落穂拾い・文在寅の海軍士官学校での軍拡宣言
- 2019/03/08
- 20:03
落穂拾い・文在寅の海軍士官学校での軍拡宣言

副題:文時寅の頭の中を垣間見ると、白頭山計画、南北統一朝鮮などの軽壮大な妄想が渦巻いている様である。文在寅の危険性を前回に引き続いて論考した。
前回の分析論考「「平和をつくるためには一層強力な国防力が必要だ」」(*1)は、ずいぶんと長い論考となり、また、時間切れとなった為に、幾つか触れてない点があったので、今回は、その「落穂拾い」である。
前回の分析論考で明示した様に、文在寅の演説は、日本を対象とした海軍軍拡宣言であり、その目的は日本征服であり、その様な妄想は、1984年に策定された「南北統一後の自主防衛戦略・民族生存戦略」である「白頭山計画」(*2)が、そのベースにあるものであった。
「白頭山計画」は、そもそも、その前提が「南北統一後」なので、現実世界での韓国の安全保障政策の根本である「北朝鮮からの脅威への対処」がない状態での計画であり、畢竟、空想が計画の前提になっているものである。
「今の現実に対処しなくて良い」が所与の条件になると、その計画のベースは途端に想念だけの世界となり、「白頭山計画」は韓国人の文明的基盤である小中華思想の世界(*3)に嵌り込み、東夷・禽獣である日本を主要敵国とする戦略となってしまっているのである。
この様な誤謬を基にした「白頭山計画」がベースにある文在寅の海軍士官学校での演説なのだから、その内容が、文在寅の数々の反日政策と相まって増幅され、日本制服の為の海軍軍拡話との稀有壮大な妄想となっているのである。
実現不可能な妄想であることは、文在寅の、この演説を取り上げた報道(*4)を読めば直感的に分かるものであるが、それに対して、アホだバカだとの罵詈雑言で反応するだけでは一過性の反応でしかなく、不十分だと考えている。
文在寅は、自分が大統領の地位にいる間に、北朝鮮統制下での南北統一を実現したがっており、今後、益々、その為の異常な政策を打ち出してくると予想される。
それらの異常な政策に対して、もぐら叩き的な個別反応をしていても仕方がない。
文在寅が彼の頭の中で描いている「理想像」を推定することで、今後、それに基づき発信される異常な政策の主旨・目的を理解する為には、何が、どの様に異常なのかを踏まえておくことが必要だと考えている。
その様な発想で、前回は時間切れ等で触れられなかった点を幾つか紹介・分析するものである。
それでは、それら「文在寅の言ったこと」を中央日報記事から抜粋引用する。
<抜粋引用開始>(付番は引用者・前回の付番をそのまま使用)
⑤:「われわれの周辺国に目を向けると、今は南北間軍事的緊張緩和が最優先課題だが、同時に世界4大軍事強国が韓半島を取り囲んでいる」
⑥:「平和を単に守ることを越えて平和を作り出すためにはさらに強い国防力が必要だ」
⑦:「新しい韓半島を守る海軍」
⑧:「今年は三・一独立運動と大韓民国臨時政府100年の節目の年で、新しい100年は真の国民の国家、平和な韓半島を完成する100年」、「100年前も今も変わったことはない。われわれが強い海洋力を土台にわが海を守り、大洋に進むことができる時になってこそ強い国になるだろう」
⑪:「今日の海軍士官学校第73期新任海軍将校に国軍統帥権者として初めて命令を下す」、「ともにつらい訓練を経て積んだ戦友愛、世界の海で経験した同期との思い出を忘れずに、愛するがゆえに恥ずかしくない祖国、献身するに惜しくない祖国を作ることに先頭に立ってほしい」
