実際とは真逆の話を提示する朝日の社説
- 2018/10/19
- 22:57
実際とは真逆の話を提示する朝日の社説

副題:「反原発ありき」での牽強付会。夜間に発電しない太陽光発電は、けして基盤発電にはなり得ない。それを隠した「社説」など笑止千万。それが一帯一路への忖度であるのなら、猛烈に危険な代物だ。
朝日新聞は、相変わらず「報道しない自由」を行使して、国民の知る権利を毀損し続けており、他国の利益を忖度したかの様な「報道」をしている事に呆れている。
先般の朝日新聞の社説(*1)を読み、この様に感じたので少々述べたい。
朝日社説の見出しは「太陽光の停止 電力捨てない工夫を」である。
内容は、九州地区の電力供給責任を負っている九州電力が、先般行った電力供給安定性確保措置の1つに、九州地区での電力供給が過剰となった際に、太陽光発電等から生じた電力を系統から遮断する措置があり、それに「苦言を呈する」との体裁で書かれたものであった。
一般的な感覚で、「折角、太陽光発電で発電しているのに、それを使わないのはもったいない」となるのは自然なことである。
しかし、それは、社会基盤である発電・供給システムが抱える科学的な問題点を考慮していない情緒的な感覚であり、必ずしも正しくないのである。
朝日新聞の社説は、そういう科学的に解決が難しい問題を巧みに隠して、一般的感覚に訴えかけ、朝日の本音である「原発いらない」へと読む人を誘導するもので悪質である。
それでは、具体的に、何を隠しているのかを指摘していく。
朝日社説の冒頭部分は、読者が持つであろう「一般的感覚」を踏み台にして、朝日が望む「議論の土俵」を提示することから始まる。
それに続き、起こっていることの大枠を説明しており、この事実部分は概ね正確である。
これらは、朝日のお家芸である。
朝日新聞1面下段のコラム「変声珍語」や「粗流子」などで常用される論法である。
最初に正しい事を述べ、あたかも正論を述べているかの様な印象を読者に与えながら、その結論がぶっ飛んだトンデモ論へと飛躍する論法である。
また朝日が望む「議論の土俵」が提示されるとの手法は、朝日が望まない「議論すべき視点」を排除する為の手法である。
<朝日社説の冒頭部分を抜粋引用>
○資源が乏しい日本で、すぐ使える自然のエネルギーを捨ててしまうのは、何とももったいない。最大限活用する方法を考えることが重要だ。
○九州電力が、太陽光発電の一部の事業者に、一時的な稼働停止を求める措置に踏み切った。昼間に管内の供給力が需要を上回り、電力が余りそうになったためだ。需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応で、国が定めたルールに基づく。離島を除けば、全国で初めて実施された。
○九州は日照に恵まれ、太陽光発電が普及している。九電は日中、火力発電の出力抑制や、余剰電力で発電用の水をくみ上げる揚水の活用などで対応してきたが、乗り切れなくなった。
<引用終わり>
最初の段落は、上記した「一般的感覚に訴えかける」部分である。そして、朝日が望まない「議論すべき視点」を排除する為に「すぐ使える自然のエネルギーを・・・最大限活用する方法を考えることが重要だ」との「土俵」を提示している。
この「土俵」は、「自然エネルギーを最大限活用することが良いことなのか?」、「安定的電力供給体制を自然エネルギーの最大限活用で安価・効率的に維持できるのか?」という根本的な問題点を排除するものである。
排除手法であるとの指摘がない場合、なんどなく、漠然と「自然エネルギーは「すぐ使える」もので、最大限活用する事が重要なんだなぁ」と刷り込まれて、フラフラと朝日が設定する「議論の土俵」に登って考えることになってしまうであろう。
次の段落からが「最初に正しい事を述べる」部分である。
概ね事実を提示しているので詳細には指摘しないが、1点だけ述べる。
「需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応」と書いてあるが、九電の事例は、「供給過剰」の話である。一方、「供給過小」の場合も大停電が起きてしまうとの問題もある。
先般(2018年9月6日)の北海道地震で広域・長期の停電が起こった事(*2)を記憶していると思う。
あれは、北海道地区の電力供給責任を負っている北海道電力での話であるが、札幌の南、千歳から更に南の苫小牧東部にある火力発電所が北海道で使用する電力の約半分を供給しており、それが地震により緊急停止したことで、供給過小となり、発電・供給システムが機能しなくなり、一挙に北海道全域で大停電となってしまった事例である。
北海道の事例は、供給が止まってしまった事例だが、例えば、真夏に電力需要が増大しても同様の「供給過小」状態が発生する。
要するに文字にすると「需給バランス・大停電」となってしまうのだが、我々国民の生活に直結している発電・送電網・需要先消費というシステムを安定させるのは、実際は技術的には相当にセンシティブなのである。
その点を「注目点」にしていない事は、本当は「問題あり」なのである。
冒頭以降の朝日社説の中段は、いよいよ朝日が設定した「土俵」の上で話が進んでいく。
「再生可能エネルギーを伸ばしていく」という事が「前提」となった話が進んでいく。
その上で、あたかも「再生可能エネルギーの問題点ぐらいわかっていますよ」的なエクスキューズを述べている。
その部分を以下に引用する。
<朝日社説を抜粋引用>
○今後、再生可能エネルギーを伸ばしていくと、発電停止は各地で起きる可能性がある。事業者の収益を圧迫し、普及を妨げかねない。これを避けるには、天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ。電力業界と政府は対策を急がねばならない。
<引用終わり>
この中で述べられている「天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ」の部分が、「再生可能エネルギーの問題点ぐらいわかっていますよ」のエクスキューズなのである。
簡単な話なのだが、太陽光発電は、夜間は発電しない。また、雨天・曇天時には発電量が極端に少なくなる。風力発電も風が止む時には発電しないし、風力が弱い時には発電量が低下する。
そういう宿命を負った発電方式は、基盤発電には向かないのである。
「夜暗くなったら電気を使わず寝ましょう」などは、個人が趣味でやる話であり、社会全体が、そんな近代を否定する様事は成り立たないのである。
1年365日・24時間、いつでも安定的な電力を供給し、それを国民が享受できる社会基盤の維持は、重要な社会的な使命である。
