一方、この人民日報記事は中国語を日本語に訳したものであり、所々に中国語の漢字のままに日本語にしていると思われる部分があり、また「無理に数字を付した」との違和感もある。
尚、それら小見出しだけを羅列すると以下の様になる。
↓
■1つの評価
■1つの判断
■3つの期待
■4つの主張
■「今日と未来の中国」の位置付けに関する1つの言葉
2.各小見出しの中身の分析・解説
2-1.■1つの評価
<引用開始>
アジア文明対話大会はアジア及び世界各国の文明間の平等な対話、交流と相互参考、相互啓発を促進するために新たな場を提供している。
<引用終わり>
↓
書いてある内容からは、小見出しは「「アジア文明対話」開催の意義・目的」とする方が的確であろう。無理に数字を付した小見出しだと思われる。
「世界各国の文明間の・・・」とある様に、対象は前回論考で紹介した「現存する世界文明9つ」(*3)の総てであると読める。
その上で、現状「善」とされている「平等な対話」、「交流と相互参考」、「相互啓発」を掲げ、「促進するために新たな場の提供」だと、このイベントの目的を示している。
しかし、文明間の対話・交流の場は、既に存在しており、何故、別途に「新たな場」を設けるのかの理由の説明はない。
想像するに、「中国が主導する「新たな場」」を設定したものであろう。
また、「啓発」とある様に、中国の価値観の宣伝を目的にしているものと推察される。
2-2.■1つの判断
<引用開始>付番は引用者
①歴史を振り返り、世界を展望してみると、われわれは文明の自信を高め、先人たちの築き上げた輝かしい成果を基に、世界のその他の文明と交流及び相互参考を堅持し、引き続きアジア文明に新たな輝きを与えるために努力すべきだ。
②アジア各国は陸続きであり、人的・文化的にも近しく、似通った歴史的境遇を経験しており、同じ夢を追い求めている。
③未来に向けて、われわれは大勢を把握し、潮流に乗り、アジアの人々の素晴らしい生活に対する憧れを現実に変えるべく努力すべきだろう。
<引用終わり>
↓
小見出しは「判断」であるが、内容からは「方向性」を示していると解される。
前の段落が「世界各国の文明間の・・・」とあるのだが、ここでは「アジア文明」の話に移行している。
上記①の部分が「世界文明」と「アジア文明」の「つなぎ部分」に該当するのだが、そこに書かれている理屈は、一言で言えば「アジア文明の勃興」である。
「アジア文明の勃興」との話は、前回論考で指摘した様に「現在の世界標準が西欧文明基準」であることへの対抗を意味している。
要するに、「アジア文明」と称して、自分達の価値観である中華思想・Sinic文明が西欧文明にとってかわるという中国の意志の表明であると解されるものである。
②の部分は、中国お得意の「アジアは同じ論」との勧誘時に常用される詐欺話である。
実際は、一部の近隣国を除き、東南アジア・インド・日本他のアジア諸国は、中国とは文明・文化的、民族的に違っており、「歴史的境遇」も違っているのに、あたかも「同じ・似ている」と強弁しているだけの詐欺話である。
仏教文明国、イスラム文明国、ヒンズー文明国などがアジアにはある。
また、中国自体が複数の民族がいて、文化と表裏一定の言語も、北京語、上海語、広東語と複数が存在しているのが実態であり、全然、同じではない。
この様な実態を脇に置き、取り込む相手に対して「同じ・同質」なる詐欺話をするのは中国の常套手段である。一昔前の「儒教文化圏」とか「漢字文化圏」なる誘い文句を思い出していただきたい。
アジア各国は、けして、中国と「同じ夢を追い求めて」はいないのである。
最後の③に部分は誤訳なのか、本音が出てしまっている。
ここでは「誰」(Who)を表す単語が2つ登場する。
「われわれ」と「アジアの人々」である。この文章からは、これら2つの単語で言い表す対象は同一ではないと解される。
「大勢を把握」する「われわれ」とは中国であり、「素晴らしい生活に対する憧れ」をしている「アジアの人々」とは、「中国人以外のアジアの人々」と理解するのが普通である。
要するに、ここで言っていることは「一緒に」、「共に」ではなく、「中国とその他」との区分であり、中国が「アジアの人々」を指導するぞ、との中国の意志が書かれているものである。
2-3.■3つの期待
小見出し「■3つの期待」に中には以下の3点の小々見出しが付されている。
↓
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
↓
お読みいただければ分かる通り、これはパクリである。
我が国安倍政権が既に何年も続けて推進しているアジア外交の基本理念である。
例えば日本とASEANとのWinWin関係外交とかは既に何年も前から我が国が掲げているものである。(*4)
それをパクっているので、所々に、実際とは矛盾することを言うことになっている。
↓
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
アジア各国の人々は恐怖を遠ざけ、安心して暮らし、楽しく働き、普遍的な安全を望んでおり、各国が互いに尊重し合い、信頼し合い、睦まじく付き合い、国境や時、文明を越えて交流活動を幅広く展開し、黄金よりも大切な平和な時代を共に守っていくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
アジアの平和を乱している中国がよく言うよである。
東南アジアでの直近の戦争は中国が南北統一したベトナムへと侵攻した中越戦争が最後であり、今現在は、南シナ海の大部分を自国の海域だとしてフィリピン南沙諸島を占拠しているのは中国である。
白人植民地であったアジア諸国が自存自立の独立国家となったのは先の大戦以降のことである。
インドネシアの様に、旧宗主国との独立戦争を経て独立した国々や、イギリスが宗主国であったインド・ビルマ・マレーシア・シンガポールの様に独立戦争を経なかった国々がある。
それらのアジアの国々での最後の独立戦争がベトナム戦争である。