<抜粋引用終わり>
↓
文在寅が、彼の頭の中で思い描く「理想像」が表れているのは、上記の抜粋引用のうちの⑤から続く部分である。
文在寅は韓国の地政学的位置として、「世界4大軍事強国が韓半島を取り囲んでいる」との認識を示している。ここで言う「4大軍事強国」とは、多分、大陸側の中露と海洋側の日米のことであろう。
その上で、「・・・強い国防力が必要だ」、「新しい韓半島を守る海軍」、「真の国民の国家、平和な韓半島を完成する100年」、「大洋に進むことができる時になってこそ強い国になるだろう」との未来ビジョンを示している。
この文脈からは、文在寅の頭の中にある「自国」は、現在の朝鮮半島南半部の韓国ではなく、南北統一朝鮮であることがうかがわれる。
文在寅は「韓国」という国名を使わず、もっぱら「韓半島(朝鮮半島の韓国での呼称)」と言っているのである。
また、中露日米との関係性については、現在の米韓同盟を無視して、中露日米を「朝鮮半島に対して影響力を行使してくる国々」との位置付けで同列にして語っている。
それらの国々に対して、「韓半島(要するに統一朝鮮)」は、海軍軍拡で対抗し、「大洋に進む」と宣言している・
これは、要するに「ウリは、中露日米と同格になるニダ」との願望を言っているのである。
これは、アメリカからすれば、文在寅は米韓同盟を維持する気がないと理解するであろう文脈である。
また、前回指摘した通り、この「大洋に進む」での「大洋」との一般表現について、具体的な地域名として登場するのが「北極航路」である。
これは、ロシアからすれば、文時寅は俺達の裏庭に挨拶もなしに侵出する気か?と理解されるであろう。
同様、我が国からすれば、むしろロシア側が積極的な、ロシアの欧州圏にあるヤマルで生産されたLNGを我が国・アジア地域に持ってくるルートとして、北極航路について既に検討しており、そういう話を勝手に上書きする様な文在寅の演説は、極めて失礼、喧嘩を売っていると理解するものである。
文在寅の演説のこの部分から想起されるのは、「歪んだ小中華思想の暴走」である。
文在寅の頭の中では、南北統一朝鮮は核保有国であり、中露米と同格な存在になってしまっているのであろう。
ところが、南北朝鮮の文化は小中華思想であり、その小中華思想はシナ大陸のSijic文明の亜流であり、華夷秩序を、その根幹とする。
この為に、朝鮮半島文化では対等互恵の概念はなく、他者との関係は、常に上下関係となる。
この様な小中華思想・朝鮮文化では、「○○と同格」との状態は、短時間のうちに「ウリの方が上」との暴走に至る。
この現象が歴史上に表れたのが、17世紀、李氏朝鮮期での清への造反である。(*5)
「三跪九叩頭」「迎恩門」で知られる、李氏朝鮮による清への造反は、李氏朝鮮がそれまで事大していた漢民族・明が滅び、「中華の地の王朝」が満州族・清に変わった際に起こったものである。
李氏朝鮮側の「理屈」では、東夷・北狄である禽獣・満州族は中華にあらず、中華の中に小中華・人間様の朝鮮は満州族より優れている、との名分上だけの妄想が暴走したものである。結果は、清の二代目皇帝であるホンタイジに成敗され、以降、朝鮮王は迎恩門での三跪九叩頭の礼を以て清の使者をお迎えすることになったものである。
文在寅の演説から垣間見える文在寅の発想は、約400年前の、この故事の再来の様に見えるのである。如何であろう、穿ち過ぎであろうか?
