「韓国人の価値観」を脇に置く別の木村さん

副題:「日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ」との論考は、幾つかの正論と根本的誤謬に基づく論評であると解した。その様な理解をした理由を説明するが、表題が答。
今回は、先の論考「
韓国人の価値観での日本人向け記事・要らないでしょ。」の「木村教授」とは別の木村さんに御登場いただくことになった。
今回の論考の題材は、2019年03月18日付のNewsweek日本語版の記事「◆日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ」(*1)である。
この記事を書いているのが、イギリスに居住していると思われる「木村正人氏」(別の木村さん)である。
表題を見ると、「また、韓国人の価値観に軸足を置いた駄論か?」との不信感が湧くのだが、その様な予断を排して記事を読むと、「「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ」と言っている対象が、あまり物事を深く考えていない所謂「断交厨」であり、一理ある事が分かる。
しかし、そうであるなら「日本人よ!・・・」と日本人総体を対象とするタイトルの付け方は不適切である。
同記事の最初の方で同氏は、韓国側の国際常識を逸脱した理不尽な事象として、「◆どんなに焚き付けられても」との小見出しで、3.1運動100周年記念演説での文在寅の根拠なき「7500人殺害」、2018年の自称「徴用工」判決、同年12月の韓国海軍による準戦闘行為である射撃統制レーダー照射事件及び今年2019年2月の日韓慰安婦合意破棄に関連しての文喜相の限度を超えた発言との4点を例示しており、それらについて「どんなに温厚で冷静な人でも反応しない方がおかしい」と、当たり前のことを書いている。
その上で、この「木村さん」は、「しかし日本は感情的にならず、現実的に対処した方が賢明だ。」と書いているのである。
日本人総体が「感情的」になっていると読めるこの部分には違和感を持ったので、木村正人氏がそう考える理由や、何が「賢明」なのか、との視点を念頭に読み進めたところ、最後の部分に、それらが書かれていた。
この部分が「木村正人氏」の「結論部分」だと認識した。
↓
<最後の「結論部分」を抜粋引用>
○文政権の背後には中国が控えている。日本はまず中国や北朝鮮の圧力に負けないよう防衛力と日米同盟の強化を図る必要がある。そのためには憲法改正は避けては通れない。
○中国や韓国との技術開発競争に勝ち抜かなければ日本の未来はない。韓国はいずれ中国にのみ込まれるだろう。「反韓・嫌韓」は負け犬の鬱憤晴らしにはなっても、現実問題の解決策にはならない。
○「反韓・嫌韓」の怖いところはいったん、その毒に侵されてしまうと、偏狭なナショナリズムのサイクルから永遠に抜け出せなくなることだ。これこそ韓国の思う壺なのだ。
○「反韓・嫌韓」をやる暇があったら、日本人はもっと勉強をして研究・開発に全身全霊をささげなければならない。
<抜粋引用終わり>
↓
ちょっと長めに引用したので、ベイグになっていると思われることから、この部分の論旨を以下にまとめてみた。
↓
1)文在寅政権下韓国は中国側につく。
2)同じ陣営となった「中国・韓国」との技術開発競争が始まる
3)現実を見ない「反韓・嫌韓」は単なる鬱憤晴らしで非生産的
4)日本人はもっと勉強をして研究・開発(技術開発)をしろ
これらのうち、同意できるのは、対象が所謂「断交厨」の様な、あまり物事を深く考えていない「日本人」と限定されている場合だけの「3)」のみである。
これが「日本人総体」に対して言っているなら、論評の価値はない。
この様な「論の「結論」」は「ちょっといただけない」「ダメじゃん」という評価にならざるを得ない。
その様に考える理由を以下に述べる。
先ず、1)の「文在寅政権下韓国は中国側につく」との「未来予測」は、現在の韓国・文在寅政権の望みをそのまま叶えてあげるものであり、この点がダメである。
我が国にとって望ましくない「文在寅の念願成就」を阻止する動きを現在、日米がしていることを総て素っ飛ばして、文在寅の思い通りになるとの決め付けを行っている。
「未来予測」であり、どうなるかは分からないのだが、可能性のうちの望ましくない1つだけを取り出して、それを結論の前提・所与の条件にしているのはいただけない。
この様な事を書くと、「オマエは親韓派かぁ!」と所謂「断交厨」からの批難が殺到するであろうが、以前の論考「「
日韓断交」で韓国を楽な立場にしてあげたいのか?」(*2)で述べた様に、「日韓断交」の軸足が「韓国を懲らしめる」に偏重しており、基本的軸足である「我が国日本の国益・日本人の幸福に資する日韓関係」から見れば、威勢だけは良い「日韓断交」スローガンは国益をむしろ毀損し、「現実的に対処した方が賢明だ」というものである。