とは言え、旧仏領インドシナでの戦争は、対フランスの独立戦争との意味合いから東西冷戦下で東西対決戦争へと意味合いへと変換したもの(*5)であり、ちょっと分かり難いかもしれない。
ベトナム戦争は1975年4月30日 のサイゴン(現ホーチミン)陥落で終わったのだが、その前に、中国は隙を突きベトナム軍を西沙諸島から武力で追い出し、今に至るも占拠し続けている。
また、中国はベトナム戦争終了後の1979年に「懲罰」と称してベトナム国内に侵攻している。中越戦争である。
アジア各国の人々に恐怖を与えて、安全を脅かしているのは中国なのである。
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
アジア各国の人々は貧困を遠ざけ、豊かで満ち足りて、安らかであることを望んでおり、各国が力を合わせて開かれた、包摂的で、あまねく恩恵を及ぼす、均衡ある、ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め、いくつかの国々の民衆が依然直面している貧困や立ち後れを共に解消し、子どもたちのために衣食の心配のない生活を共に創造し、幸せと喜びが各家庭にもたらされることを望んでいる。
<引用終わり>
↓
お読みいただければお分かりの通り、「ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め」など、我が国のアジア政策の丸パクリである。
言っていることは我が国がやっていることであり、申し分ない。
しかし、中国がやっていることは、その真逆である。
中国は、途上国の無理な開発に資金貸付を行い、途上国が返済不可能となると開発対象の港湾を接収して自分のものにしてしまう様なサラ金顔負けの非道をしていることは御存じの通りである。
こういう事は、けしてWinWin関係とは形容しない。
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
アジア各国の人々は閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合うことを望み、各国が開放的精神を堅持し、政策の意思疎通、インフラ施設の連結、貿易の円滑化、資金の調達、民心の通じ合いを推進し、アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
この部分を読んでも、一般的な凡庸な方針が並んでいるだけだと感じるであろうが、前回論考で指摘した様に「中国は指桑罵槐の国」である。
そういう視点でこの部分を読むと、実にゲスいことを言っていることが分かる。
以下に、中国が言っていることを指桑罵槐の観点を以て訳したので参考にしていただきたい。
・「閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合う」
↓
・中国が自国内でやっている54にも及ぶ少数民族をひっくるめて「中華民族」などと称しているのと同じものである。
54もの民族の中にはチベット族、ウイグル族が含まれている。
彼等が、中国共産党政府から、どの様な扱いを受けているかは知っての通りである。
「アジアの人々」に中国共産党政府の親玉の習近平が「閉鎖的じゃダメ、「融合」しろ」と言っているのは、チベット族やウイグル族と同じ扱いをするという意味である。
何しろ、中国が言う「平和」とは、世界の中心の華である中華の元に広がる世界の中での「平和」である。中華の指導の下に世界が従う体制が、中国の文明的価値観では、もっとも平和な世界なのである。
・「各国が開放的精神を堅持し」「政策の意志疎通」
↓
・「中国の言う政策を受け入れろ」
・「インフラ施設の連結」「貿易の円滑化」
↓
・「一帯一路政策に協力しろ」
・「資金の調達」
↓
・「AIIBで金を借りろ」
・「アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる」
↓
・「中華・華夷秩序の元にアジアの人々は参集せよ!」
この様な事を言っているのである。
「中国は指桑罵槐の国」であることを踏まえれば、凡庸な語句の羅列に見える習近平の言葉は、この様な中国的本性が込められているのである。
2-4.■4つの主張
小見出し「■4つの主張」の中には以下の4点の小々見出しが付されている。
↓
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
○第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
○第3に、開放・包摂、相互学習・相互参考を堅持すること。
○第4に、時代と共に進み、革新的な発展を堅持すること。
↓
これら4点の小々見出しの文末は、総て「堅持すること」との命令形となっている。
後述する各小々見出しの文章も、その文末は、総て「望んでいる」となっており、これは「中華皇帝・習近平が御希望しているのだから、それに従え」との意味である。
中華思想・華夷秩序の本性丸出しの言い分なのである。
これら「■4つの主張」の構成は、前述した「■3つの期待」と同様に我が国政策のキーワードをパクリながら、それに中国華夷秩序発想での「要求」をくっつけているものである。
要するに、文章の前後が断裂しており、前段のキーワードとは無関係に後段の「要求」を述べているものである。
<引用開始>
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
われわれは平等と尊重を堅持し、傲慢と偏見を捨て、自らの文明とその他の文明との違いに対する認識を深め、異なる文明間の対話・交流、和やかな共生を後押しすべきだ。
中国は各国とアジア文化遺産保護作業を展開し、文明のよりよい伝承に必要なサポートを提供していくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