科学的に基盤発電となり得ない太陽光・風力だけでは、この重要な使命を果たせないのだから、朝日社説でさえも「出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ」と書いているのである。
この文章も、実は主客逆転している。
「太陽光や風力」が発電の主力であることが。あたかも「所与の前提」であるが如き文章である。
もしも仮に、出力変動することが宿命である太陽光・風力を発電の主力とした場合、風が止まった夜間の需要を賄う為に、「主力電源が供給していた電力量と同じ電力量を供給する太陽光・風力とは違う発電設備を別途用意しておく」ことが必要になる。
「主力」なのだから、相当量の電力を「ならす」話である。
この様な話は、「需要量に必要な電力量以上の電力量を別途発電する別の発電設備が必要」という話に他ならない。要するに、朝日社説は、経済性などまったく考えていないという事だ。
「経済性を無視した設備投資」を電力会社に強要すれば、それは電力料金を払っている我々国民が最終負担者として、必要以上の電気代負担にさらされるという結末になるしかない話なのである。朝日の社説が悪質だと述べたのは、この様な話が複数含まれているからである。
引用した部分の最後は、「電力業界と政府は対策を急がねばならない。」である。
お分かりの様に、「無理筋話の解決策、つまり現実的な策が存在しない話の解決を他者に丸投げしている」という無責任な態度なのである。
その様な無責任な態度を糊塗する為に、あたかも何かの策がある様なことを、この次の段落で書いているのであるが、実際のところ、その何れもが「根本的な解決策にはなり得ない」ことが既に分かっているものである。
<朝日社説を抜粋引用>
○電気をためる仕組みには、大容量の蓄電池や揚水発電がある。広域の送電線網を通して他地域に送るのも有効だ。ただ、設備の増強には多くの費用がかかり、だれが負担するかが課題になる。各地の事情に応じて効率よく整備することが大切だ。低コストの蓄電池など、技術開発への政策支援も必要になる。
○家庭や事業所でできる工夫も広げたい。たとえば、給湯器などの機器を太陽光の出力ピーク時に合わせて使う方法だ。この時間帯の電気料金を安くすれば、利用を誘導できる。電力会社は知恵を絞ってほしい。
<引用終わり>
「夜間に発電しない太陽光発電」の欠点をカバーする方策としての蓄電池装備は誰もが考えつきアイデヒアであり、それは既に検討されている。
「日中の総発電量の総てを送電網に流すのではなく、その一部を蓄電池充電に回し、夜間、太陽光パネルが発電しない時間になったら、充電した蓄電池からの電力供給を行う」とのアイディアは、経済性を無視すれば技術的には可能だとの結論が出ている。
しかし、太陽が顔を出さない時間が長い冬季の夜の間中、電力を供給する蓄電池のお値段は、日中だけ発電する太陽光発電所の建設コストと、ほぼ同額であり、まったく経済性がない。
要するに、太陽光発電所が1日に発電する総発電量は、太陽光パネルの量で決まり、蓄電池の有無とは無関係に、発電量は同じである。
ところが、蓄電池があると、その建設コストは約2倍になってしまうのである。
発電所の様な長期稼働する設備の経済性は、建設費用等の初期コストと発電運転をする際の毎年の運営費・保守修繕費の総額を上回る運転年数累計の発電電力収入が確出来て、はじめて「経済性がある」ということになる。
例えば、売電収入が10年で10億円しかない発電所は、その10億円から10年間の運営費・保守修繕費を差し引いた補記投資費用しか投入できないということだ。
初期投資費用が5億円ならば、経済性はあるのだが、初期投資費用が2倍の10億円になってしまったならば、10年間の運営費・保守修繕費分は赤字になってしまうのである。
実際のところ、蓄電池を装備しない太陽光発電所の事業であっても、売電収入が全然足りないのである。
そういうことなので、あの菅直人は、総理辞任間際に1Kwh42円などという法外に高額な「太陽光発電電力の売電単価」(FITタリフ)を政治決定したのである。
勿論、この法外に高額な電気料金を負担しているのは、我々国民である。
この法外な太陽光発電用の売電価格を以てしても、蓄電池つきの太陽光発電所の経済性は確保できないのである。
ここまでは「基盤発電」の話だったので、メガソーラーを念頭に述べてきたが、「設備投資が引き合わない」のはメガソーラーだけではない。
個人住宅などが自宅の屋根にソーラーパネルを設置するケースに於いても、経済性が足りなく、最初の設置費用を発電量だけでは回収できないのである。
その為に、市町村などが、個人でソーラーパネルを設置する個人宅や小規模アパートの家主等に、補助金を出していたのである。その制度は、既に中止となっているが、太陽光発電の「経済性」など、そんなものなのである。
尚、当方は、太陽光発電の総てを否定している訳ではない。
省エネ発想の地産地消用発電方式としての価値は充分に認識しており、所謂「スマートグリッド」システムの要素として、その増進には賛成している。
当方が疑問視しているのは、あたかも「新世代基盤発電」の様な誤った認識に対してであり、主として、そういう意識で作られるメガソーラーに対してである。
話を朝日の社説に戻す。
朝日社説が例示するのは「大容量の蓄電池」と「揚水発電」と「広域の送電線網」である。
このうち、「大容量の蓄電池」の非現実性については上述した通りである。
「揚水発電」に関して言えば、あれは形をかえた蓄電池である。
余剰電力発生時に、それを使ってポンプで水を高いところに移動させ、その水の位置エネルギーを以て水流タービンを回し発電するものである。
これは余剰電力がある場合には良い方式なのだが、問題は、水力発電所建設と同様の用地問題が存在していることにある。
「なんとなくクソの樽」が、何を間違えたのか長野県知事になってしまい、その際に「脱ダム宣言」とかなんとかを言いだし、我が国の水力発電の道を狭めてしまったことを思い出していただきたい。「脱ダム宣言」の文脈は「乱開発否定」との所謂「自然派」の発想によるものである。
水力発電には、他の発電方式とは違う大きなメリットがあるのだが、まことに残念であるのだが、既に、その様な文脈になっているが事実である。
揚水発言が「基盤発電システムの一部を補完する揚水発電」であるのならば、かなりの量の水量が必要であり、それなりに大規模な「開発」が必要になってくることは分かると思う。
「天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」」として「揚水発電」を、その主力対策とするならば、揚水発電の為の「それなりに大規模な開発」をする場所は1か所や2か所だけではなく、かなりの増設が必要になってくるであろう。
その時になったら、朝日はどの様な論陣をはるのであろうか?