この様に考えると、文在寅が想い描く統一朝鮮は、中露日米全方位ケンカ外交をしてしまう事になってしまうのだが、逆に言えば、文在寅は米韓同盟終了と日本征服方針以外は明示していない。一方、日清戦争以前の段階の様な「シナの地の王朝に事大し、属国になる」ことを望んでいるとは読めないことから、「中露日米全方位ケンカ外交上等!」ぐらいのことを考えている可能性がある。
文在寅の想い描く、核兵器を保有した南北統一朝鮮との「祖国」が、現実化することはないと思う。
そう思う根拠は、実現への具体策・ロードマップがないからだ。
これは「文在寅が発表していない」という話ではない。
「現実世界で「核兵器を保有した南北統一朝鮮」を実現化する」との命題に対して、少なくとも当方は、現実的な具体策やロードマップを構築できないからである。
また、文在寅は、大統領就任から既に1年10ヶ月が経っているが、彼が想い描く未来図の実現の為の具体的布石は見たことがない。
やっている事は、北朝鮮への従属的アプローチと、我が国との国際条約を反故にするとの、国際常識とは真逆なマイナス方向の動きばかりである。
南北朝鮮だけが、ただ単に「核兵器を保有した南北統一朝鮮」を主観的に宣言したとしても、それを主権国家として国際社会が認め、核保有が黙認され、最貧国北朝鮮との統一後の自国民経済を立て直し、現在の韓国のポジションであるG20の一員、OECD加盟国、GDP世界15位圏との位置をそのまま確保できると考えているのなら、それは世間知らずのお子ちゃまである。
これらの想起される問題の解決、或いは問題発生を未然に防止する布石をしている動きは見られない。我が国安倍首相が「日本をトリモロス」「戦後構造の取り除き」(*6)を目標にした政権初期の布石の成果を見れば、実現への具体策・ロードマップの策定と実行がいかに大切なものか分かるはずであるのに、文在寅は何もしていない。
文在寅は、現在の朝鮮半島南半部の状態、北朝鮮との分断状態を「好ましくない状態」だと認識している。
それは、上記引用の最後の部分の「恥ずかしくない祖国、献身するに惜しくない祖国を作ることに先頭に立ってほしい」で分かる。
海軍士官に就任する学生達を相手に、「未来は」「恥ずかしくない祖国」であり、「献身するに惜しくない祖国」にすると言っているのである。
これは「現在は」恥ずかしくて、献身するに値しないと言っているのと同じである。
尚、「献身」とのキーワードは、数日前の論考「(資料編)文在寅3.1演説・日本は「慰安婦」「徴用工」の問題を解決せよ」(*7)で紹介した新造語「献身的包容国家」での「献身」と同じ意味である。
海軍士官学校演説が3月5日であり、3.1演説と僅か数日の差しかない。
僅か数日で、同一の単語の意味が大きく違うことはあり得ないのだから、これは同じ意味だと解することが正しい。
3.1演説での「献身的包容国家」とは、北朝鮮の金王朝独裁(*8)を正当化する「主体思想」の国教化・韓国の主体思想国家化であることを述べている通り、文在寅は、海軍士官学校での演説でも、その旨を述べていると解されるのである。
文在寅の想い描く「未来の祖国」は実に手前勝手な妄想でしかないのだが、「海軍力の軍拡」自体は合理的である。
何故なら、「統一朝鮮の軍事力」を想定した場合、もっとも弱いのが海軍力であるからだ。
北朝鮮の軍隊は、陸軍一辺倒であり、空軍は旧式機ばかりであり、海軍に至っては哨戒艇・ガンボート程度の戦力しかない。
仮に、南北朝鮮が統一した場合、その戦力は陸軍だけが異常に多い歪なものになる。
その場合、南北統一後の朝鮮軍を整理するとしたら、過大な南北陸軍と過小な南北海軍との構成は、陸上兵力を減らし、海上兵力を増強するものとなる。
北朝鮮が陸上兵力を減少させることはなく、同様、海軍を整備する金も技術もないのだから、韓国側が、その様な動きをすると予想される。
もしも、今後、文在寅が韓国陸軍を縮小し始めたら、この分析が正しいことの証拠になる。
同様、南北統一後の海軍の主力は「元韓国海軍」となるので、韓国海軍への文在寅の統制は厳しいものになる。今後、海軍が文在寅の意向に沿う様な動きが出れば、それも、この分析が正しいことの証拠になる。
そういう目で、今後の韓国軍の動向を見ていきたい。
今回「落穂拾い」としては以上である。
前回の論考と合わせ、文在寅がかなり危険な考えの持ち主であるかを御理解いただけたなら幸である。
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【文末脚注】
(*1):前回の分析論考
2019/03/07投稿:
「平和をつくるためには一層強力な国防力が必要だ」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1128.html
(*2):日本征服との妄想は、1984年に策定された「南北統一後の自主防衛戦略・民族生存戦略」である「白頭山計画」由来
2017/06/13投稿:
「白頭山計画」・実現性なき軽壮大な妄想
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-692.html