習近平が言っていることを解説する。
「文明のよりよい伝承」との語句には「よりよい」との言葉が混入している。
これは、アジアの人々が日々の実生活で実際に伝承している各々の文明ではなく、「中国がよいと考える形での伝承」に変えていく、という意味である。
中国が自国の万里の長城を補修する際に、文化遺産の要諦たる長城の石畳部分をコンクリートで埋め固めた様に、「中国がよいと考える形での伝承」「アジア文化遺産保護作業」など、真っ平御免である。
中華Sinic文明の価値観で、他の文明に干渉するとの発想自体が中華思想・華夷秩序の本性丸出しの言い分なのである。
<引用開始>
第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
われわれは自国の文明を活力で満たすとともに、他国の文明発展のための環境づくりも進め、世界の文明がその素晴らしさを競い合うようにする必要がある。
中国は関係国と共に、アジア古典的著作相互翻訳計画とアジア映画・テレビ交流協力計画を実施し、人々が互いの文化への理解を深め、楽しむ手助けを行い、文明の美を示し、広めるために交流と相互参考のプラットフォームを築くことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
前回論考の日経記事に出てきた<「④:習氏は演説で中国の古典「論語」や千夜一夜物語(アラビアンナイト)などとともに日本の「源氏物語」にも触れ「人類の宝だ」と称賛」>との一文は、多分、上記引用の「アジア古典的著作相互翻訳計画」の文脈の中で登場したものであろう。
古典の他言語への翻訳は、単語単位での翻訳では無理なものだが、チャレンジすること自体は良い。しかし、注意すべきは中国の意図である。
中国の意図は、この部分だけでは分からないが、これ以降の部分と合わせれば、だんだんと浮き上がってくる。
「アジア古典的著作相互翻訳計画」と「アジア映画・テレビ交流協力計画」は、要するに、撒き餌である。
<長くなったので項を分け、Part3に続けます。>
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【文末脚注】
(*1):人民日報の習近平・基調演説記事
japanese.china.org.cn 2018年5月16日
見出し:◆数字で読み解くアジア文明対話大会における習近平主席の基調演説
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2019-05/16/content_74790274.htm
リード文:○アジア文明対話大会の開幕式が15日午前に北京で行われ、習近平国家主席が開幕式に出席して、基調演説を行った。演説は全文で三千字余りと長くはないが、内容がしっかり詰まっており、その情報量は膨大だ。人民日報では今回の演説を数字で読み解いた。
■1つの評価
アジア文明対話大会はアジア及び世界各国の文明間の平等な対話、交流と相互参考、相互啓発を促進するために新たな場を提供している。
■1つの判断
歴史を振り返り、世界を展望してみると、われわれは文明の自信を高め、先人たちの築き上げた輝かしい成果を基に、世界のその他の文明と交流及び相互参考を堅持し、引き続きアジア文明に新たな輝きを与えるために努力すべきだ。アジア各国は陸続きであり、人的・文化的にも近しく、似通った歴史的境遇を経験しており、同じ夢を追い求めている。未来に向けて、われわれは大勢を把握し、潮流に乗り、アジアの人々の素晴らしい生活に対する憧れを現実に変えるべく努力すべきだろう。
■3つの期待
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
アジア各国の人々は恐怖を遠ざけ、安心して暮らし、楽しく働き、普遍的な安全を望んでおり、各国が互いに尊重し合い、信頼し合い、睦まじく付き合い、国境や時、文明を越えて交流活動を幅広く展開し、黄金よりも大切な平和な時代を共に守っていくことを望んでいる。
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
アジア各国の人々は貧困を遠ざけ、豊かで満ち足りて、安らかであることを望んでおり、各国が力を合わせて開かれた、包摂的で、あまねく恩恵を及ぼす、均衡ある、ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め、いくつかの国々の民衆が依然直面している貧困や立ち後れを共に解消し、子どもたちのために衣食の心配のない生活を共に創造し、幸せと喜びが各家庭にもたらされることを望んでいる。
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
アジア各国の人々は閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合うことを望み、各国が開放的精神を堅持し、政策の意思疎通、インフラ施設の連結、貿易の円滑化、資金の調達、民心の通じ合いを推進し、アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる。
■4つの主張
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
われわれは平等と尊重を堅持し、傲慢と偏見を捨て、自らの文明とその他の文明との違いに対する認識を深め、異なる文明間の対話・交流、和やかな共生を後押しすべきだ。
中国は各国とアジア文化遺産保護作業を展開し、文明のよりよい伝承に必要なサポートを提供していくことを望んでいる。
○第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
われわれは自国の文明を活力で満たすとともに、他国の文明発展のための環境づくりも進め、世界の文明がその素晴らしさを競い合うようにする必要がある。