「脱ダム宣言」の「乱開発否定」との文脈を持ち出す事を自重する程、朝日は誠実ではあるまい。論の一貫性がないのも朝日の特徴でもあるのだから。
この様に、「揚水発電」の例示も、現実的とは言い難いのである。
同様、送電網の充実も、そう単純ではない。
詳細説明は長くなるので割愛するが、朝日の社説自身が言っている様に、これら設備の増強には、多大な費用を要するもので、費用面だけに注目しても現実的ではないのである。
朝日の社説は、この後に「家庭や事業所」という消費側の話を持ってきているのだが、それも「雰囲気優先」のことしか書いていない。
そういう対策で、どれほどの効果があるのかとの数値的・量的検証を踏まえての記述とは思えないものであった。そこには「スマートグリッド」とのキーワードも登場しない。
朝日社説の後段が、彼等の言いたい事である。
前段の手法や、中段での科学的ではない話の羅列は、要するに後段に至る為の「枕」であったことが分かるであろう。
朝日の言いたい事は、一言で言えば「反原発」である。
<朝日社説を抜粋引用>
○今回の出来事は、原発の再稼働が進むと、再エネ拡大の壁になりうることも示した。九電は4基の原発を動かし、太陽光の受け入れ余地が狭まった。
○国の「優先給電ルール」は、再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている。経済産業省は「原発は出力調整が技術的に難しい」と説明する。
<引用終わり>
朝日社説が言う「今回の出来事」とは、電力過剰による大停電発生リスクを避ける為の太陽光発電所からの電力供給見合わせのことなのだが、あたかも、それが悪い事の様な書き方をしており、その主犯が原発であるとしている。
この話も、朝日流の詐欺話である。
現在の我が国・日本人は、安定的に365日・24時間、間断なく周波数・電圧の安定した良質な電気が供給されることを前提にして設計された社会・施設・装備の中で暮らしている。
その維持・継続は、社会基盤として必須である。
その事を実現する為には、火力発電や原子力発電の様な自然環境に左右されない基盤発電設備が必要であることは論をまたない。この基盤発電のことを朝日社説は、主客転倒させ「調整力」などと書いているが、まったく逆である、
その昔、各電力会社が原発の出力調整を試みたことがあった。
しかし、原発は、火力発電とは違い、安全に容易に出力調整が出来るものではないことが確認されただけだった。
当たり前である。原発の特徴は、長期間にわたり一定出力を安定的に発揮し続けるものであり、火力発電の様な、燃料供給の調整で発電量を調整する様な構造ではないのである。
逆に言えば、そういう基盤発電が存在することの方が、需要の変化に応じた供給調整での需給バランスがとり易いのである。
経産省が言う「原発は出力調整が技術的に難しい」は本当のことである。実証済なのである。
そうであるにも関わらず、朝日社説は「再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている」と、まったく技術的視点を吹っ飛ばして、逆のことを書いているのである。
以前から述べている通り、我が国の電力供給体制は、原発を含めたベストミックスが現実的なのである。
もし仮に、基盤発電を縮小し、再生可能エネルギーを主力にした電力供給体制になった場合、我が国が陥る先は、電力の安定供給を前提に設計された日本社会の崩壊である。
そんな事態になった時、基盤発電設備を再構築することは費用的にも難しい。
そんな事態になった後に、電力の安定供給策を模索するとしたらどうなるか。
その場合、原発での発電をしている近隣の他国からの供給を選択せざるを得なくなるのと悪夢しか見えてこない。
今回の朝日新聞社説と同日(かつ、ほぼ同時刻)に発せられたNHKニュース(*3)と合わせて読むと、背筋が寒くなるのである。
そんな見方はうがち過ぎであろうか?
そのNHKニュースの見出しは「◆電力版の「一帯一路」で中国側が日本や韓国に協力呼びかけ」である。その概要は、以前、ソフトバンク・孫正義が唱えていた東アジア電力グリット構想の相似形である。
朝日新聞が、この様な社説を書いているのは、「反原発ありき」だからであろうことは。社説の後段に書いてあり、容易に見抜ける。
<朝日社説を抜粋引用>
○こうした状況が生まれたそもそもの原因は、基本計画が原発を基幹電源として使う方針を掲げ続けていることにある。政府はまずこの位置づけを見直し、原発依存度を下げる具体策を練るべきだ。「再エネ主力化」の本気度が問われている。
<引用終わり>
ここでの理屈は「省エネ至上主義」であり、「再生可能エネルギー」至上主義であり、それらは、経済性や持続性などは二の次となる「イデオロギー優先」の視点である。(*4)
勿論、その根源は「反原発」であり、「原発以外の発電方法がある」と言いたいが為のものである。
しかし、以前からの「反原発ありき」だけではなく、それが中国共産党の政策につながっているとしたら、それは別レベルで恐ろしく、危険なことである。
以前から、枝野や小沢が言っている薄っぺらで非現実的な「反原発」スローガンに対しては警戒している。
今回の朝日社説が技術的・科学的な視点を一切提示しないでの書いている事も同様の話だと、あらためて、その危険性を感じた次第である。
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【文末脚注】
(*1):朝日新聞社説
朝日新聞デジタル 2018年10月17日05時00分
見出し:◆(社説)太陽光の停止 電力捨てない工夫を
https://www.asahi.com/articles/DA3S13726538.html
記事:○資源が乏しい日本で、すぐ使える自然のエネルギーを捨ててしまうのは、何とももったいない。最大限活用する方法を考えることが重要だ。
○九州電力が、太陽光発電の一部の事業者に、一時的な稼働停止を求める措置に踏み切った。昼間に管内の供給力が需要を上回り、電力が余りそうになったためだ。需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応で、国が定めたルールに基づく。離島を除けば、全国で初めて実施された。
○九州は日照に恵まれ、太陽光発電が普及している。九電は日中、火力発電の出力抑制や、余剰電力で発電用の水をくみ上げる揚水の活用などで対応してきたが、乗り切れなくなった。
○今後、再生可能エネルギーを伸ばしていくと、発電停止は各地で起きる可能性がある。事業者の収益を圧迫し、普及を妨げかねない。これを避けるには、天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ。電力業界と政府は対策を急がねばならない。
○電気をためる仕組みには、大容量の蓄電池や揚水発電がある。広域の送電線網を通して他地域に送るのも有効だ。ただ、設備の増強には多くの費用がかかり、だれが負担するかが課題になる。各地の事情に応じて効率よく整備することが大切だ。低コストの蓄電池など、技術開発への政策支援も必要になる。