【ご参考】
2017/06/14投稿:
装備品を見て韓国のドクトリンを推定する(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-693.html
2017/06/15投稿:
装備品を見て韓国のドクトリンを推定する(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-694.html
(*3):韓国人の文明的基盤である小中華思想の世界
2018/11/08投稿:
徴用工・韓国「最高裁」判決雑感5Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1049.html
(*4):文在寅の演説を取り上げた報道・:韓国紙・中央日報の記事
中央日報日本語版 2019年03月05日17時54分
見出し:◆揚陸艦「独島」に乗った文大統領「平和を守ることを越えて作り出さなければ」
https://japanese.joins.com/article/903/250903.html
※記事本文はリンク先、または、前回論考の文末脚注でお読みいただきたい。
(*5):「三跪九叩頭」「迎恩門」で知られる李氏朝鮮による清への造反
2017/01/31投稿:
憲法9条が韓国をOECD加盟国にした・地政学的基礎編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-594.html
【ご参考】
2019/02/28投稿:
(資料編)「3.1運動100周年」考に関する歴史年表
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1123.html
(*6):戦後構造の取り除き
2018/10/02投稿:
安倍首相・国連演説2018(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1025.html
【ご参考】
2018/10/01投稿:
安倍首相・国連演説2018(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1024.html
2018/10/03投稿:
安倍首相・国連演説2018(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1026.html
(*7):新造語「献身的包容国家」での「献身」とは韓国の主体思想国家化のキーワード
2019/03/05投稿:
(資料編)文在寅3.1演説・日本は「慰安婦」「徴用工」の問題を解決せよ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1126.html
(*8):北朝鮮の金王朝独裁
2017/03/17投稿:
北朝鮮「金王朝」との皮肉
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-630.html
【ご参考】
2019/03/01投稿:
米朝会談・出口は入口にはなりません
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1124.html
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副題:文時寅の頭の中を垣間見ると、白頭山計画、南北統一朝鮮などの軽壮大な妄想が渦巻いている様である。文在寅の危険性を前回に引き続いて論考した。
前回の分析論考「「平和をつくるためには一層強力な国防力が必要だ」」(*1)は、ずいぶんと長い論考となり、また、時間切れとなった為に、幾つか触れてない点があったので、今回は、その「落穂拾い」である。
前回の分析論考で明示した様に、文在寅の演説は、日本を対象とした海軍軍拡宣言であり、その目的は日本征服であり、その様な妄想は、1984年に策定された「南北統一後の自主防衛戦略・民族生存戦略」である「白頭山計画」(*2)が、そのベースにあるものであった。
「白頭山計画」は、そもそも、その前提が「南北統一後」なので、現実世界での韓国の安全保障政策の根本である「北朝鮮からの脅威への対処」がない状態での計画であり、畢竟、空想が計画の前提になっているものである。
「今の現実に対処しなくて良い」が所与の条件になると、その計画のベースは途端に想念だけの世界となり、「白頭山計画」は韓国人の文明的基盤である小中華思想の世界(*3)に嵌り込み、東夷・禽獣である日本を主要敵国とする戦略となってしまっているのである。
この様な誤謬を基にした「白頭山計画」がベースにある文在寅の海軍士官学校での演説なのだから、その内容が、文在寅の数々の反日政策と相まって増幅され、日本制服の為の海軍軍拡話との稀有壮大な妄想となっているのである。
実現不可能な妄想であることは、文在寅の、この演説を取り上げた報道(*4)を読めば直感的に分かるものであるが、それに対して、アホだバカだとの罵詈雑言で反応するだけでは一過性の反応でしかなく、不十分だと考えている。