勿論、それが「賢明」である為には、「以前の様な歪んだ日韓関係に戻る」という選択肢はない事は為念、付記しておく。
次に「2)」の「同じ陣営となって「中国・韓国」との技術開発競争が始まる」についても、同様である。
今や、華為(ファーウェー)が5G通信技術で世界をリードしており、それに対抗することは必要だ。その点については異論がない。しかし、同時に、華為の「技術」の源泉が実は中国自身によるものではなく、他国の知的財産の剽窃によるものだと分かっており、そうであるから、アメリカは、ペンス副大統領の昨年2018年10月の演説(*3)で、その様な事は許さないと宣言しており、華為のCFOの身柄拘束を同年12月に実践している。
華為は、我が国ニュースでは音声も表記も「ファーウェー」とされるが、表意文字の幹事では「華為」である。これは「中華の為」という意味である。
その様な動きが現実として起こっている状態があるのだが、こちらも、結論の前提・所与の条件として、中華側の願望が成就した状態が提示されており、「中国・韓国」との技術開発競争が始まる」と設定されていることには違和感がある。
マスコミが「米中貿易戦争」との用語で本質をずらして「報道」しているが、今や、アメリカは、ヘゲモニーチャレンジャーとして名乗りを上げた中国(*4)に対して、ヘゲモニーホルダーの地位を維持する為に本気で対中新冷戦を戦っており、その帰趨が決していない現状での「設定」としては、こちらも「可能性のうちの望ましくない1つだけを取り出している」との論理展開になっており、「ダメじゃん」となるのである。
その上で、「木村正人氏」は、上記の「4)」で「日本人はもっと勉強をして研究・開発(技術開発)をしろ」と技術の研究開発だけを述べているのである。
これが極論であることは、常識を持った方々には即時に理解できるであろう。
1億数千万人の日本人のうち、技術開発に従事している人数、或いは、今は学生で、将来、技術開発の世界で生きていきたいと考えている人の人数は、日本人総体の大部分とは言い難く、かなり比率的には低い一部となる。
これら技術開発をする貴重な人材を支援・管理・育成する方々を含めても、けして、日本人総体の大部分にはならないのは明らかなのだが、「「日本人は」と総体を対象にした文になっており、まったく相応しくない。
「木村正人氏」は、この様な「ちょっといただけない」「ダメじゃん」という評価になってしまう「結論」を書いてしまっているのである。
この様な「結論」を書く前に、「木村正人氏」は日韓の関係とイギリスとアイルランドの関係の対比をモチーフに論を展開している。
むしろ、この部分が最も多くの文字数を費やしており、論の中心部分であると言って良い。
氏の論の中心となる「隣接する二か国関係の対比」は、「英国の欧州連合(EU)離脱の取材でも、旧植民地と旧宗主国の関係はいずこも一筋縄ではいかないことを実感させられる。」で始まる。
ちょっと本筋からは逸れるが、「植民地」との語句には違和感がある。
朝鮮半島は併合であり植民地ではない事は史実である。
一方のイギリス・アイルランドも、当方の欧州史の既存知識では、併合と条約による英連邦離脱であったはずで、植民地ではない。
随分と前の知識なので、思い違いがあってはいけないので、調べてみたら、やはり併合であり、植民地ではなかった。
論の冒頭に、この様な認識違いが提示されると、その論の信憑性が疑われるので、この手のイデオロギーに傾斜した書き方はやめた方が良いと思う。
氏の論は、イギリスとアイルランドの歴史的経緯及び経済的関係性が述べられ、日韓の、それと対比させる手法で書かれている。
イギリスとアイルランドの関係で、いつも言われることは、アイルランド島の北部がUK=連合王国イギリスであり、北アイルランド以外が、「アイルランド共和国」との問題である。
アイルランドは1949年に英連邦から離脱・独立したのだが、アイルランド島の北部地域は、イギリスに留まったもので、その理由として宗派問題が背景にある。
この事は良く知られたことで、当方がまだ若い頃は、アイルランド帰属派のうち、過激なIRAがイギリスに対してテロ活動に継続していた時代であった。その後、住民投票で北アイルランドはイギリスだと決まり終息したものと認識している。
「宗派問題」と書いたのは、北アイルランドの問題が、キリスト教のカソリック・プロテスタント間の対立問題が背景にあるからである。
欧州の歴史では、宗派間戦争が重要なポイントとして存在しているのは常識である。
現在のイスラム圏・キリスト教圏のコンフリクトは、別宗教間の問題であるが、欧州の歴史では、キリスト教圏内の宗派戦争であった。「三十年戦争」の講和条約であるウェストファリア条約(1648年)以前の欧州は、異教はその存在さえ許さないとの、旧約聖書で見られる皆殺しが普通であったが、同条約後は、異なる宗派であっても、その存在を認めるものとのパラダイムの変換があったと認識している。