○家庭や事業所でできる工夫も広げたい。たとえば、給湯器などの機器を太陽光の出力ピーク時に合わせて使う方法だ。この時間帯の電気料金を安くすれば、利用を誘導できる。電力会社は知恵を絞ってほしい。
○今回の出来事は、原発の再稼働が進むと、再エネ拡大の壁になりうることも示した。九電は4基の原発を動かし、太陽光の受け入れ余地が狭まった。
○国の「優先給電ルール」は、再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている。経済産業省は「原発は出力調整が技術的に難しい」と説明する。
○だが、政府が今年改定したエネルギー基本計画は、再エネの主力電源化をめざす方針を打ち出した。その障害になりつつある優先給電ルールが妥当なのか、問い直す必要がある。
○こうした状況が生まれたそもそもの原因は、基本計画が原発を基幹電源として使う方針を掲げ続けていることにある。政府はまずこの位置づけを見直し、原発依存度を下げる具体策を練るべきだ。「再エネ主力化」の本気度が問われている。
<引用終わり>
(*2):先般の北海道地震で広域・長期の停電が起こった
日本経済新聞 2018/9/6 11:40
見出し:◆北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35045160W8A900C1000000/
記事:○6日午前3時8分ごろ、北海道南西部地方を震源とする最大震度7の揺れを観測した地震で北海道は全域が停電する異常事態に直面した。市民生活や企業活動に大きな影響が広がった背景には、大規模な火力発電所の停止があった。
小見出し:■3・11でも全域停電はなし
○北海道電力によると札幌市内を含めた道内全域約295万戸が停電した。道内全域での停電は1951年の北電の創設以来初めてという。電力各社でつくる電気事業連合会も「エリア全域での停電は近年では聞いたことがない」としている。2011年3月の東日本大震災時の東北地方でも全域の停電は発生しなかった。
○今回の大規模な停電は「電力の需給バランスが崩れた」ことが原因とされる。需給バランスが崩れると、なぜこうした事態が起こるのか。
○北電は道内の火力発電所が地震により緊急停止したことが原因としている。震源の近くに位置し、石炭を燃料とする苫東厚真発電所(厚真町)は、6日未明に全号機が運転中だったが地震により緊急停止した。同発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、地震発生当時は北海道の使用電力の半分を供給していた道内最大の火力発電所だ。この発電所の停止が大きく影響し、連鎖的に道内の火力発電所も停止した。
小見出し:■常に需給調整で周波数維持
○電力は常に需要と供給が同量にならなければ「周波数」が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。家庭などに送られる電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっており、その入れ替わる回数を周波数と呼ぶ。この周波数を一定に保つには電力の発電量と使用量を一致させる必要があり、これが乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性がある。電力会社は常に需要と供給が一致するように発電能力を調整して運用している。
○北電は北海道全域でこうした調整をしている。今回は大規模な火力発電所が停止したことで電力の供給量が大きく減少したことから、連鎖的に発電所を停止させた。火力発電所を稼働させるためにも電力が必要で、北電は今後は水力発電所を動かして火力発電所に電気を送ることで発電を再開させていくとしている。ただ、送電線などの被害状況によっては復旧に時間を要する可能性がある。
小見出し:■本州からの送電も足りず
○菅義偉官房長官は6日の記者会見で、苫東厚真発電所に設備の損壊が見つかったことを明らかにした。世耕弘成経済産業相は同日、道全域の電力復旧に少なくとも1週間かかるとの見通しを示した。
○北海道と本州をつなぐ送電線の容量も60万キロワットと道内の電力需要をカバーできるほど確保されていない。道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ。(福本裕貴、安藤健太)
<引用終わり>
(*3):今回の朝日新聞社説と同日(かつ、ほぼ同時刻)に発せられたNHKニュース
NHK NEWS WEB 2018年10月17日 4時55分
見出し:◆電力版の「一帯一路」で中国側が日本や韓国に協力呼びかけ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181017/k10011674141000.html
記事:○中国は、アジアとヨーロッパを最新の送電線でつないで自然エネルギーによる電力を相互に融通する電力版の「一帯一路」の構想を掲げています。北京で開かれた国際シンポジウムでは、東アジア一帯で国際的な送電網を作ることが構想を推進する契機になるとして、中国側が日本や韓国に協力を呼びかけました。
○風力や太陽光など自然エネルギーの発電が世界トップの中国は、送電時の電力ロスが少ない最新の送電線でアジアとヨーロッパをつなぎ、電力を融通し合う電力版の「一帯一路」の構想を掲げています。
○16日、北京では構想を推進する中国の団体がシンポジウムを開き、日本や韓国をはじめアジアやヨーロッパの20余りの国々から、電力会社や研究機関の代表が出席しました。
○シンポジウムでは、電力を大量に消費する日本、中国、韓国を中心に東アジアでの電力の需要が今後も増え続けるという中国側のリポートなどをめぐって話し合われました。
○中国側は需要の伸びを賄うには、太陽光や風力発電も活用し、ロシアなどを含む東アジア一帯で国際的な送電網を作ることが効果的で、構想推進の契機にもなるとして日本や韓国に協力を呼びかけました。
○東アジアでの電力の融通をめぐっては、他国に電力の供給を頼る政治的なリスクへの対応も課題で、出席者はそれぞれの政府に話し合いを求めていくことなどを確認しました。
小見出し:◆エネルギー面の連係は地域の平和や交流につながる
○モンゴルなどを起点に自然エネルギーの発電や送電事業に取り組んでいるソフトバンクグループの「CEOプロジェクト室」の三輪茂基室長は、「それぞれの地域で少しずつ出ている自然エネルギーをめぐる動きが、最終的に一つにつながっていくことが理想だ。エネルギーの面で一定の連係があることは、地域の平和や交流にもつながり、よい方向に議論が進めばと思う」と話していました。
<引用終わり>
(*4):「省エネ至上主義」、「再生可能エネルギー」至上主義。それらは、経済性や持続性などは二の次となる「イデオロギー優先」の視点である。
※【ご参考】<再生可能エネルギー至上主義が破綻した事例>
2018/08/02投稿:
再生可能エネルギー(持続可能性・経済性)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-991.html
(*5):以前から、枝野や小沢が言っている薄っぺらで非現実的な「反原発」スローガンに対しては警戒している。
2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html
2018/07/19投稿:
手段が目的化した不見識・小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-981.html
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副題:「反原発ありき」での牽強付会。夜間に発電しない太陽光発電は、けして基盤発電にはなり得ない。それを隠した「社説」など笑止千万。それが一帯一路への忖度であるのなら、猛烈に危険な代物だ。
朝日新聞は、相変わらず「報道しない自由」を行使して、国民の知る権利を毀損し続けており、他国の利益を忖度したかの様な「報道」をしている事に呆れている。
先般の朝日新聞の社説(*1)を読み、この様に感じたので少々述べたい。
朝日社説の見出しは「太陽光の停止 電力捨てない工夫を」である。
内容は、九州地区の電力供給責任を負っている九州電力が、先般行った電力供給安定性確保措置の1つに、九州地区での電力供給が過剰となった際に、太陽光発電等から生じた電力を系統から遮断する措置があり、それに「苦言を呈する」との体裁で書かれたものであった。
一般的な感覚で、「折角、太陽光発電で発電しているのに、それを使わないのはもったいない」となるのは自然なことである。
しかし、それは、社会基盤である発電・供給システムが抱える科学的な問題点を考慮していない情緒的な感覚であり、必ずしも正しくないのである。
朝日新聞の社説は、そういう科学的に解決が難しい問題を巧みに隠して、一般的感覚に訴えかけ、朝日の本音である「原発いらない」へと読む人を誘導するもので悪質である。
それでは、具体的に、何を隠しているのかを指摘していく。
朝日社説の冒頭部分は、読者が持つであろう「一般的感覚」を踏み台にして、朝日が望む「議論の土俵」を提示することから始まる。
それに続き、起こっていることの大枠を説明しており、この事実部分は概ね正確である。
これらは、朝日のお家芸である。
朝日新聞1面下段のコラム「変声珍語」や「粗流子」などで常用される論法である。
最初に正しい事を述べ、あたかも正論を述べているかの様な印象を読者に与えながら、その結論がぶっ飛んだトンデモ論へと飛躍する論法である。
また朝日が望む「議論の土俵」が提示されるとの手法は、朝日が望まない「議論すべき視点」を排除する為の手法である。
<朝日社説の冒頭部分を抜粋引用>
○資源が乏しい日本で、すぐ使える自然のエネルギーを捨ててしまうのは、何とももったいない。最大限活用する方法を考えることが重要だ。
○九州電力が、太陽光発電の一部の事業者に、一時的な稼働停止を求める措置に踏み切った。昼間に管内の供給力が需要を上回り、電力が余りそうになったためだ。需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応で、国が定めたルールに基づく。離島を除けば、全国で初めて実施された。
○九州は日照に恵まれ、太陽光発電が普及している。九電は日中、火力発電の出力抑制や、余剰電力で発電用の水をくみ上げる揚水の活用などで対応してきたが、乗り切れなくなった。
<引用終わり>
最初の段落は、上記した「一般的感覚に訴えかける」部分である。そして、朝日が望まない「議論すべき視点」を排除する為に「すぐ使える自然のエネルギーを・・・最大限活用する方法を考えることが重要だ」との「土俵」を提示している。
この「土俵」は、「自然エネルギーを最大限活用することが良いことなのか?」、「安定的電力供給体制を自然エネルギーの最大限活用で安価・効率的に維持できるのか?」という根本的な問題点を排除するものである。
排除手法であるとの指摘がない場合、なんどなく、漠然と「自然エネルギーは「すぐ使える」もので、最大限活用する事が重要なんだなぁ」と刷り込まれて、フラフラと朝日が設定する「議論の土俵」に登って考えることになってしまうであろう。
次の段落からが「最初に正しい事を述べる」部分である。
概ね事実を提示しているので詳細には指摘しないが、1点だけ述べる。
「需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応」と書いてあるが、九電の事例は、「供給過剰」の話である。一方、「供給過小」の場合も大停電が起きてしまうとの問題もある。
先般(2018年9月6日)の北海道地震で広域・長期の停電が起こった事(*2)を記憶していると思う。
あれは、北海道地区の電力供給責任を負っている北海道電力での話であるが、札幌の南、千歳から更に南の苫小牧東部にある火力発電所が北海道で使用する電力の約半分を供給しており、それが地震により緊急停止したことで、供給過小となり、発電・供給システムが機能しなくなり、一挙に北海道全域で大停電となってしまった事例である。
北海道の事例は、供給が止まってしまった事例だが、例えば、真夏に電力需要が増大しても同様の「供給過小」状態が発生する。
要するに文字にすると「需給バランス・大停電」となってしまうのだが、我々国民の生活に直結している発電・送電網・需要先消費というシステムを安定させるのは、実際は技術的には相当にセンシティブなのである。
その点を「注目点」にしていない事は、本当は「問題あり」なのである。
冒頭以降の朝日社説の中段は、いよいよ朝日が設定した「土俵」の上で話が進んでいく。
「再生可能エネルギーを伸ばしていく」という事が「前提」となった話が進んでいく。
その上で、あたかも「再生可能エネルギーの問題点ぐらいわかっていますよ」的なエクスキューズを述べている。
その部分を以下に引用する。
<朝日社説を抜粋引用>
○今後、再生可能エネルギーを伸ばしていくと、発電停止は各地で起きる可能性がある。事業者の収益を圧迫し、普及を妨げかねない。これを避けるには、天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ。電力業界と政府は対策を急がねばならない。
<引用終わり>
この中で述べられている「天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ」の部分が、「再生可能エネルギーの問題点ぐらいわかっていますよ」のエクスキューズなのである。
簡単な話なのだが、太陽光発電は、夜間は発電しない。また、雨天・曇天時には発電量が極端に少なくなる。風力発電も風が止む時には発電しないし、風力が弱い時には発電量が低下する。
そういう宿命を負った発電方式は、基盤発電には向かないのである。
「夜暗くなったら電気を使わず寝ましょう」などは、個人が趣味でやる話であり、社会全体が、そんな近代を否定する様事は成り立たないのである。