文在寅は、自分が大統領の地位にいる間に、北朝鮮統制下での南北統一を実現したがっており、今後、益々、その為の異常な政策を打ち出してくると予想される。
それらの異常な政策に対して、もぐら叩き的な個別反応をしていても仕方がない。
文在寅が彼の頭の中で描いている「理想像」を推定することで、今後、それに基づき発信される異常な政策の主旨・目的を理解する為には、何が、どの様に異常なのかを踏まえておくことが必要だと考えている。
その様な発想で、前回は時間切れ等で触れられなかった点を幾つか紹介・分析するものである。
それでは、それら「文在寅の言ったこと」を中央日報記事から抜粋引用する。
<抜粋引用開始>(付番は引用者・前回の付番をそのまま使用)
⑤:「われわれの周辺国に目を向けると、今は南北間軍事的緊張緩和が最優先課題だが、同時に世界4大軍事強国が韓半島を取り囲んでいる」
⑥:「平和を単に守ることを越えて平和を作り出すためにはさらに強い国防力が必要だ」
⑦:「新しい韓半島を守る海軍」
⑧:「今年は三・一独立運動と大韓民国臨時政府100年の節目の年で、新しい100年は真の国民の国家、平和な韓半島を完成する100年」、「100年前も今も変わったことはない。われわれが強い海洋力を土台にわが海を守り、大洋に進むことができる時になってこそ強い国になるだろう」
⑪:「今日の海軍士官学校第73期新任海軍将校に国軍統帥権者として初めて命令を下す」、「ともにつらい訓練を経て積んだ戦友愛、世界の海で経験した同期との思い出を忘れずに、愛するがゆえに恥ずかしくない祖国、献身するに惜しくない祖国を作ることに先頭に立ってほしい」
<抜粋引用終わり>
↓
文在寅が、彼の頭の中で思い描く「理想像」が表れているのは、上記の抜粋引用のうちの⑤から続く部分である。
文在寅は韓国の地政学的位置として、「世界4大軍事強国が韓半島を取り囲んでいる」との認識を示している。ここで言う「4大軍事強国」とは、多分、大陸側の中露と海洋側の日米のことであろう。
その上で、「・・・強い国防力が必要だ」、「新しい韓半島を守る海軍」、「真の国民の国家、平和な韓半島を完成する100年」、「大洋に進むことができる時になってこそ強い国になるだろう」との未来ビジョンを示している。
この文脈からは、文在寅の頭の中にある「自国」は、現在の朝鮮半島南半部の韓国ではなく、南北統一朝鮮であることがうかがわれる。
文在寅は「韓国」という国名を使わず、もっぱら「韓半島(朝鮮半島の韓国での呼称)」と言っているのである。
また、中露日米との関係性については、現在の米韓同盟を無視して、中露日米を「朝鮮半島に対して影響力を行使してくる国々」との位置付けで同列にして語っている。
それらの国々に対して、「韓半島(要するに統一朝鮮)」は、海軍軍拡で対抗し、「大洋に進む」と宣言している・
これは、要するに「ウリは、中露日米と同格になるニダ」との願望を言っているのである。
これは、アメリカからすれば、文在寅は米韓同盟を維持する気がないと理解するであろう文脈である。
また、前回指摘した通り、この「大洋に進む」での「大洋」との一般表現について、具体的な地域名として登場するのが「北極航路」である。
これは、ロシアからすれば、文時寅は俺達の裏庭に挨拶もなしに侵出する気か?と理解されるであろう。
同様、我が国からすれば、むしろロシア側が積極的な、ロシアの欧州圏にあるヤマルで生産されたLNGを我が国・アジア地域に持ってくるルートとして、北極航路について既に検討しており、そういう話を勝手に上書きする様な文在寅の演説は、極めて失礼、喧嘩を売っていると理解するものである。
文在寅の演説のこの部分から想起されるのは、「歪んだ小中華思想の暴走」である。
文在寅の頭の中では、南北統一朝鮮は核保有国であり、中露米と同格な存在になってしまっているのであろう。
ところが、南北朝鮮の文化は小中華思想であり、その小中華思想はシナ大陸のSijic文明の亜流であり、華夷秩序を、その根幹とする。
この為に、朝鮮半島文化では対等互恵の概念はなく、他者との関係は、常に上下関係となる。
この様な小中華思想・朝鮮文化では、「○○と同格」との状態は、短時間のうちに「ウリの方が上」との暴走に至る。
この現象が歴史上に表れたのが、17世紀、李氏朝鮮期での清への造反である。(*5)
「三跪九叩頭」「迎恩門」で知られる、李氏朝鮮による清への造反は、李氏朝鮮がそれまで事大していた漢民族・明が滅び、「中華の地の王朝」が満州族・清に変わった際に起こったものである。
李氏朝鮮側の「理屈」では、東夷・北狄である禽獣・満州族は中華にあらず、中華の中に小中華・人間様の朝鮮は満州族より優れている、との名分上だけの妄想が暴走したものである。結果は、清の二代目皇帝であるホンタイジに成敗され、以降、朝鮮王は迎恩門での三跪九叩頭の礼を以て清の使者をお迎えすることになったものである。
文在寅の演説から垣間見える文在寅の発想は、約400年前の、この故事の再来の様に見えるのである。如何であろう、穿ち過ぎであろうか?