中国は関係国と共に、アジア古典的著作相互翻訳計画とアジア映画・テレビ交流協力計画を実施し、人々が互いの文化への理解を深め、楽しむ手助けを行い、文明の美を示し、広めるために交流と相互参考のプラットフォームを築くことを望んでいる。
○第3に、開放・包摂、相互学習・相互参考を堅持すること。
われわれは様々なものを差別なく受け入れる広い心で文化交流の障壁を打破し、同様の姿勢でその他の文明からエネルギーを吸収し、アジア文明が交流と相互参考の中で共に前進する後押しをすべきだ。
中国は各国と青少年、民間団体、地方、メディアなどにおける各界の交流を強化し、シンクタンク交流協力ネットワークを打ちたて、協力モデルを革新し、様々な形式の協力の深化及び着実化を後押しし、文明間交流・相互参考を後押しするための環境づくりを望んでいる。
○第4に、時代と共に進み、革新的な発展を堅持すること。
われわれは革新によって文明発展の原動力を新たに強化し、文明進歩の水源と流れを活性化させ、時を越えて、永遠の魅力に満ちた文明の成果を創造し続けるべきだ。
中国は各国とアジア観光促進計画を実施し、アジア経済の発展を促進し、アジアの人々の友情を増進するためにさらに大きな力で貢献していくことを望んでいる。
■「今日と未来の中国」の位置付けに関する1つの言葉
今日の中国は、中国にとっての中国であるだけでなく、アジアにとっての中国であり、世界にとっての中国だ。未来の中国は必ず、さらに開かれた姿勢で世界を受け入れ、さらに活力ある文明の成果によって世界に貢献するだろう。(編集NA)
<引用終わり>
(*2):前回論考
2019/05/17投稿:
ヘゲモニーチャレンジ宣言をした中国Part1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1180.html
※副題:自由・平等理念の世界基準がお気に召さない中国の自国文明基準のヘゲモニーチャレンジャー宣言。「経済政策の中でのソフトパワー」レベルの話ではない。
(*3):現存する世界文明9つ
我々日本人は、世界で現存する9つの文明圏のうちの1つである、我が国1国だけの日本文明圏で暮らしている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%A1%9D%E7%AA%81#/media/File:Clash_of_Civilizations_mapn2.png
青色:Western(西欧文明圏)
水色:Orthodox (東方正教文明圏(スラブ文明))
緑色:Islamic(イスラム文明圏)
黄色:Buddhist(仏教文明圏)
橙色:Hindu(ヒンズー文明圏)
灰緑色:African(アフリカ文明圏)
紫色:Latin American(ラテンアメリカ文明緬)
赤色:Sinic(シナ文明圏)
桃色:Japanese(日本文明圏)
(*4)::例えば日本とASEANとのWinWin関係外交とかは既に何年も前から我が国が掲げているものである。
2018/10/01投稿:
安倍首相・国連演説2018(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1024.html
2018/10/02投稿:
安倍首相・国連演説2018(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1025.html
2018/10/03投稿:
安倍首相・国連演説2018(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1026.html
2017/09/17投稿:
安倍首相・インド訪問
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-754.html
2018/12/04投稿:
APEC・首脳宣言がなかった事は良かった
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part4-Final>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1066.html
(*5):アジアの国々での最後の独立戦争がベトナム戦争である。旧仏領インドシナでの戦争は、対フランスの独立戦争との意味合いから東西冷戦下で東西対決戦争へと意味合いへと変換したものである。
2017/01/26投稿:
妖怪2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-590.html
※副題:妖怪は人々を不幸にした悪魔だった2
共産主義が人類を不幸にしてきた歴史の一端を考察する。表題にある「妖怪」とは、マルクス、エンゲルスの「共産党宣言」の冒頭の一文「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」のことである。
2017/01/28投稿:
妖怪は人々を不幸にした悪魔だった4Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-592.html
【ご参考】西沙諸島を強奪した中国・南沙諸島に侵透している中国
2016/08/19投稿:
東シナ海・南シナ海
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-487.html
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副題:「アジア文明対話」なるイベントでの習近平・基調演説を読み解く。案の定、華夷秩序価値観の拡散が目的だった。
本項は、論考が長くなっているので、人民日報の習近平・基調演説記事(*1)の分析・解説をPart2としたものである。
経緯・概要等は前回論考(*2)Part1を参照されたい。