1年365日・24時間、いつでも安定的な電力を供給し、それを国民が享受できる社会基盤の維持は、重要な社会的な使命である。
科学的に基盤発電となり得ない太陽光・風力だけでは、この重要な使命を果たせないのだから、朝日社説でさえも「出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ」と書いているのである。
この文章も、実は主客逆転している。
「太陽光や風力」が発電の主力であることが。あたかも「所与の前提」であるが如き文章である。
もしも仮に、出力変動することが宿命である太陽光・風力を発電の主力とした場合、風が止まった夜間の需要を賄う為に、「主力電源が供給していた電力量と同じ電力量を供給する太陽光・風力とは違う発電設備を別途用意しておく」ことが必要になる。
「主力」なのだから、相当量の電力を「ならす」話である。
この様な話は、「需要量に必要な電力量以上の電力量を別途発電する別の発電設備が必要」という話に他ならない。要するに、朝日社説は、経済性などまったく考えていないという事だ。
「経済性を無視した設備投資」を電力会社に強要すれば、それは電力料金を払っている我々国民が最終負担者として、必要以上の電気代負担にさらされるという結末になるしかない話なのである。朝日の社説が悪質だと述べたのは、この様な話が複数含まれているからである。
引用した部分の最後は、「電力業界と政府は対策を急がねばならない。」である。
お分かりの様に、「無理筋話の解決策、つまり現実的な策が存在しない話の解決を他者に丸投げしている」という無責任な態度なのである。
その様な無責任な態度を糊塗する為に、あたかも何かの策がある様なことを、この次の段落で書いているのであるが、実際のところ、その何れもが「根本的な解決策にはなり得ない」ことが既に分かっているものである。
<朝日社説を抜粋引用>
○電気をためる仕組みには、大容量の蓄電池や揚水発電がある。広域の送電線網を通して他地域に送るのも有効だ。ただ、設備の増強には多くの費用がかかり、だれが負担するかが課題になる。各地の事情に応じて効率よく整備することが大切だ。低コストの蓄電池など、技術開発への政策支援も必要になる。
○家庭や事業所でできる工夫も広げたい。たとえば、給湯器などの機器を太陽光の出力ピーク時に合わせて使う方法だ。この時間帯の電気料金を安くすれば、利用を誘導できる。電力会社は知恵を絞ってほしい。
<引用終わり>
「夜間に発電しない太陽光発電」の欠点をカバーする方策としての蓄電池装備は誰もが考えつきアイデヒアであり、それは既に検討されている。
「日中の総発電量の総てを送電網に流すのではなく、その一部を蓄電池充電に回し、夜間、太陽光パネルが発電しない時間になったら、充電した蓄電池からの電力供給を行う」とのアイディアは、経済性を無視すれば技術的には可能だとの結論が出ている。
しかし、太陽が顔を出さない時間が長い冬季の夜の間中、電力を供給する蓄電池のお値段は、日中だけ発電する太陽光発電所の建設コストと、ほぼ同額であり、まったく経済性がない。
要するに、太陽光発電所が1日に発電する総発電量は、太陽光パネルの量で決まり、蓄電池の有無とは無関係に、発電量は同じである。
ところが、蓄電池があると、その建設コストは約2倍になってしまうのである。
発電所の様な長期稼働する設備の経済性は、建設費用等の初期コストと発電運転をする際の毎年の運営費・保守修繕費の総額を上回る運転年数累計の発電電力収入が確出来て、はじめて「経済性がある」ということになる。
例えば、売電収入が10年で10億円しかない発電所は、その10億円から10年間の運営費・保守修繕費を差し引いた補記投資費用しか投入できないということだ。
初期投資費用が5億円ならば、経済性はあるのだが、初期投資費用が2倍の10億円になってしまったならば、10年間の運営費・保守修繕費分は赤字になってしまうのである。
実際のところ、蓄電池を装備しない太陽光発電所の事業であっても、売電収入が全然足りないのである。
そういうことなので、あの菅直人は、総理辞任間際に1Kwh42円などという法外に高額な「太陽光発電電力の売電単価」(FITタリフ)を政治決定したのである。
勿論、この法外に高額な電気料金を負担しているのは、我々国民である。
この法外な太陽光発電用の売電価格を以てしても、蓄電池つきの太陽光発電所の経済性は確保できないのである。
ここまでは「基盤発電」の話だったので、メガソーラーを念頭に述べてきたが、「設備投資が引き合わない」のはメガソーラーだけではない。
個人住宅などが自宅の屋根にソーラーパネルを設置するケースに於いても、経済性が足りなく、最初の設置費用を発電量だけでは回収できないのである。
その為に、市町村などが、個人でソーラーパネルを設置する個人宅や小規模アパートの家主等に、補助金を出していたのである。その制度は、既に中止となっているが、太陽光発電の「経済性」など、そんなものなのである。
尚、当方は、太陽光発電の総てを否定している訳ではない。
省エネ発想の地産地消用発電方式としての価値は充分に認識しており、所謂「スマートグリッド」システムの要素として、その増進には賛成している。
当方が疑問視しているのは、あたかも「新世代基盤発電」の様な誤った認識に対してであり、主として、そういう意識で作られるメガソーラーに対してである。
話を朝日の社説に戻す。
朝日社説が例示するのは「大容量の蓄電池」と「揚水発電」と「広域の送電線網」である。
このうち、「大容量の蓄電池」の非現実性については上述した通りである。
「揚水発電」に関して言えば、あれは形をかえた蓄電池である。
余剰電力発生時に、それを使ってポンプで水を高いところに移動させ、その水の位置エネルギーを以て水流タービンを回し発電するものである。
これは余剰電力がある場合には良い方式なのだが、問題は、水力発電所建設と同様の用地問題が存在していることにある。
「なんとなくクソの樽」が、何を間違えたのか長野県知事になってしまい、その際に「脱ダム宣言」とかなんとかを言いだし、我が国の水力発電の道を狭めてしまったことを思い出していただきたい。「脱ダム宣言」の文脈は「乱開発否定」との所謂「自然派」の発想によるものである。
水力発電には、他の発電方式とは違う大きなメリットがあるのだが、まことに残念であるのだが、既に、その様な文脈になっているが事実である。
揚水発言が「基盤発電システムの一部を補完する揚水発電」であるのならば、かなりの量の水量が必要であり、それなりに大規模な「開発」が必要になってくることは分かると思う。
「天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」」として「揚水発電」を、その主力対策とするならば、揚水発電の為の「それなりに大規模な開発」をする場所は1か所や2か所だけではなく、かなりの増設が必要になってくるであろう。
その時になったら、朝日はどの様な論陣をはるのであろうか?