この様に考えると、文在寅が想い描く統一朝鮮は、中露日米全方位ケンカ外交をしてしまう事になってしまうのだが、逆に言えば、文在寅は米韓同盟終了と日本征服方針以外は明示していない。一方、日清戦争以前の段階の様な「シナの地の王朝に事大し、属国になる」ことを望んでいるとは読めないことから、「中露日米全方位ケンカ外交上等!」ぐらいのことを考えている可能性がある。
文在寅の想い描く、核兵器を保有した南北統一朝鮮との「祖国」が、現実化することはないと思う。
そう思う根拠は、実現への具体策・ロードマップがないからだ。
これは「文在寅が発表していない」という話ではない。
「現実世界で「核兵器を保有した南北統一朝鮮」を実現化する」との命題に対して、少なくとも当方は、現実的な具体策やロードマップを構築できないからである。
また、文在寅は、大統領就任から既に1年10ヶ月が経っているが、彼が想い描く未来図の実現の為の具体的布石は見たことがない。
やっている事は、北朝鮮への従属的アプローチと、我が国との国際条約を反故にするとの、国際常識とは真逆なマイナス方向の動きばかりである。
南北朝鮮だけが、ただ単に「核兵器を保有した南北統一朝鮮」を主観的に宣言したとしても、それを主権国家として国際社会が認め、核保有が黙認され、最貧国北朝鮮との統一後の自国民経済を立て直し、現在の韓国のポジションであるG20の一員、OECD加盟国、GDP世界15位圏との位置をそのまま確保できると考えているのなら、それは世間知らずのお子ちゃまである。
これらの想起される問題の解決、或いは問題発生を未然に防止する布石をしている動きは見られない。我が国安倍首相が「日本をトリモロス」「戦後構造の取り除き」(*6)を目標にした政権初期の布石の成果を見れば、実現への具体策・ロードマップの策定と実行がいかに大切なものか分かるはずであるのに、文在寅は何もしていない。
文在寅は、現在の朝鮮半島南半部の状態、北朝鮮との分断状態を「好ましくない状態」だと認識している。
それは、上記引用の最後の部分の「恥ずかしくない祖国、献身するに惜しくない祖国を作ることに先頭に立ってほしい」で分かる。
海軍士官に就任する学生達を相手に、「未来は」「恥ずかしくない祖国」であり、「献身するに惜しくない祖国」にすると言っているのである。
これは「現在は」恥ずかしくて、献身するに値しないと言っているのと同じである。
尚、「献身」とのキーワードは、数日前の論考「(資料編)文在寅3.1演説・日本は「慰安婦」「徴用工」の問題を解決せよ」(*7)で紹介した新造語「献身的包容国家」での「献身」と同じ意味である。
海軍士官学校演説が3月5日であり、3.1演説と僅か数日の差しかない。
僅か数日で、同一の単語の意味が大きく違うことはあり得ないのだから、これは同じ意味だと解することが正しい。
3.1演説での「献身的包容国家」とは、北朝鮮の金王朝独裁(*8)を正当化する「主体思想」の国教化・韓国の主体思想国家化であることを述べている通り、文在寅は、海軍士官学校での演説でも、その旨を述べていると解されるのである。
文在寅の想い描く「未来の祖国」は実に手前勝手な妄想でしかないのだが、「海軍力の軍拡」自体は合理的である。
何故なら、「統一朝鮮の軍事力」を想定した場合、もっとも弱いのが海軍力であるからだ。
北朝鮮の軍隊は、陸軍一辺倒であり、空軍は旧式機ばかりであり、海軍に至っては哨戒艇・ガンボート程度の戦力しかない。
仮に、南北朝鮮が統一した場合、その戦力は陸軍だけが異常に多い歪なものになる。
その場合、南北統一後の朝鮮軍を整理するとしたら、過大な南北陸軍と過小な南北海軍との構成は、陸上兵力を減らし、海上兵力を増強するものとなる。
北朝鮮が陸上兵力を減少させることはなく、同様、海軍を整備する金も技術もないのだから、韓国側が、その様な動きをすると予想される。
もしも、今後、文在寅が韓国陸軍を縮小し始めたら、この分析が正しいことの証拠になる。
同様、南北統一後の海軍の主力は「元韓国海軍」となるので、韓国海軍への文在寅の統制は厳しいものになる。今後、海軍が文在寅の意向に沿う様な動きが出れば、それも、この分析が正しいことの証拠になる。
そういう目で、今後の韓国軍の動向を見ていきたい。
今回「落穂拾い」としては以上である。