また「欧州史」と書いたが、これにはアメリカが含まれる。
プロテスタント達が欧州を離れ、北米大陸にメイフラワー号で渡ったのは1620年のことである。その背景も宗派問題である。
北米大陸のアメリカを含め「欧州史」としているのは、それが「西欧文明圏」での出来事だからである。これは、ハティントンが提唱した「9つの現代文明」の視点である。(*5)
とは言え、ウェストファリア条約で総てが変わったとは言わない。
パラダイムの変換が起こっても、変換以前の「旧意識」は残置し続ける。
その例として、以前の論考で述べた様に、大東亜戦争で「有色人種も人間」とのパラダイム変換が起こった1940年代後も、「自由の国・アメリカ」では1960年代になっても人種差別問題は起こり続けた。(*6)
宗派間の問題は、政治問題と混在し、北アイルランドでのテロ問題として、近年まで存在し続けた。
「木村正人氏」は、イギリスとアイルランドの関係と日韓の関係を対比させているのだが、肝心な問題を提示せずに、対比手法での論を進めている。
それは、文明圏の違いとの視点である。
イギリスとアイルランドは、同じ西欧文明圏である。宗派の違いはあっても同じ文明圏内の話である。
EU(及び、その前身のEC)の外形的部分だけを持ってきて、「アジアもEU体制を導入しよう!」とかの暴論は、随分と昔から存在した。
そこには、文明圏の違いとの視点がなく、単なる「中華思想・華夷秩序」の進展の為の詐欺話として登場するだけなので、そんな話が進展することはなく現在に至っている。
「文明圏の違い」との視点で見れば、朝鮮半島全域は、Sinic文明圏(シナ文明圏)であるのに対して、我が国は日本文明圏の国である。
「文明圏の違い」は決定的だ。価値観・世界観が異なる。
幸か不幸か、世界標準として適用されている西欧文明と日本文明は親和性があり、「文明圏の違い」を原理的な部分で認知し難くなっているので、「文明圏の違い」の決定的な差異への認知が、我々日本人には、あまり自覚がない。
また、日本文明の特徴の1つとして、一神教の発想をしない点も、認知を低くする要因となっている。「キリストさんは西洋担当の神様、イスラム教の神様は中東・アラブ担当の神様」の様な認知をするからである。
この様な誤解から、シナ文明圏との差異を相当数の日本人は認知していない。
しかし、現実問題としては、この「文明圏の差異」が、日韓の問題の、むしろ根本原因になっている。
その事は、文在寅が大統領選の最中から言っていた日韓慰安婦合意破棄、そして、それに関連しての文喜相の限度を超えた発言、日韓国交樹立条約である日韓基本条約を反故にする自称「徴用工」判決、韓国海軍による準戦闘行為である射撃統制レーダー照射事件、そして、3.1運動100周年記念演説及びその数日後の海軍士官学校卒業式での文在寅の演説等、の都度、指摘してきたことである。(*7)
その様な「文明圏の差異」問題に触れずに、日韓間の問題を、イギリス・アイルランド間の問題と対比させることは、相応しくない。
先の論考「韓国人の価値観での日本人向け記事・要らないでしょ。」の「木村教授」は、「韓国人の価値観」の代弁者であったが、今回の「木村正人氏」は、「韓国人の価値観」を脇に置いて、日韓間の問題を論じている。
その点を、当方は見逃せないなかったのである。
と言うことで、「木村正人氏」の「結論部分」は、以下の様に書き直す方が望ましいと考えている。
<結論部分>
○北朝鮮との統一を夢想する文政権の背後には中国が控えている。そういう構図からは、日本は対韓問題を「韓国1国との外交問題」だと捉えるのではなく、中国及び北朝鮮を含めた「特定アジア諸国連合」との視点で捉えることが肝要だ。その圧力に負けないよう防衛力と日米同盟の強化を図る必要がある。そのためには憲法改正は避けては通れない。
○「特定アジア諸国連合」と対峙する地政学的位置にある日本は、軍事力のみならず、国力の両輪のうちの、もう一方の経済力・技術力も維持・発展する必要性がある。
また、国力の一部である外交力も疎かにはできない。
「特定アジア諸国連合」とのパワーが出現することを防ぐことが必要である。
韓国は、朝鮮戦争停戦以降、Sinic文明圏の一員であるのに、東西冷戦構造下では同文明圏の中国・北朝鮮と軍事的・政治的に対峙する西側自由主義諸国の一員との立場にあった。
これは、心的には矛盾する立場であったが、自国維持には必須の立場であった。
東西冷戦構造がなくなると、韓国は、心的に整合する方向として、中国に近づいていった。
確かに、中国経済の大きな発展との要因はあるが、韓国の中国への接近は、それだけではなく、文明圏への回帰の表れでもある。
自分が属する文明圏への回帰は心的に自然ではなるのだが、政治的には、韓国の中国陣営への参加となり、その様な「特定アジア諸国連合」の出現は、我が国にとって望ましいことではない。その様な流れに歯止めをかける為には、日米ともに、韓国を無用に中国側に追いやる様な、「懲らしめ策」は相応しくないと考えている。