「脱ダム宣言」の「乱開発否定」との文脈を持ち出す事を自重する程、朝日は誠実ではあるまい。論の一貫性がないのも朝日の特徴でもあるのだから。
この様に、「揚水発電」の例示も、現実的とは言い難いのである。
同様、送電網の充実も、そう単純ではない。
詳細説明は長くなるので割愛するが、朝日の社説自身が言っている様に、これら設備の増強には、多大な費用を要するもので、費用面だけに注目しても現実的ではないのである。
朝日の社説は、この後に「家庭や事業所」という消費側の話を持ってきているのだが、それも「雰囲気優先」のことしか書いていない。
そういう対策で、どれほどの効果があるのかとの数値的・量的検証を踏まえての記述とは思えないものであった。そこには「スマートグリッド」とのキーワードも登場しない。
朝日社説の後段が、彼等の言いたい事である。
前段の手法や、中段での科学的ではない話の羅列は、要するに後段に至る為の「枕」であったことが分かるであろう。
朝日の言いたい事は、一言で言えば「反原発」である。
<朝日社説を抜粋引用>
○今回の出来事は、原発の再稼働が進むと、再エネ拡大の壁になりうることも示した。九電は4基の原発を動かし、太陽光の受け入れ余地が狭まった。
○国の「優先給電ルール」は、再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている。経済産業省は「原発は出力調整が技術的に難しい」と説明する。
<引用終わり>
朝日社説が言う「今回の出来事」とは、電力過剰による大停電発生リスクを避ける為の太陽光発電所からの電力供給見合わせのことなのだが、あたかも、それが悪い事の様な書き方をしており、その主犯が原発であるとしている。
この話も、朝日流の詐欺話である。
現在の我が国・日本人は、安定的に365日・24時間、間断なく周波数・電圧の安定した良質な電気が供給されることを前提にして設計された社会・施設・装備の中で暮らしている。
その維持・継続は、社会基盤として必須である。
その事を実現する為には、火力発電や原子力発電の様な自然環境に左右されない基盤発電設備が必要であることは論をまたない。この基盤発電のことを朝日社説は、主客転倒させ「調整力」などと書いているが、まったく逆である、
その昔、各電力会社が原発の出力調整を試みたことがあった。
しかし、原発は、火力発電とは違い、安全に容易に出力調整が出来るものではないことが確認されただけだった。
当たり前である。原発の特徴は、長期間にわたり一定出力を安定的に発揮し続けるものであり、火力発電の様な、燃料供給の調整で発電量を調整する様な構造ではないのである。
逆に言えば、そういう基盤発電が存在することの方が、需要の変化に応じた供給調整での需給バランスがとり易いのである。
経産省が言う「原発は出力調整が技術的に難しい」は本当のことである。実証済なのである。
そうであるにも関わらず、朝日社説は「再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている」と、まったく技術的視点を吹っ飛ばして、逆のことを書いているのである。
以前から述べている通り、我が国の電力供給体制は、原発を含めたベストミックスが現実的なのである。
もし仮に、基盤発電を縮小し、再生可能エネルギーを主力にした電力供給体制になった場合、我が国が陥る先は、電力の安定供給を前提に設計された日本社会の崩壊である。
そんな事態になった時、基盤発電設備を再構築することは費用的にも難しい。
そんな事態になった後に、電力の安定供給策を模索するとしたらどうなるか。
その場合、原発での発電をしている近隣の他国からの供給を選択せざるを得なくなるのと悪夢しか見えてこない。
今回の朝日新聞社説と同日(かつ、ほぼ同時刻)に発せられたNHKニュース(*3)と合わせて読むと、背筋が寒くなるのである。
そんな見方はうがち過ぎであろうか?
そのNHKニュースの見出しは「◆電力版の「一帯一路」で中国側が日本や韓国に協力呼びかけ」である。その概要は、以前、ソフトバンク・孫正義が唱えていた東アジア電力グリット構想の相似形である。
朝日新聞が、この様な社説を書いているのは、「反原発ありき」だからであろうことは。社説の後段に書いてあり、容易に見抜ける。
<朝日社説を抜粋引用>
○こうした状況が生まれたそもそもの原因は、基本計画が原発を基幹電源として使う方針を掲げ続けていることにある。政府はまずこの位置づけを見直し、原発依存度を下げる具体策を練るべきだ。「再エネ主力化」の本気度が問われている。
<引用終わり>
ここでの理屈は「省エネ至上主義」であり、「再生可能エネルギー」至上主義であり、それらは、経済性や持続性などは二の次となる「イデオロギー優先」の視点である。(*4)
勿論、その根源は「反原発」であり、「原発以外の発電方法がある」と言いたいが為のものである。
しかし、以前からの「反原発ありき」だけではなく、それが中国共産党の政策につながっているとしたら、それは別レベルで恐ろしく、危険なことである。
以前から、枝野や小沢が言っている薄っぺらで非現実的な「反原発」スローガンに対しては警戒している。
今回の朝日社説が技術的・科学的な視点を一切提示しないでの書いている事も同様の話だと、あらためて、その危険性を感じた次第である。
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【文末脚注】
(*1):朝日新聞社説
朝日新聞デジタル 2018年10月17日05時00分
見出し:◆(社説)太陽光の停止 電力捨てない工夫を
https://www.asahi.com/articles/DA3S13726538.html
記事:○資源が乏しい日本で、すぐ使える自然のエネルギーを捨ててしまうのは、何とももったいない。最大限活用する方法を考えることが重要だ。
○九州電力が、太陽光発電の一部の事業者に、一時的な稼働停止を求める措置に踏み切った。昼間に管内の供給力が需要を上回り、電力が余りそうになったためだ。需給バランスが崩れて大停電などが起きるのを防ぐための対応で、国が定めたルールに基づく。離島を除けば、全国で初めて実施された。
○九州は日照に恵まれ、太陽光発電が普及している。九電は日中、火力発電の出力抑制や、余剰電力で発電用の水をくみ上げる揚水の活用などで対応してきたが、乗り切れなくなった。
○今後、再生可能エネルギーを伸ばしていくと、発電停止は各地で起きる可能性がある。事業者の収益を圧迫し、普及を妨げかねない。これを避けるには、天候による太陽光や風力の出力変動をならす「調整力」の確保が不可欠だ。電力業界と政府は対策を急がねばならない。
○電気をためる仕組みには、大容量の蓄電池や揚水発電がある。広域の送電線網を通して他地域に送るのも有効だ。ただ、設備の増強には多くの費用がかかり、だれが負担するかが課題になる。各地の事情に応じて効率よく整備することが大切だ。低コストの蓄電池など、技術開発への政策支援も必要になる。
○家庭や事業所でできる工夫も広げたい。たとえば、給湯器などの機器を太陽光の出力ピーク時に合わせて使う方法だ。この時間帯の電気料金を安くすれば、利用を誘導できる。電力会社は知恵を絞ってほしい。
○今回の出来事は、原発の再稼働が進むと、再エネ拡大の壁になりうることも示した。九電は4基の原発を動かし、太陽光の受け入れ余地が狭まった。