人民日報記事の位置付けは「中国政府の広報紙」であることはご存じの通りである。
人民日報は、自由民主主義国の民間企業新聞と違い、中国政府の意向通りの紙面・記事となる。
逆に言えば、自由人主主義国の新聞紙面・記事に見られる「記者の勝手な感想・憶測」とか「発表内容とは大きく異なる偏向報道」は存在しないものと看做される。
何しろ中国政府の意向に基づき発行されているのだから、「記者の勝手な感想・憶測」等を記事にした場合、その記者は職を失う。
従い、人民日報の記事は、中国政府の発表と同等・一次資料扱いが可能であると看做している。
1.全体構成
人民日報記事は習近平の基調演説を「数字で読み解いた」と題して、その内容を「出来るだけ分かり易い記事にした」ものだと見受けられる。サマライズとしては、一応は成功していると思われる。
記事には項目毎に各々小見出しを設けるなどの工夫が凝らされている。
一方、この人民日報記事は中国語を日本語に訳したものであり、所々に中国語の漢字のままに日本語にしていると思われる部分があり、また「無理に数字を付した」との違和感もある。
尚、それら小見出しだけを羅列すると以下の様になる。
↓
■1つの評価
■1つの判断
■3つの期待
■4つの主張
■「今日と未来の中国」の位置付けに関する1つの言葉
2.各小見出しの中身の分析・解説
2-1.■1つの評価
<引用開始>
アジア文明対話大会はアジア及び世界各国の文明間の平等な対話、交流と相互参考、相互啓発を促進するために新たな場を提供している。
<引用終わり>
↓
書いてある内容からは、小見出しは「「アジア文明対話」開催の意義・目的」とする方が的確であろう。無理に数字を付した小見出しだと思われる。
「世界各国の文明間の・・・」とある様に、対象は前回論考で紹介した「現存する世界文明9つ」(*3)の総てであると読める。
その上で、現状「善」とされている「平等な対話」、「交流と相互参考」、「相互啓発」を掲げ、「促進するために新たな場の提供」だと、このイベントの目的を示している。
しかし、文明間の対話・交流の場は、既に存在しており、何故、別途に「新たな場」を設けるのかの理由の説明はない。
想像するに、「中国が主導する「新たな場」」を設定したものであろう。
また、「啓発」とある様に、中国の価値観の宣伝を目的にしているものと推察される。
2-2.■1つの判断
<引用開始>付番は引用者
①歴史を振り返り、世界を展望してみると、われわれは文明の自信を高め、先人たちの築き上げた輝かしい成果を基に、世界のその他の文明と交流及び相互参考を堅持し、引き続きアジア文明に新たな輝きを与えるために努力すべきだ。
②アジア各国は陸続きであり、人的・文化的にも近しく、似通った歴史的境遇を経験しており、同じ夢を追い求めている。
③未来に向けて、われわれは大勢を把握し、潮流に乗り、アジアの人々の素晴らしい生活に対する憧れを現実に変えるべく努力すべきだろう。
<引用終わり>
↓
小見出しは「判断」であるが、内容からは「方向性」を示していると解される。
前の段落が「世界各国の文明間の・・・」とあるのだが、ここでは「アジア文明」の話に移行している。
上記①の部分が「世界文明」と「アジア文明」の「つなぎ部分」に該当するのだが、そこに書かれている理屈は、一言で言えば「アジア文明の勃興」である。
「アジア文明の勃興」との話は、前回論考で指摘した様に「現在の世界標準が西欧文明基準」であることへの対抗を意味している。
要するに、「アジア文明」と称して、自分達の価値観である中華思想・Sinic文明が西欧文明にとってかわるという中国の意志の表明であると解されるものである。
②の部分は、中国お得意の「アジアは同じ論」との勧誘時に常用される詐欺話である。
実際は、一部の近隣国を除き、東南アジア・インド・日本他のアジア諸国は、中国とは文明・文化的、民族的に違っており、「歴史的境遇」も違っているのに、あたかも「同じ・似ている」と強弁しているだけの詐欺話である。
仏教文明国、イスラム文明国、ヒンズー文明国などがアジアにはある。
また、中国自体が複数の民族がいて、文化と表裏一定の言語も、北京語、上海語、広東語と複数が存在しているのが実態であり、全然、同じではない。
この様な実態を脇に置き、取り込む相手に対して「同じ・同質」なる詐欺話をするのは中国の常套手段である。一昔前の「儒教文化圏」とか「漢字文化圏」なる誘い文句を思い出していただきたい。
アジア各国は、けして、中国と「同じ夢を追い求めて」はいないのである。
最後の③に部分は誤訳なのか、本音が出てしまっている。
ここでは「誰」(Who)を表す単語が2つ登場する。
「われわれ」と「アジアの人々」である。この文章からは、これら2つの単語で言い表す対象は同一ではないと解される。
「大勢を把握」する「われわれ」とは中国であり、「素晴らしい生活に対する憧れ」をしている「アジアの人々」とは、「中国人以外のアジアの人々」と理解するのが普通である。
要するに、ここで言っていることは「一緒に」、「共に」ではなく、「中国とその他」との区分であり、中国が「アジアの人々」を指導するぞ、との中国の意志が書かれているものである。
2-3.■3つの期待
小見出し「■3つの期待」に中には以下の3点の小々見出しが付されている。
↓
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
↓
お読みいただければ分かる通り、これはパクリである。
我が国安倍政権が既に何年も続けて推進しているアジア外交の基本理念である。
例えば日本とASEANとのWinWin関係外交とかは既に何年も前から我が国が掲げているものである。(*4)
それをパクっているので、所々に、実際とは矛盾することを言うことになっている。
↓
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