そういう視点からは、所謂「断交厨」の様な近視眼的言動は、戦略的間違いに該当する。
雰囲気だけの扇動者の話に乗ってしまっての「反韓・嫌韓」は、むしろ、我が国の国益・日本人の幸福を毀損するものである。
韓国は、小中華思想との歪んだ文化を持つ国である。そんな歪んだ韓国ではあるが、関わりを持たないと、益々その歪みを大きくする特性があるので、我が国は国際常識・国際標準に則り、対韓外交をしていくことが必要だ。
極端な排斥も無意味な友好も排除した、危険を監視するとの冷徹なる客観視的態度を以て、実情を把握し、韓国の歪みが拡大しない様に指摘することが必要だ。
○「反韓・嫌韓」をやる暇があったら、日本人の多くは、自分の専門に加え、もっと歴史、国際関係等の基礎知識を深め、何が正しいのかを見抜く目を養う努力に全身全霊をささげ、それらに基づき、自分の頭で考え、理解して判断していくことが求められている。
今回は以上である。
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【文末脚注】
(*1):Newsweek日本語版の記事
Newsweek日本語版HP 2019年03月18日(月)12時33分
木村正人 欧州インサイドReport
見出し:◆日本よ!「反韓・嫌韓」は時間の無駄だ
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2019/03/post-53.php小見出し:◆<いったんその毒に侵されてしまうと、偏狭なナショナリズムのサイクルから永遠に抜け出せなくなる。それこそ韓国の思う壺だ>
記事:○[ロンドン発]大恐慌(1929)しかり、第二次大戦(1949)しかり、天安門事件(1989)とベルリンの壁崩壊(1989)しかり......。「9」で終わる年は荒れるという。
○今から100年前の1919年には日本統治下の朝鮮で三・一独立運動が起き、第一次大戦後のベルサイユ条約で山東省の利権が日本に認められたことから中国では抗日の五・四運動が広がった。
○三・一独立運動から100年を迎えた3月1日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は「親日残滓(ざんし)の清算」を進めると演説した。「親日」とは韓国では日本統治下で日本の軍隊や警察に関わった人物を指すそうだ。
○日本人の耳にはギョッとするような響きを持つ「親日残滓」という言葉だが、韓国文化体育観光部の世論調査では韓国人の8割は「親日残滓」は清算されていないと回答している。
○その理由は政治家、高級官僚、財閥は親日の子孫に支配されていると考えている人が多いからだという。「親日残滓の清算」をテーマにした映画はロンドンの韓国レストランでも流されている。
小見出し:◆どんなに焚き付けられても
○文大統領は独立運動に関して「約7500人の朝鮮人が殺害された」と述べたことについて、日本の外務省は「歴史家の間でも争いがある数字だ」と反発した。
○韓国経済が減速するとともに、昨年初めには70%を超えていた文大統領の支持率は一時45%を割り込んだ。韓国の日本叩きは支持率の低迷と決して無関係ではない。
○昨年10月、徴用工問題で韓国大法院(最高裁)が日系企業の差し戻し上告を棄却、損害賠償の支払いを命じた。日系企業の韓国国内資産の差し押さえも始まった。
○昨年12月、韓国海軍艦艇が自衛隊哨戒機へ火器管制レーダーを照射。
○今年2月、韓日議員連盟会長を務めたこともある韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長が米ブルームバーグのインタビューに「戦争犯罪の主犯の息子」である日本の天皇が元慰安婦に謝罪すれば慰安婦問題は解決すると発言。
○慰安婦像問題に加えて、これだけ韓国側から焚き付けられれば、どんなに温厚で冷静な人でも反応しない方がおかしい。しかし日本は感情的にならず、現実的に対処した方が賢明だ。
○英国の欧州連合(EU)離脱の取材でも、旧植民地と旧宗主国の関係はいずこも一筋縄ではいかないことを実感させられる。
○日本が韓国を支配したのは1910年から35年間。日本がお手本とした英国がアイルランドを支配するようになったのは12世紀以降。1801年に併合されたが、その後のジャガイモ飢饉でアイルランド人は80万~150万人が死亡、150万~200万人が移住した。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2019/03/post-53_2.php○アイルランドが英国から正式に独立を果たしたのは第二次大戦後の1949年。北アイルランドは英国の統治下にとどまったが、カトリック系住民とプロテスタント系住民が北アイルランドの帰属について争った北アイルランド紛争では約3600人が犠牲になった。