○国の「優先給電ルール」は、再エネではなく、原発などの「長期固定電源」の運転を最優先としている。経済産業省は「原発は出力調整が技術的に難しい」と説明する。
○だが、政府が今年改定したエネルギー基本計画は、再エネの主力電源化をめざす方針を打ち出した。その障害になりつつある優先給電ルールが妥当なのか、問い直す必要がある。
○こうした状況が生まれたそもそもの原因は、基本計画が原発を基幹電源として使う方針を掲げ続けていることにある。政府はまずこの位置づけを見直し、原発依存度を下げる具体策を練るべきだ。「再エネ主力化」の本気度が問われている。
<引用終わり>
(*2):先般の北海道地震で広域・長期の停電が起こった
日本経済新聞 2018/9/6 11:40
見出し:◆北海道地震、なぜ全域停電 復旧少なくとも1週間
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35045160W8A900C1000000/
記事:○6日午前3時8分ごろ、北海道南西部地方を震源とする最大震度7の揺れを観測した地震で北海道は全域が停電する異常事態に直面した。市民生活や企業活動に大きな影響が広がった背景には、大規模な火力発電所の停止があった。
小見出し:■3・11でも全域停電はなし
○北海道電力によると札幌市内を含めた道内全域約295万戸が停電した。道内全域での停電は1951年の北電の創設以来初めてという。電力各社でつくる電気事業連合会も「エリア全域での停電は近年では聞いたことがない」としている。2011年3月の東日本大震災時の東北地方でも全域の停電は発生しなかった。
○今回の大規模な停電は「電力の需給バランスが崩れた」ことが原因とされる。需給バランスが崩れると、なぜこうした事態が起こるのか。
○北電は道内の火力発電所が地震により緊急停止したことが原因としている。震源の近くに位置し、石炭を燃料とする苫東厚真発電所(厚真町)は、6日未明に全号機が運転中だったが地震により緊急停止した。同発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、地震発生当時は北海道の使用電力の半分を供給していた道内最大の火力発電所だ。この発電所の停止が大きく影響し、連鎖的に道内の火力発電所も停止した。
小見出し:■常に需給調整で周波数維持
○電力は常に需要と供給が同量にならなければ「周波数」が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。家庭などに送られる電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっており、その入れ替わる回数を周波数と呼ぶ。この周波数を一定に保つには電力の発電量と使用量を一致させる必要があり、これが乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性がある。電力会社は常に需要と供給が一致するように発電能力を調整して運用している。
○北電は北海道全域でこうした調整をしている。今回は大規模な火力発電所が停止したことで電力の供給量が大きく減少したことから、連鎖的に発電所を停止させた。火力発電所を稼働させるためにも電力が必要で、北電は今後は水力発電所を動かして火力発電所に電気を送ることで発電を再開させていくとしている。ただ、送電線などの被害状況によっては復旧に時間を要する可能性がある。
小見出し:■本州からの送電も足りず
○菅義偉官房長官は6日の記者会見で、苫東厚真発電所に設備の損壊が見つかったことを明らかにした。世耕弘成経済産業相は同日、道全域の電力復旧に少なくとも1週間かかるとの見通しを示した。
○北海道と本州をつなぐ送電線の容量も60万キロワットと道内の電力需要をカバーできるほど確保されていない。道内の泊原子力発電所(泊村)も運転を停止中で供給力に余裕はない。今回の大規模停電は、一カ所の大規模火力発電所に依存することの脆弱さが浮き彫りになった形だ。(福本裕貴、安藤健太)
<引用終わり>
(*3):今回の朝日新聞社説と同日(かつ、ほぼ同時刻)に発せられたNHKニュース
NHK NEWS WEB 2018年10月17日 4時55分
見出し:◆電力版の「一帯一路」で中国側が日本や韓国に協力呼びかけ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181017/k10011674141000.html
記事:○中国は、アジアとヨーロッパを最新の送電線でつないで自然エネルギーによる電力を相互に融通する電力版の「一帯一路」の構想を掲げています。北京で開かれた国際シンポジウムでは、東アジア一帯で国際的な送電網を作ることが構想を推進する契機になるとして、中国側が日本や韓国に協力を呼びかけました。
○風力や太陽光など自然エネルギーの発電が世界トップの中国は、送電時の電力ロスが少ない最新の送電線でアジアとヨーロッパをつなぎ、電力を融通し合う電力版の「一帯一路」の構想を掲げています。
○16日、北京では構想を推進する中国の団体がシンポジウムを開き、日本や韓国をはじめアジアやヨーロッパの20余りの国々から、電力会社や研究機関の代表が出席しました。
○シンポジウムでは、電力を大量に消費する日本、中国、韓国を中心に東アジアでの電力の需要が今後も増え続けるという中国側のリポートなどをめぐって話し合われました。
○中国側は需要の伸びを賄うには、太陽光や風力発電も活用し、ロシアなどを含む東アジア一帯で国際的な送電網を作ることが効果的で、構想推進の契機にもなるとして日本や韓国に協力を呼びかけました。
○東アジアでの電力の融通をめぐっては、他国に電力の供給を頼る政治的なリスクへの対応も課題で、出席者はそれぞれの政府に話し合いを求めていくことなどを確認しました。
小見出し:◆エネルギー面の連係は地域の平和や交流につながる
○モンゴルなどを起点に自然エネルギーの発電や送電事業に取り組んでいるソフトバンクグループの「CEOプロジェクト室」の三輪茂基室長は、「それぞれの地域で少しずつ出ている自然エネルギーをめぐる動きが、最終的に一つにつながっていくことが理想だ。エネルギーの面で一定の連係があることは、地域の平和や交流にもつながり、よい方向に議論が進めばと思う」と話していました。
<引用終わり>
(*4):「省エネ至上主義」、「再生可能エネルギー」至上主義。それらは、経済性や持続性などは二の次となる「イデオロギー優先」の視点である。
※【ご参考】<再生可能エネルギー至上主義が破綻した事例>
2018/08/02投稿:
再生可能エネルギー(持続可能性・経済性)
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-991.html
(*5):以前から、枝野や小沢が言っている薄っぺらで非現実的な「反原発」スローガンに対しては警戒している。
2017/10/20投稿:
立憲民主党の選挙公約を読む2
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-784.html
2018/07/19投稿:
手段が目的化した不見識・小沢一郎
http://samrai308w.blog.fc2.com/blog-entry-981.html
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