アジア各国の人々は恐怖を遠ざけ、安心して暮らし、楽しく働き、普遍的な安全を望んでおり、各国が互いに尊重し合い、信頼し合い、睦まじく付き合い、国境や時、文明を越えて交流活動を幅広く展開し、黄金よりも大切な平和な時代を共に守っていくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
アジアの平和を乱している中国がよく言うよである。
東南アジアでの直近の戦争は中国が南北統一したベトナムへと侵攻した中越戦争が最後であり、今現在は、南シナ海の大部分を自国の海域だとしてフィリピン南沙諸島を占拠しているのは中国である。
白人植民地であったアジア諸国が自存自立の独立国家となったのは先の大戦以降のことである。
インドネシアの様に、旧宗主国との独立戦争を経て独立した国々や、イギリスが宗主国であったインド・ビルマ・マレーシア・シンガポールの様に独立戦争を経なかった国々がある。
それらのアジアの国々での最後の独立戦争がベトナム戦争である。
とは言え、旧仏領インドシナでの戦争は、対フランスの独立戦争との意味合いから東西冷戦下で東西対決戦争へと意味合いへと変換したもの(*5)であり、ちょっと分かり難いかもしれない。
ベトナム戦争は1975年4月30日 のサイゴン(現ホーチミン)陥落で終わったのだが、その前に、中国は隙を突きベトナム軍を西沙諸島から武力で追い出し、今に至るも占拠し続けている。
また、中国はベトナム戦争終了後の1979年に「懲罰」と称してベトナム国内に侵攻している。中越戦争である。
アジア各国の人々に恐怖を与えて、安全を脅かしているのは中国なのである。
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
アジア各国の人々は貧困を遠ざけ、豊かで満ち足りて、安らかであることを望んでおり、各国が力を合わせて開かれた、包摂的で、あまねく恩恵を及ぼす、均衡ある、ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め、いくつかの国々の民衆が依然直面している貧困や立ち後れを共に解消し、子どもたちのために衣食の心配のない生活を共に創造し、幸せと喜びが各家庭にもたらされることを望んでいる。
<引用終わり>
↓
お読みいただければお分かりの通り、「ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め」など、我が国のアジア政策の丸パクリである。
言っていることは我が国がやっていることであり、申し分ない。
しかし、中国がやっていることは、その真逆である。
中国は、途上国の無理な開発に資金貸付を行い、途上国が返済不可能となると開発対象の港湾を接収して自分のものにしてしまう様なサラ金顔負けの非道をしていることは御存じの通りである。
こういう事は、けしてWinWin関係とは形容しない。
<引用開始>
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
アジア各国の人々は閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合うことを望み、各国が開放的精神を堅持し、政策の意思疎通、インフラ施設の連結、貿易の円滑化、資金の調達、民心の通じ合いを推進し、アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
この部分を読んでも、一般的な凡庸な方針が並んでいるだけだと感じるであろうが、前回論考で指摘した様に「中国は指桑罵槐の国」である。
そういう視点でこの部分を読むと、実にゲスいことを言っていることが分かる。
以下に、中国が言っていることを指桑罵槐の観点を以て訳したので参考にしていただきたい。
・「閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合う」
↓
・中国が自国内でやっている54にも及ぶ少数民族をひっくるめて「中華民族」などと称しているのと同じものである。
54もの民族の中にはチベット族、ウイグル族が含まれている。
彼等が、中国共産党政府から、どの様な扱いを受けているかは知っての通りである。
「アジアの人々」に中国共産党政府の親玉の習近平が「閉鎖的じゃダメ、「融合」しろ」と言っているのは、チベット族やウイグル族と同じ扱いをするという意味である。
何しろ、中国が言う「平和」とは、世界の中心の華である中華の元に広がる世界の中での「平和」である。中華の指導の下に世界が従う体制が、中国の文明的価値観では、もっとも平和な世界なのである。
・「各国が開放的精神を堅持し」「政策の意志疎通」
↓
・「中国の言う政策を受け入れろ」
・「インフラ施設の連結」「貿易の円滑化」
↓
・「一帯一路政策に協力しろ」
・「資金の調達」
↓
・「AIIBで金を借りろ」
・「アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる」
↓
・「中華・華夷秩序の元にアジアの人々は参集せよ!」
この様な事を言っているのである。
「中国は指桑罵槐の国」であることを踏まえれば、凡庸な語句の羅列に見える習近平の言葉は、この様な中国的本性が込められているのである。
2-4.■4つの主張
小見出し「■4つの主張」の中には以下の4点の小々見出しが付されている。
↓
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
○第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
○第3に、開放・包摂、相互学習・相互参考を堅持すること。
○第4に、時代と共に進み、革新的な発展を堅持すること。
↓
これら4点の小々見出しの文末は、総て「堅持すること」との命令形となっている。
後述する各小々見出しの文章も、その文末は、総て「望んでいる」となっており、これは「中華皇帝・習近平が御希望しているのだから、それに従え」との意味である。