前回の論考と合わせ、文在寅がかなり危険な考えの持ち主であるかを御理解いただけたなら幸である。
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【文末脚注】
(*1):前回の分析論考
2019/03/07投稿:
「平和をつくるためには一層強力な国防力が必要だ」
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1128.html
(*2):日本征服との妄想は、1984年に策定された「南北統一後の自主防衛戦略・民族生存戦略」である「白頭山計画」由来
2017/06/13投稿:
「白頭山計画」・実現性なき軽壮大な妄想
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-692.html
【ご参考】
2017/06/14投稿:
装備品を見て韓国のドクトリンを推定する(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-693.html
2017/06/15投稿:
装備品を見て韓国のドクトリンを推定する(後編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-694.html
(*3):韓国人の文明的基盤である小中華思想の世界
2018/11/08投稿:
徴用工・韓国「最高裁」判決雑感5Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1049.html
(*4):文在寅の演説を取り上げた報道・:韓国紙・中央日報の記事
中央日報日本語版 2019年03月05日17時54分
見出し:◆揚陸艦「独島」に乗った文大統領「平和を守ることを越えて作り出さなければ」
https://japanese.joins.com/article/903/250903.html
※記事本文はリンク先、または、前回論考の文末脚注でお読みいただきたい。
(*5):「三跪九叩頭」「迎恩門」で知られる李氏朝鮮による清への造反
2017/01/31投稿:
憲法9条が韓国をOECD加盟国にした・地政学的基礎編
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-594.html
【ご参考】
2019/02/28投稿:
(資料編)「3.1運動100周年」考に関する歴史年表
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1123.html
(*6):戦後構造の取り除き
2018/10/02投稿:
安倍首相・国連演説2018(中編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1025.html
【ご参考】
2018/10/01投稿:
安倍首相・国連演説2018(前編)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1024.html
2018/10/03投稿:
安倍首相・国連演説2018(後編)Final
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1026.html
(*7):新造語「献身的包容国家」での「献身」とは韓国の主体思想国家化のキーワード
2019/03/05投稿:
(資料編)文在寅3.1演説・日本は「慰安婦」「徴用工」の問題を解決せよ
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1126.html
(*8):北朝鮮の金王朝独裁
2017/03/17投稿:
北朝鮮「金王朝」との皮肉
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-630.html
【ご参考】
2019/03/01投稿:
米朝会談・出口は入口にはなりません
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-1124.html
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