小見出し:◆歴史問題の解決には長い時間がかかる
○その発端となった1968年の「血の日曜日」事件で北アイルランドの住民に向かって発砲した英軍兵士F(匿名)が起訴される方針がごく最近、確認されたばかりだ。
○1998年の「ベルファスト合意」で封印されたと思っていた北アイルランド紛争の古傷がブレグジット(英国のEU離脱)で傷口を開けてしまった。英国がEUから離脱すれば、北アイルランドとEUに残留するアイルランドの間に通関などの「目に見える国境」が復活する。
○「イングランドの困難はアイルランドのチャンス」という歴史的なスローガンがある。これを合言葉にアイルランドは第一次大戦に参戦した英国の背後でドイツと組み、独立を画策した。
○ブレグジットを逆手に取り、アイルランドのレオ・バラッカー首相は「北アイルランド紛争の悪夢を蘇らせてはならない」を合言葉にEUと組んで北アイルランドをEUの単一市場に残留させる作戦に出た。これを受け入れると、英国は北アイルランドを「割譲」するに等しい。
○ドイツのアンゲラ・メルケル首相がバラッカー首相を支持していることもアイルランド独立の歴史と不思議なパラレルを描く。
○将来の通商交渉が決裂しても「目に見える国境」を復活させないバックストップ(安全策)としてテリーザ・メイ英首相は英国全体をEUの関税同盟に残留させる案を出した。しかし、これが北アイルランドと保守党のナショナリストを逆上させてしまった。
○390億ポンドの離脱清算金を支払わされた上、EUやアイルランドに将来の通商交渉や国境問題を投げ出されると、EUの関税同盟に永遠に繋ぎ止められる恐れがある。それでは何のためにEUを離脱するのか分からなくなる。ブレグジット交渉が難航する背景はここにある。
○英国が表立ってアイルランドに言い返すことはないものの、北アイルランド自治政府の元アドバイザーがこんなアネクドートを教えてくれた。「英国がアイルランドの出してきた質問の答えを見つけると、アイルランドはすぐに質問を変えるんだ」
○日本の外交官がよく「韓国は日本が解決策を出すと、いつもゴールを動かす」とこぼしていたのを思い出した。しかし英国と日本の大きな違いは、英国は決して感情的にはならず、アイルランドを罵らないことだ。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2019/03/post-53_3.php○アイルランドの輸出先は米国25%、英国12%、ベルギー9.7%、ドイツ9%。輸入元は英国25%、米国21%、ドイツ10%、フランス8.9%。アイルランドと英国の経済はまさに一衣帯水の関係にある。ブレグジットで英国が沈めば、アイルランドも同時に沈むのだ。
○だからそこに問題を解決する糸口がある。
○一方、韓国の輸出先は中国25%、米国12%、ベトナム8%、香港5.8%、日本4.5%。輸入元は中国21%、日本11%、米国10%、ドイツ4.2%。
○しかも韓国と日本は電化製品、自動車、インフラ輸出で激しい競争を繰り広げている。国防や情報でも北朝鮮の脅威にさらされてきた韓国は、憲法9条に縛られる日本を頼りにしていない。だから韓国の物言いに遠慮がなくなってきたのだ。
○文政権の背後には中国が控えている。日本はまず中国や北朝鮮の圧力に負けないよう防衛力と日米同盟の強化を図る必要がある。そのためには憲法改正は避けては通れない。
○中国や韓国との技術開発競争に勝ち抜かなければ日本の未来はない。韓国はいずれ中国にのみ込まれるだろう。「反韓・嫌韓」は負け犬の鬱憤晴らしにはなっても、現実問題の解決策にはならない。
○「反韓・嫌韓」の怖いところはいったん、その毒に侵されてしまうと、偏狭なナショナリズムのサイクルから永遠に抜け出せなくなることだ。これこそ韓国の思う壺なのだ。
○「反韓・嫌韓」をやる暇があったら、日本人はもっと勉強をして研究・開発に全身全霊をささげなければならない。
<引用終わり>
(*2):以前の論考「「日韓断交」で韓国を楽な立場にしてあげたいのか?」
2018/11/12投稿:
「日韓断交」で韓国を楽な立場にしてあげたいのか?
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1051.html(*3):アメリカペンス副大統領の昨年2018年10月の演説。
2018/10/13投稿:
新冷戦状態にあるとの宣言・ペンス米国副大統領演説(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1033.html2018/10/16投稿:
新冷戦状態にあるとの宣言・ペンス米国副大統領演説(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1034.html2018/10/17投稿:
新冷戦状態にあるとの宣言・ペンス米国副大統領演説(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1035.html(*4):ヘゲモニーチャレンジャーとして名乗りを上げた中国
2018/10/11投稿:
ヘゲモニーチャレンジャー中国・事大主義小中華韓国
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1032.html(*5):ハティントンが提唱した「9つの現代文明」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%87%E6%98%8E%E3%81%AE%E8%A1%9D%E7%AA%81#/media/File:Clash_of_Civilizations_mapn2.png(*6):「有色人種も人間」とのパラダイム変換が起こった1940年代後も、「自由の国・アメリカ」では1960年代になっても人種差別問題は起こり続けた。
2015/11/07投稿:
【コラム】「人類」「全世界」の範囲
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-256.html2016/05/27投稿:
【コラム】1905年5月27日は人類史の転換点
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-423.html【ご参考】
2017/01/03投稿:
真珠湾オバマ演説1・2016/12/28
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-576.html(*7):「文明圏の差異」が、日韓の問題の、むしろ根本原因になっている。
<日韓慰安婦合意破棄>
2018/11/22投稿:
自分で解決する能力・意思がない韓国
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1059.html2019/01/30投稿:
「慰安婦財団」を解散し責任から逃げ出す韓国政府
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1101.html など
<文喜相の限度を超えた発言>
2019/02/10投稿:
文喜相の限度を超えた発言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1108.html2019/02/16投稿:
【追記】続・文喜相の限度を超えた発言・韓国語和訳の紹介
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1114.html など
<日韓基本条約を反故にする自称「徴用工」判決>
2018/11/03投稿:
徴用工・韓国「最高裁」判決雑感2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1046.html2018/11/13投稿:
わざわざ新日鉄本社に押し掛ける韓国側原告ら
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1052.html など
<準戦闘行為である射撃統制レーダー照射事件>
2019/01/07投稿:
韓国国防部動画の分析2・やっぱし「あの論法」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1085.html など
<3.1運動100周年記念演説>
2019/03/05投稿:
(資料編)文在寅3.1演説・日本は「慰安婦」「徴用工」の問題を解決せよ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1126.html2019/02/28投稿:
(資料編)「3.1運動100周年」考の関する歴史年表
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1123.html など
<海軍士官学校卒業式での文在寅の演説>
2019/03/07投稿:
「平和をつくるためには一層強力な国防力が必要だ」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1128.html2019/03/08投稿:
落穂ひろい・文在寅の海軍士官学校での軍拡宣言
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1129.html 1日1回ポチっとな ↓
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