中華思想・華夷秩序の本性丸出しの言い分なのである。
これら「■4つの主張」の構成は、前述した「■3つの期待」と同様に我が国政策のキーワードをパクリながら、それに中国華夷秩序発想での「要求」をくっつけているものである。
要するに、文章の前後が断裂しており、前段のキーワードとは無関係に後段の「要求」を述べているものである。
<引用開始>
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
われわれは平等と尊重を堅持し、傲慢と偏見を捨て、自らの文明とその他の文明との違いに対する認識を深め、異なる文明間の対話・交流、和やかな共生を後押しすべきだ。
中国は各国とアジア文化遺産保護作業を展開し、文明のよりよい伝承に必要なサポートを提供していくことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
習近平が言っていることを解説する。
「文明のよりよい伝承」との語句には「よりよい」との言葉が混入している。
これは、アジアの人々が日々の実生活で実際に伝承している各々の文明ではなく、「中国がよいと考える形での伝承」に変えていく、という意味である。
中国が自国の万里の長城を補修する際に、文化遺産の要諦たる長城の石畳部分をコンクリートで埋め固めた様に、「中国がよいと考える形での伝承」「アジア文化遺産保護作業」など、真っ平御免である。
中華Sinic文明の価値観で、他の文明に干渉するとの発想自体が中華思想・華夷秩序の本性丸出しの言い分なのである。
<引用開始>
第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
われわれは自国の文明を活力で満たすとともに、他国の文明発展のための環境づくりも進め、世界の文明がその素晴らしさを競い合うようにする必要がある。
中国は関係国と共に、アジア古典的著作相互翻訳計画とアジア映画・テレビ交流協力計画を実施し、人々が互いの文化への理解を深め、楽しむ手助けを行い、文明の美を示し、広めるために交流と相互参考のプラットフォームを築くことを望んでいる。
<引用終わり>
↓
前回論考の日経記事に出てきた<「④:習氏は演説で中国の古典「論語」や千夜一夜物語(アラビアンナイト)などとともに日本の「源氏物語」にも触れ「人類の宝だ」と称賛」>との一文は、多分、上記引用の「アジア古典的著作相互翻訳計画」の文脈の中で登場したものであろう。
古典の他言語への翻訳は、単語単位での翻訳では無理なものだが、チャレンジすること自体は良い。しかし、注意すべきは中国の意図である。
中国の意図は、この部分だけでは分からないが、これ以降の部分と合わせれば、だんだんと浮き上がってくる。
「アジア古典的著作相互翻訳計画」と「アジア映画・テレビ交流協力計画」は、要するに、撒き餌である。
<長くなったので項を分け、Part3に続けます。>
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【文末脚注】
(*1):人民日報の習近平・基調演説記事
japanese.china.org.cn 2018年5月16日
見出し:◆数字で読み解くアジア文明対話大会における習近平主席の基調演説
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2019-05/16/content_74790274.htm
リード文:○アジア文明対話大会の開幕式が15日午前に北京で行われ、習近平国家主席が開幕式に出席して、基調演説を行った。演説は全文で三千字余りと長くはないが、内容がしっかり詰まっており、その情報量は膨大だ。人民日報では今回の演説を数字で読み解いた。
■1つの評価
アジア文明対話大会はアジア及び世界各国の文明間の平等な対話、交流と相互参考、相互啓発を促進するために新たな場を提供している。
■1つの判断
歴史を振り返り、世界を展望してみると、われわれは文明の自信を高め、先人たちの築き上げた輝かしい成果を基に、世界のその他の文明と交流及び相互参考を堅持し、引き続きアジア文明に新たな輝きを与えるために努力すべきだ。アジア各国は陸続きであり、人的・文化的にも近しく、似通った歴史的境遇を経験しており、同じ夢を追い求めている。未来に向けて、われわれは大勢を把握し、潮流に乗り、アジアの人々の素晴らしい生活に対する憧れを現実に変えるべく努力すべきだろう。
■3つの期待
○アジアの人々が期待しているのは平和で安寧なアジアだ。
アジア各国の人々は恐怖を遠ざけ、安心して暮らし、楽しく働き、普遍的な安全を望んでおり、各国が互いに尊重し合い、信頼し合い、睦まじく付き合い、国境や時、文明を越えて交流活動を幅広く展開し、黄金よりも大切な平和な時代を共に守っていくことを望んでいる。
○アジアの人々が期待しているのは共に繁栄するアジアだ。
アジア各国の人々は貧困を遠ざけ、豊かで満ち足りて、安らかであることを望んでおり、各国が力を合わせて開かれた、包摂的で、あまねく恩恵を及ぼす、均衡ある、ウィンウィンの経済グローバル化を推し進め、いくつかの国々の民衆が依然直面している貧困や立ち後れを共に解消し、子どもたちのために衣食の心配のない生活を共に創造し、幸せと喜びが各家庭にもたらされることを望んでいる。
○アジアの人々が期待しているのは開かれた通じ合うアジアだ。
アジア各国の人々は閉鎖を遠ざけ、融合し通じ合うことを望み、各国が開放的精神を堅持し、政策の意思疎通、インフラ施設の連結、貿易の円滑化、資金の調達、民心の通じ合いを推進し、アジア運命共同体と人類運命共同体を共に構築していくことを望んでいる。
■4つの主張
○第1に、相互尊重と平等な付き合いを堅持すること。
われわれは平等と尊重を堅持し、傲慢と偏見を捨て、自らの文明とその他の文明との違いに対する認識を深め、異なる文明間の対話・交流、和やかな共生を後押しすべきだ。
中国は各国とアジア文化遺産保護作業を展開し、文明のよりよい伝承に必要なサポートを提供していくことを望んでいる。
○第2に、各国の文明の美を評価し、その交流と相互参考をを堅持すること。
われわれは自国の文明を活力で満たすとともに、他国の文明発展のための環境づくりも進め、世界の文明がその素晴らしさを競い合うようにする必要がある。
中国は関係国と共に、アジア古典的著作相互翻訳計画とアジア映画・テレビ交流協力計画を実施し、人々が互いの文化への理解を深め、楽しむ手助けを行い、文明の美を示し、広めるために交流と相互参考のプラットフォームを築くことを望んでいる。
○第3に、開放・包摂、相互学習・相互参考を堅持すること。
われわれは様々なものを差別なく受け入れる広い心で文化交流の障壁を打破し、同様の姿勢でその他の文明からエネルギーを吸収し、アジア文明が交流と相互参考の中で共に前進する後押しをすべきだ。
中国は各国と青少年、民間団体、地方、メディアなどにおける各界の交流を強化し、シンクタンク交流協力ネットワークを打ちたて、協力モデルを革新し、様々な形式の協力の深化及び着実化を後押しし、文明間交流・相互参考を後押しするための環境づくりを望んでいる。
○第4に、時代と共に進み、革新的な発展を堅持すること。
われわれは革新によって文明発展の原動力を新たに強化し、文明進歩の水源と流れを活性化させ、時を越えて、永遠の魅力に満ちた文明の成果を創造し続けるべきだ。
中国は各国とアジア観光促進計画を実施し、アジア経済の発展を促進し、アジアの人々の友情を増進するためにさらに大きな力で貢献していくことを望んでいる。
■「今日と未来の中国」の位置付けに関する1つの言葉
今日の中国は、中国にとっての中国であるだけでなく、アジアにとっての中国であり、世界にとっての中国だ。未来の中国は必ず、さらに開かれた姿勢で世界を受け入れ、さらに活力ある文明の成果によって世界に貢献するだろう。(編集NA)
<引用終わり>
(*2):前回論考
2019/05/17投稿:
ヘゲモニーチャレンジ宣言をした中国Part1
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1180.html
※副題:自由・平等理念の世界基準がお気に召さない中国の自国文明基準のヘゲモニーチャレンジャー宣言。「経済政策の中でのソフトパワー」レベルの話ではない。
(*3):現存する世界文明9つ
我々日本人は、世界で現存する9つの文明圏のうちの1つである、我が国1国だけの日本文明圏で暮らしている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%A1%9D%E7%AA%81#/media/File:Clash_of_Civilizations_mapn2.png
青色:Western(西欧文明圏)
水色:Orthodox (東方正教文明圏(スラブ文明))
緑色:Islamic(イスラム文明圏)
黄色:Buddhist(仏教文明圏)
橙色:Hindu(ヒンズー文明圏)
灰緑色:African(アフリカ文明圏)
紫色:Latin American(ラテンアメリカ文明緬)
赤色:Sinic(シナ文明圏)
桃色:Japanese(日本文明圏)
(*4)::例えば日本とASEANとのWinWin関係外交とかは既に何年も前から我が国が掲げているものである。
2018/10/01投稿:
安倍首相・国連演説2018(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1024.html
2018/10/02投稿:
安倍首相・国連演説2018(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1025.html
2018/10/03投稿:
安倍首相・国連演説2018(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1026.html
2017/09/17投稿:
安倍首相・インド訪問
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-754.html
2018/12/04投稿:
APEC・首脳宣言がなかった事は良かった
<2018年11月・安倍外交怒涛の一週間Part4-Final>
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1066.html
(*5):アジアの国々での最後の独立戦争がベトナム戦争である。旧仏領インドシナでの戦争は、対フランスの独立戦争との意味合いから東西冷戦下で東西対決戦争へと意味合いへと変換したものである。
2017/01/26投稿:
妖怪2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-590.html
※副題:妖怪は人々を不幸にした悪魔だった2
共産主義が人類を不幸にしてきた歴史の一端を考察する。表題にある「妖怪」とは、マルクス、エンゲルスの「共産党宣言」の冒頭の一文「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している。共産主義という妖怪が」のことである。
2017/01/28投稿:
妖怪は人々を不幸にした悪魔だった4Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-592.html
【ご参考】西沙諸島を強奪した中国・南沙諸島に侵透している中国
2016/08/19投稿:
東シナ海・南シナ海
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-487.html
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